☆煩悩注意報☆

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2004年02月14日
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「SWEET HAPPY VALENTINE BIRTHDAY FOR ME」

 2月14日の朝、俺は家の前を通るゴミ収集車の激しい音で目が覚めた。
 目覚まし時計を握りしめて、俺はハッとした。
「9時15分」
 完璧に遅刻だ!!
 何て事だ!今日は俺の人生最大の大切な日だっていうのに!どうしてこういう大事な日に限って誰も起こしてくれないんだ?一瞬そう思いはしたけど、今更そんなこと怒っても時間は戻りはしない。俺は大急ぎで制服に着替えて洗面所へ駆け込み大急ぎで顔を洗い、歯を磨き、適当に髪を整えて家を出た。
 俺は駅への道を走りながら、俺の大切な人の事を考えていた。そう、宍戸さんのことを。

 彼が卒業するまで、あと1ヶ月。
 宍戸さんが高校生になってしまえば、校舎も部活も別々になってしまう。1年も離れて学校生活を送らなければいけないのだ。1年は短いようで長い。俺と宍戸さんがダブルスのペアを組んだほんの数ヶ月の日々に比べたら気の遠くなる程の長さなのだ。その1年の間に他の誰かとペアを組んでしまったらって考えたら、辛くて辛くて仕方がなかった。

 そして、電車を降り学校へと歩いていくのだけど、俺の足は重くなる一方だった。
「朝一番に宍戸さんに自分の気持ちを伝えたかったのに」
 そう思うと足が前へ進まなくなっていくのだった。

 始業の時間を大幅に遅れて俺は学校へたどり着いた。今は授業中なので、いつもは生徒達のはしゃいだ声で溢れている校舎も静まり返っていた。
 俺はしょんぼりしながら下を向いて校門へ近づいていった。だけど、何故か人の気配を感じてふと校門へと視線を向けた。
 そこには、見覚えのある人影があった。そう、俺が一番会いたかった宍戸さんが、いつものムッとした顔でそこに立っていたのだ。
 俺は用意してあった包みをバッグから出して宍戸さんに向かって走った。
「宍戸さん!俺のチョコレートを貰ってくれる為にここで待っていてくれたんですか?!」
 俺は包みを宍戸さんに手渡して、そう叫んだ。
「何勘違いしてんだ、お前は!今日はお前の誕生日なんだろうが!」
 そう言って宍戸さんは俺に赤いリボンの付いた小さな紙袋を押し付けた。

 宍戸さんは、そのムッとした顔を少しだけ赤くして続けた。
「 ……ほら、俺、中学卒業して高校へ上がるだろ。で、お前と1年離れちゃうけど、お前が高校になったらまたダブルス組んでやろうかなって思ってよ。お前が俺のこと忘れないように、これをお前にやろうと思って。一応、俺とお揃いだから。」
 宍戸さんのくれた紙袋を開けると、そこには氷帝カラーのブルーのリストバンドが入っていた。俺は、嬉しくて嬉しくて、そのリストバンドを握りしめていた。
「お前、俺の替わりにつまんない奴とダブルス組むんじゃないぞ!いいな?」
「はい。勿論です!」

「ありがとうございます!絶対、絶対大事にしますから!」
「ぐえっ!
 お前、苦しい!髭が痛いんだよ、ちゃんと髭ぐらい剃って来いよ!」
 宍戸さんが嫌がって暴れても俺は宍戸さんを離さなかった。

 俺の、俺だけの宍戸さん。
 俺、一生宍戸さんのこの気持ち大事にしますから。

 春がすぐそこまで来ていそうな、そんな気がする暖かい日差しの中、俺は、もうじき咲くであろう梅の蕾のように自分の淡い恋にも似たこの気持ちを、大事に、大事に、育てていこうと心に強く刻むのだった。






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最終更新日  2004年02月14日 14時42分15秒
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