近代経済学の成立は、18世紀後半から19世紀初頭にかけての西洋での社会的・経済的変化に深く関連しています。特に、産業革命と資本主義経済の拡大が、その基盤を築きました。以下、いくつかの主要な要素
1. 古典派経済学の誕生
近代経済学の起源は、主にアダム・スミス(Adam Smith, 1723-1790)によって定義される「古典派経済学」にあります。彼の代表作『国富論(The Wealth of Nations)』(1776年)は、経済学を独立した学問分野として確立しました。スミスは、自らの利益を追求する個々人の行動が、全体として社会に利益をもたらす「見えざる手」の概念を提唱し、自由市場と競争の重要性を強調しました。
2. 自由市場と資本主義
スミスの理論を土台に、19世紀にはデイヴィッド・リカード(David Ricardo)やトマス・マルサス(Thomas Malthus)がさらなる貢献をしました。リカードは比較優位の法則を導入し、国際貿易の理論を発展させました。また、マルサスは人口増加と食糧供給の関係を論じ、経済成長の限界について警告を発しました。
これらの思想は、自由市場における競争の効率性を強調し、国家の干渉を最小限にする「レッセフェール」の経済政策を支持する理論的基盤を提供しました。
3. 産業革命の影響
18世紀末から19世紀にかけての産業革命は、経済学の発展に大きな影響を与えました。産業革命によって大量生産が可能になり、工業化が進んだことで、資本と労働の役割が変わり、都市部への人口集中が進みました。この経済の急激な変化が、労働者の生活環境の悪化や貧困問題を引き起こし、それに対処するための新たな経済理論が求められました。
4. マルクス主義経済学とその批判
19世紀後半になると、カール・マルクス(Karl Marx)は資本主義経済の矛盾を指摘し、労働価値説に基づく経済学を展開しました。彼は『資本論』(Das Kapital, 1867年)において、資本主義が労働者階級を搾取し、最終的に自壊する運命にあると論じました。マルクス主義は、労働者の権利と社会的平等を強調し、後の社会主義や共産主義運動に大きな影響を与えました。
5. 19世紀後半の限界効用理論
19世紀末になると、経済学はさらに数学的なアプローチを取り入れるようになりました。ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズ(William Stanley Jevons)、カール・メンガー(Carl Menger)、レオン・ワルラス(Léon Walras)らが導入した「限界効用理論」は、消費者の選好に基づいて価値を説明し、経済学のミクロ的な基盤を形成しました。この時期の理論は、現代経済学の多くの概念に影響を与えました。
近代経済学は、自由市場と資本主義の拡大、産業革命、さらにはマルクス主義や限界効用理論など、様々な要素が絡み合って成立しました。これらの理論は、現代の経済学の基礎を形成し、経済政策や市場分析の枠組みとして今もなお重要な役割を果たしています。
(4)経済学:貿易による比較優位 2024.11.25
(2)経済学の歴史と20世紀 2024.11.21
(1)経済学:古典経済学の成立・完成・展開 2024.11.21
PR
サイド自由欄