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2016年06月16日
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カテゴリ: 羅刹
 帝の側に控える頼通と師実から少し離れた席には、能季の父である頼宗の顔もあるはずだ。

 得意の篳篥(ひちりき)か琵琶でも、膝の上に乗せているだろうか。

 本来なら能季も、今宵の管弦の宴には父の傍らで竜笛を吹く予定だった。

 だが、能季はどうしてもその気になれなかった。

 長い間心労に苛(さいな)まれてきたせいか。

 それとも何か別のことか。

 師実の命を取り戻したあの夜から、何か憑(つ)き物でも落ちたかのように、能季は何をする気もおきなくなった。

 それで、はかばかしく宮中へ出仕することもなく、堀河殿の自分の部屋に引き篭っていたのである。

 今宵の観月の宴も、物忌みだ何だと理由をつけて断った。



 仕方あるまいと笑って、父は一人で出かけて行った。

 能季にそれ以上何も言わず、責めもせずに。


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最終更新日  2016年06月16日 14時26分38秒
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