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2007年10月03日
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カテゴリ: カマキリ物語
宴のあと。

ライブ・ペインティングとその直後の同時通訳のデモンストレーション。
プロ画伯とプロ同時通訳者の真剣勝負。
師が私のパフォーマンスを見据えておられる。
私の後釜がつとまるのか。
「今67歳。もし失敗したら、師に恥をかかせることになるから、今日限りで同時通訳はやめる」と豪語した。
私自身を崖っぷちに立たせた。
29歳の時に、59歳の師 西山千が観客に見せた同時通訳の「舞い」と同じような「花」を見せることができるか。

師に一礼した。
「先生の死後においても、私は弟子です」・・・。
会場に登場した師とは、虫カゴの中の一匹のカマキリであった。
変り果てた師の姿と人はいうかもしれない。
「松本は狂ったか」と人は嗤うかもしれない。
それでもいい。
師の遺骨、遺灰にも触れることができず、師は黙ってあの世へ去っていかれた。
見捨てられたのか。
私は嫌われていたのであろうか。
そんな絶望的な気持ちのまま、奥飛騨の旅館で、師の回顧録を書いていた。
深夜、珍客が私の部屋に顕れた。

そこには、一匹のカマキリがいた。
私は、師をカマキリとシンボライズさせていた。
カマキリほど、品格と気概そして静と動のバランスで武装された昆虫はいない。
あの同時通訳の神業、スピード感。
日頃あれほど大人しい紳士が獰猛になる瞬間を、そばにいた私ほど長く観察した人はいないだろう。

ちびりちびり独り祝い酒。
美空ひばりの「悲しい酒」を口ずさみたくなる。
眼の前のカマキリが、静止したまま私の顔をのぞき込んでいる。(続く)

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最終更新日  2007年10月03日 10時25分02秒
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