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お父さん。私は、お父さんの娘でいることを、とてもよかったと思っています。でも、私は、本当はお父さんの骨の一部になりたかったのだと思います。お父さんは、お父さんの研究に一生分の価値を見出し、寝食を忘れて、没頭しています。お父さんから同じ気質を受け継いだ私も、他の何を犠牲にしても、何かに打ち込まなければならないのです。そうしなければ、頭の中ですべての情報がばらばらになり、砂になってしまうのです。お父さん、思考が砂になる苦しさを、お父さんはどうやって乗り越えてこられたのですか。お仕事を辞めても、お父さんは他に没頭することを見つけていくような気がします。お父さんは、とても忍耐強く、前向きで、美しい人だと思います。お父さん。30を過ぎて、私はまだ、専念したいことを見つけられていません。20代のときは、まだ成功していました。私は今の仕事が好きだと、自分に信じ込ませることで、思考が砂になることを食い止めてきました。でも今、私はコントロールを失いました。思考は拡散し、砂になってしまいました。朝会社に行き、パソコンを立ち上げ、その後、手を動かしてはみるものの、何一つとして物事をやり遂げることができないのです。ほかのことも探してみようとしたのです。自分を休めてみようともしたのです。でも、自分を誤魔化してみても、仕方がないのです。これ以上、砂の恐怖に、耐えることができません。要は、根性がないのです。思春期に太宰治なんか読み漁ったせいでしょうか。解りません。お父さん。私は、お父さんのように、価値ある仕事をしてみたかった。いっそ、お父さんの骨の一部になりたかった。
2007年05月29日
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