都会人は、スマート(sophisticated)で粋(いき)といえば、かっこいい(cool)という形容詞でくくれそうだ。 アメリカ人は cool という口語表現を「未来志向の」という意味で使うことがある。 ワンパターンもの(the same old stuff)を追っかけているレトロな人間を「ダサい」(uncool)と決めつける。
“格好をつける”あるいは“パフォーマンス(和製英語)”(英語ではいずれも put on an act)という関東人の見せかけ文化はこの「いなせ」(coolness)の延長にある。 「坂田三吉さん、お弟子さんが(関東のライバルの)かたきを、おとりんなった。嬉しいでしょう。これからは日本に、立派な棋風を打ち建てて下さい」と東京風の粋(いき)なセリフが浴びせられた。 その時、涙顔の三吉は、「棋風なんか、どうでもええ。わいは将棋を打ちたいんや・・・」とホンネを吐いた。
弟子にまで嫉妬していたのだ。
この種の弱さを見せるのは、関東では致命的である。 危険なまでに純粋な、ホンネの吐露であった。 こうなればcoolではなくhotだ。 Those were his sincere and hot tears.