なまけいぬの、お茶うけをひとつ。  

なまけいぬの、お茶うけをひとつ。  

2007年01月24日
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カテゴリ: 楽園に吼える豹
さて、今回からはまたレオンの外伝に戻ります(*^-^*)

第一回と第二回を読み返したい方がいらっしゃいましたら、 こちら からどうぞ。












こうと決めたときのレオンの行動力はものすごい。
仕事が終わると即座に実行総合本部に戻ってきて、アスカの姿を探し始めた。

彼女はまだ十六だという話だから、正式に“主人(マスター)”について仕事をしていることはないだろうと踏んだのだ。
本格的にGSとして仕事に携わるようになるのは、十七になってからである。

案の定彼女はいた。




アスカは少々眉間に皺を寄せて振り向いた。
不審がられるのは覚悟の上だ。
それくらいでくじける彼ではない。


「ああ…あんたか」


つまらなさそうに答える。
声の主が分かり、少しは声のトーンが和らいだが、依然として不審の眼差しを向けていることには変わりなかった。
なぜレオンが自分に声をかけてくるのか、納得できないのだろう。

が、レオンのほうはそんなことはお構いなしだ。


「今日の夜ヒマ? せっかく知り合えたことだし、クラブでも行かない?」


優しく笑って誘う。
これで、たいていの女は即答で「行く」というのだ。



「はぁ? 何でいきなり……悪いけど遠慮しとくよ。行ったことねー店なんて居心地悪いし……わ!?」


断られたときの対処法もレオンは本能的にマスターしている。
レオンはアスカの腕を引き、強引に走り出した。


「ちょっ、お前……!」


「どこの店だって最初は“行ったことのない店”だよ! 行けば絶対気に入るから!」



―――ほとんど誘拐じゃねえか―――

心の中でアスカは舌打ちした。
今日、用事があれば殴ってでも車から降りるところだが、生憎今晩は空いていた。
まさか路地裏に連れ込まれて手篭めにされるわけでもなし、仕方なくアスカはレオンに従うことにした。


(こいつもしかして、あたしの予定把握した上で誘ってきたんじゃねぇだろうな……)


そんな恐ろしい考えを巡らせてしまうほど、レオンの手並みは鮮やかだった。






到着した店は『Blue Rose』という名前だった。

慣れた様子でレオンは店の中へ入っていく。
もちろんアスカをエスコートするのも忘れない。

レオンが店内に姿を現すと、一気に空気が変わった。

アスカもそれを感じ取っている。
やかましい音楽がかかっているのに、客は第六感でレオンの到着を知るのか、次々と顔をレオンのほうへ向けた。

女たちはひそひそと話をしながら彼のほうへ目線を送っているし、男性客も少し気後れしつつも「よぉ」などと気軽に声をかけてくる。
このクラブではレオンと仲良くしておいたほうが得なのだ。
運がよければ女を回してもらえるし、なんといっても喧嘩で彼に勝てる見込みはゼロだからだ。


「何か飲む?」


カウンターの席に着くなりレオンは聞いてきた。
この男は、店内中の視線が自分に注がれているのが気にならないのだろうか。
慣れているのか、生来の目立ちたがり屋なのか。


「―――なんでもいい」


そっけなく言うと、レオンはアスカが聞いたこともない飲み物をオーダーした。
何を頼んだのか知らないが、不用意に口を付けるのはやめておこう、とアスカは思った。

(うさんくさいんだよな、こいつ………)

どうして初対面に近いアスカに対してこうも気安い態度をとるのか。
単に人懐っこいだけ。そうかもしれない。

けれどアスカは、彼の素行の悪さ(特に女性関係)を噂で何となく聞き知っていた。

今夜自分を誘ったのは、何かしらの下心があるからだと思うのは、自意識過剰だろうか。
彼ならばどれだけの美人でもよりどりみどりだというのに、なぜ自分を選んだのか―――普通の女には飽きてしまって、毛色の違った女に手を出したくなったのか。

何にしろ、アスカはレオンに対して良い印象を持っていなかった。
警戒はしておくべきだろう。

そう思い、横目で隣のレオンを見たときだった。



「!」



背後の気配に鳥肌が立つ。
すばやく立ち上がり、半ば転げ落ちるような形で左に逃れた。

その直後、ピンク色の液体が、直前までアスカが座っていた席を勢いよく濡らした。
匂いからしてカクテルか何からしい。
座席からぽたぽたと雫が垂れる。

空っぽになったグラスを手に持って、巻き毛の女がわなわなと震えていた。
怒りで顔が歪んではいるが、相当の美人である。

レオンたちの一挙一動に注目していた何人かの客は、事態の急変にざわついた。
が、間に入ることはしなかった。
これくらいのトラブルは、よくある部類に入るからである。


「…………」


女のあまりに鬼気迫る眼差しに打たれ、アスカは立ち上がることすらも忘れていた。
彼女がなぜこれほどまでに怒っているのか、すぐに分かったからだ。

が、アスカが事情を説明しようとする前に、レオンが口を開いた。


「ははは、さすがだね。よく避けられたなぁ」


そう言ってアスカの手を取り、立ち上がらせる。
その口調には、深刻さは微塵もなかった。
むしろどこか面白がっているように聞こえる。

そして眼前の女を見た。

レオンは彼女を知っていた。
昨日あたりに名前を思い出した、リンダという女性だ。
が、だからといって今更彼女には何の興味もない。


「俺に文句があんなら俺にカクテルぶっかけりゃいいのにねぇ……ま、話ぐらいは聞くよ」


そう言ってスタスタと歩き出す。
約十歩歩いたところで振り向き、

「ジェイク、彼女のこと頼むな」

先ほどレオンがオーダーした飲み物を持って手持ち無沙汰そうにしていたバーテンに声をかけた。

女は「待ちなさいよ!」と半狂乱でついていく。
そして二人はアスカの視界から消えた。




「とりあえず座れば」

不意にかけられた声に、アスカはびくりと反応した。

ジェイクとレオンに呼ばれていたバーテンだ。
こういうことには慣れているのか、全く動じた様子もない。
いつの間にかカウンターから出て、汚れた席をタオルで清めている。

修羅場に騒然となりかけていた店内の空気も、元に戻っている。
立っていても仕方ないので、アスカはさっき座っていたのとは別の椅子に腰を下ろした。


「気にしないほうがいいぞ、さっきみたいなことはザラにあることだから」


バーテンはどうやらアスカのことをレオンの恋人だと思っているようだった。
多少不本意だったが、否定するのも何だか面倒だったので、そのままにしておいた。

「さっきの女(ひと)って、やっぱ……」

「レオンの元カノだろうねぇ。いや、一晩寝ただけの女かもな」

バーテンはさらりととんでもないことを言い放つ。
レオンと付き合っていると、こういう神経になってしまうのだろうか。
彼にしてみれば、事実を言っているだけなのかもしれないが。

「あの女、きっと新参者だな。レオンに関する暗黙のルールってモンが分かってないよ」

同情しているような、それでいてどうでもいいと思っているような口調だった。

「ルール?」

そう、とジェイクという名のバーテンは頷いた。



「“レオンとはデートできるだけでラッキー、セックスできれば死ぬほど幸せ。あとは何も望むな。”ってね。
―――それだけ奴の興味を引き続けるのは難しいってことだよ」









つづく


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最終更新日  2007年01月24日 19時48分01秒
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