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関川夏央アンソロジー
仕事で韓国に渡る機会が多かった大使であるが・・・
韓国と司馬遼太郎に精通した評論家とも言える関川夏央が気になるのです。
また、歳もちかく団塊世代同士というのも親近感がわく次第です。
関川さんの書籍、評論などを集めてみました。
・蔵書録より
・知識的大衆諸君、これもマンガだ
・やむにやまれず
・司馬遼太郎がわかる
・品格なくして地域なし
<蔵書録より>
我が蔵書録から関川さんの本を集めてみました。
・ソウルの練習問題
・司馬遼太郎の「かたち」
・昭和時代回想
【ソウルの練習問題】
関川夏央著、情報センター出版局、1984年刊
<内容説明より>
屹立する高層ビル群を背景に、広い高速道路をマラソンランナーが駆け抜ける―ソウル五輪は現代韓国の一面を鮮やかに伝えてくれた。しかし韓国で暮らす人々について、我々は何を知っているだろう?ハングルの迷路を旅して、出会う人々と語り合い、彼らの温もりと厳しさを拾い集めた瑞々しいルポルタージュ。韓国社会のフィールドワークとして一時代を画した名著
<大使寸評>
父の本棚にあったので読んだ本であるが、韓流ブーム以前の韓国を見る著者の目は異文化を透視しています。
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ソウルの練習問題
【司馬遼太郎の「かたち」】
関川夏央著、文藝春秋、2003年刊
<「BOOK」データベース>より
国民的作家・司馬遼太郎が晩年の十年間、その全精力を傾注し「文芸春秋」に書き続けた「この国のかたち」。さまざまな問題を提起したこの連載の原稿には、必ず編集長宛の手紙が添えられていた。それら未発表の書簡をはじめ、関係者の証言、膨大な資料の検証を通じて浮かび上がる、その痛烈な姿と「憂国」の動機。
<大使寸評>
司馬遼に関しては最強の評論家と言える著者が、「この国のかたち」を説いています。
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司馬遼太郎の「かたち」
【昭和時代回想】
関川夏央著、集英社、2002年刊
<「BOOK」データベース>より
かつて、この国には「昭和」という時代があった。そして「戦後」や「高度成長」という風景も。敗戦後の発展途上国から自意識に悩む中進国、そして虚栄に踊る先進国へとつき進んだ数十年間。いま日本に生きるわれわれの大多数が生まれ育ってきた、あの長い昭和時代とは果たして何だったのか。希代の名文家が、過ぎ去った忘れ得ぬものたちへのほろ苦い思いを込めて描き出す珠玉のエッセイ集。
<大使寸評>
大使が生まれ育ち、仕事に明け暮れた「昭和」という時代があり・・・・それが歴史になりつつある昨今ですね。
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昭和時代回想
<知識的大衆諸君、これもマンガだ>
AKB48と韓国ボーカルグループとの違いがよくわかっていない大使であるが、それだけ若い子の歌に関心がないのである。(遅れてるで)
それと同じように、大量に現れる最近のマンガにも関心が薄いのだが・・・・
関川夏生氏が20年ほど前に、「知識的大衆諸君、これもマンガだ」とぶち上げていたので、拝聴した次第です。
この本は、マンガをにくむ人を読者として想定しているそうです。
【知識的大衆諸君、これもマンガだ】
関川夏生著、文芸春秋、1991年刊(単行)1996年刊(文庫)、12年2/10読破
<「はじめに」より>
マンガの敏感さは、流行に弱いとも、ある年代層の関心を強く投影するともいいかえることができる。読者はその年代によってマンガを選ぶのだが、読者もまたマンガによって選別されている。陸続と発芽する骨細胞のように新しいマンガ作家と新しい読者は誕生しつづける。しかしそれらのマンガを、先行する読者は理解できないことがある。新しいマンガはしばしば既成の読者を拒否するのである。すなわちマンガ作家たちは、彼らの作品の読者とともに成長し、読者によって成熟し、そして読者としめしあわせて老化していく傾向があるのだ。そして、そのような限界を超えた作家と作品は、巨匠であり古典である。
<目次>
「女こども」がこわい 内田春菊『南くんの恋人』
スナドリネコの人生 いがらしみきお『ぼのぼの』
経済マンガってなんなの? 石ノ森章太郎『マンガ日本経済入門』
努力する「破滅型」 柳沢きみお『男の自画像』
「レトロ」にあらず 岡本蛍・刀根夕子『おもひでぽろぽろ』
帰りたい風景 宮崎駿『となりのトトロ』
日本人とはなにものか 手塚治虫『グリンゴ』
手塚のほかに神はなし―追悼手塚治虫
回顧的空気の今日性 さくらももこ『ちびまる子ちゃん』
「男らしさ」「女らしさ」への忌避 上村一夫『関東平野』
会社とはそんなにつらいところか 弘兼憲史『課長島耕作』
自己嫌悪の日本 かわぐちかいじ『沈黙の艦隊』〔ほか〕
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知識的大衆諸君、これもマンガだ
<やむにやまれず>
返却期限が過ぎたので、大学図書館から督促の電話がかかってきたのです。
・・・で、今日返すのだが、まだ読んでいないのだ。・・・でも、また借ればいいのかも♪
【やむにやまれず】
関川夏央著、講談社、2001年刊
<出版社からの内容紹介>
まことに残念なことではあるが、ネコにだって過去はある。人間にだって記憶はある。
人生の秋?をつぶやく18の物語
「中年シングル生活」その後の好エッセイ!
40歳にして惑わずどころか50歳にして日々はますます混乱する。大人のせつなさを虚実ないまぜに描いた司馬遼太郎賞作家の最新エッセイ。マンガ/いしいひさいち
<大使寸評>
いしいひさいち氏のマンガとコラボした、見て読んで楽しい・・・・言ってみれば、一粒で二度美味しいエッセイです・・・・というのは冗談で、関川夏央のエッセイがわりと好きなんです。
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やむにやまれず
関川夏央は、谷口ジローのマンガの原作を書いたり、とかく、マンガに造詣の深い作家であるが・・・・
へそ曲がりのいしいひさいち氏と波長があうようですね♪
大使も、かなりへそが曲がっているので、いしいひさいち氏のファンでおます。
<司馬遼太郎がわかる>
「司馬遼太郎がわかる(AERA Mook)」のなかで関川が韓国について述べています。
<韓国>p46~47
司馬遼太郎の住まいは長らく在日コリアンが多く居住する東大阪の布施にあったし、朝鮮史研究者のカン在彦や作家の金達寿とも親交があり、コリアンをよく知っているつもりであった。だが後年、中年期に至って志を立て韓国に留学して朝鮮を学んだ田中明に指摘されたごとく、彼が知っていたのはコリアンではなく、在日コリアンであった。司馬遼太郎はコリアの意外な原型、突き固められた文化の固い核心に触れた思いがして、しばし愕然としたのだった。
司馬遼太郎は書いた。
<武士(日本人の原型体質といっていい)という競争の原理の権化がつくった日本歴史および日本国家というものは、社会の固定をむしろのぞむアジアの諸民族(中国とインドをその代表とする)にとってじつに荷厄介で奇妙で、さらにあえて言いきってしまうと、それそのものがアジア的規模での公害として存在しつづけた>
しかしこれはたんなる「反省」の弁ではなかった。バブル経済が始まるまでは、日本の「戦後」を「近代の達成」と高く評価しつづけた司馬遼太郎は、たしかに「戦後」の主潮流であった「反省」をも尊重したが、同時に遠慮深く、かつ注意深くではあるにしろ、コリア的エトスに批評的に言及した。それは、李氏朝鮮の五百年が厚く積みあげた朱子学と朱子家礼の思想、たとえば官位と儒格のどちらが上位にあるかを一族をあげて数10年議論しつづけるような、また「正義の自己目的化」になずむ思想風土であった。「反日」もまたそこでは、それ自体が目的化され、ひたすら破邪顕正の「声討」となりがちであった。
(中略)
司馬遼太郎は、修学旅行で日本に来た中学生に韓国人の先生が、広隆寺の弥勒半跏思惟像を「これも日本が韓国から略奪してきた」と説明したことを聞き、悲しんだ。
それを伝えた日本の新聞は韓国の中学生に対して好意的な書きかたをしていたが、司馬遼太郎は、実証をまったく怠る精神のありよう、「観念」の停滞的肥大に衝撃を受けたのだった。
<品格なくして地域なし>
「品格なくして地域なし」という本を共同執筆していました。
【品格なくして地域なし】
関川夏央、森まゆみ、他著、晶文社、1996年刊
<「BOOK」データベース>より
道路、テーマパーク、劇場の建設…ハード優先の「町づくり」ブームは終わった。5人の論者が「品格ある地域」をもとめて、日本各地を遍歴した。中央にたよらない商業活動がある。豊かな自然と美味しいものがある。楽しくかつ命がけで働く人びとがいる。その地方にしかできないことを実践している。…これからの「町づくり」への具体的なヒントにあふれた、地域文化旅日記。
<大使寸評>
5人の著者のなかに、関川夏央さん、森まゆみさんの名前をみつけたので、借りた本ですが・・・・誰も借りた形跡がありません。つまり、この図書館では私が初めてめくるわけです。
この本に米子の
本の学校
が出ていたけど、地方もなかなかやるもんだ♪
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品格なくして地域なし
この本から関川さんのコメントを紹介します。
<あとがきにかえて>より:p278~281
日下公人さんは、近年なぜか全国至るところに族生したテーマパークでも、必ず縄文期からはじまる解説つきの博物館でも、地域文化が画一的でオリジナリティに欠けがちなのは、「地方交付金」という制度のほかにも原因がある、それは自治体をはじめとする地方人が「文化を求めておらず、中央から降り返ってもらいたいとか、つまり格付けだけを求めているからだ」と、最初から最後まで、手きびしい見方をかえなかった。
その背景には「文化は自己満足」であり、「自己満足である限り評価は求めないはずだ」という厳として考えがあり、そして、「信念を持った自己満足」なら、「いつか評価されるときがくるかも知れない」が、それをあてこむのはプライドのないことの立証にほかならない、と言う。
「日本人はカラオケに"自己満足"していたから世界がついてきたんで、"聞いてくれ"といったことは絶対ない。カラオケなんて国辱だと思っていたが、夜になると歌わずにはいられないから、ニューヨークでもパリでもロンドンでも集まって歌っていた。そうしているうちにカラオケは日本文化として世界に広まった」
自治体の役人と地方文化・伝統文化の関係については、パプア・ニューギニアへ行ったとき案内してくれた政府の女性課長の例を日下さんはあげた。彼女はシドニー大学を出た25,6歳の美人で、そのきれいな英語の説明もなかなか知的だったが、翌日のお昼は、ポートモレスビー市長の家で食事をし、現地の踊りを見せてくれた。
「腰蓑をつけて、女性は全部オッパイを出しいて踊っている。その中に、なんだか見たことがあるような人がいるなと思ったら、その女性課長なんですよ。みんな"アッ、あの人だ"と」
これこそが「地方の威厳のある文化」で、また「威厳ある文化人の姿」だと日下さんはいうのである。さらに、「日本の田舎にそれだけ腹のすわった人がいるか」ともいうのである。
研究会のはじまる前、「ほめる方は5ページで済むが、けなすのは3冊分くらい必要だ」と語った日下さんだが、北海道網走の博物館・網走監獄、旭川の優佳良織工芸館、佐渡・小木町の小木民俗博物館をていねいな筆致でほめた。いずれも日下さんのいうところの「自己」あるいは個人の「強い思い」のこもっているものである。
そして、これらをほめるということは、ひるがえってなにをほめていないか、なにをほめたくないかがわかるように日下さんは書いている。彼は最後までへそ曲がりなのである。
この2年間、日本列島をめぐり歩いて得た感想は、まず日本は広いということである。面積も決して狭くはないのだが、それより自然の多様多彩さに感じ入った。明治初年に日本の「奥地」を歩いた英国の旅行家イサベラ・バードとおなじく、日本は山と森と、それから水の国だと思い知った。それらはみな複雑で、恐ろしいほど変化に富んだ表情をしていた。
しかるに人工物はみな一様なのである。ことに近年増えた自治体自慢の文化施設のモダンな相貌は不思議なほどみな似たりよったりで、まさに前衛という名の月並みといわざるを得ない。
文化を生むことのない文化施設は、おそらく地方文化バブルが経済バブルに10年遅れではじけるとき、遺跡となって建ち並んでいることだろう。ゼネコンと有名建築家と地方の役人、それからそこにかって「文化的催時」を仲介した広告代理店がつくり出し、置き去りにした遺跡である。
しかし、それでも日下さんのいうところの「自己満足」を頑固に守り、津野さんいうところの「素人芸」を発揮しつつ、奥本さんいうところの「自然と無理しない共棲」をはかろうとする、森さんが描いたような「キーパーソン」は、地方にたくましく生きつづけるだろうという期待は持てるし、また持ちたいのである。
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