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'Big Sky Country'
The view looking west from the National Bison Range's Red Sleep Mountain drive
with the Flathead river in the distance.
Photo by Tom Lussier
images.jpeg




大藪作品『傭兵たちの挽歌』
U.S. GERBER Folding Sportsman II 用スキャバード製作企画
第七章「煉獄の戦士」Vol.08

  『(※ 前回 からのつづき)
   さらにロッキーに近づき、車道がどんづまりになるあたりで右手に入ると、シックス・ポイ
  ント・ハンティング・ランチの山岳使役馬(マウンテン・ホース)の囲い(コラル)があった。
   馬の脱走防止と灰色熊の襲撃防止を兼ねたコラルのなかには、耳が長い点をのぞけば馬とほ
  とんど変らぬラバ(ミュール)を含めて五十頭ほどの馬が入っていた。

   サラブレッドは、一六八九年から一七二四年にかけて英国に輸入された、いわゆる三大根幹
  種牡馬と呼ばれるアラブの種馬を、十七世紀中頃にチャールズ二世王によって輸入されて土着
  していたロイヤル種とも呼ばれるバーブ種の牝馬と掛け合わせて品種改良を続け、其の品種を
  固定させたものだ。
   だから、サラブレッドは、“一頭一頭についての先祖から記録が保存され、血統書に登録記載
  されている馬” であるが、もともとはアラブだ。
   北米の馬はほとんどすべてだが、かつて欧英から輸入されたものの子孫で、みんなアラブ系
  だ。二十世紀はじめ頃は、アラビアから直接アラブ馬が輸入されている。
  純競走用のサラブレッドをのぞく現在の北米の西部の馬は     、
   四分の一(クォーター)マイル・レースやロディオのバレル・レーシングに多く使われる敏捷

   最も優美なために客馬車用として使われていたが、牧場や山岳地帯での荒い仕事にも耐える
  モーガン・ホース・・・・・・。
   スペイン人によって北米に連れてこられ、ほとんど穀類を食わないでも草だけで生き、主人
  の気持ちをよく察するので、牧場で牛を捕える仕事に適している頑丈(がんじょう)なスパニッ
  シュ・バーブ・・・・・・。

   クォーター・ホースの亜種でツートン・カラーのペイント・ホース・・・・・・。
   やはりツートン・カラーで非常に要心深いピント・ホース・・・・・・。
   パレードやサーカスによく使われる金色の肌と白いタテガミとシッポのパルミーノ種と純白
  のアルビーノ・・・・・・。
   それに典型的なやつは体色が赤っぽい焦(こ)げ茶や胸に濃い筋が走り、ポインツ    タテ
  ガミと尾と脚    は、体色よりも暗い赤茶や黒い色を持ち、遠い祖先に北欧馬の血が混って
  いると推測されているせいか厳しい荒野に向いているバックスキン・ホース・・・・・・がいる。
   マウンテン・ホースは、それらの素質をのばしたり、掛け合わせで改良したりして、山岳地
  帯での荒い使役に耐えられるようにしたものだ。
   ラバ(ミュール)のほうは、牝馬(めすうま)と牡(おす)のロバ(ブーロー)の一代種だ。牝
  馬と牡ロバのあいだにはカイティという雑種も生れるが、そいつは力も生命力も弱いから淘汰
  (とうた)されてしまう。ラバもカイティも繁殖能力を持たない。
   ラバは耐久力を持っている。ひどい粗食にも耐え、馬とちがって容易にはパニックにおちい
  らないが、ケンカ早い上にずる賢(がしこ)いから、仲間やほかの馬を蹴(け)るだけでなく、
  人間がちょっとでも隙(すき)を見せると正確な蹴りをくれてくる性悪な奴が少なくない。
   それに、使役中にヘソを曲げてストライキを起すと、鞭(むち)でひっぱたこうが蹴とばそう
  が、テコでも動かないというロバ並みの頑固(がんこ)さを持っているから、素人(しろうと)に
  は扱いかねる。
   コラルの近くに簡易トイレと、車輪を外して角材の上に置いた廃車のパネル型トレーラーが
  四台置かれてあった。
   そのなかの三台には、なじみの客から預かっているものも含めた鞍(くら)などの馬具やラ
  イフル・スキャバードなど、それにキャンピングの道具(ギア)などが入っているのを片山は
  知っている。
   もう一台のトレーラーのなかには、雪が深すぎてランチから四輪駆動のトラックを使っても
  乾し草や燕麦(カラスムギ)などの飼料を運べない時にそなえて、緊急用の飼料がストックさ
  れている筈だ。
   シーズン・オフにはコラルのなかの山岳馬は放牧されるが、猟期中は、客やガイドがいつで
  も使えるようにコラルのなかに閉じこめておき、ランチから毎朝馬の扱い人(ラングラー)が
  トラックに飼料を積んでやってくるのだ。車が使えぬ深い雪の時は、ラングラーは馬でやって
  きて、廃車トレーラーのなかにストックしてある飼料をコラルのなかの馬に与える。
   五十頭もコラルに囲っているのは、二人一組のハンターの場合、その二人のために二頭の馬
  のほかに、ガイドとコックとラングラーのために三頭、それに荷運びに四、五頭と、一組のハ
  ンターのために十頭ほどのパック・ホースが必要となるからだ。一時期に一頭だけの客しかと
  らないのでは商売にならぬから、猟期中は傭っているガイドをフルに回転させる。フル・タイ
  ムのハンティング・ガイドは主人と息子たちだけで、あとのガイドはシーズン中にだけ傭われ
  るパート・タイマーだ。
   片山は明日の朝、カイバを馬に与えたラングラーがランチに向けて去ったら、馬を数頭失敬
  する積りだ。そいつらがくたびれたら、放牧されているほかの持主の馬を盗めばいい。
   すでにあたりは暗くなっていたが、車から降りた片山は、凍(こご)える指を揉(も)み、
  針金で廃車トレーラー四台のテール・ゲートのロックを南京錠(ナンキンじょう)を解き、荷
  室のなかに望みの品が入っているのを確かめた。テール・ゲートを閉じ、南京錠を掛ける。
   問題はいま使っているダットサン・ピックアップをどう処理するかだが、これは金持ちの医
  者のハンターの別荘ロッジとエア・スリップとのあいだの道から一マイルほどそれたところに
  ある沼に沈めることにする。
   車に乗った片山は、いま来た悪路をバックし、別荘ロッジの庭に車を停めた。針金でロッジ
  の玄関のドアを開き、屋内に入る。真っ暗だ。カーテンが閉じられているのでマロリーの懐中
  電灯を使う。
   入ったところが和室に直せば四十畳ぐらいの広さで、右側がキッチンと食堂、左側が、プロ
  パン・ガスと薪(まき)の併用の大きな暖炉がある居間兼応接室だ。射ちとめた獲物の剥製(は
  くせい)が壁やわざと剥(む)きだしにした梁(はり)に掛けられている。壁に貼(は)りつ
  けられたグリズリーや黒熊の頭と爪(つめ)付きの毛皮だけでも十枚はあった。サンダースと
  いうここの持主の医者には息子が四人いて、彼等もハンティングが大好きなのだ。壁にはさま
  ざまなナイフのコレクションが吊(つ)るされていた。
   片山は奥に三つある寝室の一つの戸棚(とだな)のなかに三個のキャンヴァス・バッグを仕
  舞った。
   念のためにウージー短機関銃を持って表に出る。玄関のドアの錠を針金を使ってロックす
  る。




IMFDB.org - Uzi
http://www.imfdb.org/wiki/Uzi






Youtube -
Uzi by Vickers Tactical
https://www.youtube.com/watch?v=mkP3SHO8s5Y








   沼に車を沈めた片山は別荘ロッジに向けて戻った。寒風が吹きすさびはじめていた。ミゾレ
  も混る。近づくと、窓のカーテンの隙間(すきま)からコールマンのガソリン・ランターンの
  明るい灯が漏れている。舌打ちしたい気持ちでさらに近づくと、庭にシヴォレー・ブレイザー
  ・シャイアンの四輪駆動のワゴンが駐(と)まっているのが見えた。
   左肩にウージー短機関銃のスリングを引っ掛けた片山は足音を殺してロッジに忍び寄った。
  若い女の悲鳴が漏れてきた。男の罵声(ばせい)も聞える。
   片山は台所側の脇戸(わきど)のロックを針金で解いた。脇戸を左手でそっと細めに開く。
   ガスの炎の上のグリルでさらに薪が燃えている暖炉が脇の壁に、ナイフを両手に握った娘が
  追いつめられていた。
   インディアンの娘であった。白人の血が四分の一混っている感じだが、顔も体も野性的で
  あった。(中略)真っ黒な目が怒りに燃えている。
   娘の三メーターほど前に、片山に背を向けて、がっしりした三十男が娘に拳銃を向けてい
  た。
  「いい加減に諦(あきら)めるんだな。ショショーニー・インディアンのくせに、インディア
  ン保護官の俺(おれ)に楯(たて)つくとはな。さあ、ナイフを捨てろ。おとなしく俺に抱かれた
  ら、不妊手術を受けないで済むようにしてやるし、不法集会の解散を命じた保安官のグレッグ
  を物陰(ものかげ)から狙撃(そげき)して重傷を負わせたのはお前だということを、ずっと黙っ
  といてやる。俺はお前がグレッグを射つところをひそかに見たんだが黙っててやったんだ。な
  あ、エレーン、俺の子種を授けてやろうと言ってるんだぜ。ナイフを捨てて、有難く股を開け
  よ。そうでないと、お前を射ち殺してからでも突っこむぜ」
   男は野卑な笑い声をたて、片足を踏み出した。酔った声からして、サンダース家の次男のジ
  ムだ。
  「寄らないで!    」
   切れ長の目を吊り上げた娘は金切声をあげ、
  「あんたが奥さんも子供もありながら、白人娘と浮気してることは誰(だれ)でも知ってるわ。
  どうしてインディアンのわたしを、こんなにしつこく追いまわすの? 今夜だって、いきなり
  手錠を掛けて、こんなところに連れてきて!」
   と、ナイフを構え直す。
  「インディアン解放運動なんかに血道をあげやがって、俺がせっかく甘い言葉を掛けてやって
  も、虫けらでも見るような目で見返しやがるからだ。白人様の強さを見せてやる。どうだ、お
  前のボーイ・フレンドの薄汚いインディアンたちのと俺のと、どっちが立派か?」
   ジムはズボンのジッパーを降ろし、怒張したものを剥き出しにしたようだ。
  「何よ、カマンベール・チーズのようなフニャマラ」
   娘は怯(おび)えの表情を見せながら冷たく言い放った。
  「この牝犬(ビッチ)、殺してやる!」
   ジムは拳銃の撃鉄を親指で起した。
   片山は大きく脇戸を開いた。安全装置を外していたウージー短機関銃を素早く肩付けし、
  「よせよ、ジム」
   と、声を掛けた。ウージーに使用している九ミリ・ルーガー拳銃弾の発射音は、強風の音に
  まぎれてエア・ストリップの番人のキャビンにまでとどかないだろう。
  「誰だ!」
   金髪の鬼のような形相をしたジムは体ごと片山に振り向こうとした。その時、すでに片山を
  見ていた娘が、ジムの左の背中にナイフを突き刺した。
   怒声をあげたジムは、再び娘に拳銃を向けようとした。片山のウージーが軽い銃声をたて、
  頸(くび)の骨を射ち砕かれたジムはロッジの床を揺るがせて倒れると、死の痙攣(けいれん)を
  はじめる。
   娘は、空薬莢をポケットに収めた片山に向けて、ショショーニー・インディアン語らしい言
  葉で叫びながら走り寄ってきた。左のうしろ手で脇戸を閉じ、右手でウージーに安全装置を掛
  けた片山の胸に頬(ほお)を押し当て、抱きついて啜(すす)り泣く。
   娘の黒髪はレモンの匂(にお)いがした。体からはメロンのように甘い匂いがする。左手で軽
  く娘の背中をさすりながら落ち着かせようとする片山は、不覚にも股間が暴発しそうになる。
   やがて落ち着いてきた娘は、食堂の椅子(いす)に崩(くず)れるように坐りこむと、
  「あなたの部族は? わたし、ショショーニー」
   と英語で尋ねた。
  「俺の血の半分は日本人。アジアから大昔は陸だったベーリング海峡を渡って北米大陸に渡っ
  てきたキャナダやアメリカのインディアンとは親戚(しんせき)のようなものだ。俺の名はケ
  ン・カタヤマ。ケンと呼んでくれ。君は?」
  「エレーン・ブライトン・・・・・・ブライトンなんて白人が勝手につけた苗字よ・・・・・・わたし、人
  を殺してしまった」
  「俺も一緒になって殺したんだ。正当防衛だよ、エレーン」
   パンツの窮屈さを覚えながら片山は言った。エレーンの泣き腫(は)らした瞼(まぶた)が
  何とも色っぽい。
  「保安官は信じようとしないわ。仲間を殺された内務省インディアン局の連中とグルになっ
  て、わたしを縛り首にしようとする。あなたも野獣のように狩りたてられるわ。
   逃げましょう、一緒に! 行先はキャナダがいいわ。ブリティッシュ・コロンビアのビー
  ヴァー・インディアンのレッド・ウルフの一族二百人が保護地区(リザーヴ)を出て、ムスク
  ワ・リヴァー上流の原生林を本拠にし、ビーヴァーやムースやキャリブーや鱒(ます)をとって
  昔ながらの生活をはじめているの。それは勿論(もちろん)、必要な時には銃も車も軽飛行機も
  使うけど・・・・・・あそこには、国際集会で知りあった友達が何人かいるの。きっと、かくまって
  くれるわ。あなたのことも」
   片山は、エレーンの瞳(ひとみ)を見つめていた。
   北米大陸の大部分のインディアンは先祖代々からの土地を奪われ、政府が指定した保留地に
  住まわされている。保留地は居留地とも保護地区とも呼ばれ、合衆国ではリザーヴェーショ
  ン、キャナダではリザーヴと呼ばれる。
   そこに住んでいるかぎり家賃も税金も取られず、最低生活はインディアン局が保障してくれ
  るが、収容所に似たものだ。保留地を出て外に移ってもいいが、下層労働者としての職にしか
  つけないことがほとんどだ。無論、その場合、税金や家賃などの免除の特典は無くなる・・・・・・
  と聞いたことがある。
  「あなたも、サブ・マシーン・ガンを持っているところを見ると、何か特別な事情がありそう
  ね。ねえ、一緒に逃げて・・・・・・お願い・・・・・・でも、わたしが一緒だと足手まといになると思っ
  ているのね?」
  「・・・・・・・・・・」
  「その心配は無用だわ。わたし、小さい頃からロッキーの山の生活に慣れているの。春にはエ
  ルクが移動したあとをたどって落角を拾い集めてブローカーに売る仕事をしているのよ。キャ
  ナダの国境を越えることもしばしばだわ。落角の付け根はウェスターン・ベルトのバックルに
  なるし、角は粉にしてホンコンの人が回春剤に使うので、いいお金でブローカーが買い取って
  くれるの。一シーズンで千ポンドも山からかつぎ降ろすこともあるわ・・・・・・それに、わたし、
  どんな木や草が食べられて、どれが毒なのかも知っている。薬草も知っているわ。勿論、罠
  (わな)も弓矢も銃もナイフも一人前に扱えるし、放牧の馬を捕まえるスピードだって男に負
  けないわ」
  「分った。俺もブリティッシュ・コロンビア州に用があるんだ。それに、君が見抜いた通り、
  俺はある敵を追っている。今はくわしくは言えないがな・・・・・・だけど、俺のほうも追われてい
  る。敵の組織は巨大だから、まともなルートでキャナダに入ることは出来ない」
  「じゃあ、わたしたちの利益は一致するというわけね」
  「そういうことのようだな」
  「白人がわたしたちインディアンを虐殺し、土地と食料のバイソンを奪って現在の合衆国を
  作ったことは、いまさらあなたに説明する必要はないでしょうね。インディアンのどうしよう
  もない酔っ払いを見てたら、インディアンを偏見の目で見るようになるのも無理ないでしょう
  けど。もともとこの大陸はわたしたちインディアンのものだった。
   白人政府は、わたしたちから散々に絞り取ったのにまだあきたらずに、インディアン皆殺し
  計画を実行しているの」
  「本当か?」
  「六〇年から七〇年にかけて全米のインディアンの人口は五十万人台から八十万人近くに確か
  に増えたわ。でも、その原因の一つは白人の男にインディアン娘が騙(だま)されて私生児が
  増えたからよ。
   インディアンの人口増に恐怖を感じた政府は、強制的にインディアン女性に不妊手術を行い
  はじめたの。娘たちがちょっとした病気で保留地の病院に行くと、麻酔をかけて犯してから不
  妊手術をしてしまうんですから、犬猫よりひどい扱いね。七一年から今までに四十パーセント
  近くが無理やりに不妊手術をされてるの、学校では伝統的なインディアン語は禁止されている
  わ。
   そんなところにもってきて、今度は十一もの反インディアン法案が連邦議会に提出された
  の。それは、ウランをはじめとする地下資源の大半がインディアン保留地にあるのを白人の手
  に取上げ、日本のミナマータのチッソのような大企業が自由に保留地に進出できるように、こ
  れまで政府とインディアンとのあいだに交わされていたいっさいの協定を破棄して無効にし、
  保留地内でインディアンに認められていた狩猟や漁撈や小屋を建てる権利などをほとんど取上
  げ、特に公害の影響がすぐに露(あら)われる川ジャケの漁獲や販売は全面禁止にしようとい
  う無茶苦茶なものなの。それに、保留地でのインディアンの行政管理権も大幅に制限して、公
  害企業の言うがままの白人のインディアン局員に、工場建設や採鉱の許可権を与えようとして
  いるわ。
   わたしたちインディアンの有志は、来年の二月にも、ロスから首都ワシントンDCに向けて
  二千八百マイルを徒歩で抗議のデモ行進 “ザ・ロングェスト・ウォーク” を計画しているの。
  来年のデモには、キャナダのインディアンにも参加を呼びかけるわ」
   エレーンは熱く語った。
  「分った。その話はあとでゆっくり聞かせてもらおう。今はともかく、ジムの死体と血と車を
  片付けてから暖炉の火と灯(あかり)を消すんだ。灯がついていると、誰かやってくる怖(お
  そ)れがある。明日は、シックス・ポイント・ランチの馬を無断拝借して出発だ」
   片山は言った。
   寝室の一つの戸棚を開き、隠してあった自分の荷物に手がつけられてないことを確かめる。
   ジムのS・W三十八口径スペッシャルのリヴォルヴァーは、ホスルターと弾薬サックと共に
  エレーンに渡す。
   エレーンは片山に背を向け、ジーパンのベルトを一度外してから、リヴォルヴァーを収めた
  ホスルターと弾薬サックに通し、
  「ジムを知ってるの?」
   と、尋ねた。
  「ああ、ちょっとな。それより、寝室の奥の部屋に、サンダース一家の猟用の服や用具を仕
  舞ってある戸棚がある。好きなものを択(えら)んどいてくれ。君にはちょっとブカブカすぎ
  るかも知らんが、末っ子の “スキニー・ジョー”のならぴったりかもな」
   片山は言った。
   台所の床の上げ蓋(ぶた)を開いて、地下の工作室にジムの死体を隠す。ナイフを抜き、血
  と指紋を拭(ぬぐ)って暖炉の近くに吊るされている鞘(さや)に収める。落ちていた手錠は
  自分のベルトに吊るす。
   エレーンは床の血を拭ったボロ布と、破られたブラウスを暖炉で焼いていた。(中略)
   片山は今は吹雪となった屋外に出て、ジムのシヴォレー・ブレイザーを木造のガレージに仕
  舞う。
   ロッジにも戻ると、エレーンは寝室の奥の部屋に行っていた。(中略)
   その夜、片山が択んだ寝室にエレーンも入った。左右のベッドに分れて横になる。寒さに強
  いらしいエレーンが素っ裸でもぐるこむのがぼんやりと見える。片山の目は夜目が利(き)く点
  では狼(おおかみ)並みだ。
   闇のなかで、エレーンは囁(ささや)くような声でアメリカ・インディアンの悲史と悲惨な
  現状を語った。 』

 (つづく)




大藪春彦 著『孤高の狙撃手』(エッセイ集)
光文社文庫
 2004/6/20







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Last updated  2021年03月14日 19時37分54秒


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