江戸風流 春蝶亭雑記

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2004年12月07日
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◆映画『春香伝』(DVD鑑賞)
義太夫の先生が貸して下さったDVD。映画の詳しい内容は、 これ を参考にしてくださいませ。韓国の古典で、身分の差がある若い男女が、困難に負けず、愛をつらぬく話。何度も映画化され、愛されている話だそうな。これをふまえたCLAMPのマンガ『新・春香伝』がありますが、かなり違います。
細かいところが面白かった。目上の人の前でお酒を飲むときの、少し遠慮したしぐさとか、ブランコに乗って遊ぶ女の子の、大きくふくらんだチマチョゴリからちらりと見える足にときめく様子とか。全編、韓国の義太夫ともいえるパンソリが使われていて、それと映像の交差が実に効果的で上手い。映像は所々、写実よりも様式を優先していて、それが過剰な残酷さや深刻さをやわらげつつ、感情の核となる部分を鑑賞者に届ける。
映像や場面の作り方が綺麗で、印象に残る。夫婦の約束をかわした夢龍が都ヘ去った後、新たに赴任した横暴な長官に呼び出された春香の美しいこと。つつましく結った髪に、まるで彼女の決意そのもののようにきっちり挿されていた玉の簪。「妓生(キーセン。芸者さんのこと。)の娘は妓生。夫への貞節を守るなどきいてあきれる。貴族の命に従わぬ妓生は不敬罪で罰する。」と、春香に側仕えを拒否された長官は激怒し、彼女を拷問する。抜けて地に落ちる簪。春香は椅子に縛りつけられ、積み上げられた大量の棒で、ひとつずつ打たれる。そしてひとつ打たれる度に、数え歌のようなパンソリの歌詞そのままのセリフで、自分の無実と長官の横暴さを訴え続ける。十番目の棒で打たれたときの絶唱は、パンソリ奏者の語りと彼女のセリフが重なる。それによって不当に自分の人間性をふみにじられる者の悲しみが一層よく伝わり、その悲痛さが胸を打つ。春香は意識を失い、その場からかつぎ出される。泣き叫ぶ母親に介抱される春香を守るように、それまで黙って見ているしかなかった他の妓生達が親子を取り囲み、その場に居合わせた人々へ向けて、春香の貞節をたたえる歌を歌い始める。その様子の、華やかで悲しい美しさ。
作中の妓生のあつかいというのが、少し馴染みがないもので驚いた。日本の芸者さんと同じで、宴席に出て給仕を行い、歌舞音曲でもてなす女性なのだが、その地方の妓生はすべて名簿によって管理されており、その身分は終生消えない。そして「従母法」という法律により、妓生の産んだ娘の身分は妓生と決まっている。妓生は卑しい身分なので、貴族の命令には絶対従わなければならない。
春香の母は元妓生で、この地方のナンバーワンと呼ばれていた。請われて以前の地方長官の側仕えをしていた折、その長官との間に春香を産んだ。任期を終えて都ヘ帰った長官が迎えに来ると約束してくれたので、妓生を引退して春香を大切に育てていたのだが、やがて長官が亡くなってしまった、というのがその身の上。母親が厳しく育てたので、春香は学問も教養もあるし、貴族の娘にふさわしい気品も備わっている。
春香の相手、夢龍の変化もおもしろかった。登場して春香を見初め、夫婦の約束をして蜜月を過ごすあたりは、ちょっとわがままで遊び好きなお坊ちゃんという感じで、なんだかいけすかないのだが、父の出世で都ヘ戻り、春香と結婚するためには、科挙を首席で受からなければならなくなってから、別人のように良い顔をするようになってくる。で、密使として戻ってきた彼が、春香を処刑しようとする長官の不正をあばく場面が最高。「水戸黄門」のスペシャルバージョンアップパターン。助さん格さんが大量に潜んでいて、「黄門」夢龍が扇をばさっと広げて合図を送ると、一人が密使の紋章を「葵の御紋」のように掲げて示す。その途端、助さん格さん軍団が一斉摘発に乗りだし、悪人はおろおろ逃げ惑う。すごい映像の迫力。

今流行っている韓国映画とは全く違うと思うのだけれど、とても面白かった。出来たらこの監督の他の映画も見てみたい。






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最終更新日  2004年12月11日 09時40分43秒
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