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2016年01月27日
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カテゴリ: 羅刹
 能季と斉子女王が小一条院を出たのは、暑い昼下がりの頃だった。

 だが、今はだんだん日が翳(かげ)ってきたのか、それとも池や沼の多い西の京を吹く風はやはり少し冷たいのか、この小八条第はいくらかひんやりとして過ごしやすい。

 いや、ひんやりというよりは、どこかじめじめとした陰鬱さがあるというべきか。

 能季はいつの間にか自分の額から汗が引いているのに気づいた。

 御簾の降ろされた東の対の母屋は、何ともいえない冷たく禍々(まがまが)しい翳りがある。

 豪華な調度類に満たされた部屋の片隅の暗がりに、じっとりとしたものが蹲(うずくま)りながらこちらをじっと窺(うかが)っている、そんな感じがした。

 斉子女王の方も、そのような小八条第の異様さに、やはり気づいているようだった。白い額が少し青ざめ、不安げな眼差しで俯(うつむ)いている。

 だが、そうやって節目がちになると、長い睫(まつげ)が頬にかかるようで、なおさら可憐で愛らしい。

 能季はそんな斉子女王の横顔に見とれながら、気遣うように話し掛けた。



「いいえ」

 そう言うと、斉子女王はまた俯いたまま黙ってしまった。

 それ以上掛ける言葉も見つからず、能季の方も着慣れない袈裟の端を引っ張りながら所在無くうろたえるだけだった。

 無言のうちに長い時が流れる。

 能季は固まったように斉子女王の傍らに腰を降ろしたまま、時折ちらりちらりと女王の横顔に目を走らせることしかできなかった。


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最終更新日  2016年01月27日 11時33分21秒
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