アウトドア~な温泉日記

囚われの娘(新かちかち山)



そしてそれが当然のことだと思っています。

豚や鶏は人間に食われるために生まれてきたわけではありません。


もしも自分達が食われる側になったら、

はたしてその運命を受け入れることはできるのでしょうか・・・


  第1章 囚われの娘

ある島に5000年生きた妖狐の夫婦が住んでいました、

狐は長く生きると霊力を持つと言います、2匹の狐は霊力を持ち人間よりもずっと賢く力も強く特殊な能力を持っていました。

雄の狐は「銀狐」、雌の狐は「玉藻」共に強い霊力を持った妖狐でした。

2匹は人間たちに農業や猟を教えました、人々は2匹を神の使いとして敬いました。

ある日2匹は重い病にかかり、永い眠りにつきました、そう500年ほど・・・


永い眠りから目覚めた2匹は驚きました、自分たちの神域に下等な人間たちが住み着いていたからです、

500年の月日が流れ人間達は妖狐のことを忘れ去り、伝説の生き物と思っていたのでした。

もともと人間よりもずっと優れた能力を持った妖狐ですから、すぐに人間達を駆除し小さな小山に追いやりました。

住む場所を奪われ、人間達は食べるものもなく飢えと寒さに震えていました。

妖狐達は捕まえた人間を使い田畑を作り、多くの作物を作り、豊かな恵みをもたらしていました。

人間達は飢えに耐えかね、若者達が代わる代わる妖狐の田畑に忍び込み、作物を盗んでは皆の飢えをしのいでいました。


その中にミミという娘がいました。

ある日、ミミが畑に忍び込み盗みを働いていると、銀狐に捕まってしまいました、

銀狐は怒り「神域を荒らす性悪な小娘は鍋にして食ってやる」

そう言ってミミの衣服を剥ぎ、丸裸にして檻にとじ込め妻の玉藻に鍋にするように言いつけると再び畑に戻って行きました、

玉藻は大きな鍋にたくさんの野菜を入れて煮込み、あとはミミの身体を切り刻み鍋に入れるばかりになりました。

ミミがもう命はないものと檻の隅で泣いていると、玉藻はぽつりと言いました。

「わらわはこんな痩せた小娘の肉など硬くて美味くないから嫌いじゃ、

  昔まだ人間達が悪さなどせず仲良く暮らしていたころに食った鳥鍋が食いたいものじゃ」

ミミは玉藻に懇願し、きっと美味しい鳥鍋をご馳走するからとなんとか檻から出してもらいました。

檻から出てホッとしたミミはなぜそんな酷いことをして人間など食べるのかと玉藻に尋ねます、すると玉藻は言いました、

「そなたたち人間だって自分達よりも劣っていると考えている鶏や豚や牛を食うではないか、

  人間よりも優れている我ら妖狐が人間を食って何が悪い」

ミミは怖くなって玉藻を殺してしまいます・・・


続く・・・

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