なまけいぬの、お茶うけをひとつ。  

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2009年02月06日
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カテゴリ: 楽園に吼える豹
(六割、七割ってとこかな?)


ユイの反応から、レオンは彼女たちがキリサキと会った確率を割り出してみる。

女が嘘をついているかどうかはだいたい分かる。
レオンは伊達に多くの女を渡り歩いているわけではない。


キリサキとユイは、サーディーン派と対立するマクレラン派のメンバーであったはず。
そんな彼らが藤堂と会合の場を持ったのだとすれば、目的は一つ。


藤堂を引き抜くこと。


(けど、そのこと自体は悪くない)


どう考えても、サーディーン政権の寿命は短い。


幸い、派閥間の移動というのはそれほど珍しいことではないし、サーディーンとマクレランは同じ政党に属するから、派閥を変えてもそれほど白い目で見られることはない。


マクレラン派はGS廃止を叫んでいるが、レオンはそれでもいいと思っている。


実行総合本部が解体されればGSはその時点でお役御免となり、アスカがマッドサイエンティストたちの実験材料にされることもなくなるからだ。


が、キリサキを目にした時のアスカの態度が気になる。


彼女が今まで担当した“主人(マスター)”の中に、彼の名前はない。

ということは、仕事とは関係のないところでの知り合いなのだろうか。
だが彼女の態度から察するに、どう考えても友好的な知り合いではなさそうである。


―――ならば。






「さあ吐け、アスカ」

任務の後、レオン行きつけのクラブ『Blue Rose』―――二年前、アスカがレオンに無理矢理連れて行かれた店だ―――にアスカ、ユキヒロを引っ張ってきたかと思えば、いきなりそんな台詞を吐くものだから、アスカは唖然とした。

ユキヒロは「そんないきなり…」とおろおろしている。




が、どうもあのキリサキという男からは嫌な感じを受ける。
それは単なる勘ともいえない。

アスカが嫌っている人間は、今までの経験上向こうもアスカのことを嫌っている場合がほとんどだからだ。

敵の実情を把握しておかなければ、思わぬところで足元をすくわれる。


「………」



そしてはあ、とため息を漏らす。


「ま、いいか。どうせ調べりゃ分かることだし」

「…いいんですか?」


ユキヒロがおどおどとアスカを見る。
彼もこんなふうにアスカの内面に踏み込むことは不本意らしい。



「いいよ。話したからって何がどうなるわけでもないし。
あの男は…カナメ・キリサキはな、あたしの―――兄貴だよ」



「!!」

「ほ…本当ですか!?」


ユキヒロの動揺を表すかのように、彼の持っていたグラスの中の氷が音を立てる。


「ホントだよ」

「でも、苗字が…」

「結婚したらしいからな。入り婿だってよ」


まるで他人事のように言う。アスカはあまり詳しく語らないが、これだけのやりとりで、兄と妹の間に横たわる深淵が垣間見れたような気がした。


「人間不思議なもんだよなぁ…。あんな奴でも結婚できるんだから」

「キリサキの結婚話はどうでもいいよ。問題は奴が藤堂さんと会ってたってことだ。
だとしたら―――」

「それなんだよなぁ…」


レオンの言葉を遮り、アスカは椅子にもたれた。


「藤堂が兄貴の側につくなら、遅かれ早かれあたしはお払い箱になっちまうな……。
兄貴はあたしのこと、心底嫌ってるし」

「…!」


レオンが懸念していたのはまったく別のこと―――例えば、キリサキが藤堂と組んでアスカを陥れるとか―――だったのだが、アスカの口からは彼の意図していなかった言葉が次々と漏れる。


「あたしはまだ、あいつのGSでいなくちゃいけないんだけどな……」


およそアスカらしくない、沈んだような表情。


「困ったな」


どうしようか、と独り言のようにつぶやく。
そんなアスカに、レオンはそれ以上何も言えなくなってしまった。






『Blue Rose』からの帰り道、レオンはユキヒロと肩を並べて歩いている。

アスカは二人と別れ、一人で家に向かった。家まで送るとの申し出を、あっさり却下して。
彼女いわく、建物の上を走って帰ったほうが早い、のだそうだ。


「……どうします? レオン」

「どうするって言っても……俺にできることなんて微々たるモンだけどな。
とりあえず、身近にキリサキと近い人間がいるから、それとなく奴の動きを探るようにはするけど……」


言うまでもなくその人間は、ユイ・京極である。

ここ最近、レオンは彼女の恋情が混じった視線を敏感に感じ取っていた。

レオンはユイに対して積極的にアプローチをしたことはないが、彼女が自分に心を寄せるようになれば好都合だと思っていたことは確かだ。

“主人(マスター)”に手は出さないとアスカに約束させられてはいたが、場合によってはその誓約を反故にせざるをえないだろう。

そして、必要な情報を引き出す上で、今の状況は願ってもない。


「……“けど”?」

「うん…たとえキリサキがアスカに罠を張ったとしても、アスカは最後の最後まで藤堂さんのそばから離れないんじゃないかな、と思う」

「………レオン……」


分かってしまった。今日。



『あたしはまだ、あいつのGSでいなくちゃいけないんだけどな……』



多分まだ気付いていないのだろうが、アスカはきっと―――……









つづく


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最終更新日  2009年02月18日 16時54分17秒
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