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「和紙スタジオかみこや」の紹介「和紙スタジオかみこや」という手漉き和紙工房のサイトに巡り当たったので紹介します。・・・和紙が私のツボであること、この工房の場所が私の出身県であること、という繋がりなんですが♪*********************************************************はじめまして、和紙スタジオかみこやですよりかみこやは高知県の山奥にある小さい手漉き和紙工房です。自然とアートが好きな方にはきっと感動して頂ける紙と体験をご用意しています。 ■かみこやの仕事私たちの主な仕事は下の2つ。・自家栽培の原料を使った美術用紙やインテリア・内装用紙の製造販売・1日1組限定のワークショップと宿泊紙作りは江戸時代末期の化学薬品や機械を使わない製法を基本にしています。理由の一つは「人と自然が共生する社会に貢献する」という私たちの理念を実現するため。それから何より「人の手と自然の力だけで作った紙が、一番美しくてメッセージがこもっている」と、かみこやのオーナー、ロギール・アウテンボーガルトが考えているからです。ロギール・アウテンボーガルト■和紙との出会いロギールが和紙に出会ったのは、母国オランダのアムステルダムで製本の仕事をしている時でした。光を透かすと紙の中に繊維が見えるその自然な美しさに、一度で心を奪われたのです。それから間もなくシベリア鉄道とフェリーを乗り継いで、1980年に来日。全国の手漉き和紙の産地を見学して翌年、手漉き和紙の「原料」「道具」「技術」が揃っている土佐和紙・高知県に工房を構えました。その後のロギールの良い紙を求める姿勢は評価されて、2007年に高知県から「土佐の匠」認定して頂きました。また、何度も一緒に仕事をしている建築家・隈研吾氏は、著書の中でロギールとの初対面を以下のように表現してくれています。狭い山道を登っていくと、古いボロボロの民家があって、そこでロギールが作業をしていた。捨てられた廃屋を見付けて住み込んだけれど、電気が来てないんだよという話だった。あんな真っ暗な中で、よく作業をしたり、暮らしたりできるものだと感心してしまった。隈研吾(2020)「ひとの住処 1964-2020」新潮新書■里山全部を体験するかみこやでは単に紙漉きの技術を体験してもらったり、作品を作ってもらいたいだけではありません。原料の畑に囲まれた集落に到着して、山の空気を吸い、自分の手で紙を漉く。夜は星空を見上げながら大切な人との時間を過ごし、和紙に囲まれた寝室で寝る。
2024.06.17
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神戸市民でもあった陳舜臣さんには親しみを持っていたのだが、陳さんが説く中華の歴史をもう一度見たいではないか♪・・・ということで、『東眺西望』という本を読み直してみようと思い立ったのです。*********************************************************図書館で『東眺西望』という歴史エッセイ集を、手にしたのです。陳舜臣さんというフィルターを通すと、中華の歴史に親しみが湧くので不思議なものです♪【東眺西望】陳舜臣著、たちばな出版、2006年刊<「BOOK」データベース>より「世界の歴史」を俯瞰する。困難があり危機を感じると、人は歴史をふりかえる。古今東西の果てしない人間の歩みを地球的スケールで考え、世界を念頭において考察する。人間の未来への英知をめぐる好歴史エッセイ。<読む前の大使寸評>陳舜臣さんというフィルターを通すと、中華の歴史に親しみが湧くので不思議なものです♪rakuten東眺西望イスラム教に関する薀蓄を、見てみましょう。p114~117 ササン王朝と東ローマ帝国は、ながいあいだ抗争をくり返し、おたがいに力をそそぎ合っていた。この状況は、新興のイスラムに「漁夫の利」をもたらし、ゾロアスター教国であったイランは、たちまちイスラム帝国に制圧されたのである。 誇り高い文明国イランの側からみれば、狂信の野蛮の徒の力に屈したっことになる。アーリア人種であるイラン人は、セム人種の宗教をうけいれざるをえなくなった。それにはもちろん抵抗があったにちがいない。またイスラムをうけいれるについても、そっくりそのままというわけにはいかなかった。<スンニー派とシーア派> 現在のイスラッム世界ではスンニー(スンナ)派が主流である。「シーア」ということばが、そもそも「党派」を意味して、分派というニュアンスが濃い。ただし、イランにかんするかぎり、シーア派が圧倒的に多い。 スンニーとかシーアとかいっても、教義の根本に大きなちがいがあるわけではない。マホメットの後継者である「カリフ」の正統性をめぐっての対立である。 マホメットの死後、彼の妻の父アブー・バクルが初代カリフに選ばれ、2年在職して死んだ。そのあと選ばれたウマルは暗殺され、三代目のウスマーンも刺客の手にたおれ、マホメットの娘ファーティマの夫であるアリーが四代目のカリフとなった。アリーもまたムハーウィアと対立し、最後に暗殺されてしまう。(中略)<イラン人の選択、シーア・アリー> 遊牧の民は有能な指導者をいただかねば、砂漠や草原のきびしい生活を、生き抜くことはできない。のちのモンゴルもクリルタイという部族会議で大可汗をえらんだが、アラブの遊牧民も首長は選挙でえらんだのである。 リーダーの能力の優劣が、自分たちの生死にかかわるのだから、素性は正しいけれども馬鹿殿様では困る。初期カリフが選挙によったのは、アラブの土地からめばえたイスラムとしてはとうぜんであろう。 だが、イランは農耕民が多く、また華やかな都市文明をもっていた。イスラムに制圧されるまで、イランはササン王朝という世襲政権に統治されること400余年に及んでいる。信仰の世界は俗世とはちがうといっても、上にいただく首長の血統を意識する伝統は、イランの住民の心の底にこびりついていたであろう。 イランがほかのイスラム世界の流れに逆らうように、シーア・アリー(アリーの徒党)となった背景がわかるような期がする。 もちろん預言者の血統を重んじるだけではなく、すぐれた文明をもっていたイラン人が、その自尊心から、イスラム世界の潮流に同調するのをいさぎよしとしない傾向があったことも一因といわれている。「ここは、ほかとはすこしちがうのだ」…改宗後も、イラン人の心の深層にはそんな呟きがあったにちがいない。この本も陳舜臣アンソロジーに収めておくものとします。『東眺西望』3:イスラム教に関する薀蓄『東眺西望』2:五胡十六国の時期『東眺西望』1:唐と宋
2024.06.17
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「全国アホ・バカ分布考」の調査を敢行した松本修プロデューサーに対するオマージュになるのだが・・・「全国アホ・バカ分布考」をもう一度読み直してみようと思い立ったのです。*********************************************************<アホ・バカの語源>これまでに、アホ・バカ分布図の中心は、京の都であることが証明されたが・・・アホ・バカの語源は、依然として謎のままであった。シロウト集団を率いる松本プロデューサーは、語源追求の旅を中国にまで広げたが、この歴史的かつ空間的な広がりが気宇壮大なんですね(アホやで)♪<「馬家」と「阿呆」の日本文化>p455~459 「アホ」と「バカ」の語源についての考えを、いよいよ百田君に話す日がやってきた。このふたつの言葉の語源がわからないかぎりアホ・バカ表現研究にも意味が乏しい、自分はこのふたつの言葉にしか興味を持てないといい続けてきた百田君を、果たして満足させることができるだろうか。 百田君と日沢君のふたりをステーキハウスに誘った。百田君は少年時代、肉というと鯨肉しか食べさせてもらえなかったので、牛肉には異常なあこがれを持っている。日沢君も肥満を気にしながらも、牛肉には目がないのである。 注文を済ませると、私は天神蔡の夜から始まる「バカ」と「アホ」の語源追求の旅について、懸命に語りだした。「バカ」は白楽天の風諭詩「君見ずや馬家の宅は尚お猶お存し、宅問題して奉誠園と作す」、ここからきている。奢りたかぶった末に没落した馬さんの家。馬家のようなやつという意味で「バカモノ」が生まれた。つまり「バカ」は本来、人の徳、人としてあるべき精神の美しさについて問いかけた言葉であった。罵倒語として、この言葉が日本を広く覆っている意味は大きい。裏を返せば、日本人は古くから、清廉な人生を生きたいと願い続けてきた、とも考えられるからである。 「アホ」は、もとは中国・江南の「阿呆(アータイまたはアーガイ)」。「呆」という字の意味は「ぼんやり。間の抜けていること」で、この字の頭に親しみの「阿」がついて、「呆ちゃん」つまり「おバカさん」のこと。中国の江南から日明貿易の船でやってきた。 わがままな奢りへの戒めとしての「馬家」、そしてまるで「惚れ者」や「惚け者」の単純な言いかえのような、「呆ちゃん」こと「阿呆」、どちらも婉曲的で、すでにくり返し見てきたように、いかにも日本人が好みそうな表現である。 「なるほど、なるほど」 と百田君は何度も頷きながら、私の長い話を聞き終えた。 「ついに、やりましたね」 と、百田君は確信に満ちて言った。 「ぼくもその考え方で、間違いないと思います。馬家と阿呆の説は『バカ』と『アホ』という言葉の持つ意味の微妙な色合いの違い、なんとなくそれまで納得させてくれそうな気がしますわ」 「助教授の先生が、僕につき合って飲めないビールを飲んで、こんなこと言うてくれはった。『その説は、いずれ定説として辞書に載るでしょうね』と」 「おお、すんばらすー」 と日沢君は喜んでくれた。 「それにしても、中国の影響力は思った以上に大きかった」 と、私は改めて説明した。 「古代から室町末にいたるまで、日本はやはり、中国から圧倒的な影響を受け続けた。もちろん日本固有の言葉も少なくないけれど、地理的分布に大勢を占めるのは中国渡来のもの。馬家・阿呆だけと違う。本地なし・虚仮・安居(鮟鱇)・田蔵田もまた、中国の存在なしにはあり得なかった。それは中国が、世界一の文明大国として君臨していた時代・・・」 「言葉は、京都から日本を東西に旅したけれど、それ以前に、はるばる中国から、あの東シナ海の波濤を越えて、京に旅してきたというわけですね」 と、日沢君は感慨深げにつぶやいた。 「そのとおり。日本人は、この世でいちばん優れた良きものを、中国から巧みに取捨しては吸収し、独自の工夫を施して日本文化を築いていった。つまりこれら京の流行りことば、すなわち日本のアホ・バカ表現は、世界最高の文明と同時代的に直結していた。その結果として成立した『全国アホ・バカ分布図』、これが描く多重の円こそは、日本人の尊い精神文化の年輪でもあった」 黙って聞いていた百田君は、やがて真剣な表情でこう言った。 「今までの話を聞いて、ぼくは『アホウ』だけが他の全てと違う、別格の言葉だという気がしてきましたね」 「たしかに、発音は別にして、これだけが中国・江南の方言をそのまま真似た言葉や」 「いや、ぼくが言いたいのは、ちょっと違うんです。『阿呆』の『呆』、その一字だけで、すでに意味をなしている。つまり『阿呆』は、ムダをすべて削ぎ落とした表現であるという点なんです」 「なるほど」 私は聞き入った。 「他のアホ・バカ表現は、全部、たとえなんですよ。惚れ者・惚け者と、わざわざ熟語を形成させてぼんやり者にたとえたり、鮟鱇・田蔵田といったように間抜けな動物にたとえる。また、本地なし・虚仮と、中身の空虚さにたとえる。『うとい』や『とろい』などの形容詞は、たとえそのものです。馬家もまさにたとえですよね。つまり、アホ・バカ表現は、すべて理屈なんです」 「そう。そのとおり」 「しかし、ただひとつ『阿呆』にだけは理屈がない。『呆』であること、すなわち『間の抜けていること』そのものを一音で示す単純明快さなんです。原始時代から中世にかけて日本人はさまざまなアホ・バカ表現を考えてきた。そして考えに考えつくした果てに、ついに中国から『阿呆』を手に入れて、もうこれ以後、新しい表現を考える必要がなくなったのです。それは『阿呆』こそまさに、何千年もかけて日本人が捜し求めてきた、究極のアホ・バカ表現だったからではないでしょうか!」 「なるほど、面白いなあ」【全国アホ・バカ分布考】松本修著、新潮社、1996年刊<「BOOK」データベースより>大阪はアホ。東京はバカ。境界線はどこ?人気TV番組に寄せられた小さな疑問が全ての発端だった。調査を経るうち、境界という問題を越え、全国のアホ・バカ表現の分布調査という壮大な試みへと発展。各市町村へのローラー作戦、古辞書類の渉猟、そして思索。ホンズナス、ホウケ、ダラ、ダボ…。それらの分布は一体何を意味するのか。知的興奮に満ちた傑作ノンフィクション。 <大使寸評>番組に依頼した人の着眼がよかったのか、それを採用し追及させた松本修プロデューサーが偉かったのか♪Amazon全国アホ・バカ分布考ノンフィクション100選★全国アホ・バカ分布考|松本修「全国アホ・バカ分布考」読書レポート#1:「ダボ」と「アホ」の境界線を探す「全国アホ・バカ分布考」読書レポート#2:方言周圏論の模式図「全国アホ・バカ分布考」読書レポート#3:報告書完成にかける決意「全国アホ・バカ分布考」読書レポート#4:「ハンカクサイ」の伝播「全国アホ・バカ分布考」読書レポート#5:人の失敗や愚かしさは、蜜の味♪「全国アホ・バカ分布考」読書レポート#6:このバカタレが!「全国アホ・バカ分布考」読書レポート#7:アホ・バカの語源全国アホ・バカ分布図
2024.06.16
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2019年、初めてブラックホールの「写真」が撮影されたことを記憶しておられる人も多いと思うのです。・・・そのことに触れた、『宇宙はなぜ美しいのか』という本を読み直してみようと思い立ったのです。*********************************************************図書館に予約していた『宇宙はなぜ美しいのか』という新書を、待つこと7ヶ月ほどでゲットしたのです。 ぱらぱらとめくってみると、カラー画像も多くてビジュアルであり、解説もわりと物理学的でかつ、美しくなっているのが、ええでぇ♪【宇宙はなぜ美しいのか】村山斉著、幻冬舎、2021年刊<「BOOK」データベース>より夜空を彩る満天の星や、皆既日食・彗星などの天体ショー。古来、人類は宇宙の美しさに魅せられてきた。しかし宇宙の美しさは、目に見えるところだけにあるのではない。これまで宇宙にまつわる現象は、物理学者が「美しい」と感じる理論によって解明されてきた。その美しさの秘密は「高い対称性」「簡潔さ」「自然な安定感」の3つ。はたして人類永遠の謎である宇宙の成り立ちを説明する「究極の法則」も、美しい理論から導くことができるのか?宇宙はどこまで美しいのか?最新の研究成果をやさしく解説する知的冒険の書。<読む前の大使寸評> ぱらぱらとめくってみると、カラー画像も多くてビジュアルであり、解説もわりと物理学的でかつ、美しくなっているのが、ええでぇ♪<図書館予約:(7/14予約、副本2、予約19)>rakuten宇宙はなぜ美しいのか「第1章 宇宙はこんなに美しい」からブラックホールの撮影を、見てみましょう。p53~55<ブラックホールの写真を撮ることに成功!> ブラックホールは入ってしまうと光も出ないので、直接見ることができません。ですが、2019年、初めてブラックホールの「写真」を撮ることに成功しました。 先ほど出てきたM87銀河は、私たちの銀河系の10倍ほど星がある大きな楕円銀河です。この銀河では、中心から高速で高エネルギーのガス「ジェット」が噴き出しています。何かとてつもないものが中心にあるに違いありません。 考えられるのは「超大質量のブラックホール」です。太陽の何十億倍もの重さのあるブラックホールの周りをガスがぐるぐる回り、落ち込むものもあれば噴き出すものもあるのだと考えられています。 大きさが太陽と地球の距離の120倍もある巨大なブラックホールですが、なにせ5350万光年先。よほど小さいものが見える望遠鏡でないと、その姿を写真に撮ることはできません。小さいものを見るには光景が大きな望遠鏡が必要です。しかもM87銀河の中心には星や塵がたくさんあり、ふつうの光は届きません。 このような観測で使われるのが電波望遠鏡です。 車でラジオを聞いていると、FMは建物の陰に入ると聞こえなくなりますが、AMは大丈夫。波長の長い電波は障害物を回り込んで届くからです。これと同じで、電波を使うと星や塵を回り込んで、銀河の中心からでも信号が届きます。 電波を使って天体を見る電波望遠鏡は、地球上のいろいろなところにあります。それらをつないでひとつの地球サイズの望遠鏡として使えれば、計算上、M87の中心のブラックホールのような小さいものも見える。私の視力の0.3に比べたらはるかに目がいい、視力1.4億が実現できるはずです。 そんな野心的なプロジェクトが始まり、日本も大きな貢献をしました。日本、アメリカ、カナダ、ドイツ、フランス、オランダ、スペイン、メキシコ、中国、台湾、韓国という、文字どおり地球サイズの国際協力プロジェクトです。 プロジェクトの名前は「イベント・ホライズン・テレスコープ」といいます。ブラックホールの周りの、出てこられるところともう決して出てこられないところの境目を「事象の地平線」といいます。英語ではイベント・ホライズンです。 「地平線」とは、たとえば山の上から海を見ると、地球が丸いために、あるところから向こうは見えない、この境目のことです。「事象」というのは、何かしら起きている現象のことです。「事象の地平線」とは、この境目の内側で起きたどんな事象も見ることができない境目のことです。そのイベント・ホライズンを見るテレスコープ(望遠鏡)というのが、このプロジェクトの触れ込みです。 こうして撮ったブラックホールの写真が写真[1-29]です。[1-29]M87の中心のブラックホールのシャドウ 周りの明るいところがブラックホールの周りを回るガス、真ん中の黒いところの縁は光がブラックホールの周りを公転してしまって出てこられなくなる「光子リング」、光子リングの内側の半径3分の2ぐらいのところに「事象の地平線」があります。写真の下半分はガスが私たちの方を向いているので明るく、上半分はガスの運動が遠ざかっているので暗く見えています。2019年、日本を含む国際研究チームの観測によって、ブラックホールが初めて視覚的に証明されました。2019/04/11ブラックホール初撮影 5500万光年先を直接観測 日本など国際チームより あらゆる物質をのみ込む巨大ブラックホールの撮影に、国立天文台などの国際研究チームが世界で初めて成功し、10日発表した。世界6ヵ所の望遠鏡で同時に観測して解像度を飛躍的に高め、真っ黒な穴を捉えた。ブラックホールの存在を直接裏付けたことになり、銀河の成り立ちの解明につながる。 撮影に成功したのは、地球から約5500万光年離れた銀河「M87」にあるブラックホール。 ブラックホールは重力が極めて強く、光も吸い込んでしまう。光が脱出できなくなる境界は「事象の地平線」と呼ばれる。巨大ブラックホールは宇宙に無数ある銀河の中心にそれぞれ存在すると考えられているが、誕生の仕組みなどはわかっていない。これまでは、周囲を回る星の動きなどから、間接的に存在を確認していた。 研究チームは、宇宙空間のちりなどに吸収されにくく、地球まで届きやすい電波「ミリ波」に着目。ブラックホールに吸い込まれる際に周囲のガスが発するミリ波を観測し、画像に変換することを試みた。 2017年4月、南米・チリのアルマ望遠鏡や米ハワイ、南極など世界6ヵ所、計八つの電波望遠鏡を使って計5日間、M87と、天の川銀河の中心にある「いて座A*(エースター)」のブラックホールを観測した。 最大約1万キロ離れた望遠鏡のデータを合成することで、解像度を月面に置いたゴルフボールを地球から見分けられるほどに高め、わずかな電波を捕捉。約2年かけ解析した結果、M87の画像では、ガスの光に包まれた黒いブラックホールの姿が確認できた。質量は太陽の約65億倍に相当することがわかった。いて座A*については解析中という。 研究チームで日本の代表を務める国立天文台の本間希樹(まれき)教授は会見で「写真はアインシュタインの相対性理論以来初めて、ブラックホールを視覚的に証明するもの。銀河の真ん中にブラックホールが存在することを決定づける意味のある一枚だ」と話した。(石倉徹也、小宮山亮磨)この記事も『ブラックホールを見たいR3』に収めるものとします。『宇宙はなぜ美しいのか』3:ブラックホールの写真を撮る『宇宙はなぜ美しいのか』2:星の誕生『宇宙はなぜ美しいのか』1:はじめに
2024.06.15
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新時代の捕鯨 歓迎と批判ネットを巡っていたら、朝日デジタルの『新時代の捕鯨 歓迎と批判』がヒットしたのです。とにかく、食文化としてのクジラにはツボが疼くというか・・・例のごとく朝日の使い倒し(紙とデジタルのダブル保管)となったのです。*********************************************************新時代の捕鯨、歓迎と批判 新母船「関鯨丸」がデビュー ナガスクジラ対象「黒字確保に期待」より 九州と本州を結ぶ関門橋付近を航行する捕鯨母船「関鯨丸」=21日午前10時57分、山口県の下関港沖、本社ヘリから、小宮路勝撮影 日本の商業捕鯨を担う新しい捕鯨母船「関鯨(かんげい)丸」が21日、初の操業に向けて山口県の下関港を出港した。商業捕鯨が低迷するなか、「新しい時代に入る」と業界の期待は高まっている。水産庁は捕鯨の対象に大型のナガスクジラを追加する方針だが、世界の反捕鯨国や環境保護団体からは批判や疑問の声が上がっている。 初出漁式で、関鯨丸を所有する共同船舶(東京都)の所英樹社長は「我々は一丸となって鯨文化を未来永劫続けていく」と語った。 関鯨丸は、30年以上操業し、昨秋に引退した「日新丸」の後継として約75億円で建造された。全長112・6メートル、幅21メートル、総トン数は9299トン。定員は100人で、航続距離は南極海に到達可能な約1万3千キロに及ぶ。捕鯨船が捕獲した鯨を船内で解体し、冷凍保存する機能を持つ。 近年、日本の捕鯨は揺れ続けた。国際捕鯨委員会(IWC)が1982年、商業捕鯨の一時停止を決めると、日本は「調査」として捕鯨を続けた。しかし2014年、オランダの国際司法裁判所は、南極海での調査捕鯨の中止を命じた。結果、日本は19年にIWCを脱退。日本沿岸での商業捕鯨の道を選んだ。 ただ、商業捕鯨は低迷気味だ。共同船舶は、ニタリクジラとイワシクジラを捕獲しているが、鯨肉の生産量は約1600トン。国内全体でも2千トンほどで、1960年代の20万トン前後に比べると極めて少ない。23年3月期の売上高は31億円で2億円の営業利益だったが、関鯨丸の建設費75億円がのし掛かる。 日本人の鯨離れも進んでいる。所社長によると、若者にとって鯨肉は「くさい」「硬い」とのイメージがあるという。 政府も関鯨丸への後押しになるような動きを見せる。水産庁は今月、捕鯨の対象にナガスクジラを指定する方針を決めた。十分な資源量があると判断。水産庁の審議会を経て今夏、正式に決める。 ナガスクジラは体長約20メートル。最大クラスは重さ80トンにもなる。仮に20党の枠で約400トンになるという。所社長は「これで黒字を確保できる」と期待する。 ■専門家「調査公表なく拙速」 しかし、ナガスクジラの追加には専門家らから批判の声も出ている。 元水産庁職員としてIWCに十数回参加して交渉に当たった小松正之さん(70)は「拙速だ。科学的な調査が公表されておらず、判断できない」と指摘する。 水産政策を調べるオーシャン・ガバナンス研究所の真田康弘・代表理事は「ナガスクジラは海洋生物の象徴だ。海外の政府機関も含めてリアクションが予想される。場合によっては、IWCで審議されることもありえる」と話す。 実際、世界の反捕鯨団体は懸念を示している。 南極海での日本の調査捕鯨を繰り返し妨害してきた反捕鯨団体「シー・シェパード」の元船長で、日本が傷害容疑などで国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際手配しているポール・ワトソン氏は朝日新聞の取材に、「絶滅危惧種であるナガスクジラの商業捕鯨は違法だ。日本の排他的経済水域(EEZ)外で行われるいかなる捕鯨も物理的に阻止する」と話した。 (白石昌幸、加藤裕則)「関鯨丸」が初操業を終えたとのことで、安価の鯨肉を期待するのです。待ってろよ「シー・シェパード」。ÝouTube『新型捕鯨母船「関鯨丸」が初操業終え仙台塩釜港に接岸で新母船「関鯨丸」が見られます。
2024.06.14
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「テルマ&ルイーズ」という映画を映画館で4回も観たのであるが・・・それはつまり、もっとも好きな監督がリドリー・スコットになるのかなあ。*********************************************************図書館で『映画の巨人たち リドリー・スコット』という本を、手にしたのです。「ブレードランナー」「ブラック・レイン」「テルマ&ルイーズ」とくれば・・・もっとも好きな監督になるのかなあ。【映画の巨人たち リドリー・スコット】佐野亨著、辰巳出版、2020年刊<「BOOK」データベース>よりSFから歴史劇まで、幅広い題材を描きながら、人間の悪意や文明論など明確なテーマ性と独自の映像美で、いまなお第一線で活躍し続けるリドリー・スコットーその魅力と本質をさまざまな角度から読み解く!<読む前の大使寸評>「ブレードランナー」「ブラック・レイン」「テルマ&ルイーズ」とくれば・・・もっとも好きな監督になるのかなあ。rakuten映画の巨人たち リドリー・スコットシド・ミードが作り出した近未来の景観が語られているので、見てみましょう。P48~50<アンドロイドの哀しみ:川本三郎> 核戦争後の荒れ果てた地球、環境汚染と人口過剰で窒息しそうな都市、メディア・テクノロジーの増殖で自己をホログラフィのような空像としか意識しえなくなった人間・・・1982年、53歳で死去したアメリカのSF作家フィリップ・K・ディックはそうしたディストピアとしての近未来にこだわり続けた病的な作家だ。 ディックの短篇集を編んだSF作家ジョン・ブラナーの言葉を借りれば、「ディックの世界はけっして人好きのするものではない。たいていの場合、その世界はさびれ果てている」。 廃墟、マシンや機械人形に囲まれた自閉空間、LSDやスピードやアンフェタミンといったドラッグが生む幻想世界、実像と虚像の差異がなくなったシミュレーションの仕掛け。晩年、霊的世界を見ようとするかのような衝動にとらえられたドラッグの常用へと落ち込んでいったディックは、SFの世界に、テクノロジーの悪夢、実体を喪失した人間の自己幻想、人造人間(アンドロイド)の孤独、現実そのものと現実認識のくい違いといった病的要素を導入していった。「それはけっして快適な世界でも、魅力ある世界でもない」。病気から逃れようと、「医師に処方してもらった薬は、病気よりもひどい副作用を起こす」(ジョン・ブラナー)。 だがその不快な近未来の風景は、読む者にいつか自分たちが見た「懐かしい」風景だと思わせていく魔力を持っている。なぜなら私たちは病なしにはもはや生きられないのだし、河合隼雄の言葉を借りるならば病気とは一つの「ファンタジー」なのだから。SFのFとはサイエンス・テクノロジーの異常な増殖がもたらした病気という「ファンタジー」であるということも可能なのだ。 1982年に製作され、公開当時はさほど話題にならなかったがその後ビデオ化されるや若い世代の圧倒的支持を受け、いまや“カルト・ムービー”になるつつあるSF映画『ブレードランナー』はこのディックの中期の作品(1968年)で、ディック自身が「私のもっとも気に入っている作品の一つ」といっている『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の映画化作品である。 製作は『ディア・ハンター』の製作者でイギリスのEMI社に属するマイケル・ディーリー。監督はゴシック・ホラー調のSF『エイリアン』で名を上げたリドリー・スコット。そして特撮(SFX)は『2001年宇宙の旅』『未知との遭遇』で知られる特撮の第一人者ダグラス・トランブル。この映画ははじめほとんど無名に近い俳優ハンプトン・ファンチャーが原作を読んで感動し、ただちに自分で脚本を書き、SF作家レイ・ブラッドベリを通じて“ハリウッド映画人とほとんど没交渉”の孤高の作家ディックに会い、映画化権を獲得したという、スタートの時点ではごくマイナーな企画だった。 それがディーリーが製作し、リドリー・スコットが監督することになり、さらにダグラス・トランブルが特撮に加わることによって一気にマニアックなまでのSFX(特殊視覚効果)映画へと開花していった。ちなみに映画題名の「ブレードランナー」は、麻薬中毒者の異常な幻想を描いた『裸のランチ』で知られる作家のウィリアム・バロウズの作品からとられており、この映画のクレジットの最後にはバロウズに「スペシャル・サンクス」が捧げられている。 特撮のダグラス・トランブルがこの映画に加わりたいと思ったのは、「(これが)スペース映画ではない」からだったと語っているように、『ブレードランナー』が『スター・ウォーズ』や『スター・トレック』のような「星空をバックに宇宙船をあやつる」美しくファンタジックなSFではなく、近未来のディストピア、痛々しい地球にこだわった「さびれ果てている」病的なSFだったからだ。映画『タクシードライバー』で荒廃したニューヨークのアンダーグラウンドを描いたマーチン・スコセッシ監督もディックの原作を映画化したかった一人だというが、『ブレードランナー』の世界はたしかに未来の広大な宇宙空間よりも、むしろ“娼婦とオカマとヤクの売人と中毒患者がうごめいている”ネクロポリス(死の都)ニューヨークのほうにつながっている。『ブレードランナー』の舞台は21世紀のアメリカの巨大都市。環境汚染と人口過剰のために腐乱した地球から逃れるために人間たちは徐々に他の惑星に移住している。人間たちは惑星での都市建設のためにレプリカントと呼ばれる“人間そっくり”の人造人間を開発した。そのレプリカントの何人かが叛乱を起こし“故郷”の地球に戻ってくる。逃亡者であるレプリカントを殺害するためブレードランナーと呼ばれるハンターが起用される。 物語はこのブレードランナーによるアンドロイドの捜査、追跡、殺害と展開していくのだがこの映画でまず見る者の目を奪うのは、トランブルと、未来派のデザイナー、シド・ミードが作り出した近未来の都市の景観である。 『映画の巨人たち リドリー・スコット』5:アンドロイドの哀しみ『映画の巨人たち リドリー・スコット』4:リドリー・スコットの生い立ちなど『映画の巨人たち リドリー・スコット』3:「ブレードランナー」の論考『映画の巨人たち リドリー・スコット』2:「テルマ&ルイーズ」の論考『映画の巨人たち リドリー・スコット』1:冒頭の論考
2024.06.14
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日本の各地で、和紙が産業あるいは工芸として作られていて、興味深いのである。・・・ということで、以前の日記を以下のとおり復刻してみようと思い立ったのです。*********************************************************図書館で「和紙と暮らす」という本を借りたが・・・この本から故郷土佐の楮・三椏栽培のあたりを紹介します。大使が和紙に描くイメージは、森林に寄り添う産業という感じで、何と言うかエコロジーそのものなんですよ。(過酷な作業が見えないところが、極楽トンボなんですが)<楮・三椏栽培>p37~39 高知県の山あいの農家では、昭和30年ごろまで、県内では最高品質の赤楮(あかそ)と呼ばれる楮が生産されていた。現在はユズやお茶などの栽培に変わり、楮の姿を見かけることは少ない。それでも今なお、雪の残る山道で、畑で刈り取った重い楮の束を担いで釜床まで運ぶ姿を目にする。 楮は鎌で一本一本刈り取られる。枝を払い、4尺2寸(125センチ)の長さにきっちり揃える。蒸し器である甑の寸法に合わせたサイズだ。それを40本から60本くらい束ね、しっかり縛り、釜場まで運ぶ。釜場のある農家の庭先や山の斜面などでは、甑の径に合わせてさらに大きな束になった楮が、ごろんと横たわる。 いよいよ楮を蒸す段になると、村の集落は朝から活気づく。一家総出あるいは、昔から「結い」を結成している里では、近所の皆が手伝いに集まる。早朝3時頃より釜を焚いて、甑で楮を一度蒸すのに3時間は燃やし続ける。厳冬の甑上げでは、もうもうと上がる真っ白な蒸気は、向こうの山も周囲の物も甑自体をも包み消してしまう。 蒸しあがった束には総出で水をかける。水をかけ急激に冷やすことで、楮が収縮し、皮が剥ぎやすくなるという。 三椏は沈丁花科の落葉木で、苗を植えてから成木になり、刈り取るまでに3年かかる。3年ごとに収穫された三椏は、大蔵省印刷局に納入され日本銀行券となって日本全国に出回る。子どもの頃、楮は和紙に、三椏はお札になると親から教えられたものである。次に楮や三椏の生産者について、ネットで探してみました。楮農家の紹介より土佐和紙の原点は、楮。楮には、様々な種類があるが、農家さんたちは、ひっくるめて「梶」と呼んでいます。楮は、山間に建つ野村家の裏山や、清らかな清流を挟んだ向かい側の斜面で育てられています。日当たり抜群です。 楮原料の多くはタイなどからの輸入品に置き換わって、楮畑や甑上げなどが少なくなったそうだが、その生々しい実態までは知りません。 和紙は耐久性に優れる。繊維が長いため、しなやかで丈夫。高知県産の極薄和紙が、欧米の書籍修復に重宝されているそうです。透けるような紙なので、上から貼っても文字や絵がみえる。日本の刷毛とのりと和紙は修復家の羨望の的だとか。「かみこや」というサイトを知ったけど、オランダ人が三椏、和紙の生産に着目したことに・・・・逆に惹かれるわけです。和紙を作ること自体が、心和む普遍性を持っているんではないでしょうか。かみこやより四国カルストの風を受け、四万十川源流の水で暮らす。標高650Mの高台で99%緑に包まれた「かみこや」オーナーはオランダ人和紙作家で土佐の匠でもあるロギール・アウテンボーガルト。和紙の原料から育て、昔ながらの紙を漉き、作った和紙の優しさを製品にしています。 かみこやではロギールの手ほどきで紙漉き体験もできます。灯り・障子・襖に壁紙と和紙に囲まれた民宿のゲストルームは、1日1組~2組。暖かいおもてなしを心がけています。先日(4月4日)京都府立植物園で見た三椏です。ミツマタの花は黄色と白のツートンカラーだったんですね♪<本美濃紙>p52 最高の和紙として美濃の名を決定づけたのが、書院紙と呼ばれた障子紙の品質および江戸幕府の御用紙の指定だった。 薄く、均一、かつ強靭。障子を通過する光は技の冴えを際立たせる。 本美濃紙保存会会長を務める澤村正さんは話しはじめた。正倉院に残る現存最古の戸籍用紙(702年)から、少なく見積もっても1300年という歴史が導き出されること。平安時代には日本最大の産地になり、紙市場が開催されるようになった15世紀、書院紙(障子紙)で名声を獲得。その後も江戸幕府の御用紙に指定されるなど、美濃紙は常にトップの道を歩んできた。【和紙と暮らす(別冊太陽)】増田勝彦著、平凡社 、2004年刊<「BOOK」データベースより>データが見つからず。<大使寸評>昭和30年代までは、故郷のわが町でも楮の蒸し上げ作業を行っていて、幼い大使もかすかに覚えているのです。それだけ和紙作りが身近にあったわけで、里山では楮、三椏の循環生産を行っていたんでしょうね。和紙と森林の関わりが気になって、この本を借りたのです。rakuten和紙と暮らす(別冊太陽)
2024.06.13
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『漢字がつくった東アジア』(復刻)中華嫌いの大使であるが、最古の表意文字・漢字には高い評価を与えておるのです・・・・ということで、以下のとおり復刻してみます。*********************************************************「漢字がつくった東アジア」を読み進めています。日本が最初に中華圏から独立したとする切り口が、ええでぇ♪今はない渤海という国が大使にはエキゾティックなんですね。歴史上、日本とは友好的であったし、抗争も無かったようです。<渤海の辿った道>p173~176 それでは、独自の年号までもった渤海国とは、どのような歴史を辿ったのか。それは、あまり明らかではありません。なぜなら、渤海国自身によって書かれた歴史書が残っておらず、同時代の日本の『続日本紀』や、中国の『旧唐書』などから再現するしかないからです。 926年、第15代の大イセンという国王が契丹の耶律阿保機に亡ぼされ、渤海国の歴史はここで終わります。したがって698年から926年までの230年ぐらいが渤海国の歴史ということになります。それは、日本でいえばおおよそ奈良時代から平安前期。政治的に独立した後、中国的文化を意識的に学び、擬似中国的な国家を形成っしつつ、平仮名(女手)の誕生によって、文化的独立に至る時代に相当します。 靺鞨人の国家・渤海が、なぜ、日本や朝鮮のように安定した形態をとることがなかったかといえば、王を中心とするごく少数の官僚達は、漢詩・漢文に通じ、東アジアの政治的関係を理解していたとしても、圧倒的な数の民衆は、これとは無縁の無文字的空間にあったからであると考えられます。西にモンゴル、さらには突厥という遊牧の空間に接する靺鞨人は、東アジア漢字文明に半分だけ足を突っこんだにすぎなかったからです。 新羅が立ったのは676年で、その20年後には渤海国が立ち、ある意味でここに朝鮮半島での南北時代、北と南という二つの国が立つという構造が生じました。 さて、ここで見ていただきたいのは、698年から926年ということは、律令日本時代と重なるという事実です。日本は710年に奈良朝に入ります。794年には奈良から平安に遷都して、894年には遣唐使を廃止しています。 (1日文字数の制約で省略)wikipediaに靺鞨、渤海の位置づけが載っているが・・・ま~民族勃興史を見るようで感慨を覚えます。wikipedia靺鞨より靺鞨(7世紀後半)渤海(8世紀、9世紀頃) 靺鞨(まつかつ)は、中国の隋唐時代に中国東北部(現在のロシア連邦・沿海地方)に存在した農耕漁労民族。南北朝時代における「勿吉(もつきつ)」の表記が変化したものであり、粛慎,挹婁の末裔である。16部あったが、後に高句麗遺民と共に渤海国を建国した南の粟末部と、後に女真族となって金朝,清朝を建国した北の黒水部の2つが主要な部族であった。「中国からの独立」という白川さんの独特な切り口を拝聴してみましょう。<唐の滅亡と東アジアの文化的独立>p188~190 こうしたことを総合的に考えると、900年から1000年代のところで、東アジアの各地方は文化的に独立することがわかります。この900年から1000年代に越南でも独立の気運が起ってきます。 一方、朝鮮半島は、北では926年に渤海が亡び、南では919年に新羅から高麗に代わっています。ここでも文化的な独立めいた動きが生じます。 日本は、国が亡ぶような大きな政治的な変革は見られないものの、それに匹敵するような文化的な革命と断絶がこの時期に起きます。それは女手の成立です。再三繰り返すように、女手が誕生したことにより日本は文化的な独立を遂げますが、それがちょうど越南が中国から離れて独立する時期と重なるのです。 ここで非常に興味深い原理がひとつ抽出できます。それは、「東アジア漢字文明圏における独立は、自主的に中国風の体制を整え、漢字文明・文化を推進する」ということです。 一般的に、独立するという場合には、支配者の束縛から離れて自分たちのものを打ち立てることを意味しますが、東アジアで自分たちのものを打ち立てようとする場合には、かならずいちど政治的にも文化的にも中国化する必用があります。まず中国の政治制度を学び、中国の文化を積極的に取り入れ、あたかも中国と同じような政治的・文化的形態になる。その経験を経たあとに、はじめて文化的な独立が成立します。これが東アジア漢字文明圏における独立の条件です。 非常に矛盾に満ちていますが、わかりやすくいえば、京都と奈良の違いです。あるいは、京都の町でいえば、御所と禅院の違いです。奈良とはいったい何かというと、あれは中国です。中国のものをどんどん取り入れて、中国と瓜二つの姿になることを目指したのです。この逆説的な動きが、日本が白村江の戦いで敗れ、中国から独立したあとに起きます。つまり自主的に中国文化を吸収することによって独立するしかないのです。 それほど中華の文明というもの、知識学問というもの、政治制度というものが圧倒的に大きく、水圧が高いのです。それを自分のものとして取り入れなければ中国からの相対的な独立はありえないのです。 たとえば奈良時代の写経。写経によって中国の文字を知る、中国の文を知る、中国の知識を知ることを徹底することによって独立が果たされたのです。(中略) 越南でも、脱中国化を達成して独立しようと思えば中国化しなければいけない。つまり中国化することによって脱中国化するのです。日本の場合もそうですし、朝鮮の場合もそうです。これが漢字文明圏における独特な独立の形態だと思います。 拙著『日本書史』で詳しく述べていますが、私は900年を日本史におけるひとつの分水嶺と考えてもよい大きな区分と考えています。900年までを、奈良時代あるいは空海などが活躍する平安初期を含めて「擬似中国時代」と考えます。この時代の文化は、中国から独立していちばん最初にやってくる姿をしています。東アジアの国が政治的に独立したあっとには、中国のごとき姿をする時代がかならずやってくるのです。それを経た後にやがて「違いのわかる大人」になることがあります。日本でいえば、女手をつくることによって、和歌と和文の表現力を手に入れ、擬似中国段階を脱して日本化することになります。 同様の試みが、東アジアではやはり文字をめぐって起ります。日本では女手でした。朝鮮ではハングルをめぐって起ります。そして越南ではチェーノム(字喃)という、いわゆる越南文字をつくることを通じて起ってきます。この「喃」の字がまさにチェーノムです。「口」扁が表音のための借用字であることを表し、「越南」の「ノム(南)」という音を合わせてつくられた越南文字です。中国に組み込まれながら、一貫して反抗的だったヴェトナムの文化、王制を見てみましょう。辺境としての悲哀は朝鮮半島より大きかったようですね。チェノム<朝鮮、越南、日本の支配体制>p199~201 江戸時代までは一貫して、朝鮮半島は日本に大陸のいろいろな文化を伝えるというかたちで、ある意味での師匠役をしてきたわけです。けれども、半島側には豊臣秀吉の朝鮮侵攻に象徴されるような、とんでもないことをする、わけのわからない要素をもっている島だという認識もある。そういうなかで、朝鮮半島の、大陸と孤島のあいだにあるという中間の意識は、単に半島意識ということだけではなく、孤島との関わりを絶えず意識させられてきたと考えられます。 元の侵攻に対して、越南が選んだ対応は反抗でした。文化的民族主義としてチェーノムはつくられました。しかし先ほどいったように、大陸を北といい自分たちを南というように、基本的に自分たちを大陸と同格に見ようという意識が支配層にあります。 なぜか。それは越南が中国だからです。とはいえ、体制に組み込まれて、生活しているだけの被支配層は別です。支配する層は、要するに中国です。だから大陸の南朝なのっです。まさに南朝を建てるというような意識から越南は生まれてきたのです。チェーノムが基本的には漢字と同じ構造の亜漢字であり、また(それゆえ)越南語が中国語と同じ単音節孤立語でありつづけていることにも触れておきましょう。 さらに興味深いのは、朝鮮、日本、越南の三つの国で支配体制が異なることです。朝鮮は基本的に「王」、つまり王制です。この王制というのは、再三述べているとおり、皇帝のもとにある王制です。要するに冊封された王制です。あくまで「自分たちのところには王しかいない」という考え方です。皇帝がいるとは考えないし、また考えられもしないのです。 それに対して、日本の場合は「皇帝」です。皇帝とは名乗らないけれども、王とも名乗らずに、その中間的な概念、もしくは模擬皇帝概念として天皇をつくる。天皇制が強化されるのは近代以降です。しかも日本史の過半を実際的に支配したのは、古代には摂政や関白、あるいは院、そして中世、近世は征夷大将軍、つまり将軍でした。わかりやすくいえば、日本の場合、皇帝でも王でもない天皇という制度になります。 ところが越南の場合は異なります。対中国的には王でありながら国内的には皇帝と称するのです。実際問題としては中国の皇帝と冊封関係にあり、したがって王、あるいはもっと貶められて郡王ぐらいのこともあるのですけども、王でありながら国内的には皇帝と称するのです。したがって越南がいちばん中国的なのです。中国でありながら中国とは違うという、むろん朝鮮あるいは日本とはまた違った姿をとるのです。 話は少し脱線しますが、これは絶妙かなと思うのは、越南を含む半島をインドシナ半島と呼ぶことです。すなわちインドの文明と中国の文明がちょうどそこで交差し、共存している半島です。中国大陸に発する漢字文明は東海岸の方から越南へと南下してきますが、西の方からはインドの文明が押し寄せてくる。それは文字が、越南以外のところでは、アルファベットでもなく漢字でもない、いわゆるサンスクリット系の文字が基本的に使われていることと関連しています。 越南が独立するときに、「漢唐はわが帝国にして、孔孟はわが祖師なり」という考え方が払拭すべき意識として語られました。この考え方を払拭しなければ越南の独立はありえないというのが越南の独立のときの考え方です。それほど越南の知識人のあいだには、中国大陸の文化・文明が自分たちの礎であるという考え方が根強くあったのです。wikipediaチュノムによれば、一般のパソコンでも大多数のチュノムを表示、印字することが可能となっているそうです。ベトナム語のローマ字表記化についてはwikipediaクオック・グーに詳しいが・・・1945年独立を期に、中華のしがらみを絶ったのでしょうか?(クオック・グーとは、もちろん国語ですね)漢字がつくった東アジア1:現代の中国語漢字がつくった東アジア2:立ち上がる朝鮮半島漢字がつくった東アジア3:北端のアイヌと南端の琉球人漢字がつくった東アジア4:渤海の辿った道
2024.06.12
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「あなたの代わりに読みました」のスクラップ朝日新聞の「あなたの代わりに読みました」という記事を紙でスクラップとして保管しているのです。斎藤美奈子さんと言えば、書評のスペシャリストとして知られるが、それらの書評がまとめて見られる書評集とあれば・・・読むしかないでえ♪ *********************************************************明日への糧、忙しい読者に寄り添い 斎藤美奈子さん書評集「あなたの代わりに読みました」より 書評を書き続けて30年になる。文芸評論家の斎藤美奈子さんが書評集「あなたの代わりに読みました」(朝日新聞出版)を出版した。書評を書くこと、それは忙しい読者のための「読書代行業」のような気分だと斎藤さんは言う。「昨日を省み、明日を生きるための糧」になる読書という行為に寄り添ってきた。 本書は、週刊朝日で2013年から休刊した23年までに書いた490本の書評から154本を選んだ1冊だ。政治や社会、文学、暮らしや芸能のテーマに分けて収めた。連載した10年は東日本大震災後、令和が始まりコロナ禍を経験した時代だった。その時々の話題本を中心に紹介しているが、原発や安全保障、地域経済、ジェンダーなど、課題にあふれている。 例えば、浅田次郎著『日本の「運命」について語ろう』(15年刊、幻冬舎文庫)では、260年余り戦争をしなかった徳川幕府を再評価する本書に、戦後70年の日本を重ね「この記録を私たちはどこまで更新できるだろうか」と鋭く問う。松中権著「まずは、ゲイの友だちをつくりなさい」(同年刊、講談社+α新書)や、井上由美子著の小説「ハラスメントゲーム」(18年刊、河出書房新社)など、世の中の動きに素早く反応した本を書評に取り上げてきた。 ただ、評者本人は「今回全ての原稿を見返したけど一つも覚えていなかった」と言い、「借金を取り立てされるみたいに慌ただしく書いていたから」と笑いながら振り返る。入院先の病室から原稿を送ることもあったという。 毎週迫り来る「魔の火曜日」。書評と別の新聞コラムの締め切りが重なる日で、午前5時ごろから書評本に目を通し、原稿を書き終えるのは午後2時ごろ。そのままコラムに取りかかり、夜までに間に合わせる。 選書は自由で、時間が空くと書店に候補となる本を探しに行った。「自分の興味の範囲はせいぜい半径5メートル」。未開拓の本が潜む書店は「荒野のようで、サプライズがある」場所だ。偶然出合う本を求めて出向く。朝日新聞の書評委員で一緒だったドイツ文学者の池内紀さんから「本って出合い頭だから」と言われたことを心に留めているという。 執筆で重視するのは「自分を消し、いかに内容を的確に書くか」という点だ。「この本が言いたいことは何か、整理整頓されていない本が案外多い。分かりやすくかみ砕くには、ねじりハチマキ巻いて、大なたを振るって、下草を刈る作業をしなければいけない」と話す。 長年、雑誌や新聞を中心に書評を書いてきた。いまネットでは読書レビューがあふれ、動画投稿アプリで紹介された本が人気を得る。紙媒体の存在意義はどこにあるのだろうか。斎藤さんは「保存性に優れた媒体なので、本のダイジェストとして後になっても読め、書かれた時代を追える良さがある」と指摘する。まさに本書もこれから何十年後かに読み返せば、懐かしいだけではない、時代の一面や社会の流れを学ぶ糧となりそうだ。(森本未紀)私事になりますが・・・6/8から6/11の間はブログをお休みとしますので宜しく。法事があるため四国の故郷に帰省(今晩の夜行バスで)するものです。
2024.06.07
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「プロパガンダ映画にはまった」という記事を、14年ぶりに見直ししたのでUPします。*********************************************************・佐久間ダム・千里馬・栄光への脱出・父親たちの星条旗・キャピタリズムこれらの共通点は何か?・・・ハイ、そこのあなた!これらの共通点は、ジャンルはドキュメンタリー、商業映画とさまざまですが、私がはまったプロパガンダ映画なんですね(さよか)とにかく、映像の威力はすさまじいもので、年端もいかない大使などコロリとはまってしまったわけです。R1:千里馬、キャピタリズムの内容見直し、他*********************************************************その1子供の頃に「佐久間ダム」というドキュメンタリー映画を見て、土木技師を夢見たこともある大使であるが・・・・お役人も土建会社も、世のために働いた幸せな時期が確かにあったが、今となっては状況変化に対応できないその硬直性(石頭)に感慨深いものがあります。お役人とは、自省の予算が減ることを、会社倒産のように恐れるが(それはわかる)・・・ならば、ダム撤去予算をつけて、せめて世のために働いてほしいものである。同じ税金を投入するなら、せめて国民の為に使ってほしいものだが・・・継続性、整合性とかなんか?で、にっちもさっちもいかないのだろうな~?その2『チョンリマ(千里馬)―社会主義朝鮮の記録― 1964年度作品(2006年北朝鮮人権侵害問題啓発週間のシンポジウムより)より シンポジウム第1セッションで映画「チョンリマ」が上映されました。このような機会でもなければ観ることのできない映画のようです。公開された1964年は東京オリンピックがあり、そして拉致被害者 横田めぐみさんが生まれた年でもあります。 写真のパンフレットはシンポジウムでもお話されたジャーナリスト・萩原遼さん所有のもので、40年以上も前(2006年当時)のものです。萩原さんにお願いして見せてもらいました。写真掲載及びブログ掲載の許可もいただきましたので、ぜひご覧になってみてください。写真 映画は当時プロパガンダに利用されたとのことで、複雑な思いでいる方もいらっしゃると思います。そんな中、不謹慎かもしれませんが、私は最近の北朝鮮のテレビ映像ばかり見ているせいか、昔の映像にかえって何か新鮮さを感じました。(会場では時々笑いがこぼれていました)出演者の笑顔も最近の映像で見る作り笑顔と違い、まだ自然な感じがしました。もう一度じっくり観てみたいなと思う映画でした。 この映画を作った監督は、当時の日本人よりは北朝鮮の実情に詳しかったはずであるが、夢を紡いだ裏に、負の側面に目をつむった(見抜けなかった?)としたら犯罪的でさえあったと、今頃気づいた大使である。その3ものごころついた頃に「栄光への脱出」という映画を見て、ユダヤ人の帰国運動に虐げられた民族の希望を見たこともある大使であるが・・・・いま、パレスティナのガザ地区で砲撃を加える軍事大国ともいえるイスラエルには、映画で見たような虐げられた面影は見られません。それにしても、この映画に出演したポール・ニューマン、そしてスクリーンミュージックには惹かれたものです。栄光への脱出かように、プロパガンダ映画に惹かれた(だまされた)大使も、騙されながらも馬齢を加えたせいか・・・・プロパガンダ臭には「ちょっと おかしいんじゃないの?」と眉に唾することもおぼえたのです。その4「父親たちの星条旗」はプロパガンダそのものを描いた映画であり、プロパガンダに従事した者をヒーローとして描くわけでなく、戦争という愚かな行いを批判的に見る高い位置が感じられる映画だった。とにかく、これは別格ですね。その5プロパガンダ映画といえばマイケル・ムーアの最新作『キャピタリズム』はドキュメンタリーというより、プロパガンダ映画そのものなんだろうが・・・こういうふうに立ち位置を旗幟鮮明にした映画を、見たいとも思うのです。市民じゃなくて銀行にすべてを握られている資本主義って何なんだ?-マイケル・ムーア×是枝裕和監督対談より『キャピタリズム ~マネーは踊る~』公式ブログということで・・・関さんのプロパガンダ報道は民意をゆがめるか?などのタイトルに目が行くのです。
2024.06.07
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図書館で『中国共産党支配の原理』という本を、手にしたのです。このところ米中の緊張が高まっているが最悪の場合、習近平氏とトランプ氏が対立するケースがあるわけで・・・習近平氏支配の構造を見ておこうということでチョイスしたのです。【中国共産党支配の原理】 羽田野主著、日経BP日本経済新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より謎の巨大組織を縦横無尽に読み解く。「秘密結社」から始まった中国共産党は潜在的に守りの意識や被害者意識が強く、常に内側に不安を抱えている。結党目的の共産主義の実現はすでに失われ、政権党として君臨することが自己目的化している。米国の「圧力」にさらされていると受けとめる共産党は、軍事的統制を強め有事体制に移行しつつある。中国の隅々に張りめぐらされた党組織は硬直化し、自己改革できない「大企業病」に冒されているようだ。膨張の果てに戦前の日本と同じ道を歩むリスクさえ見え隠れするようになった。外部から見た不可解な行動をとる中国共産党の原理とは何か。共産党の憲法といわれる「党規約」の読み解きを交えながら、有益な中国分析を提供する。「党規約」最新版の全訳も掲載。<読む前の大使寸評>このところ米中の緊張が高まっているが最悪の場合、習近平氏とトランプ氏が対立するケースがあるわけで・・・習近平氏支配の構造を見ておこうということでチョイスしたのです。rakuten中国共産党支配の原理第3章で党幹部のビジネス活動が語られているので、見てみましょう。p128~131<最大勢力は「資本家」>(前略) 共産党は労働者階級のための組織である以上、資本家は対立するため「敵」だった。資本家から私有財産を没収してすべての富や資源、サービスを人民が共有する共産主義を目指していた。毛沢東時代は「清貧」が党幹部の美徳とされていた。 ところが江沢民が党規約で共産党が「広範な人民」を代表すると定義し直したため、改革開放以来、中国で増えた経営者や資本家らも含めることができるようになった。 これは、党内で市場経済化の流れに合わせて起業家らを取り込まないと、政権党として基盤を維持できないという危機感があったためだ。中国がちょうど世界貿易機関(WTO)に加盟し、経済のグローバル化に対応していこうとした時期に重なる。「労働者階級を代表する党」と位置づけてきた共産党は、改革を通じて幅広い層を取り込むことができるようになり、党の構成員が大きく変わるきっかけになった。<利権集団への変貌> ここでもう一つ大事なのは、江沢民の「三つの代表」理論は、民間の企業経営者を取り込んだだけではなく、巨大な権限を持つ共産党幹部が経済の市場化を通じて企業経営者や不動産所有者、金融資産保持者といった資本家にに変貌し、中國社会の大半の富を堂々と握ったことにある。 言ってみれば、共産党員がいよいよ共産主義という理想をかなぐり捨てて、大手を振って金もうけに邁進することができるようになった。既得権益層に党が政治的なお墨つきを与えたに等しい。貧富の格差が一気に広がるきっかけをつくった。 そこには労働者のための共産党という視点はほぼない。持てる者ほど共産党による統治の維持を必要とし、持たざる者ほど共産党から遠ざかってしまう矛盾をはらむようになった。 米紙「ニューヨーク・タイムズ」は、温家宝元首相の一族は平安保険公司を利用して27億ドルの不正蓄財をしていたと報道している。程暁農氏ら在米中国人経済学者の『中国・・・とっくにクライシス、なのに崩壊しない“紅い帝国”のカラクリ』によれば、共産党高級幹部の子弟や親族が権力を利用してビジネス活動を本格化したのは、江沢民と胡錦涛の時代だった。 具体的には、国有企業を管理していた共産党高官はその国有企業の純資産額を不当に低く見積もり、銀行融資で自ら購入。民営化プロセスの中で株の一部を高値売却し、巨万の富を得つつ、経営者としても居座るという手法が横行していたという。党高官は濡れ手に粟で、企業経営者にも大規模不動産や高額の金融資産の所有者にもなりうる。こうした勢力は、先ほどの党員区分の「ホワイトカラー層」に分類されている。 同書は「金融やエネルギー業界に進出し、私募ファンドの運営や国有企業の掌握によって、まさしく一族と国家が一体となった利益運搬メカニズムをつくりあげた」「彼らは公然と国有資源と公共財の山分けに走ったが、これは中層・下層の役人による腐敗行為のあしき手本となった」と指摘する。 さらに具体的に党幹部の名前を挙げて業界のつながりを記している。たとえば李鵬元首相の子女は、中国の電力業界を支配している。息子の李小鵬氏は中国華能集団の社長・会長を歴任し、「アジアの電力王」と呼ばれた。江沢民の息子、江綿恒氏が通信業界を牛耳ってきたのは、党関係者の間では有名な話だ。元国家副主席、曽慶紅氏の息子、曽偉しは石油業界に手を出していた。『中国共産党支配の原理』2:ウクライナに残された中国人7000人『中国共産党支配の原理』1:習近平氏の怖さ
2024.06.06
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図書館で『もぎりよ今夜も有難う』という文庫本を、手にしたのです。おお 片桐はいりの「もぎり生活エッセイ集」ではないか。・・・面白そうである。【もぎりよ今夜も有難う】片桐はいり著、幻冬舎、2014年刊<「BOOK」データベース>より映画「かもめ食堂」の初日挨拶で、シネスイッチ銀座の舞台に立ったとき、かつて銀座文化でもぎりのアルバイトをした7年間がキラキラした宝物のように思い出されー。「映画館の出身です!」と自らの出自を述べる俳優が、映画が活況だった頃の懐かしい思い出や、旅先の映画館での温かいエピソードをユーモアとペーソスを交えて綴る名エッセイ。<読む前の大使寸評>おお 片桐はいりの「もぎり生活エッセイ集」ではないか。・・・面白そうである。rakutenもぎりよ今夜も有難う「巴里の空の下ケムリは流れる」で石炭暖房の故障騒ぎを、見てみましょう。p29~32<巴里の空の下ケムリは流れる> 学生時代ストーブにコークスをくべた記憶があるのは、何歳から何歳くらいまでの世代だろうか。同い歳の東京生まれに聞いても、いったいそれ、何時代のどこ地方の話? と、まるで昔話を聞くように煙たい目をする人もいる。 東京の南のはずれの下町だけど、我が小学校時代、暖房はいわゆるだるまストーブだった。日直がバケツでコークスを取りに行き、休み時間に少しずつくべてゆく。人並みはずれた暑がりのわたしは、頼まれもせぬのにストーブ番を買って出て、炭の量を最小限にごまかしていた。 中学に入ると、校舎こそおんぼろの木造だったけど、暖房はすっかり全校温度調整されたヒーターが設置されていた。わたしは特別に許しを得て夏用の制服を着、窓際の席を与えられて、すきま風を入れてしのいでいた。 二十代になって、もう一度コークスの暖房に巡り合うことになるとは思いもよらなかった。時は昭和、でも最期の数年である。石炭やコークスの思い出なんて、終戦後に給食で脱脂粉乳を飲んだとか飲まないという話と同じくらい遠い過去になっていた、はずだった。 私が働いていた銀座文化では、入れ替え時間が忙しくないプログラムの時はたっぷりとお昼休みがもらえた。時間はあってもお金がないもぎりたちは、お弁当を持ち寄っては眺めの良い場所にくりだして、のんびりとランチタイムを楽しんだ。日比谷公園、晴海の埠頭、銀座通りに並んだデパートの屋上。なかでもわたしがお気に入りだったのは、銀座文化の屋上である。 裏通りのビルの上から眺めるこの街は、地上とはまるで別人の顔をしていた。銀座のどまん中とは言え、それぞれのビルの上には洗濯物がつるされた屋根部屋があったり、さびたデッキチェアやビーチパラソルが放られていたり、ひそかに育てられた植木が花を咲かせていたりする。日本一の高級商店街の上空にも、少しだけ暮らしの匂いが漂っていたのだ。 もぎりたちはスクリーンの向こうに広がる異国の街に憧れて、よく銀座通りをニューヨークの五番街に見立てたりしていたけれど、銀座文化の屋上はさながら、巴里の屋根の上だった。わたしたちは、「彼の地のアパルトマン暮してのはもしかしたらこんなふう?」と思いをはせながら、フランスパンならぬ、木村屋のあんぱんなどをかじったものだ。 ある冬の一日、そのアパルトマンからの眺めに異変が起こった。いつものように屋上の扉を開けると、夏場にはその存在に気づきもしなかった煙突から、もやもやと黒い煙がたなびいていたのだ。せっかく広げた白いごはんにススがふりかかり、風に合わせて右に左に向きを変える煙に追われて、わたしたちは大あわてで屋上から退散した。 その時はじめて、わたしはこの建物の秘密を知ったのである。「ボイラーの調子が変です!」と報告に行ったわたしたちに「石炭炊いてるからね」と語った社員の北村さんの口調には、ほんの少し内緒の響きがあった。世の中はバブル直前。すでに1980年代である。 そんな時代に映画館が二館と、東宝東和の試写室に川喜多記念映画文化財団なども入っていた銀座のどまん中のビルディングが、石炭の暖房であたためられていたことに、わたしはえらく衝撃を受けた。 ということは、わたしは最も多くの映画を石炭の暖房で観たことになる。銀座文化2で何度もかかった「ブレードランナー」の再映も、わたしたちは石炭のぬくもりの中で観たわけだ。ビルの谷間を車が飛びまわり、レプリカントが暗躍するサイバーパンクな近未来を、すでに手に届くところに感じていたはずなのに。 しかし不思議なことに、わたしはあのビル全体を暖めるだけの大量の石炭が搬入される様子を見た覚えがない。同期のもぎりたちにたずねても、その構造を確かめた者は誰もいないのだ。『もぎりよ今夜も有難う』1:渡り鳥映画館へ帰る
2024.06.05
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図書館で『もぎりよ今夜も有難う』という文庫本を、手にしたのです。おお 片桐はいりの「もぎり生活エッセイ集」ではないか。・・・面白そうである。【もぎりよ今夜も有難う】片桐はいり著、幻冬舎、2014年刊<「BOOK」データベース>より映画「かもめ食堂」の初日挨拶で、シネスイッチ銀座の舞台に立ったとき、かつて銀座文化でもぎりのアルバイトをした7年間がキラキラした宝物のように思い出されー。「映画館の出身です!」と自らの出自を述べる俳優が、映画が活況だった頃の懐かしい思い出や、旅先の映画館での温かいエピソードをユーモアとペーソスを交えて綴る名エッセイ。<読む前の大使寸評>おお 片桐はいりの「もぎり生活エッセイ集」ではないか。・・・面白そうである。rakutenもぎりよ今夜も有難うまず冒頭の「渡り鳥映画館へ帰る」を、見てみましょう。p9~12<渡り鳥映画館へ帰る> みずからの出自を問われたら、「映画館の出身です!」と胸張ってこたえたい。 俳優としての経歴ならば、「大学時代から小劇場の舞台に立ちまして、その後Cmに誘われて、ほどなく映画にも顔を出し・・・」などと言うのが筋かもしれない。でも心の底では、わたしは演劇でも映画でもなく、映画館の出身なのだ、とかたくなに思っている。 十八の頃から約7年間、銀座の映画館で働いた。いわゆるアルバイトの“もぎり嬢”として。大学があった吉祥寺より、劇団の稽古場があった池袋より、はるかに多くの濃いい時間を銀座で過ごした。四丁目の交差点、和光の裏にある銀座文化劇場、現在のシネスイッチ銀座が、もぎりのわたしの生まれ故郷である。 父親が死ぬまでJRのことを「国鉄」、映画のことを「活動」、と呼んではばからなかったように、わたしも新しいしゃれた名前を呼びなれず、二十数年経た今もなお、銀座文化、と呼んでいる。『キネマ旬報』という老舗の映画専門誌の上で、映画好き、を名のれるほど立派な鑑賞歴ではないけれど、とにかく中学に上がった頃から、少ないおこずかいをやりくりして映画にはまめに出かけた。勉強とか学生生活、というものに上手になじめなかったわたしには、放課後や週末ごとの映画通いは、日曜の礼拝に通うような、それは神聖な行事だった。映画を観ている間だけ、なにかから救われる。 学校の帰りが遅くなるたび父親に、「またカツドウか!」と怒鳴られたものだけど、でも、この特別な課外活動のおかげで、ぐれもせず大したまちがいも犯さず、とりあえずまっとうな大人になれたのだ、と今もわたしは信じている。 幼い頃から、どんな映画を観てもたいてい口もきけないくらい感動してしまう。見終わるとひと言もしゃべれなくなってしまうので、歳とともに、誰かと連れ立って行くことが少なくなっていった。 だいたい、せっかくロバート・レッドフォードやポール・ニューマンと同じ世界にいる時に、なぜ同行の友だちのひそひそ声に呼び戻さなければならないのか。それがわからなかった。わたし自身はよく覚えていないけど、わざわざクラスメイトと一緒に出かけたのに、「離れた席で観させてほしい」と主張して、ひとり、かぶりつきの席で背筋を伸ばし、身じろぎモセズスクリーンに観入っていたらしい。 あまりに映画の世界に入りこみすぎるので、明るくなっても夢からさめずに困った。「ジョーズ」を観て、湯船につかれなくなったのもこの頃だ。お風呂はじきに克服したが、海で泳げるようになるのには、それから数年がかかった。 あの頃は、映画を映画と思っていなかった。目の前の光景がつくりものだなんて、考えたくもなかったのだ。うっとりするようなラブシーンの後ろで、何十人のスタッフがカメラやマイクを構えているなんて想像すらしたくない。だからいくら好きでも、映画の中で働きたいとは思わなかったのである。 とにかく、ただスクリーンのそばにいたい。映画のそばで働ける仕事がしたい。受験勉強にいそしんでいた時分から、大学に入ったら映画館で働こうと決めていた。そしてできればそれは、幼い頃から通いなれた日比谷や有楽町、銀座界隈の劇場であってほしかった。 学生がアルバイト先を決めるのに、これほどピンポイントのこころざしを持っていることもそうないだろう。わたしは大学に入るなり、この地区の映画館に片っぱしから電話をかけた。 かつての日比谷スカラ座や日劇や有楽座、丸の内ピカデリーに松竹セントラル。しかしこれらの映画館は皆東宝や松竹の直営で、もぎり嬢もチケット売り場も売店も、正式の社員が雇われていたのだ。そして、この地域で唯一学生アルバイトが入りこむ余地があったのが、この銀座文化だったというわけだ。銀座文化は中高生の頃、名画座なのに一本立てでしかも250円というお手軽さが気に入って通っていた、なじみの映画館だった。 宝物のような7年間だった。毎日のように映画館に通い、好きな時に劇場に入り、好きな映画を何回も観た。そしてなにより、一緒に働く仲間たちはそろいもそろって大の映画好きで、仕事中も仕事後ものどが痛くなるまで映画の話に明け暮れた。時給が安いことなんて、ほとんど苦にならなかった。
2024.06.05
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早朝に散歩する太子であるが、南東の空に月と金星が見えるのです。ちょうど三日月の内側に金星が位置しているが、これって中東諸国が好むマークではないか。また、このマークは春分と関係があるのではないか?梅雨入り宣言はまだ出ていないが・・・梅雨入り前に、各地に大雨や雷雨が発生している様ですね。『日本のならわしとしきたり』という蔵書に二十四節季の記事があることを思い出したのです。【日本のならわしとしきたり】ムック、 徳間書店、2012年刊<内容紹介>ありふれたムック本ということなのか、ネットにはデータがありません。<大使寸評>とにかく「今日は二十四節季でいえば、何になるか♪」を知りたいロボジーにとって、座右の書となるでしょう♪Amazon日本のならわしとしきたりこの本で、芒種のあたりを見てみましょう。和暦p16<芒種>米、麦、穀類の種を蒔く、収穫へ向けた出発の季節 小満から数えて約15日、立夏から約30日を経ると「芒種」の節となる。期間は例年6月5~6日ころから始まり夏至(6月21日ころ)の前日までになる。 芒種とは、「穂の出る種類の穀物の種を蒔く時期」ほどの意味で、特に「米」を指した。米は寒冷に弱い性質を持っていたため、種を蒔くのはこの時期だったが、品種改良後の現在はもっと早く行われている。『暦便覧』には「芒(のぎ)のある穀物稼種する時なり」とある。芒とは、米・麦のように籾(もみ)でくるまれた種子のことだ。 米に限らず、農作業は1年間という長いスパンで、種蒔き→育成→収穫→収穫後の田畑の涵養→作付け計画などが進められる。長い間の経験や体験、試行錯誤を経て、最良の時期が選ばれてきた『暦便覧』はその集大成でもあったのである。 芒種のころは、西日本では梅雨入りしており、大量の水は必要とする稲作に適した時期でもあった。梅雨入りかその少し前の時期に当たる芒種節の気候は、暑さが日一日と増し、湿度が高く、徐々に梅雨めき始め、五月雨(さみだれ)を経て梅雨に入り、西日本から「田植え」が北上する。 芒種の期間の七十二候は、次の通り。 初候「蟷螂生(かまきり、しょうず)」 次候「腐草、為蛍(くされたるくさ、ほたるとなる)」 末候「梅子黄(うめのみ、きばむ)」籾(もみ)でくるまれた種子のことを芒(のぎ)というのか・・・暦便覧は勉強になりますね♪二十四節季の小満に注目(復刻)
2024.06.04
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漫画に関するディ-プな雑誌『ガロ』があったようで、発刊当時に見たわけではないのだが・・・でも、その内容が私のツボを突いていて、ええでぇ♪*********************************************************図書館で、『ガロ曼陀羅』という本を手にしたのです。貸し本屋系からメジャー系まで、ほとんどすべての漫画家がコメントしているのが、スゴイでぇ♪【ガロ曼陀羅】ガロ史編纂委員会編、阪急コミュニケーションズ、1991年刊<「BOOK」データベース>より創刊号(1964年9月)から318号(1991年6月)までの全表紙をカラー写真で収録。『ガロ』掲載全作品を作家別に網羅。約30年におよぶ『ガロ』の歴史と変遷。まるごとオリジナル書き下ろし。<読む前の大使寸評>貸し本屋系からメジャー系まで、ほとんどすべての漫画家がコメントしているのが、スゴイでぇ♪amazonガロ曼陀羅『ガロ』が見つけた異才・つげ義春のコメントを、見てみましょう。p20~22青林堂主人 長井さんとの最初の出会いは、ぼくが大塚に住んでいた頃、出来たての白土三平さんの『忍者武芸帳』第1巻を持ってひょっこり訪ねてきたのが最初で、三洋社を始めた頃だったと思います。 白土さんのデビュー以前から、ぼくは貸本向けのマンガを描いていましたが、白土さんはよく、ぼくの作品を読んでくれていたようですので、白土さんに言われて長井さんが来たのかな、とも思いました。 それで、三洋社の『忍風』に描くようになったのです。当時はミステリー、ハードボイルドものが人気があったので、その手の作品を描いていました。 しばらくして、僕も引っ越しして、少しマンガから遠ざかっていた頃、『ガロ』の本の柱に「つげ義春さん、連絡乞う」と出ていたのを友だちの漫画家が見て、ぼくに教えてくれました。別に放浪していたわけでもなかったのですが、引っ越し先の住所が分からなかったからでしょうか。 それで長井さんのところへ出向きました。白土さんが、『ガロ』を作るときのメンバーにぼくの名前も考えていてくれていたからでしょうね。 当時は、本当にこっちも苦しかったから、1ヵ月後の原稿料の支払いも待てず、原稿と引き換えにギャラをもらうということでやっていました。 でも、神保町の長井さんの待ち合わせがなかったときは、練馬の赤目プロに行って、白土さんに二回くらい立て替えてもらったこともありました。長井さん、白土さんにそれを返したのかな? それが気掛かりですが、もしそのままだったら、ぼくは未だに白土さんから原稿料を借りていることになってしまっていますね。 そのついでというわけでもないのですが、1週間くらいは白土さんの手伝いをしたこともあります。 「紅い花」がNHKで映像化されたことについて何か、ということなのですが、正直言って当時はあまり面白くなかったです。70分くらいの作品で、佐々木昭一郎さんがきれいな映像に仕上げてくれましたが、反戦思想を作品の中に盛り込んだりしたことがふあわしくないように思ったんです。 でも、ぼくにとっても初めての経験でしたし、エミー賞という海外の賞や芸術祭参加作品の大賞をいただいた作品なので、今思えばすごいことだったのでしょうね。ガロ曼陀羅1:佐々木マキさんのコメントガロ曼陀羅2:『ガロ』創刊当時のお話ガロ曼陀羅3:南伸坊・元編集長の昔話ガロ曼陀羅4:青林堂社長の「はじめに」ガロ曼陀羅5:蛭子能収さんのコメント『ガロ曼陀羅』6:つげ義春のコメント
2024.06.03
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図書館で『中国共産党支配の原理』という本を、手にしたのです。このところ米中の緊張が高まっているが最悪の場合、習近平氏とトランプ氏が対立するケースがあるわけで・・・習近平氏支配の構造を見ておこうということでチョイスしたのです。【中国共産党支配の原理】 羽田野主著、日経BP日本経済新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より謎の巨大組織を縦横無尽に読み解く。「秘密結社」から始まった中国共産党は潜在的に守りの意識や被害者意識が強く、常に内側に不安を抱えている。結党目的の共産主義の実現はすでに失われ、政権党として君臨することが自己目的化している。米国の「圧力」にさらされていると受けとめる共産党は、軍事的統制を強め有事体制に移行しつつある。中国の隅々に張りめぐらされた党組織は硬直化し、自己改革できない「大企業病」に冒されているようだ。膨張の果てに戦前の日本と同じ道を歩むリスクさえ見え隠れするようになった。外部から見た不可解な行動をとる中国共産党の原理とは何か。共産党の憲法といわれる「党規約」の読み解きを交えながら、有益な中国分析を提供する。「党規約」最新版の全訳も掲載。<読む前の大使寸評>このところ米中の緊張が高まっているが最悪の場合、習近平氏とトランプ氏が対立するケースがあるわけで・・・習近平氏支配の構造を見ておこうということでチョイスしたのです。rakuten中国共産党支配の原理第6章で共産党の死角が語られているので、見てみましょう。p242~246<ウクライナに残された中国人7000人> 中国外交を見てきて最もあぜんとさせられたのが、2022年2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻をめぐる対応だ。米国は1年以上前からロシア侵攻のリスクを把握し、日本や欧州だけでなく、中国にもくり返し伝えてきた。 2022年2月の侵攻前には、米国のインテリジェンスを信じて日本や欧州の主要国はウクライナにいる自国民に退避勧告を出した。2月中旬には退避を事実上終えていた。 対照的な対応を取ったのが中国だった。たとえば侵攻2日前の中国外交部の記者会見で、「ウクライナに駐在する中国大使館のスタッフは全員大使館にいるのか。ほかの公的機関はどうか」との記者の質問に、汪文斌副報道局長はこう答えている。「ウクライナ東部情勢に重大な変化が起きた。中国大使館はすでに在留中国公民と企業に対し安全を守るよう注意喚起した。中国外務省と大使館は引き続き在留中国公民、企業と緊密に連絡を取り、領事保護・支援を迅速に行い、その安全と正当な権益を確実に守る」。あとでわかることだが、事実何もしていなかった。 恥を忍んで白状するが、じつはこのときまで筆者も中国の判断が正しいのではないかと考えていた。ロシアの侵攻はないのではないか。なぜならウクライナ侵攻の直前に習近平氏がプーチン氏と会談していたためだ。2022年2月24日の北京冬季五輪の開幕式に合わせてプーチン氏を主賓として招待し、食事会まで開いている。共同声明では「上限のない協力」を謳ったばかりだった。 その中国が2月下旬になっても自国民をウクライナから退避させていないということは、ロシアの侵攻は「脅し」ではないかと推理した。だがものの見事に外れた。 侵攻した当日の中国外務省の記者会見はやはり歴史に残る内容となった。「現在、どれだけの中国公民がウクライナにいるのか。彼らに何か最新の指示を出したか」との記者の問いかけに華春瑩報道局長はこう答えた。「具体的人数については現在まだ把握していない。中国大使館は安全注意情報を出した。中国人民には団結奮闘し、互いに助け合うよい伝統がある。困難に遭遇したら、助け合うことを希望する。大使館は全力で支援する」 侵攻が始まっても中国が何の手も打っていなかったことがわかる。現地で団結して助け合えとはあまりに無責任な言い方だ。のちにウクライナに7000人以上の中国人が取り残されていたことが判明する。ロシアと蜜月を謳う中国はウクライナ侵攻をめぐる情報を何もとれていなかったことが、白日のもとにさらされてしまった。<ダイナミズムを欠く組織体質> 再び『失敗の本質』に戻る。同書は3つ目の失敗パターンとして「自己改革が起こらないダイナミズムを欠く組織体質」を挙げる。日本軍の最大の過ちは「言葉を奪ったこと」だと言う。戦争のやり方が歩兵と艦隊から空母機動部隊や航空機、重火器に移っても内部で声が上がらず、イノベーションが起きなかった。組織の末端や情報やアイデア、問題提起が中枢につながることを促進する若くて柔軟な「青年の議論」が許されていなかったと指摘する。 海外メディアの報道によれば、米国はウクライナ侵攻のリスクをくり返し中国に伝えたが、「西側のバイアスがかかった情報」と顧みることはなかった。だが7000人以上もの自国民がウクライナに残されている以上、退避の方法は最低限検討しておくべきだった。『失敗の本質』が指摘するいわゆる「青年の議論」がまるきり欠けていた。それが中ロ首脳会談で侵攻の情報をとれず→ゆえに侵攻はない、あってはならない→侵攻リスクにかかわる情報はすべて遮断・・・との判断に傾いていたとしたら、組織の病巣は深いと言わざるをえない。 「失敗の本質」から抜け出せなかった日本軍は、米国や中国との無謀な戦争に突入し、最後は無条件降伏まで追い込まれた。共産党が同じ病にかかっているとしたら、事態は深刻だ。東シナ海や南シナ海、台湾海峡で米国や日本、台湾と双方が予知せぬ衝突が待ち受けているかもしれない。<公務員試験に殺到する若者> ここから先は、いまの若者の視点から共産党が中国をどのような方向に導いているのかを見ていきたい。若者や女性ほど社会情勢の変化に敏感で、この国の未来を映し出す鏡となるためだ。 習近平氏を頂点とした共産党・国務院(政府)への権力が集中する状況を目の当たりにした若者は、民間企業への就職から公務員試験に殺到するように変わった。若者は自分の未来に真剣だ。リスクを恐れ、無難にやることが生き残る最善の道という風潮が、蔓延し始めている。 2023年1月7,8日に実施された国家公務員試験は、一部の職種の倍率は6000倍に達した。習近平指導部がIT(情報技術)企業などへの締めつけを強化し、民間企業離れが広がっていることが影響している。『中国共産党支配の原理』1:習近平氏の怖さ
2024.06.02
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図書館で『中国共産党支配の原理』という本を、手にしたのです。このところ米中の緊張が高まっているが最悪の場合、習近平氏とトランプ氏が対立するケースがあるわけで・・・習近平氏支配の構造を見ておこうということでチョイスしたのです。【中国共産党支配の原理】 羽田野主著、日経BP日本経済新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より謎の巨大組織を縦横無尽に読み解く。「秘密結社」から始まった中国共産党は潜在的に守りの意識や被害者意識が強く、常に内側に不安を抱えている。結党目的の共産主義の実現はすでに失われ、政権党として君臨することが自己目的化している。米国の「圧力」にさらされていると受けとめる共産党は、軍事的統制を強め有事体制に移行しつつある。中国の隅々に張りめぐらされた党組織は硬直化し、自己改革できない「大企業病」に冒されているようだ。膨張の果てに戦前の日本と同じ道を歩むリスクさえ見え隠れするようになった。外部から見た不可解な行動をとる中国共産党の原理とは何か。共産党の憲法といわれる「党規約」の読み解きを交えながら、有益な中国分析を提供する。「党規約」最新版の全訳も掲載。<読む前の大使寸評>このところ米中の緊張が高まっているが最悪の場合、習近平氏とトランプ氏が対立するケースがあるわけで・・・習近平氏支配の構造を見ておこうということでチョイスしたのです。rakuten中国共産党支配の原理習近平氏の怖さが語られているので、見てみましょう。p96~99<最大の危機、香港デモ> 習近平氏は軍改革を機に、一気に党・軍の権力を手中に収めることに成功する。2016年には毛沢東、鄧小平、江沢民に続いて4代目の党の「核心」に位置づけられた。2017年には国策映画「すごいぜ、中國」を制作し、まさに絶頂の時期だった。 強権を手にした習近平氏が最大の正念場を迎えたのが、2019年3月から2021年夏まで香港に広がった民主化を求めるデモだった。 このデモは、香港政府が捕まえた刑事事件容疑者を中国大陸に引きわたすことを可能にする逃亡犯条約改正案への反対運動で始まった。参加者は香港政府に①条例改正案の全面撤回、②これまでの衝突を「暴動」と認定したことの撤回、③デモ参加者への刑事責任追及の撤回、④警察による暴力行為を独立調査委員会を立ち上げて調べる、⑤香港の行政長官の辞任と直接選挙の実現・・・を突きつけた。これらは「五大要求」と呼ばれデモは大きなうねりをみせた。 2019年6月16日のデモでは、主催者発表で最大約200万が参加し、1997年の香港返還以降で最大のデモとなった。これは香港市民の4人に1人以上が参加した計算だ。デモ鎮圧までに8000人以上が逮捕される大混乱となった。 当時、習近平指導部が最も恐れていたのは、民主化デモの中国大陸への伝播だった。とくに香港と広東省は隣接しており、人々の往来も多く影響を受けやすい。広東省は中国国内で最大の国内総生産(GDP)を誇っており、経済発展が著しい。自由を求める空気はもともと強い。 広東省が香港のデモに「感化」されれば共産党の統治が足元から揺らぐリスクさえあった。ちまたでは習近平指導部が人民解放軍を投入してデモ隊を鎮圧するのではないか、天安門事件の再来かとささやかれていた。<軍投入も検討していた習近平氏> デモが勢いを増していた2019年8月29日、不気味なできごとがあった。人民解放軍の兵士を乗せた装甲車の車列が広東省深圳市から続々と香港に入ってきたのだ。香港市民がざわつくなかで中国国営の新華社は「22回目の香港駐留部隊の交代作戦が無事に終了した」と配信。「今回の交代は香港駐留部隊法の交代規定によって施行するもので、党中央軍事委員会の承認を受けた正常な定例作戦だ」と説明した。 だが奇妙な点がいくつもあった。まず中国のこれまでの公式資料に交代は11月下旬に行うと書いてある。なぜ8月下旬に前倒ししたのか説明がない。また兵士の入れ替えだというのに香港から出ていく兵士の姿が確認できなかった。香港市民は軍の動向を注視しており、出ていけばSNS(交流サイト)などに写真や動画が上がるはずだった。「以前の交代式で兵士はバスに乗ってきていた」との指摘もあった。なぜ今回は装甲車でやってくるのか。 9月を迎え中秋節が近づく頃、当時北京にいた台湾人の知り合いが突然連絡してきた。「大変だ。習近平は軍を投入してデモ隊を弾圧するつもりだ」という。彼は香港に行き、香港駐留部隊に月餅を差し入れている業者の話を聞いたという。月餅は中国のお菓子の一種で、月のように丸く、平べったい形をしていることからこう呼ばれる。9月の中秋節前に贈り物として用いられる。 この月餅業者は、毎年中秋節の前に5000個の月餅を香港駐留部隊に届けていた。部隊内で兵士一人につき一つの月餅を配る習慣があるという。とすれば約5000人の駐留軍がいる計算になる。公式資料で確認してみると、1997年の香港返還を受けて約6000人の解放軍が駐留するようになったとの記事があり、数字はおおむね一致している。 これが今年は1万個に増えたという。駐留兵士は5000人から1万人に倍増したことになる。これが何を意味するか。香港駐留部隊の指揮権は北京の中央軍事委員会にある。つまり今回の増員劇は習近平氏が指示していたことになる。 中国側は増員を徹底して秘匿していたことから、軍の投入を本気で検討していた可能性がある。ちょうどこの時期、北京にある米国の大使館と日本の大使館の駐在武官は、解放軍の投入の可能性をめぐって頻繁に情報交換をしていた。 米国側から武力鎮圧の可能性をどう分析しているか連日のように意見を求められたという。担当者は町中に張りめぐらされた監視カメラから逃れるため、変装して散歩をするふりをしながら情報を交換したとふり返る。 越えてはいけない一線、レッドラインはどこにあったのか。いざとなれば軍によるデモ弾圧もいとわない習近平氏の意思が伝わってきた事件だった。香港のデモはその後、2019年12月頃から広がり始めた新型コロナウイルスの流行で下火になり、2020年6月に香港国家安全維持法が施行され、完全に封じ込められた。
2024.06.02
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今回借りた3冊です。 だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「手あたり次第」でしょうか♪<市立図書館>・中国共産党支配の原理・もぎりよ今夜も有難う・『世界』2024年3月号<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【中国共産党支配の原理】 羽田野主著、日経BP日本経済新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より謎の巨大組織を縦横無尽に読み解く。「秘密結社」から始まった中国共産党は潜在的に守りの意識や被害者意識が強く、常に内側に不安を抱えている。結党目的の共産主義の実現はすでに失われ、政権党として君臨することが自己目的化している。米国の「圧力」にさらされていると受けとめる共産党は、軍事的統制を強め有事体制に移行しつつある。中国の隅々に張りめぐらされた党組織は硬直化し、自己改革できない「大企業病」に冒されているようだ。膨張の果てに戦前の日本と同じ道を歩むリスクさえ見え隠れするようになった。外部から見た不可解な行動をとる中国共産党の原理とは何か。共産党の憲法といわれる「党規約」の読み解きを交えながら、有益な中国分析を提供する。「党規約」最新版の全訳も掲載。<読む前の大使寸評>追って記入rakuten中国共産党支配の原理【もぎりよ今夜も有難う】片桐はいり著、幻冬舎、2014年刊<「BOOK」データベース>より映画「かもめ食堂」の初日挨拶で、シネスイッチ銀座の舞台に立ったとき、かつて銀座文化でもぎりのアルバイトをした7年間がキラキラした宝物のように思い出されー。「映画館の出身です!」と自らの出自を述べる俳優が、映画が活況だった頃の懐かしい思い出や、旅先の映画館での温かいエピソードをユーモアとペーソスを交えて綴る名エッセイ。<読む前の大使寸評>追って記入rakutenもぎりよ今夜も有難う【『世界』2024年3月号】雑誌、岩波書店、2024年刊<出版社>より【特集1】さよなら自民党 派閥・世襲・裏金 30年前の1994年1月29日、政治改革関連4法が成立した。改革の矛盾や問題点は様々に指摘されてきたが、今回の裏金事件でついに破断界に達したかに見える。【特集2】働けど、働けど どこの職場でも人員が削減される中で、労働時間やストレスばかりが増えている。物価がどんどん高くなる一方で、賃金は増えそうになく、税金や社会保険料で手取りは目減りする。働きつづけたからといって、「老後の安心」は手に入らない。こんな社会にだれがした?<読む前の大使寸評>追って記入amazon『世界』2024年3月号
2024.06.01
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、副本?、予約504)現在115位・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、副本12、予約373)現在36位・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、副本7、予約177)現在23位・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、副本5、予約126)現在22位・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、副本17、予約402)現在105位・斎藤幸平『マルクス解体』(11/28予約、副本?、予約?)現在1位・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、副本?、予約?)現在3位・高野秀行『イラク水滸伝』(1/06予約、副本3、予約86)現在43位・大学教授 こそこそ日記(1/12予約、入荷待ち、予約?)現在12位・絲山秋子『神と黒蟹県』(3/02予約、副本3、予約63)現在46位・三浦しおん『しんがりで寝ています』(4/12予約、副本?、予約106)現在84位・カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」(4/27予約、副本1、予約48)現在45位・前田和男『昭和街場のはやり歌』 (5/10予約、副本?、予約8)現在8位・小倉ヒラク『アジア発酵紀行』 (5/14予約、副本2、予約5)現在21位・米番記者が見た大谷翔平(5/16予約、副本1、予約8)現在2位・椎名誠『続 失踪願望』(5/31予約、副本?、予約8)現在9位<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』<予約候補>・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・李琴峰『彼岸花が咲く島』:西図書館で見っけ・井上ひさし『本の運命』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』・ケン・リュウ『草を結びて環を衡えん』:図書館未収蔵・九段理恵『東京都道場塔』:図書館未収蔵・外山滋比古『思考の整理学』・ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』・西東三鬼『神戸・続神戸』・「中国」はいかにして統一されたか・街道をゆく「モンゴル紀行」「南蛮のみち」・地球の歩き方 日本・畑正憲『どんべえ物語』:図書館未収蔵・内田樹『勇気論』:図書館未収蔵・有田芳正『誰も書かなかった統一教会』<予約分受取:2/27以降> ・村上春樹×柴田元幸『翻訳夜話』(2/15予約、2/27受取)・楊双子『台湾漫遊鉄道のふたり』(6/23予約、2/27受取)・川添愛『世にもあいまいなことばの秘密』(1/26予約、2/27受取)・呉叡人『フォルモサ・イデオロギー』(2/03予約、3/11受取) ・森見登美彦『太陽と乙女』(3/23予約、3/31受取)・Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機 (4/16予約、4/28受取)・本川達雄『ウマは走るヒトはコケる』(3/31予約、5/10受取)・南海トラフ地震の真実(10/20予約、5/15受取)**********************************************************************【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家【墨のゆらめき】三浦しおん著、 新潮社、2023年刊<出版社>より実直なホテルマンは奔放な書家と文字に魅せられていく。書下ろし長篇小説! 都内の老舗ホテル勤務の続力は招待状の宛名書きを新たに引き受けた書家の遠田薫を訪ねたところ、副業の手紙の代筆を手伝うはめに。この代筆は依頼者に代わって手紙の文面を考え、依頼者の筆跡を模写するというものだった。AmazonのAudible(朗読)との共同企画、配信開始ですでに大人気の書き下ろし長篇小説。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/9予約、副本12、予約373)>rakuten墨のゆらめき【堤未果のショック・ドクトリン】堤未果著、幻冬舎、2023年刊<「BOOK」データベース>より「ショック・ドクトリン」とはテロや大災害など、恐怖で国民が思考停止している最中に、為政者や巨大資本がどさくさに紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことである。日本でも大地震やコロナ禍という惨事の裏で、知らない間に個人情報や資産が奪われようとしている。パンデミックで空前の利益を得る製薬企業の手口、マイナンバーカード普及の先にある政府の思惑など…。強欲資本主義の巧妙な正体を見抜き、私たちの生命・財産を守る方法とは?滅びゆく日本の実態を看破する覚悟の一冊。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/25予約、副本7、予約177)>rakuten堤未果のショック・ドクトリン【ぼくはあと何回、満月を見るだろう】坂本龍一著、新潮社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「何もしなければ余命は半年ですね」ガンの転移が発覚し、医師からそう告げられたのは、2020年12月のこと。だが、その日が来る前に言葉にしておくべきことがある。創作や社会運動を支える哲学、坂本家の歴史と家族に対する想い、そして自分が去ったあとの世界についてー。幼少期から57歳までの人生を振り返った『音楽は自由にする』を継ぎ、最晩年までの足跡を未来に遺す、決定的自伝。著者の最期の日々を綴った、盟友・鈴木正文による書き下ろし原稿を収録。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/18予約、副本5、予約126)>rakutenぼくはあと何回、満月を見るだろう【図書館のお夜食】原田ひ香著、ポプラ社、2023年刊<「BOOK」データベース>より東北地方の書店に勤めるものの、うまくいかず、仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、亡くなった作家の蔵書が集められた、“本の博物館”のような図書館だった。開館時間は夜7時から12時まで、まかないとして“実在の本に登場する料理”が出てくる「夜の図書館」で、本好きの同僚に囲まれながら働き始める乙葉だったがー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/04予約、副本17、予約402)>rakuten図書館のお夜食【マルクス解体】斎藤幸平著、 講談社、2023年刊<「BOOK」データベース>よりいまや多くの問題を引き起こしている資本主義に対する処方箋として、斎藤幸平は、マルクスという古典からこれからの世の中に必要な理論を提示する。本書『マルクス解体』は、マルクスの物質代謝論、エコロジー論、プロメテウス主義の批判から、未来への希望を託す脱成長コミュニズム論までを精緻に語る。これまでの斎藤の活動の集大成であり、同時に「自由」や「豊かさ」をめぐり21世紀の基盤となる新たな議論を提起する書である。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(11/28予約、副本?、予約?)>rakutenマルクス解体【鉄道と愛国】吉岡桂子著、岩波書店、2023年刊<「BOOK」データベース>より戦後日本の発展の象徴、新幹線。アジア各地で高速鉄道の新設計画が進み、中国が日本と輸出を巡って競い合う現在、新幹線はどこまで日本の期待を背負って走るのか。一九九〇年代から始まった新幹線商戦の舞台裏を取材し、世界最長の路線網を実現した中国の高速鉄道発展の実像に迫る第一部、中国、香港、韓国、東南アジア、インド、ハンガリーなど世界各地をたずね、鉄道を走らせる各国の思惑と、現地に生きる人々の声を伝える第二部を通じて、時代と共に移りゆく日中関係を描き出し、日本の現在地をあぶりだす。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(12/04予約、副本?、予約?)>rakuten鉄道と愛国【イラク水滸伝】高野秀行著、文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>よりアフワールーそこは馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組み、方角すらわからない地。権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込む、謎の巨大湿地帯。中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録ー“現代最後のカオス”に挑んだ圧巻のノンフィクション大作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/06予約、副本3、予約86)>rakutenイラク水滸伝【大学教授 こそこそ日記】 多井学著、三五館シンシャ、2023年刊<「BOOK」データベース>より「いくらでも手抜きのできる仕事」。現役教授が打ち明ける、ちっとも優雅じゃない生活。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/12予約、入荷待ち、予約?)>rakuten大学教授 こそこそ日記【神と黒蟹県】絲山秋子著、 文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>より「黒蟹とはまた、微妙ですね」。日本のどこにでもあるような「地味県」の黒蟹県。そこで暮らす、そこを訪れる、名もなき人々や半知半能の神がすれ違いながら織りなす、かけがえなく、いとおしい日々。まだ名付けられていない人間関係を描き続けてきた著者真骨頂の連作小説集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(3/02予約、副本3、予約63)>rakuten神と黒蟹県【しんがりで寝ています】三浦しおん著、 集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌「BAILA」での連載4年分に、書き下ろしを加えた全55編!三浦しをんの沼にどっぷりハマる、最新&爆笑エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/12予約、副本?、予約111)>rakutenしんがりで寝ています【カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」】 室橋 裕和著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりいまや日本のいたるところで見かけるようになった、格安インドカレー店。そのほとんどがネパール人経営なのはなぜか?どの店もバターチキンカレー、ナン、タンドリーチキンといったメニューがコピペのように並ぶのはどうしてか?「インネパ」とも呼ばれるこれらの店は、どんな経緯で日本全国に増殖していったのか…その謎を追ううちに見えてきたのは、日本の外国人行政の盲点を突く移民たちのしたたかさと、海外出稼ぎが主要産業になっている国ならではの悲哀だった。おいしさのなかの真実に迫るノンフィクション。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/27予約、副本1、予約48)>rakutenカレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」【昭和街場のはやり歌】前田和男著、 彩流社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「はやり歌」から、明日の日本の姿が見えてくる…。歌とともに時代を共有した「団塊」といわれるベビーブーマー世代が、エピソードを交え描く歌謡社会文化論!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/01予約、副本?、予約8)>rakuten昭和街場のはやり歌【アジア発酵紀行】小倉ヒラク著、文藝春秋、2023年刊<出版社>よりアジアの巨大な地下水脈をたどる冒険行。「発酵界のインディ・ジョーンズ」を見ているようだ!ーー高野秀行(ノンフィクション作家) 自由になれーー各地の微生物が、奔放な旅を通じて語りかけてくる。ーー平松洋子(作家・エッセイスト)発酵はアナーキーだ! チベット~雲南の「茶馬古道」からインド最果ての内戦地帯へーー前人未到の旅がいま幕をあける! 壮大なスケールでアジアの発酵文化の源流が浮き彫りになる渾身作。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/14予約、副本2、予約21)>rakutenアジア発酵紀行【米番記者が見た大谷翔平】 ディラン・へルナンデス著、朝日新聞出版、2024年刊<出版社>より本塁打王、2度目のMVPを獲得し、プロスポーツ史上最高額でロサンゼルス・ドジャースへの移籍が決まった大谷翔平。渡米以来、その進化の過程を見続けた米国のジャーナリストが語る「二刀流」のすごさとは。データ分析や取材を通して浮かび上がってきた独自の野球哲学、移籍後の展望など徹底解説する。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/16予約、副本1、予約8)>rakuten米番記者が見た大谷翔平【続 失踪願望】椎名誠著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より「おい、シーナ、逃げるなよ」親友からの最期の“檄”その真意とは?書き下ろし「さらば友よ!」収録。老いること、喪失を抱えて生きること、愛するものたちへの思いをまっすぐに。79歳の日録が静かに差し出す新たな人生の世界線…共感必至!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/31予約、副本?、予約8)>rakuten続 失踪願望【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2024.06.01
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好書好日「好きなことをして老いる」ネットを巡っていたら、朝日の好書好日で『川本三郎さん「ひとり遊びぞ 我はまされる」インタビュー 好きなことをして老いる』がヒットしたのです。とにかく、「好きなことをして老いる」というキャッチコピーに捕まったわけでおます♪*********************************************************川本三郎さん「ひとり遊びぞ 我はまされる」インタビュー 好きなことをして老いるより 映画を見て、本を読み、旅に出る。雑誌「東京人」の連載をまとめた4冊目。題名は良寛の歌からとった。 「ローカル線、台湾、荷風が、今私の好きな三本柱です」 田舎の駅で降り、小さな商店街のある町を歩くのが楽しみだったが、コロナ禍で難しくなった。でも。 「私の造語で『近鉄(ちかてつ)』という言葉があります。乗り鉄の一種で、近場の鉄道に乗る。八高線や房総のいすみ鉄道に、よく乗りに行きました」 台湾へは2015年から通っている。自著『マイ・バック・ページ』が翻訳され、その出版社の人たちに会いに行ったのがきっかけだ。 「彼らと話すのが喜びです。学生による『ヒマワリ革命』が起き、日本の1960年代から70年代を書いた私の本が読まれたそうです」 そして永井荷風。毎年、初詣はゆかりの寺に。終焉の地・千葉県市川市に書斎が再現されると見に行く。 「好きな作家を持つのは大事ですね。自分が年をとると、太宰治や芥川龍之介のように若くして亡くなった作家に、興味がなくなってくる。79歳で死んだ荷風は老いを知っています。最初から新しさを目指していなかったので、古びないのです」 それまで「花柳小説家」や「好色作家」と見られていた荷風を「都市の作家」ととらえ直し、『断腸亭日乗』に沿って読み解いた『荷風と東京』は、代表作の一つだ。実は今、「荷風の昭和」という連載が50回を超えて続いている(雑誌「波」)。ようやく戦後まで来た。 「軍人や政治家でなく、市井の一作家を通して見た小さな昭和です。荷風は物価や生活、風俗も細かく記している。空襲に遭い地方を転々するなど、日本人の悲劇も体現しています。連載があと何回かで終わるので、さびしくて。この4年ほど書いている時は、本当に幸せでしたね」(文・石田祐樹 写真・大野洋介)=朝日新聞2022年11月26日掲載実は『映画の巨人たち リドリー・スコット』5で川本三郎さんの映画評を読んで、「これは同好の作家ではないか」と思い、朝日の好書好日をチェックしていたらこの記事を見つけた次第です。
2024.05.31
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朝日新聞デジタルでスクラップしているのだが・・・その「スクラップ一覧」と最新記事を紹介します。この一覧は、いわば我が関心事一覧ともいえるのです。*********************************************************■エンジン、生き残りのカギは脱炭素 トヨタ・マツダ・スバルが新技術2024年5月28日 (2024年5月29日登録)中国が牽引する、EV生産であるが・・・EV拡大の鈍化、日本車の頑張りなどで風向きが変わりつつあるようです。********************************************************* トヨタ自動車、マツダ、スバルの3社は28日、新しいエンジンや関連技術を紹介するメディア向けイベントを東京都内で開いた。いずれも厳しい環境規制に備えた「脱炭素」を意識したもので、電気自動車(EV)だけに絞らない全方位戦略をアピールする狙いだ。 トヨタは、開発中の排気量1.5リットルと2.0リットルの次世代エンジンを展示。電動ユニットと組み合わせることを前提に、小型で効率のよいエンジンになると説明した。これまでよりも電気による走行の割合が高い、ハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)に載せるという。 マツダは、独自技術のロータリーエンジンと関連技術を披露。もともと小型で軽いため電動化の部品を載せやすい特徴があることから、組み合わせにより燃費が劣る面をカバーできる。今後は様々なPHVに搭載する絵を描いているという。 スバルは、独自技術の水平対向エンジンにトヨタのハイブリッドシステムを組み合わせた新しい仕組みを紹介した。秋には生産を始められるという。 トヨタは27日には、出光興産やENEOS(エネオス)、三菱重工業と一緒に、自動車用のカーボンニュートラル(CN)燃料の導入や普及に向けた検討を始めると発表。28日のイベントでは、マツダとスバルのトップも協力すると表明した。マツダの毛籠(もろ)勝弘社長は、ロータリーエンジンが、バイオ燃料を含む様々な燃料との相性がいいと説明した上で、「社会に貢献できる技術として活用するのが私たちの使命だ」と話した。 3社がこうしたイベントを開いたのは、多くのメーカーがEVシフトを強めている背景がある。EVは欧米で売れ行きにブレーキがかかったり、中国で価格競争が激しくなっていたりするが、今後、さらに環境規制が厳しくなることでエンジンの生き残りが難しくなることも指摘されている。トヨタの佐藤恒治社長は「未来への志を共有する仲間と切磋琢磨することで、技術を進化させたい」と述べた。 とはいえ3社も、EV開発の手を緩めているわけではない。「投資額でいえば今後の技術開発の中心は、やはりEVなど電動化技術だ」(トヨタ幹部)という。 加えてエンジンでも大きな革新を進めようとすれば、研究開発費はさらにかさむ。トヨタの技術部門トップの中嶋裕樹副社長は「研究開発費はもちろん上がる。その分『いい車』を作ってがんがん売るしかない」。特定の技術だけに寄らない姿勢は、かえってリスク分散になるとも考えている。 販売台数規模でトヨタの1割ほどのスバルの藤貫哲郎取締役は「会社の規模が小さいことは、技術開発を深くやることにはデメリットはない。ただ、広くまんべんなくとはいかないので、(他社と)お互い補完できればいい」と話した。(渡辺七海、大平要)■「警告」でなく「懲罰」中国側の威嚇拍車 総統就任演説から2日半2024年5月23日 (2024年5月24日登録)■月探査機SLIMが復活 太陽光で発電し通信確立 岩石調査も成功2024年1月29日 (2024年1月29日登録)■片目の「まねちゃん」は幸せの招き猫 妻は夢かなえて小説家に、夫は2023年11月12日 (2023年11月12日登録)■飛行士は男、看護師は女…ChatGPT、職業にジェンダーバイアス2023年11月9日 (2023年11月10日登録)「ChatGPT」(チャットGPT)はジェンダーバイアスを持っているってか・・・・さもありなんやでぇ。■荒波の捕鯨史証人、日新丸が引退 1.7万頭解体 反対派が妨害 新聞切り抜き2023年11月5日 (2023年11月6日登録)捕鯨母船「日新丸」といえば、反捕鯨団体の妨害活動などによく耐えてきた船ではないか・・・ご苦労さんでした。■囲碁の仲邑菫さん会見 韓国移籍に「高レベルでの勉強が私には必要」2023年10月30日 (2023年10月31日登録)ウン しっかりしてるがな。 結果が出れば、第2の大谷翔平となれるかも♪■「小型で低価格」日本向けEV 中国大手BYD、立体駐車場に合わせ低く 新聞切り抜き新聞切り抜き2023年9月21日 (2023年9月21日登録)補助金を使えば200万円代で買えるのか・・・かなり手ごわい感じやんけ。■「日本は嫌いだけど」 中国から福島に迷惑電話かけた18歳の本音2023年9月21日 (2023年9月21日登録)国歌が抗日を歌う国であり、負の歴史を反芻する国なので、この行動に出たのも分かる気がするが・・・■H2A打ち上げ「ほっ」 イプシロン・H3、失敗続いた国産ロケット 新聞切り抜き2023年9月8日 (2023年9月21日登録)H3は失敗したが、H2A打ち上げは成功(41機連続で)したので・・・良しとするか。■「日本語ってタマネギみたい」北欧出身の漫画家オーサさんが語る魅力2022年4月10日 (2023年9月19日登録)日本語学習に関しては、トップクラスのスキルではないか♪■囲碁の仲邑菫女流棋聖、韓国棋院に移籍の意向 すでに棋士登録を申請2023年9月11日 (2023年9月11日登録)■29歳で獄死した反戦川柳作家・鶴彬 故郷で碑前祭2022年9月15日 (2023年7月6日登録)反戦作家といえば・・・この人を外すわけにはいけないのだろう。■「国恥地図」に秘められた帝国の記憶 世界秩序揺さぶる中国の歴史観2022年4月21日 (2023年7月2日登録)覇権中国スタンスのもとには、この国恥地図があったのか。■突然の解散先送り、首相判断なぜ 公明と亀裂、世論…不安材料重なり2023年6月15日 (2023年6月16日登録)「これからは大きな見せ場もなく、支持率はダラダラと下り坂では」との声もあるようです。■英語信仰は「壮大なムダ」、言語学者の危惧 「日本語こそ国際語」2023年6月12日 (2023年6月14日登録)ウン ええこと言ってるがな♪■書店ゼロ自治体、全国で26% ネットでの無料配送規制の議論も2023年3月29日 (2023年6月10日登録)書店の減少といえば、本の物流的側面や、図書館との住み分けが気になるのです。■強まるエルドアン氏への働きかけ スウェーデンのNATO加盟めぐり2023年6月5日 (2023年6月5日登録)プーチンからもウクライナからも支持されるエルドアン氏は、バランス感の長けた政治家であるが・・・要注意なんでしょうね■各地に線状降水帯、広範囲で大雨 東海道新幹線、全線で運転見合わせ2023年6月3日 (2023年6月2日登録)西日本一帯に避難警報が出ている模様です。■事故から12年後に里帰りした元町職員 未練断ち切った「けれど…」2023年5月31日 (2023年5月31日登録)被災の原因は地震、津波にあるとしても、政府や東電の無慈悲という人災でもあったようですね。■ウクライナはなぜF16を求めたのか? カギを握る総合力と戦い方2023年5月30日 (2023年5月31日登録)「ロシア領内を攻撃したい」という誘惑にかられる可能性もあるようですね。(後略)*********************************************************<スクラップ機能や使い方について> 気に入った記事、あとで読みたい記事をスクラップして、保存しておくことができます。最大5000件まで、記事閲覧期限を過ぎても、保存可能です。 また、新聞記事検索で検索した記事の新聞切り抜き画像もスクラップして保存できます。 スクラップした記事にメモや最大10件のタグ(分類名)を付けることもできます。保存した記事は、記事の本文や見出し、メモ、タグに入力した文字で検索することができます。 スクラップ記事とメモ・タグは、ネット上の保管庫(クラウドサーバー)に保存され、通信環境があれば、ブラウザー版でもアプリ版でも共有して閲覧できます。<新聞記事検索で検索した切り抜きイメージ画像をスクラップする>1. 新聞記事検索で表示された検索結果一覧の記事の右にある「新聞切り抜き」のアイコンの下の「スクラップ」ボタンをクリックしてください。「スクラップをしました」と表示されるとスクラップ完了です。記事の新聞切り抜き画像がスクラップブックからご覧いただけます。 2. 新聞切り抜き画像が表示された画面でも、左上の「スクラップ」ボタンをクリックすると、スクラップできます。
2024.05.30
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図書館で『映画の巨人たち リドリー・スコット』という本を手にしたのです。なんか既視感のある本であるが・・・再読でもいいかということでチョイスしたのです。帰って調べると、やはり再読となっています。で、この記事を(その5)とします。*********************************************************図書館で『映画の巨人たち リドリー・スコット』という本を、手にしたのです。「ブレードランナー」「ブラック・レイン」「テルマ&ルイーズ」とくれば・・・もっとも好きな監督になるのかなあ。【映画の巨人たち リドリー・スコット】佐野亨著、辰巳出版、2020年刊<「BOOK」データベース>よりSFから歴史劇まで、幅広い題材を描きながら、人間の悪意や文明論など明確なテーマ性と独自の映像美で、いまなお第一線で活躍し続けるリドリー・スコットーその魅力と本質をさまざまな角度から読み解く!<読む前の大使寸評>「ブレードランナー」「ブラック・レイン」「テルマ&ルイーズ」とくれば・・・もっとも好きな監督になるのかなあ。rakuten映画の巨人たち リドリー・スコットシド・ミードが作り出した近未来の景観が語られているので、見てみましょう。P48~50<アンドロイドの哀しみ:川本三郎> 核戦争後の荒れ果てた地球、環境汚染と人口過剰で窒息しそうな都市、メディア・テクノロジーの増殖で自己をホログラフィのような空像としか意識しえなくなった人間・・・1982年、53歳で死去したアメリカのSF作家フィリップ・K・ディックはそうしたディストピアとしての近未来にこだわり続けた病的な作家だ。 ディックの短篇集を編んだSF作家ジョン・ブラナーの言葉を借りれば、「ディックの世界はけっして人好きのするものではない。たいていの場合、その世界はさびれ果てている」。 廃墟、マシンや機械人形に囲まれた自閉空間、LSDやスピードやアンフェタミンといったドラッグが生む幻想世界、実像と虚像の差異がなくなったシミュレーションの仕掛け。晩年、霊的世界を見ようとするかのような衝動にとらえられたドラッグの常用へと落ち込んでいったディックは、SFの世界に、テクノロジーの悪夢、実体を喪失した人間の自己幻想、人造人間(アンドロイド)の孤独、現実そのものと現実認識のくい違いといった病的要素を導入していった。「それはけっして快適な世界でも、魅力ある世界でもない」。病気から逃れようと、「医師に処方してもらった薬は、病気よりもひどい副作用を起こす」(ジョン・ブラナー)。 だがその不快な近未来の風景は、読む者にいつか自分たちが見た「懐かしい」風景だと思わせていく魔力を持っている。なぜなら私たちは病なしにはもはや生きられないのだし、河合隼雄の言葉を借りるならば病気とは一つの「ファンタジー」なのだから。SFのFとはサイエンス・テクノロジーの異常な増殖がもたらした病気という「ファンタジー」であるということも可能なのだ。 1982年に製作され、公開当時はさほど話題にならなかったがその後ビデオ化されるや若い世代の圧倒的支持を受け、いまや“カルト・ムービー”になるつつあるSF映画『ブレードランナー』はこのディックの中期の作品(1968年)で、ディック自身が「私のもっとも気に入っている作品の一つ」といっている『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の映画化作品である。 製作は『ディア・ハンター』の製作者でイギリスのEMI社に属するマイケル・ディーリー。監督はゴシック・ホラー調のSF『エイリアン』で名を上げたリドリー・スコット。そして特撮(SFX)は『2001年宇宙の旅』『未知との遭遇』で知られる特撮の第一人者ダグラス・トランブル。この映画ははじめほとんど無名に近い俳優ハンプトン・ファンチャーが原作を読んで感動し、ただちに自分で脚本を書き、SF作家レイ・ブラッドベリを通じて“ハリウッド映画人とほとんど没交渉”の孤高の作家ディックに会い、映画化権を獲得したという、スタートの時点ではごくマイナーな企画だった。 それがディーリーが製作し、リドリー・スコットが監督することになり、さらにダグラス・トランブルが特撮に加わることによって一気にマニアックなまでのSFX(特殊視覚効果)映画へと開花していった。ちなみに映画題名の「ブレードランナー」は、麻薬中毒者の異常な幻想を描いた『裸のランチ』で知られる作家のウィリアム・バロウズの作品からとられており、この映画のクレジットの最後にはバロウズに「スペシャル・サンクス」が捧げられている。 特撮のダグラス・トランブルがこの映画に加わりたいと思ったのは、「(これが)スペース映画ではない」からだったと語っているように、『ブレードランナー』が『スター・ウォーズ』や『スター・トレック』のような「星空をバックに宇宙船をあやつる」美しくファンタジックなSFではなく、近未来のディストピア、痛々しい地球にこだわった「さびれ果てている」病的なSFだったからだ。映画『タクシードライバー』で荒廃したニューヨークのアンダーグラウンドを描いたマーチン・スコセッシ監督もディックの原作を映画化したかった一人だというが、『ブレードランナー』の世界はたしかに未来の広大な宇宙空間よりも、むしろ“娼婦とオカマとヤクの売人と中毒患者がうごめいている”ネクロポリス(死の都)ニューヨークのほうにつながっている。『ブレードランナー』の舞台は21世紀のアメリカの巨大都市。環境汚染と人口過剰のために腐乱した地球から逃れるために人間たちは徐々に他の惑星に移住している。人間たちは惑星での都市建設のためにレプリカントと呼ばれる“人間そっくり”の人造人間を開発した。そのレプリカントの何人かが叛乱を起こし“故郷”の地球に戻ってくる。逃亡者であるレプリカントを殺害するためブレードランナーと呼ばれるハンターが起用される。 物語はこのブレードランナーによるアンドロイドの捜査、追跡、殺害と展開していくのだがこの映画でまず見る者の目を奪うのは、トランブルと、未来派のデザイナー、シド・ミードが作り出した近未来の都市の景観である。 『映画の巨人たち リドリー・スコット』4:リドリー・スコットの生い立ちなど『映画の巨人たち リドリー・スコット』3:「ブレードランナー」の論考『映画の巨人たち リドリー・スコット』2:「テルマ&ルイーズ」の論考『映画の巨人たち リドリー・スコット』1:冒頭の論考
2024.05.29
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図書館で『宇宙へ』という本を、手にしたのです。著者は神戸市生まれの理系女性で、宇宙エレベーターに関するハードSFを書いているのがええでぇ♪【宇宙へ】福田和代著、講談社、2012年刊<「BOOK」データベース>より【目次】職業メンテナンスマン。仕事場は、宇宙!2031年、原田拓海は宇宙へ上がる。天に向かい、まっすぐ伸びていく“宇宙エレベーター”で。誰もが宇宙へ行ける時代の到来。夢のその先には、誰も味わったことのない未知なる“お仕事”が待っていた。 遙かなる宇宙の歌/メンテナンスマンはマタ・ハリの夢を見るか?/アストロノーツに花束を/わが名はテロリスト<読む前の大使寸評>著者は神戸市生まれの理系女性で、宇宙エレベーターに関するハードSFを書いているのがええでぇ♪rakuten宇宙へ最終章「わが名はテロリスト」の核心部あたりを、見てみましょう。p294~298「それじゃ、みんなに大事な話をしよう。少し時間がかかるかもしれないが、心して聞いてくれよ。コーヒーもあるみたいだしな」 そう前置きして、クリスは静かに話を始めた。 宇宙エレベーターの、核心に触れる話を。<8>「もう何年も昔の話だ。タクミやマサトたちの国・・・日本を巨大な地震とツナミが襲ったことは知ってるな」 拓海は真人を見たが、彼は知らん顔でクリスを見つめている。「俺たちはまだ子どもだったけど、もちろん知ってるよ」 忘れられない年だった。その前年は、〈はやぶさ〉の驚異的な帰還を目の当たりにした年だ。感受性の強い年頃の子どもたちには、おそらく一生つきまとう記憶だ。「その時、ツナミの被害をうけたフクシマの原子力発電所が、メルトダウンを起こした。セシウムなどの放射性物質が拡散し、周辺地域は何年にもわたって立ち入りが禁止されたり、住民が避難したりしなけりゃならなかった」 クリスに説明されるまでもない。子ども心にも、その後の騒動はよく記憶に残っている。震災直後の計画停電は、当時大坂にいた拓海たちは話に聞くだけだったが、夏にはほぼ日本中が節電を求められた。関西も例外じゃなかった。放射能が残留しているかもしれないと、風評被害で福島県産の農作物が売られなくなったり、京都の五山送り火で岩手県高田松原の被災松を焚くはずが中止になったり、福島産の花火を上げるのでさえ中止になったり。大人たちの大混乱を、声を上げることもなく子どもたちはじっと見つめていた。「スワベ社長は、そのフクシマの出身なんだ」 クリスの言葉に、突然霧が晴れたように、なにかがすとんと腑に落ちたようだった。「大学生の時に震災被害に遭った。実家は避難地域にあたっていて、その後長い避難所生活を強いられた経験を持つんだよ」 諏訪部敏郎は、その経験から自然エネルギー利用の促進に力を注ぐようになり、大規模太陽光発電所の建設や、ひいては宇宙太陽光発電所の建設をめざして活動し、それが高じて宇宙エレベーターシステムの建造に携わることになったのだとクリスは話した。「人間が作るものに、百パーセント安全なものはない。それが、スワベ社長がフクシマから得て教訓だそうだ。だからこそ、スペース・カーゴには二重、三重のフォールトヨレラント・・・冗長処理を施して、安全に留意してきた。みんなも言われるまでもないと思うが」 いったいこの話はどこに向かおうとしているのだろう。そわそわと落ち着かないイシュマエルや、時々意を決したように顔を上げては、クリスに頷かれるとうつむいてしまうセルゲイたちの姿を見るまでもない。拓海もクリスの話の着地点が読めないでいた。「人間が作るものが、人間に危害を与えてはいけない。それが、スワベ社長の大前提だ」「そいつはまた、ずいぶん理想主義者だな」 ベンジャミンが鼻の上に皺を寄せて毒を吐いたのは、彼が軍人だったからかもしれない。諏訪部社長の掲げる理想が、鼻についたのかもしれない。「なあクリス。歴史上、人類に危害を与えてきたのは、人間が発明したものばかりだぜ。世界中で、毎日何人が車に轢かれてると思う? 何人が人間のこしらえた拳銃で撃たれてる? 大砲は? ミサイルは? 核兵器は? 何人が鉄道に飛び込んで自殺している? 」 おためごかしもいい加減にしてくれ、と言わんばかりにベンジャミンが吐き捨てる。 クリスが鷹揚に頷いた。「おまえの言いたいことはよくわかるよ、ベンジャミン。しかし、しばらく黙って聞いてくれ。・・・スワベ社長は、宇宙エレベーターにもしものことがあっても、地上にいる人間には絶対に危害を加えることがないようにと考えた」 もしものこと・・・つまり、今回のように、ケーブルが破壊され、ステーションが地上に激突するかもしれないといった危機のことだ。「自爆装置でも組み込んだのか?」 存外真面目な声でベンジャミンが尋ねる。「それに近い」 クリスも真面目に応じた。「ただし、ステーションを爆破するわけじゃない。万が一・・・ステーションが地上に落下する可能性が出てきた場合には、ケーブルを自爆する。ステーションのずっと下でな」 制御室が沈黙に満たされたのは、一瞬のことだった。「それはいったい、どういうことだ? ケーブルを切ったりすれば、カウンターウェイトの遠心力でステーションは・・・地球から離れて飛んで行ってしまうじゃないか!」 イシュマエルが真っ赤な顔をして叫ぶ。大富豪のお坊ちゃんだけあって、メンテナンスマンの資格を取った後も、ここで働くようになった後も、基本的な性格はあまり変わらないようだ。クリスが話したのは、まさにそのこと・・・地上に被害を出さないようにするということだったのに、理解が追いついていないらしい。地上を救うために、ステーションを犠牲にする。クリスはそう語ったのだ。・・・それは当然の判断だ。 ステーションに滞在できるのは、現在のところ数名から多くても数十名。ステーションと、地上の犠牲を引き換えにすることはできない。もし静止軌道上からステーションが落下すれば、地上に何が起きるかは・・・たとえば、1908年にロシアで起きたツングーシカ上空の大爆発がいい事例になる。ツングーシカでは、直径百メートル規模の彗星とみられる天体が、地表数キロの位置で爆発したと考えられている。偶然にも近くに人家がなかったため、人的被害はなかったと伝えられているが、半径三十キロメートルにわたる規模で森林が炎上したという。TNTに換算して十から十五メガトンというから、とんでもない大爆発だ。それが、もしオーストラリア大陸の都市近辺で発生したら、どうなるか。 だから、いざとなればステーションを捨てるという会社や諏訪部社長の判断を、理性では支持しないわけにはいかない。 しかし・・・ しかし、感情は別ものだった。 自分たちは見棄てられるのか。万が一の際には、自分たちはステーションとともに捨てられるただの駒なのか。『宇宙へ』1:プロローグの冒頭
2024.05.28
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森見登美彦さんのエッセイ集『太陽と乙女』という本が面白かったので復刻して読んでみようと思い立ったのです。ベーコンエッグが食べたくなったり、書棚を整理したくなったりすること・・・請け合いではないか♪*********************************************************図書館に予約していた『太陽と乙女』という本を、待つこと1週間ほどでゲットしたのです。森見登美彦さんのエッセイ集であるが、何でもありの全90篇とのことで・・・期待できそうである♪【太陽と乙女】森見登美彦著、 新潮社、2017年刊<「BOOK」データベース>よりデビューから14年、全エッセイを網羅した決定版! 登美彦氏はかくもぐるぐるし続けてきた! 影響を受けた本・映画から、京都や奈良のお気に入りスポット、まさかの富士登山体験談、小説の創作裏話まで、大ボリュームの全90篇。台湾の雑誌で連載された「空転小説家」や、門外不出(!?)の秘蔵日記を公開した特別書下ろしも収録。寝る前のお供にも最適な、ファン必携の一冊。<読む前の大使寸評>森見登美彦さんのエッセイ集であるが、何でもありの全90篇とのことで・・・期待できそうである♪<図書館予約:(3/23予約、3/31受取)>rakuten太陽と乙女「第5章 登美彦氏の日常」で「登美彦氏の口福」が語られているので、見てみましょう。ベーコンエッグが食べたくなるでえ♪p288~289<登美彦氏の口福>■ベーコンエッグ 仕上げに秘密の調味料を 私は料理がほとんどできない。一人暮らしの頃に腕を磨かなかったからである。もし妻が料理を作ってくれない人であったなら、現在の我が食生活は惨憺たるものになっていただろう。そんな私でも作ることができる数少ない料理が「ベーコンエッグ」である。 スティーヴンスン『宝島』の冒頭において、ベーコンエッグという言葉が素晴らしい使われ方をしている。乱暴者の海賊が宿の亭主に言う台詞が「俺は安上がりの男だ。ラム酒とベーコンエッグさえあればいい」。皆さん、これでこそ海賊だ。彼の食卓に並ぶベーコンエッグは、さぞかしうまいだろうと思わせる。 料理のレパートリーが少ない人間は、限られたレパートリーに料理センスの一切を注ぎ込むため、その一品にかぎって呆れるほど口うるさいものである。私の父も料理が得意というわけではないが「餅」の焼き方には一家言あり、まるで高名な陶芸家のように慎重な手つきで餅を焼く。私もそれと同じで、ベーコンエッグは自分好みのものでなくては我慢できない。 まずベーコンが必要である。焼かれるなり猛烈に縮んでどこかへ消えちまう「なんちゃってベーコン」ではなく、しっかりとした存在感のある肉でなくてはならない。 次に玉子である。フライパンに落としたら、白身の上にかっきり黄身が盛り上がる凛々しいやつで黄身の味が濃厚でなくては困る。 フライパンでベーコンを焼き、そこに玉子を割って落とす。二つ落として海賊のように豪快な気持ちになるのも悪くない。味付けは塩と胡椒にかぎる。海賊風に荒っぽく塩胡椒を振ったあと、フライパンに少量の水をサッと注ぎ回して蓋をする。このあとどれぐらい蒸すべきか。それが問題だ。白身にはあくまで固くあって欲しいし、黄身にはとろりとした優雅さを保っていて欲しい。 うまく焼き上がったら、美しく形を保ったまま皿にのせる。 ここで仕上げの調味料を使う。『宝島』の妄想である。自分が宿屋「ベンボウ提督亭」に滞在する海賊で、ベーコンエッグとラム酒だけで生きる栄養の偏った荒くれ野郎だと妄想する。そして「俺は安上がりの男だ。ラム酒とベーコンエッグさえあればいい」と呟くのである。それだけで、ベーコンエッグのうまさが三割増すのだ。 以上がベーコンエッグという料理である。シンプルな料理にこそ妄想的味付けが必要である。『太陽と乙女』4:小説を書くときのアイデア『太陽と乙女』3:登美彦氏の口福『太陽と乙女』2:登美彦氏の東京暮らし『太陽と乙女』1:「書棚の整理」など
2024.05.27
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与那覇先生の著した『中国化する日本』という本が中国嫌いの大使のツボを推しているわけで・・・以下のとおり復刻して読んでみます。*********************************************************石原都知事が尖閣買取を公言して、きな臭くなってた日中関係ですが・・・・読み進めていた『中国化する日本』を、ほぼ読破しました♪それにしても、中国が嫌いなはずの与那覇先生は、そういう感情を表に出さず、中国を客観視して述べるところが、さすが歴史学者という感じで・・・・歯がゆいのです。日本は「中国化」しつつある ・・・先生へのインタビュー与那覇先生・清朝は「中国化」社会の究極形p68~71・ポスト「3.11」の歴史観へp293~297*********************************************************************<『中国化する日本』10>目次・憲法改正をまじめに考えるp288~283・近世で終わった歴史:内藤湖南の中国論p31~33*********************************************************************<『中国化する日本』9>目次・日本の未来予想図1p278~280・日本の未来予想図2p281~283*********************************************************************<『中国化する日本』8>目次・郡県化する日本:真説政治改革p247~248・ベーシック・インカムをまじめに考えるp275~278*********************************************************************<『中国化する日本』7 >目次・中国化した世界:1979年革命p233~235・真説バブル経済p239~240*********************************************************************<『中国化する日本』6 >目次・真説「大東亜戦争」p206~209・真説田中角栄p223~225・人権は封建遺制であるp267~271*********************************************************************<『中国化する日本』5 >目次・真説日中戦争1p197~200・真説日中戦争2p203~205*********************************************************************<『中国化する日本』4 >目次・真説明治維新p120~123・真説自由民権p138~140・工業化された封建制p167~169*********************************************************************<『中国化する日本』3 >目次・明朝は中国版江戸時代?p61~63・窓際族武士の悲哀>p103~105*********************************************************************<『中国化する日本』2 >目次・「中国化」とは本当は何かp15~17・真説源平合戦p43~45『中国化する日本』1 *********************************************************************<清朝は「中国化」社会の究極形>p68~71より抜粋 中国史上最後の王朝である清朝は、明朝の後半、東シナ海周辺の闇経済の利権をめぐる勃興マフィア勢力どうしの『仁義なき戦い』を制した、満州族が建国したものです。そもそも最初に先手を取ったのは、分裂抗争していたさまざまな組の大合同を達成した日本マフィアでした――これがいわゆる、豊臣秀吉の朝鮮出兵(1592~98)ですね。 秀吉の狙いは、最低でも朝鮮半島をシベリア近辺まで征服して環日本海貿易圏を独占し、可能なら寧波(上海の貿易港)に自身の根城を移して東南アジア交易をも支配下に・・・というあたりにあったといわれています(村井章介『海から見た戦国日本』)。結局、この野望は李氏朝鮮の抵抗と明の援軍の前に潰えますが、これでいよいよ明朝が疲労困憊したところに、トンビが油揚をさらうごとく天下を獲ったのが、満州マフィアの愛新覚羅一家です。 マフィアマフィアとしつこく書いていますが、これは元来、明朝が社会主義政権のごとく自由経済を抑圧するからマフィアとしてやっていかざるを得なかったという話で、別にマフィアだから野蛮とか遅れているとかいった話ではありません。むしろ、長らく「夷荻」として卑しまれてきた満州族から「天子」を出した清という王朝は、宋朝以降の中国社会の変化を集大成した、ひとつの極点ともいうべき文明でありました。(中略) さらに、満州族は中国本土に侵攻する前に、モンゴル族とも義兄弟の契りというか同盟関係を結ぶのですが、その際に元朝以降、彼らの信仰となっていたチベット仏教(昔風にいうラマ教)を摂取しています。そこで、大陸の覇者となりチベットを傘下に収めた後でも、漢族に対して「儒教道徳の実践者」として君臨したのと同様、モンゴルやチベットに対しては「仏教の庇護者」として振る舞うという使い分けをしたので、今日とは対照的に、清朝政府とチベット民族との関係はおおむね良好だったと見られています。(中略) これはまさしく、世界で最初に身分や職業を自由化した、中華文明の光の側面でしょう―― 一方、それと表裏一体の影の側面としては、国家が再配分機能を放棄していますから、(現在の中国と同様)市場競争の勝者と敗者とのあいだに、絶大な格差が作られることになりました。 この場合、できる限り親族ネットワークのメンバーを増やしてサヴァイブしようとするのが、やはり宋朝以降の宗族主義ですから、清代の中国は空前の人口増加を経験し、そして政府は万事レッセ・フェールで、それをコントロールする手段を持っていません。 すなわち、近年まで中国を悩ませてきた過剰人口時代の始まりであり、それがやがて、近代にはかの国の衰退を導くことになります。朝鮮半島をめぐる日本マフィアと満州マフィアという表現が斬新ですね♪また、清代の人口増加を反省し、共産党による一人っ子政策が採られたようですが・・・与那覇先生も中国の人口問題に着目しているとおり、中国が自壊するとしたら人口問題と格差からでしょうね。ということで、老いゆく中国 を読み返してみましょう♪<ポスト「3.11」の歴史観へ>p293~297より 本書の「はじめに」に、「『2010年代』を迎える前後から1~2年間をかけて、『日本社会の終わり』が徐々に明らかになりつつあったのであり、『3.11』はそのことをあからさまにする、最後の一撃となったに過ぎない」と記したのは、そのことです。むしろあのような未曾有の天災の前後においても、私たちの社会が抱える問題の構図は、表層的には変化していても、その根幹においては変っていないのだと思います。 なるほど、日本人が在日米軍に対して感じる親近感は、「辺野古ヘリポート反対」と「トモダチ作戦」のあいだで真逆になりました。しかし、沖縄という島嶼に基地が偏在し、福島の沿岸部に原発が立地してきた理由は、同一のまま何も変っていない。「中国に屈するな!」という「右寄り」のスローガンが、「原発即時全廃!」という「左巻き」な旗印に変ろうとも、合理的戦略よりも情動的倫理感情に突き動かされた群衆行動が放つ熱気と危うさは、やはり一貫しています。 この意味で、「震災前」から一貫して「中国化」という観点で、日本がなぜ行き詰まったのかを考えようとしてきた本書の試みは「震災後」も決して無意味にはなっていないと思っています。否、むしろ「ポスト3.11」においてこそ、「長い江戸時代の終焉」という視点は、ますます重要になってくるものと判断しています。 この国の人々が生活の基盤を置いてきた地域という共同体が丸ごと飲み込まれてしまうような大津波の経験、さらあに政府や企業の公的機構では行き届かないケアの不足の中で、ある意味で日本人は初めて、中国のような社会で生きるとはどのようなことかを、理解しつつあるのかもしれません。そもそも、生活地域が丸々消滅してしまうような洪水、旱魃、疫病等は、地形が比較的平板かつ大河の多い中国では古代から頻繁に起きたことで、だからこそ中国人は危機の時には「一箇所に家族で肩を寄せ合う」のではなく、「宗族のツテを辿ってバラバラに他の土地へ逃げる」選択をしてきました。そして公的政府がほとんど生活の面倒を見てくれず、永続性のある企業共同体も乏しかったからこそ、いざという時は既存の制度や組織ではなく、個人でポンと寄付をしてくれるような「有徳者」のネットワークに望みを託してきた。 そのような状況にまさに今、日本社会は入っていきつつあります。もともと行き詰っていた「長い江戸時代」の崩壊が、不幸にも大地震という、悲惨な災害によって加速されたことで。 たとえば津波に生産手段のすべてをさらわれてしまった沿岸部はもとより、原発事故による放射能汚染(および風評被害)が拡大する地域において、もはや江戸時代の職分性と同様の「公共事業や規制政策による雇用維持を通じて生活保障を代替する」やり方が、通用しないのは自明でしょう。ましてこれから「脱原発」を真剣に考えるのであれば、原発産業の撤退による地元経済の停滞、さらんは電力コストの増大による日本全体の産業空洞化がもたらす雇用の減少も視野に入れつつ、いまこそ「雇用に依存しない福祉」を一から作っていかねばならない。 しかし、これまで地域や職場ごとに結ばれてきた絆を失ってもなお、私たちは生きていけるだろうか。あるいは中間集団なき流民と化した国民と、生活の手綱を一手に握る国家とが対峙した時、そこには日本史上かってない専制権力が生まれはしないだろうか。 たとえばこういった問題を探るヒントを、かような状況の大先輩とも言える中国の歴史にも求めながら、われわれは模索を続けていかざるをえない。もはやそこに安易な希望はなく、ただただ陳腐で気の遠くなるような反復があるだけだとしても。与那覇先生も、この章では庶民の憤り、倫理観に共感しているが・・・・・学者としての冷厳な洞察はいささかも揺るがないようですね。この本を読んだあとは、大使の歴史認識のタイムスパンが、少なくとも室町時代くらいまで広がったことは確かです。だけど、気の遠くなるような反復・・・・与那覇先生の希望の芽を摘むような洞察はとりあえず聞き流しましょう。(さもないと精神衛生上、よくないのです)中国や日本本土、そして米軍まで、付かず離れず付き合ってゆくしかない地政学的地域で暮らした与那覇先生だけに、地に足がついた骨がらみの歴史認識なんでしょうね。(1日文字数制限により一部削除しましたが、全文は『中国化する日本』11に収めています)
2024.05.26
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<『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』(復刻)>パレスチナ自治区ガザの危機的状況はジェノサイドの様相を帯びてきたが・・・歴史を遡ってみると英仏の植民地政策が垣間見えるし、アメリカのイスラエル擁護の真相などが気になるのです。・・・ということで、『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』という本を復刻して読んでみます。*********************************************************図書館で『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』という本を、手にしたのです。ぱらぱらとめくってみると、おお「アラビアのロレンス」にも触れているではないか・・・これが借りる決め手になったのです。【サイクス=ピコ協定 百年の呪縛】池内恵著、新潮社、2016年刊<「BOOK」データベース>より百年前の「秘密協定」は、本当に諸悪の根源なのか?いまや中東の地は、ヨーロッパへ世界へと難民、テロを拡散する「蓋のないパンドラの箱」と化している。1916年、英・仏の協定によって地図の上に無理やり引かれた国境線こそが、その混乱を運命づけたとする説が今日では専らだ。しかし、中東の歴史と現実、複雑な国家間の関係を深く知らなければ、決して正解には至れない。危機の本質を捉える緊急出版!<読む前の大使寸評>ぱらぱらとめくってみると、おお「アラビアのロレンス」にも触れているではないか・・・これがかりる決め手になったのです。rakutenサイクス=ピコ協定 百年の呪縛協定区域地図の上に無理やり引かれた国境線こそが諸悪の根源だともっぱら言われるが、果して?p19~21<第1章 サイクス=ピコ協定とは何だったのか>■分かった気にさせるマジックワード「結局、サイクス=ピコ協定が諸悪の根源だ」 近頃、こういったフレーズをよく聞くようになった。中東の混迷の原因は何なのか。一帯誰が悪いのか。誰もが自然に思い浮かべる素朴な義憤に、単純明快な答えを見つけたような気にさせてくれる万能のマジックワードが「サイクス=ピコ協定」である。 要するに、中東の混乱の原因は、イギリスとフランスが、サイクス=ピコ協定によってアラブ世界に不自然な国境線を引いたからである。だからシリアやイラクなど、民族や宗派が違う人々が同じ国に住まされて、まとまりがなく、争いが絶えないのである…云々。にわか仕込みのテレビ・コメンテーターなどが急にこの言葉を用いるようになった。 確かに、こう言ってしまいたくなる気持ちは分かる。「アラブの春」以来、中東情勢の混迷は一向に収束する気配がない。「イスラーム国」が行なって誇示する処刑やテロなどの蛮行の数々は、一般的な感覚からは到底理解が不可能だろう。何か一つのキーワードで「要するに…」と大雑把にまとめてしまってスッキリしたい、という気持ちは分からないでもない。 そして、実際に「サイクス=ピコ協定」は重要な文書である。現在の中東の成り立ちの、ある根本的な部分を基礎づけている。確かにサイクス=ピコ協定は「悪い」。帝国主義・植民地主義の時代にイギリスやフランスやロシアなど「西欧列強」が、そして冷戦時代はアメリカとソビエト連邦など超大国が、中東に介入し、影響力を競ったことで、どれだけ大きな混乱が、戦争の惨禍が、中東を襲ってきたことか。 しかし同時に、「サイクス=ピコ協定が悪い」と言っているだけでは、現実を理解するという意味でも、将来を見通すという意味でも、そして解決策を見出すという意味でも、先に進めない。 これは東アジアに置き換えて考えてみれば少し分かりやすくなるかもしれない。例えば、北朝鮮の核兵器・ミサイル開発の問題について、「そもそも日本が朝鮮半島で帝国主義・植民地支配をしたから悪い」とだけ言い続ければどうなるだろうか。日本が植民地支配をした挙句、太平洋戦争で敗れて朝鮮半島から撤退したから、朝鮮半島は米ソ冷戦の最前線となって、南北に国家は分断された。 いつ戦争が再開されてもおかしくない緊張状態が続き、北朝鮮は独裁化し、核兵器やミサイルを開発して威嚇する。悪いのは日本の植民地支配だ…と主張したら、どうだろうか。確かに、日本が朝鮮半島を併合して支配していなければ、朝鮮半島は今のような状態にはなっていないかもしれない。おそらく、現在の朝鮮半島の政治情勢に、日本のかつての植民地支配は、多くの日本人が現在意識しているよりももっと大きく影響を及ぼしているだろう。 しかし植民地主義の時代から現代までの間には長い時間が経っており、その間の、より大きな影響を与えた多くの出来事が生じている。もし日本による統治の時代がなければ、もちろん朝鮮半島の歴史は大きく変わっていただろうが、日本の統治下に入る以外の可能性がどれだけあったかとというところが定かでなく、しかも別の可能性がよりましなものであったとも言えない。ロシアや中国に併合されて、現在独立国でいることができなかったかもしれない。それを現在の南北朝鮮の国民の感覚からは、到底受け入れられないだろう。 さらに言えば、現在の朝鮮半島の国家や国際関係が抱える問題に日本が責任がある、ということであれば、「日本が責任を取ってもう一度朝鮮半島に介入して今度はきちんと問題を解決するべきだ」ということにもなりかねない。もちろん、そんなことを現在の日本で本気で主張して実行しようとする人は皆無に近いだろうし、朝鮮半島の民族も決して求めないことだろう。 同じように、「結局、サイクス=ピコ協定が悪いのだ」という議論も、中東の歴史を方向づけた非常に重要な歴史の事象に触れているのだが、それだけでは現在の中東を読み解き、将来を展望するのに十分ではない。『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』1:アラビアのロレンス『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』2:20世紀は難民の世紀『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』3:サイクス=ピコ協定とは何だったのか
2024.05.26
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東インド会社、アヘン戦争、アジアの海賊といえば、私のツボでもあるわけで・・・以下のとおり復刻して読んでみようと思い立ったのです。*********************************************************図書館で『東インド会社とアジアの海賊』という本を、手にしたのです。ぱらぱらとめくると、アジアの海賊、国姓爺、アヘン戦争とか興味深い史実が見られます。要するに、清朝末期の列強の大陸侵食が興味深いのでおます。【東インド会社とアジアの海賊】東洋文庫編、勉誠出版、2015年刊<「BOOK」データベース>より誰が海賊だったのか?海賊の多様性を歴史から読み解く。17世紀初頭にヨーロッパで誕生した東インド会社とその海上覇権の確立にあたって大きな障壁となった現地の海賊たち。両者は善と悪という単純な図式では表せない関係にあった。東インド会社もまた海賊であったー。東インド会社と海賊の攻防と、活動の実態を明らかにする。<読む前の大使寸評>ぱらぱらとめくると、アジアの海賊、国姓爺、アヘン戦争とか興味深い史実が見られます。要するに、清朝末期の列強の大陸侵食が興味深いのでおます。rakuten東インド会社とアジアの海賊英メネシス号の中国兵船砲撃アヘン戦争と清朝水師のあたりを、見てみましょう。p280~282<清朝に雇われたイギリス海軍>■清朝の海上支配の動揺とアヘン戦争 清朝の海上支配の崩壊は貿易と治安の両方面から進んだ。周知のように、18世紀末以降、世界的に貿易は拡大し、中国においても、イギリス向け茶貿易の発展により、広州貿易は急速に拡大した。ところが、この広州貿易の発展に仲介業者が対応できずに倒産するなかで、仲介業者以外の商人たちが貿易に参入し、貿易管理制度は動揺を始めた。 一方で、中国の対欧米貿易の中心となっていたイギリスにおいても、貿易の拡大の中でイギリス東インド会社以外の商人、アジア間貿易をになう地方貿易商人が成長し、彼らの批判もあって東インド会社の貿易独占権は失われていった。そして1834年には中国貿易の独占権を失うことになる。中国における東インド会社の時代は終わったのである。こうして中英双方で既存の貿易制度は変更を迫られていた。 治安の問題についてみると、18世紀末~19世紀初頭にかけて、いわゆる「嘉慶海寇」と呼ばれる海賊活動の活性化が、中国東南沿海においてみられた。清朝水師にこれを十分に鎮圧できる能力はなく、海賊を投降させて水師として雇用する招撫や、ポルトガルの軍事力利用など、様々な手法でどうにかこれを沈静化させた。 嘉慶海寇の沈静化の背景には、アヘン貿易の発達があるだろう。東インド会社がインドにおいて専売したアヘンを広州周辺に大量に持ち込んだのは地方貿易商人であるが、広州周辺でこれを入手していったのは沿海の広東人・福建人である。かれらの多くが漁業・海運関係者であり、もともと海賊であった者も多い。実際、アヘン運搬船は清朝水師が手を出せないほど重武装している場合もあった。 沿海の人々にとって、小型船を襲撃する海賊稼業よりも、アヘン貿易はより大きな利益があったであろう。このアヘン貿易の拡大によって銀が流出したことは、清朝財政に大きな影響を与えたため、清朝は真剣にこれを取り締まろうとした。しかし、貿易管理を仲介業者に依存していたために、中国人側の行為を取り締まることができず、結局外国人商人のアアヘンを没収い、それがアヘン戦争の契機となる。 1840年に始まったアヘン戦争であるが、戦争そのものは、軍事技術の格差だけでなく、清朝側の戦術の拙劣さもあり、清朝側の一方的な敗戦に終った。なかでも、東インド会社海軍の汽走砲艦メネシス号の活動はめざましいものがあり、先述の挿絵もメネシス号の活躍を示している。ただし、中国に派遣されたイギリス艦隊の大半は帆船であり、また老旧艦であった。そもそもイギリス海軍の主力は本国防衛と地中海方面への対応のためヨーロッパ海域に展開していたのである。もっとも、清朝相手ならばこの程度の海軍力で十分であるとイギリスは判断したのであろう。 実際、対外戦争を経験したことのない清朝水師は大打撃を受けた。イギリス艦隊は沿海の広範な地域に展開したが、戦場となったのは広州周辺から、福建(〇門)、浙江(舟山、寧波付近)、江蘇(乍浦、上海、鎮江)で、いずれも海上・水上交通の要衝であった。このうち広州周辺の戦闘で清朝側は戦闘ジャンクを少なくとも数十隻を失い、〇門では40余隻の戦闘ジャンクが破壊された。 これによって、広東・福建の水師は海上警備能力を失い、清朝の海上支配はここに完全に崩壊した。そうした中で、海賊活動も活性化し、清朝に代わってイギリス海軍がその掃討にあたるという事態も生じていた。清朝が無償でイギリス海軍にアウト・ソーシングしていたような状況が皮肉です。なお、イギリス向け茶貿易については、『紅茶スパイ』7という本が面白いのでお奨めです。『東インド会社とアジアの海賊』1:東インド会社の特徴や商品『東インド会社とアジアの海賊』2:徽州海商と後期倭寇『東インド会社とアジアの海賊』3:ポルトガル人や後期倭寇の海賊行為『東インド会社とアジアの海賊』4:オランダ東インド会社の登場『東インド会社とアジアの海賊』5:オランダ東インド会社のダークサイド『東インド会社とアジアの海賊』6:清朝水師と海賊の関係『東インド会社とアジアの海賊』7:アヘン戦争と清朝水師
2024.05.25
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パリのアリアンスフランセーズに通って学習したフランス語であるが・・・帰国後の日本で活用したこともなく、単なるお遊びだったかも知れないなあ(涙)・・・ということで『フランス語っぽい日々』という本を復刻して読んでみます。*********************************************************図書館で『フランス語っぽい日々』という本を、手にしたのです。どこを開いても・・・夫の描くマンガの頁、妻の述べる説明の頁がセットになっていてわかり易くて興味深いのである♪【フランス語っぽい日々】じゃんぽ~る西×カリン西村著、白水社、2020年刊<「BOOK」データベース>より外国語を愛する、外国語に苦しむすべての人に。日仏夫婦が漫画とコラムでつづる、異文化・外国語学習・子育ての悲喜こもごも!<読む前の大使寸評>どこを開いても・・・夫の描くマンガの頁、妻の述べる説明の頁がセットになっていてわかり易くて興味深いのである♪rakutenフランス語っぽい日々海外県のフランス語が語られているので、見てみましょう。p40~41<17 海外県のフランス語 Le francais d‛outre—mer> 歌手のダニエル・バラヴォワーヌは、フランス語はよく響く言語だと言いました。その通り。フランス語は遠くまで響く言語、カナダや太平洋のど真ん中、ニューカレドニア、マルキーズ諸島やタヒチにまで響き渡る言語なのですから。海外県のフランス語に接する機会があると、愕然とすることがしばしばあります。 ラジオ・カナダで時評を担当するわたしが接する人たちは、独自の美しい表現も編み出す見事なフランス語を操るのですが、彼らのなまりやイントネーションに思わず不意を打たれ、つまり、笑いそうになってしまうことがあるのです。 ケベックのフランス語話者たちは、かなり独特な話し方をします。具体的に説明するのは難しいですが、主な特徴のひとつに、巻き舌のRがあります。半分Rのような半分Lのような発音で、日本人のそれと少し似ています。 夫とともに招待されたタヒチのサロン・ド・リーブル(ブックフェア)に訪れたときのこと。タヒチのフランス語話者たちもまた、この巻き舌のR()を使うことを知り、おどろいたのなんの。さらに彼らにはフランス語と現地の言葉を頻繁にしかも絶妙に混ぜ合わせる、一風変わった癖があります。結果、本土のフランス人であるわたしには、彼らの言うことの半分しか理解ができません。 旅先であれ、フランス国内であれ、その土地によって多少なりともなまりはあるもの。よく言われるのはマルセイユ、トゥールーズ、そしてエクサンプロヴァンスのなまり。パリジャンだって「粘ついた」フランス語を話すと言われています。 わたしはといえば、ブルゴーニュ出身、厳密にはヨンヌ県の生まれです。さて、みなさんごぞんじでしょうか。お隣のソーヌ・エ・ロワーヌ県の人たちにもある変わった特徴があるんです。それは、なんと巻き舌のRです。『アリアンスフランセーズパリ校『フランス語っぽい日々』3:海外県のフランス語『フランス語っぽい日々』2:新旧のシャンソン『フランス語っぽい日々』1:言葉とは思考の方法
2024.05.25
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<朝日新聞デジタルでスクラップブック>朝日新聞デジタルでスクラップしているのだが・・・その「スクラップ一覧」と最新記事を紹介します。この一覧は、いわば我が関心事一覧ともいえるのです。*********************************************************■「警告」でなく「懲罰」中国側の威嚇拍車 総統就任演説から2日半2024年5月23日 (2024年5月24日登録) 中国軍が、台湾周辺を囲むような広範囲での軍事演習に乗り出した。「台独(台湾独立)派」と警戒してきた頼清徳(ライチントー)新総統の就任演説への不満を、今後4年間の任期も見すえて、むき出しの軍事的な威嚇で示した形だ。これに対し、台湾は「横暴」と反発、日米は中台関係の緊迫度が一段と高まることに警戒を強めている。 「これは『台独』の分裂勢力が独立をたくらむ行為への懲罰だ」 中国軍で台湾方面を担当する東部戦区は2日間の軍事演習をこう表現した。演習に参加するとみられる、ステルス戦闘機「J(殲)20」やミサイル「DF(東風)」、上陸用の「071型揚陸艦」などの兵器も「ミサイルの雨で独立派を一掃する」といった勇ましい標語とともに紹介された。 台湾本島をぐるりと取り囲むような軍事演習は2022年8月にペロシ米下院議長(当時)が中国側の猛反発を押し切って訪台した際や、23年4月に蔡英文(ツァイインウェン)総統(当時)が訪米した時にも実施した。将来の台湾の海上封鎖を想定したとみられる配置だ。 さらに、前2回は含まれていなかった、台湾が管轄する中国沿岸の金門島や馬祖列島といった島嶼(とうしょ)部も演習区域に加えた。台湾当局が島の周りに設定している「禁止・制限水域」を実質的に無効化していく狙いの一環とも受け取れる。 これまでは「警告」としていた演習の理由についても、「懲罰」との表現を用いており、威嚇の度合いをエスカレートさせる意思が明らかだ。 一方で、今回は頼氏の就任演説から3日近くを経て公表した。習近平(シーチンピン)指導部として就任演説を分析し、対応を検討していたとみられる。ペロシ氏の訪台時は同氏の乗った飛行機が台北に着陸した直後に演習実施を発表していた。 中国指導部は20日以降、頼氏への批判を日に日に強めてきていた。 中国政府で台湾政策を担う国務院台湾事務弁公室は21日にも、就任式当日に続いて報道官談話を出した。頼氏が語った「主権の独立」や「互いに隷属しない」といった表現について、「分裂のでたらめの理屈」と批判した。中国が決して容認できない「(「一つの中国」原則に反する)両国論」と位置づけている。 習指導部は台湾統一を悲願としてかかげる。「平和統一が最優先」とする一方、「武力統一の放棄も約束はしない」とのメッセージを出す。特に、独立に向かう動きに対しては武力を示して強く牽制してきた。 中国指導部は演説内容によって対応を変えることを想定していたとみられる。今回の軍事演習はその中でも強い手段を選んだことが表れている。 今回の演習は「連合利剣―2024A」と名付けられた。元在中国防衛駐在官で、笹川平和財団の小原凡司・上席フェローは「2024のあとにAとあり、過去の演習の例からもプランB、Cもあることを示している。これで終わりとは思うな、との意味がある」と指摘する。(斎藤徳彦=北京、編集委員・奥寺淳)■月探査機SLIMが復活 太陽光で発電し通信確立 岩石調査も成功2024年1月29日 (2024年1月29日登録)■片目の「まねちゃん」は幸せの招き猫 妻は夢かなえて小説家に、夫は2023年11月12日 (2023年11月12日登録)■飛行士は男、看護師は女…ChatGPT、職業にジェンダーバイアス2023年11月9日 (2023年11月10日登録)「ChatGPT」(チャットGPT)はジェンダーバイアスを持っているってか・・・・さもありなんやでぇ。■荒波の捕鯨史証人、日新丸が引退 1.7万頭解体 反対派が妨害 新聞切り抜き2023年11月5日 (2023年11月6日登録)捕鯨母船「日新丸」といえば、反捕鯨団体の妨害活動などによく耐えてきた船ではないか・・・ご苦労さんでした。■囲碁の仲邑菫さん会見 韓国移籍に「高レベルでの勉強が私には必要」2023年10月30日 (2023年10月31日登録)ウン しっかりしてるがな。 結果が出れば、第2の大谷翔平となれるかも♪■「小型で低価格」日本向けEV 中国大手BYD、立体駐車場に合わせ低く 新聞切り抜き2023年9月21日 (2023年9月21日登録)補助金を使えば200万円代で買えるのか・・・かなり手ごわい感じやんけ。■「日本は嫌いだけど」 中国から福島に迷惑電話かけた18歳の本音2023年9月21日 (2023年9月21日登録)国歌が抗日を歌う国であり、負の歴史を反芻する国なので、この行動に出たのも分かる気がするが・・・■H2A打ち上げ「ほっ」 イプシロン・H3、失敗続いた国産ロケット 新聞切り抜き2023年9月8日 (2023年9月21日登録)H3は失敗したが、H2A打ち上げは成功(41機連続で)したので・・・良しとするか。■「日本語ってタマネギみたい」北欧出身の漫画家オーサさんが語る魅力2022年4月10日 (2023年9月19日登録)日本語学習に関しては、トップクラスのスキルではないか♪■囲碁の仲邑菫女流棋聖、韓国棋院に移籍の意向 すでに棋士登録を申請2023年9月11日 (2023年9月11日登録)■29歳で獄死した反戦川柳作家・鶴彬 故郷で碑前祭2022年9月15日 (2023年7月6日登録)反戦作家といえば・・・この人を外すわけにはいけないのだろう。■「国恥地図」に秘められた帝国の記憶 世界秩序揺さぶる中国の歴史観2022年4月21日 (2023年7月2日登録)覇権中国スタンスのもとには、この国恥地図があったのか。■突然の解散先送り、首相判断なぜ 公明と亀裂、世論…不安材料重なり2023年6月15日 (2023年6月16日登録)「これからは大きな見せ場もなく、支持率はダラダラと下り坂では」との声もあるようです。■英語信仰は「壮大なムダ」、言語学者の危惧 「日本語こそ国際語」2023年6月12日 (2023年6月14日登録)ウン ええこと言ってるがな♪■書店ゼロ自治体、全国で26% ネットでの無料配送規制の議論も2023年3月29日 (2023年6月10日登録)書店の減少といえば、本の物流的側面や、図書館との住み分けが気になるのです。■強まるエルドアン氏への働きかけ スウェーデンのNATO加盟めぐり2023年6月5日 (2023年6月5日登録)プーチンからもウクライナからも支持されるエルドアン氏は、バランス感の長けた政治家であるが・・・要注意なんでしょうね■各地に線状降水帯、広範囲で大雨 東海道新幹線、全線で運転見合わせ2023年6月3日 (2023年6月2日登録)西日本一帯に避難警報が出ている模様です。■事故から12年後に里帰りした元町職員 未練断ち切った「けれど…」2023年5月31日 (2023年5月31日登録)被災の原因は地震、津波にあるとしても、政府や東電の無慈悲という人災でもあったようですね。■ウクライナはなぜF16を求めたのか? カギを握る総合力と戦い方2023年5月30日 (2023年5月31日登録)「ロシア領内を攻撃したい」という誘惑にかられる可能性もあるようですね。(後略)*********************************************************朝日新聞デジタル>スクラップブックhttps://digital.asahi.com/member_scrapbook/
2024.05.24
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京都市美術館では「村上隆もののけ京都」という企画展が催されているが、これは興味深いのです。・・・ということで、2012年11月29日「村上隆の原点」を復刻して読み直してみましょう。まあ村上隆の予習とでも申しましょうか♪*********************************************************今では超ビジネス書を発刊するなど、ブイブイ言わせている村上隆の原点までさかのぼってみたい・・・・ということで、「リトルボーイ」という本を借りたのです。リトルボーイといえば、広島に落とした原爆の愛称であるが・・・今のアメリカ市民は知っていたか、知らなかったか?大使幼少の頃、原子力と言えば、鉄腕アトムとかゴジラを連想するように、割と肯定的なイメージもあるが・・・・これがCIAの刷り込みと言えば、当らずとも遠からずという裏事情もあったようです。(あかん、書評の観点がずれてゆくがな)ということで、ヤノベケンジのゴジラです。ポップやなぁ♪本書は、ニューヨーク市内各所で開催されたリトルボーイ展に際して出版されたという曰くがあるが、村上隆のアメリカに対する強烈なコンプレックスが見られるわけで・・・反米の大使の胸に響くわけです(笑)ともあれ、スーパーフラットとは何だ?という問いに答える本ということでしょうか♪【リトルボーイ】村上 隆(編集) 、ジャパン・ソサエティー イェール大学出版、2005年刊<「MARC」データベース>より2005年にニューヨークのジャパン・ソサエティー・ギャラリーで行われたリトルボーイ展のカタログ。アニメ、だめ、かわいい、マニア、おたく、少女、ゆるキャラ等をキーワードに、村上隆、岡田斗司夫、椹木野衣らが執筆。 <大使寸評>本書は、ニューヨーク市内各所で開催されたリトルボーイ展に際して出版されたという曰くがあるが、村上隆のアメリカに対する強烈なコンプレックスが見られるわけで・・・反米の大使の胸に響くわけです(笑) ともあれ、スーパーフラットとは何だ?という問いに答える本ということでしょうか♪Amazonリトルボーイこの本から一部紹介します。<Superflatプロジェクト発動:村上隆>p153~155「Superflat」 この呼び名はLAのギャラリスト二人が、私の絵画作品のセールストークに使っていた表現が起源だ。「superflatでsuperクオリティー、そしてsuperにクリーンなこのペインティングはいかがでしょうか?」という具合の売り文句。日本の車や電化製品を讃える表現と変わらぬ所に本質的な日本文化の特性を知った気がした。そしてその表面を乗り越えなければ「文化」そのものになり得ない、故にその売り文句を超えていくという批評的な観点から、superflatを冠としたプロジェクトをスタートさせた。「SuperFlat宣言」日本は世界の未来かもしれない。そして日本のいまはsuper flat。 社会も風俗も芸術も文化も、すべて超2次元的、この感覚は日本の歴史の水面下を澱みなく流れ続け、とくに美術にわかりやすく顕在化してきた。現在では、強力なインターナショナル言語となった日本のスーパーエンタテイメント、ゲームとアニメにとくに濃密に存在している。そのフィーリングを説明すると、例えば、コンピューターのデスクトップ上でグラフィックを制作する際の、いくつもに分かれたレイヤーを一つの絵に結合する瞬間がある。けっして分かりやすい例えではないが、そのフィーリングに、私は肉体的感覚に近いリアリティーを感じてしまうのだ。この本で日本のハイもロウもすべてフラットに並んでいるのは、そのフィーリングを伝えるためでもある。POP、ERO POP、OTAKU、HIS-ISM、そして、そんな日本文化の表層下に流れる「レイヤーの結合」の瞬間を体験してほしい。私達のリアリティーはどこにあるのか。 この本は「super flat」を、自分達の、つまり日本文化を潜在的に構築してきた、そしして、今もしつづけている大きな感性であり、世界観として捉え直し、過去から現在、そして未来へとつながるオリジナルなコンセプトとして、展示していくためのものである。近代以降、日本が西洋化されていく過程で、この「super flat」的感性はどのように姿を変え、いまに到っているのか。そこをきっちり見据えることから、いまの我々のスタンスも、見えてくるに違いない。 その意味で、ここには現在進行形の日本のリアルが詰まっている。私達の生きてゆくコンセプト探しの答えが見つかるかもしれない。西洋化されてしまった日本人のオリジナルコンセプト、「super flat」。<東京ポップの逆襲:松井みどり>p226~227 スーパーフラット理論の出発点は、『広告批評』誌1999年4月号のために村上が企画した「東京ポップ」特集にあり、ここで日本のポストモダンの文化状況に対する村上のスタンスが詳らかにされた。同誌に発表された村上のテキスト「拝啓 君は生きている―TOKYO POP宣言」は、世紀末東京の大衆文化生産にひそむカオスと幼稚性から日本独自の芸術表現を形成しようと目論む村上の見事なまでに一貫した戦略を表している。 まず、村上は、日本文化がアメリカとの植民地関係に縛られているとの歴史観に基き、「戦後の日本はアメリカによって生かされ培養されてきた。無意味こそが人間の生きる姿。だから、何も考えずに生きろ、と教育された」と言う。そして、日本で精神的内容を持たない物質主義が膨張した原因を文化の対米依存性に見いだし、この環境こそが、個人や組織の成熟を妨げていると考える。と同時に、近年アメリカが徐々に日本を縛る手綱を緩めている状況下、日本の文化生産は行き先不明の状況に陥っているのだが、にもかかわらず方向性を失った文化的生産に酔いしれる日本社会は真のヒエラルキーを欠き、超富裕階級の台頭は妨げられ、専門水準の形成が遅れ、幼稚な社会構造から脱却できないでいる。これが村上の現状認識だ。 日本文化の「マイナー」な―つまり、本流ではなく、瑣末で、幼稚で、貧相な―特質を認識する村上は、明らかに欠点と思われる要素に、新しい創造の契機を探り当てたのである。 一見ネガティブに見えるこの3点、1)子供的価値観、2)豊かさのレベルなき社会、3)アマチュアリズム。しかしこの3点がアドバンス〔有利〕となって、いま新しい創造の世界を作り始めている。 こうした「マイナー」の条件を逆説的に運動の中心に据えて企画された「ポップ」は、あの輝かしいアメリカのポップ・アートとは似つかない。そのかわりに、村上流ポップは現代東京の異種混合のリアリティーに根ざしており、東京の偽物性をユニークな特質として、また文化占領の歴史的産物として甘受するのである。「TOKYO POP宣言」執筆に加えて、村上は「東京で活躍しながら、西洋的な価値観の軸に乗せてインターナショナリズムを持ち得る、と思わせた10人のアーティスト」を東京ポップの作家として紹介し、軋轢の強い文化的影響を乗り越えて創出された美術表現のハイブリッド性をむしろ誇示するのだ。第五福竜丸とヤノベケンジより椹木野衣・日本のサブカルチャーは原点であるゴジラや、宇宙戦艦ヤマトの放射能除去装置など、核と放射能と被爆の歴史である。鉄腕アトムや仮面ライダー、ドラえもんなどは原子力の平和利用。・放射能に対してはサブカルチャーの蓄積から免疫があった。地震の問題は実は大きな問題で、今一分後に大地震が起こるかもしれない。世界に原発が増え続け、世界各地で地震の多発期に入ったと思われる今、我々は震災の事後にいて、それに対応するばかりではなくて、これから起こる更なる災害に対する想像力を持たなければならない。・(ヤノベのサン・チャイルドに対して)震災後を見すえて作品を作るのはまだ早いのではないか。今サバイバルの方がリバイバルより必要な状況に帰っているのではないか。二人の対話は、阪神・淡路大震災、オウム真理教、東海村臨界事故、さらには戦後のアメリカから日本への原発の輸入の構造にも及び、現在まだわれわれが渦中にある東日本大震災以後にいたる状況を、ヤノベの表現活動の軌跡と重ねて考えさせられる内容だった。「村上隆の原点」
2024.05.24
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図書館で『中国の論理』という新書を、手にしたのです。理屈のこね方・論理のパターンには日中間に違いがあると注目する著者であるが・・・深みのある洞察ではないか♪*********************************************************【中国の論理】岡本隆司著、中央公論新社、2016年刊<「BOOK」データベース>より同じ「漢字・儒教文化圏」に属すイメージが強いためか、私たちは中国や中国人を理解していると考えがちだ。だが「反日」なのに日本で「爆買い」、「一つの中国」「社会主義市場経済」など、中国では矛書がそのまま現実となる。それはなぜかー。本書は、歴史をひもときつつ、目の前の現象を追うだけでは見えない中国人の思考回路をさぐり、切っても切れない隣人とつきあうためのヒントを示す。<読む前の大使寸評>理屈のこね方・論理のパターンには日中間に違いがあると注目する著者であるが・・・深みのある洞察ではないか♪rakuten中国の論理「むすび-現代の日中関係」で日中の領土問題あたりを、見てみましょう。P207~211<歴史認識>「人民解放」から「改革開放」へ。中華人民共和国の歩みは、艱難をきわめた。犠牲になった人もおびただしい。「革命」に彩られ、内戦と戦争に明け暮れた建国以前と合わせてみれば、20世紀の中国は、いよいよ激動艱苦の道を歩んでいた、といえるだろう。 そんな百年、中国の思考・発言・行動は、目まぐるしい転変をくりかえした。けれどもその経過を貫いていたのは、中国の言動を根底で枠づける社会構造、論理枠組の本質が、いかに変わらなかったか、という事実ではなかろうか。 イデオロギー・体制は君主独裁制から立件共和制、三民主義からマルクス主義、計画経済から市場経済へ移り変わっていった。しかしその前提に必ず存在していたのは、「土」「庶」が隔絶し、上下が乖離した社会構成である。 これは歴史のなかでできあがった構造原理なのであって、中国は従うにせよ抗うにせよ、その原理に応じざるをえない。そんな論理が現代中国の言動パターンを形づくっていて、たとえば、わが日本と関りの深い世界観、時間と空間の観念も、同じことがいえよう。 時間の観念とは、いわゆる「歴史認識」のことであって、こう表現すればわかりやすい。その根はやはり20世紀のはじめ、ちょうど梁啓超が近代的な歴史学をつくった時にある。「中国」という国家と社会の歴史を書け、と呼びかけた彼は、断代史・紀伝体のスタイルをとる旧来の史書を非難して、「理想」がない、といいつのった。この発言には共感を覚えながら、同時に腑に落ちないところも残る。はたして旧史に「理想」はなかったのだろうか。 旧来の史学になかった「理想」とは、近代的な「愛国主義」のことである。確かにそれは、旧史学に存在しなかった。けれども儒教の教義という「理想」は、現前としてあったはずである。むしろその「理想」のほうに、史実分析・歴史叙述が従属していた。 梁啓超以後の「中国」人は、ふるき史学を厳しく批判して、断代史・紀伝体という体制・スタイルからは確かに脱却した。しかしながら、「理想」・イデオロギーを考証・叙述の前提・目的としてしまう論理構造は、旧史と変わってはいない。 旧史のスタイルとともに、儒教のドグマが退場したのはまちがいない。それでも愛国主義・三民主義・マルクス主義・毛沢東主義など、体制イデオロギーは最上の価値を与えられ、中国を覆っている。それが続くかぎり、「正統」のイデオロギー・ドグマを説明し、正当化する、という歴史の位置づけと役割も変わらない。 したがって「中国」の歴史学では、中華の史学と同じく、依然として体制イデオロギーを標準とした、史上の人物・政権・事件に対する正邪の判定を何より重視する。現代の「正しい歴史認識」も、そうした意味にほかならない。「満州国」は「偽」でなくてはならないし、「南京大虐殺」は「三十万人」でなくてはならないのである。 「中国」での歴史とは、かつての史学と同じく、政権・イデオロギーの利害得失を代弁、説明、主張するものであって、われわれが「学問の自由」「言論の自由」にもとづく、と普通に考えがちな歴史学とは、次元の異なる存在である。昨今の「歴史認識」問題もそう考えなくては、納得できないことが少なくあるまい。<領土問題> 同じく日本との関係で重大なのは、尖閣という領土問題である。そうはいっても、問題は日本に限ったことではない。中国軍の岩礁埋立てで波高い南シナ海でも、事情はまったく同じである。 そもそも中国ほど、国境問題・領土問題を抱えた国も少ない。そしてどの相手国に対しても共通するのは、一方的な主張と大国意識、卑俗な言い方をすれば、「上から目線」の存在であって、そこにはどうやら史上の論理が作用している。 たとえば「華」「夷」の秩序である。これは礼制にもとづく上下関係なので、中華は常に外夷より上位・優位にあると措定された。それはよい。両者の関係の客観的な実態はどうあれ、主観的な措定そのものは、まちがいない事実だからである。 しかし20世紀の漢人たちは、そうした礼制にもとづく秩序措定に代えて、「中国」というnationと国際関係を選択した。国際関係は主権国家どうしの対等を原則とする。それなら「中国」の世界観・空間認識は、かつての「華」「夷」の上下関係から一変したはずである。 たしかに20世紀の前半、帝国主義の圧迫を受けていたころは、列強との対等な関係こそ、「中国」の念願だった。しかし抗日戦争に勝利してそれを果す屋、またぞろ歴史的な遺制が顕在化してきた。 つまり、自分たち「中国」は中華・上位、周辺国は外夷・下位であるべしという世界観である。しかもそれが西洋流のnationや主権の観念と結びついて、自らのnationを守るべく「愛国」につとめ、いわば「攘夷」を厭ってはならぬ、という主張に転化した。その発現が日本やベトナム・フィリピンなどに対する大国意識、「上から目線」であり、相手に耳を貸さない領土問題での行動様式にほかならない。(中略) つまり、清朝の範囲内に暮らすモンゴル人・チベット人は、自分たち漢人より下位に属するので、その住地と一体化して同化すべきだ、と言う論理になった。たとえば、「五族協和」「中華民族」をとなえた孫文は、漢人への「同化」がその意味内容だと明言している。したがって習近平が「中国の夢」だと語る「中華民族の復興」も、ほとんど意味はかわらない。チベット人・ウイグル族が反発するゆえんである。『中国の論理』2:アヘン戦争あたり『中国の論理』1:はじめに
2024.05.23
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ドングリ国のパルシネマ(2本立て館)で観た2本立て映画について、以下のとおり並べてみたのです。ま~個人的な鑑賞目次みたいなものです。 R1:「男の友情、女の友情」を追記*********************************************************男の友情、女の友情・・・2本立て館:「テルマ&ルイーズ」4回目お腹ペコペコ・・・2本立て館音楽が人生を変える・・・2本立て館男はつらいよ・・・2本立て館ブルース&ブルース・・・2本立て館あなたがいない世界を・・・2本立て館:「テルマ&ルイーズ」3回目我が子への大きな愛・・・2本立て館 *********************************************************上記リストアップしたもの以前については2本立て館で観た映画R20 に収めています。パルシネマ上映スケジュール
2024.05.23
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図書館に予約していた『南海トラフ地震の真実』という本を、待つこと7ヵ月ほどでゲットしたのです。気象庁の公表情報でも発生確率70~80%という数値が出ているわけで・・・この本の告発が興味深いのである。【南海トラフ地震の真実】 小澤慧一著、東京新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より「南海トラフは発生確率の高さでえこひいきされている」。ある学者の告発を受け、その確率が特別な計算式で水増しされていると知った記者。非公開の議事録に隠されたやりとりを明らかにし、計算の根拠となる江戸時代の古文書を調査するうちに浮かんだ高い数値の裏にある「真実」。予算獲得のためにないがしろにされる科学ー。地震学と行政・防災のいびつな関係を暴く渾身の調査報道。科学ジャーナリスト賞で注目のスクープを書籍化!<読む前の大使寸評>気象庁の公表情報でも発生確率70~80%という数値が出ているわけで・・・この本の告発が興味深いのである。<図書館予約:(10/20予約、副本?、予約44)>rakuten南海トラフ地震の真実「おわりに」にこの本の作成時の裏話が載っているので、見てみましょう。p234~237<おわりに> 本書は関東大震災から100年を迎える2023年9月1日前の刊行となった。よく周囲から「首都直下地震は30年以内に70%の確率で発生するといわれているけど、この確率の出し方に問題はないの?」と聞かれる。実は専門家に聞くと、「南海トラフよりも『えこひいき』した確率の出し方をしている」と言う人も多い。「元禄地震」と「関東大震災」は、関東を襲ったM8クラスの巨大地震だ。二つの地震は約220年の間が空いているが、関東ではこの220年の間にM7クラスの地震が8回発生した。単純計算するとM7クラスの地震は27.5年に1度起きていることになり、これを30年確率に当てはめると70%という確率が出る。地震本部は「相模トラフのプレートの沈み込みに伴うM7クラスの地震」の確率としているが、内閣府はこれを首都直下地震の確率として紹介している。 えこひいきのゆえんは、8回の地震の発生した領域の広さだ。首都直下というと23区内をイメージする人が多いのではないか。8回の地震の中には、1855年の安政江戸地震のように東京都の千代田区、墨田区、江東区などを強い揺れが襲ったものもあるが、他にも茨城県南部や神奈川県の小田原、三浦半島付近で起きた地震も含まれる。首都直下というよりは「関東直下」の方がイメージは近いだろう。 大都市は災害に弱く、首都が大地震に見舞われたら国が破綻しかねない被害になることは目に見えている。備えるのは当然だ。だが「30年間で70%」という伝え方は、地震の切迫性をアピールするため、わざわざ近隣の地震をかき集めて高い数値を出すような「せこいまね」をしているようにもみえる。 取材ではさまざまな立場の人から「確率を出さないと地震学の存在意義がない」「低い確率を出すと防災予算が下りない」などとの声を聴いた。確率は地震学や防災、政治の思惑が複雑に絡み合い、本質的な意味が見えにくい情報になっている。本当に必要な情報とは何か、立ち止まって考え直すべきだろう。 この問題を記事にする上で、乗り越えられないと思うような困難が幾度もあった。それがこうして1冊の本に仕上がったのは、奇跡とも思える出会いが連続したからだ。 まず、きっかけとなった鷺谷威名大教授の「告発」は、ともすれば告発した鷺谷氏が不利益を被る恐れがある内容だった。鷺谷氏が覚悟を決めて世に伝えたかった思いを、居合わせた私がたまたま受け取ったことで取材が始まった。しかし、この問題意識をどう記事化するかには苦労した。 私のプレゼンテーション能力が足りないことも手伝い、デスク陣に説明をしても「議論の過程で出た裏話」「科学的論争の一つ」と、一般の紙面で報じるのはそぐわないと判断されることが多かった。ただでさえ難しい科学のテーマだ。しつこく一般記事での掲載を求める私の姿は、日々のニュース対応で忙しいデスク陣の目にはさぞかし困った部下に映っただろう。 そんな時、助けの手を伸ばしてくれたのはニュースの深堀りをする中日新聞の特集面「ニュースを問う」の担当デスクをしていた秦融編集委員(当時)だった。私は秦デスクに「相談がある」とだけ伝え、会社から少し離れたファミリーレストランに呼んだ。簡単な雑談を終えると、秦デスクはテーブルに腕を置いて少し身を乗り出し、「で、ネタは何だ」とメガネの奥の目をギラリと光らせた。 約3時間に及ぶ打ち合わせの末、秦デスクは「南海トラフの高確率がきっかけで他地域に油断が生まれているとしたら、中部の新聞社としては見過ごせない」と、同面での記事化を約束してくれた。 こうして、2019年秋に何とか新聞連載として形にすることができたが、この問題を全国区のものに押し上げてくれたのはライバル紙の科学ジャーナリストたちだった。当時朝日新聞大阪本社科学医療部長で、地震学者の間でも有名な黒沢大陸氏は自らのツイッターで「中日新聞さん、よい仕事だった。やられた」と、連載を紹介してくれた。また、元読売新聞科学部デスクで今はサイエンスライターの保坂直紀氏は連載を読み、「不都合な科学は隠してしまえばよいのか。科学と社会はどう付き合っていくべきなのか。連載の背後に大きな問いかけを感じる」とメールをくれ、科学ジャーナリスト賞に推薦してくれた。 本書を書く上で最も大切だったのは、橋本学東京電機大特任教授の存在だ。橋本氏は確率の検討当時から科学のあるべき姿を貫き通そうとした気骨の地震学者だ。鷺谷氏や橋本氏が当時海溝型文化委員でなければ、「確率がえこひいきされている」とここまで問題にならなかったかもしれない。また、室津港の水深データの問題を高レベルな科学的議論として指摘できたのは、ひとえに橋本氏の執念ともいえる調査・研究があってのことだ。共同研究のメンバーの加納靖之東大准教授の協力も欠かせなかった。 高知での出会いにも恵まれた。先祖から子孫へ約300年間、連綿と受け継がれた久保野文書。史料の保管が難しくなる昨今、久保野由紀子さんがいなければ文書は失われていたかもしれない。高知城歴史博物館で文書の整理を担当した学芸員水松啓太氏が、偶然にも地震学を専攻していたことも幸運だった。水松氏のさまざまな指摘は研究を大幅に進展させた。 室戸ジオパーク推進協議会の専門員小笠原翼さんにはヒントとなる資料を献身的に提供していただいた。小笠原さんから紹介された室戸の郷土史家の多田運さんからは、室戸ならではの習慣や歴史など多くの知見を示してもらった。多田さんは2023年5月に死去された。本書をお見せできなかったことは残念で仕方がない。ご冥福をお祈りしている。『南海トラフ地震の真実』2:「えこひいき」の80%(続き)『南海トラフ地震の真実』1:「えこひいき」の80%
2024.05.22
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図書館に予約していた『南海トラフ地震の真実』という本を、待つこと7ヵ月ほどでゲットしたのです。気象庁の公表情報でも発生確率70~80%という数値が出ているわけで・・・この本の告発が興味深いのである。【南海トラフ地震の真実】 小澤慧一著、東京新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より「南海トラフは発生確率の高さでえこひいきされている」。ある学者の告発を受け、その確率が特別な計算式で水増しされていると知った記者。非公開の議事録に隠されたやりとりを明らかにし、計算の根拠となる江戸時代の古文書を調査するうちに浮かんだ高い数値の裏にある「真実」。予算獲得のためにないがしろにされる科学ー。地震学と行政・防災のいびつな関係を暴く渾身の調査報道。科学ジャーナリスト賞で注目のスクープを書籍化!<読む前の大使寸評>気象庁の公表情報でも発生確率70~80%という数値が出ているわけで・・・この本の告発が興味深いのである。<図書館予約:(10/20予約、副本?、予約44)>rakuten南海トラフ地震の真実まず「第1章 「えこひいき」の80%」の続きを、見てみましょう。p30~33<報じなければ葬られる> 鷺谷氏の告発は、ショッキングなものだった。「30年以内の発生確率が60~70%」という文言は、南海トラフ地震の枕ことばで、私も南海トラフ地震絡みの記事を書く際は毎回使ってきた。それが恣意的に決められたものだったとは・・・。 しかし、私がこの取材をしたのは2018年2月で、13年評価の確率が発表されてから5年近くもたっている。南海トラフの長期評価は社会の耳目を引くテーマだ。鷺谷氏もいろいろな記者と付き合いがあるはずで、中にはこの話をした記者もいたのではないか。「この話はどれくらい知られている話なんですか」と聞くと、鷺谷氏は「確率の決定の経緯は、当初マスコミに知られることを恐れて、表に出されていない話なんです。過去に別の新聞の科学部の記者さんにお話ししたことがありますが、記事にはなりませんでした」と静かに話した。 どうやら、この問題に取り組んでいる報道関係者はいないようだ。私が掘り起こさなければ、誰にも知られないまま葬られてしまうかもしれない。とりわけ東日本大震災以降、防災は報道の主要テーマだ。その内幕で問題のある意思決定がされているとしたら、それを知った記者には記事を通じて議論を呼びかける責務がある。「これは報じるべきですね」。私がそう言うと、鷺谷氏は「それはぜひ」と少し笑みを見せた。 しかし、当然鷺谷氏に聞いた話だけではなく、この内幕模様の裏取り取材をしなければ記事は書けない。複数の証人・・・いや、議事録などがあればいいが。そう思っていると、鷺谷氏は「確か会議の議事録は全て残っていると思いますよ。(地震本部の事務局の)文部科学省に請求すれば出てくるかもしれませんね」と教えてくれた。 政府は「行政文書管理ガイドライン」で議事録などの公文書の取り扱いについて規定している。それによると、外部の有識者らによる懇談会を開催する際は「意思決定の過程を検証できるよう、開催日時、開催場所、出席者、議題、発言者及び発言内容を記載した議事の記録を作成する」と求めている。政府の専門家による会議である海溝型分科会はこれに当たるだろう。 議事録があれば、真相を一網打尽にして知ることができる。私は鷺谷氏に礼を言い、早速本社に戻り、議事録を請求する手続きに移った。<使わぬ手はない「情報公開請求制度」> 情報公開請求制度は「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(情報公開法)によって、誰でも行政機関が持つ資料を請求することができると定めている。この制度を遣えば、当局による自発的な発表ではなく、当局にとって都合の悪い情報も得られる可能性がある。行政側が公開・非公開を決める余地が大きく、問題もあるが、権力の監視が役割の新聞記者が使わない手はない。 情報公開の請求方法は、請求する文書を管轄する行政機関のホームページに掲載されている。目的の史料が明確な場合は、「行政文書開示請求書」に必要事項を記入し、送付する。わからない場合は、請求する先の行政機関に設けられている開示請求の窓口担当に確認するといい。担当者が目的の文書の所在の有無や、行政文書やファイルの名称などを教えてくれる。また、申請から開示までにどれくらい時間がかかりそうか目途も付く。具体的な資料名が判らない場合は、「~に関する一切の資料」などと書くが、絞り込んでいないと余計な文書まで請求対象となり、その分開示に時間がかかることもある。 ちなみに請求先の行政機関自体の不正などを調べようとして、調査していることを感ずかれたくない場合、こちらが何について調べているかわからないよう、わざと関係ない部門の資料を含ませたりすることもある。(中略) 鷺谷氏の取材を終え、文科省に情報公開請求すると、約1ヶ月後に申請した文書の開示を認める「開示決定」が届いた。文書のコピーを選び手数料を支払うと、そのまた約1週間後についに文書が郵送されてきた。『南海トラフ地震の真実』1:「えこひいき」の80%
2024.05.22
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SF小説から科学書まで、サイエンス・ブックを網羅した『サイエンス・ブック・トラベル』という本が面白かったので・・・以下のとおり復刻して読んでみよう。*********************************************************図書館で『サイエンス・ブック・トラベル』という本を、手にしたのです。【サイエンス・ブック・トラベル】 山本貴光著、河出書房新社、2017年刊<「BOOK」データベース>より“いま”と“これから”がわかる。気鋭の科学者ら30名が自然科学の眼差しで捉えた世界の姿!!【目次】1 宇宙を探り、世界を知る(この世界の究極の姿は何か?/人はなぜ宇宙を探るのか?/光より速く進むことは可能か? ほか)/2 生命のふしぎ、心の謎(心はどこにあるのだろうか?/動物はどんなふうに働いているのか?/生物は、細胞は、果たしてどう進化してきたのか? ほか)/3 未来を映す(私たちが“身体性”を備えるとはどういうことなのか?/科学的な思考とは何か?/未来の医療はどうなるだろうか? ほか)<読む前の大使寸評>追って記入rakutenサイエンス・ブック・トラベル「SF小説と科学書の類似」が語られているので、見てみましょう。p190~192<22 SF小説を書くには?:藤井太洋> 1976年に初版が発行され、平成元年の1989年に増補改訂されたリチャード・ドーキンスの『利己的な遺伝子』はこう始まる。 “この本はほぼサイエンス・フィクションのように読んでもらいたい” サイエンス・フィクション=SFというジャンルの文学を定義するのは難しいが、多くのSF作家が宇宙開発や時間旅行、人工知能が支配する社会やジェンダーの溶け合った遠い未来を通して人が不思議や神秘に触れたときに感じるときめき・・・“センス・オブ・ワンダー”を描こうと日夜努力していることは共通している。 そんな日々を送っている身にとって、この序文は挑発的だ。 科学者が? 科学書で? SFのように読める? 甘く見るんじゃないよ、と言いたくなるところだが、実のところ本書は優れたサイエンス・フィクションのように読めてしまう。 科学書なので当然ではあるが、ドーキンスは物語を前に進めるためにSF作家がやるような嘘や隠蔽を混ぜない。喩えの中に混入してしまう正確でない言い回しの意図を修正するために、五月蠅いと思えるほどに紙面を割いてすらいる。日本人には馴染みの薄い宗教に対する言葉など、何度繰り返せば気が済むのかと感じてしまうほどだ。それでも本書は面白く読めてしまう。 ドーキンスの語り口は、SF作家が作品の中で架空の事物を作り上げていく方法とそっくりだ。先入観を覆すような言葉で読者の興味を惹いておいて、手触りの感じられる事例を丁寧に紹介しながら伝えるべき理論を積み上げる。最後に力強く、冒頭で示した言葉の意味を述べる。 特に第12章「気のいい奴が一番になる」で扱われるゲーム理論と進化的に安定な戦略・・・ESSのくだりは秀逸だ。囚人のジレンマという思考ゲームで、遺伝子が生命に行わせている戦略が徐々に明かされていく。ゲームノプレイヤーがとる戦略の「やられたらやり返す」というフレーズは、事例がサッカーのゲームや離婚訴訟に及んでも繰り返されるが、最後に「利己的な遺伝子」という本書のテーマを強く補強するチスイコウモリの“献血”事例に帰着して、1世紀以上も居座っている“血まみれの自然”という先入観を打ち砕く。 まるでよく書けた短篇小説のような美しい構成だ。私は何度も読み返しているが、実際のところ本書がなければ、いくつかの重要なSF作品は生まれなかったか、全く違う読み心地となっていただろう。 本書の主たる主張である生物=生命機械論や『利己的な遺伝子』というフレーズだけをとってもマイケル・クライトンの『ジュラシックパーク』や瀬名秀明『パラサイト・イヴ』、岩明均『寄生獣』などにその影響は色濃く出ている。そして進化論というアイディアがDNAに留まらないことを示してみせた“ミーム”に至っては、SF作品において文化を技術的に操作することへのもっともらしさを加えるための必須のアイディアの一つともなっている。 「論」や「説」が生まれた場所とその熱気を知ることは難しいのだが、“ミーム”に関しては『利己的な遺伝子』から始めればよい。その一点だけでも本書の価値は計り知れない。 もう一つ驚くべき事がある。40年近く前に書かれた科学書だというのに、その論旨と事例が全く古びていないことだ。これは驚愕に値する・・・正直に言えば、羨ましい。 東西冷戦が終わったために、スパイ小説家たちは頭を抱えたというが、PCとIT革命は同様にSFを書きにくい時代にしたと言われている。私たちが住む21世紀の社会は情報革命によってかつて描かれていたSFを超えつつあるからだ。『利己的な遺伝子』を以前に読んだので紹介します。【利己的な遺伝子】リチャード・ドーキンス著、紀伊国屋書店、2006年刊<「BOOK」データベース>より「なぜ世の中から争いがなくならないのか」「なぜ男は浮気をするのか」-本書は、動物や人間社会でみられる親子の対立と保護、雌雄の争い、攻撃やなわばり行動などが、なぜ進化したかを説き明かす。この謎解きに当り、著者は、視点を個体から遺伝子に移し、自らのコピーを増やそうとする遺伝子の利己性から快刀乱麻、明快な解答を与える。初刷30年目を記念し、ドーキンス自身による序文などを追加した版の全訳。【目次】人はなぜいるのか/自己複製子/不滅のコイル/遺伝子機械/攻撃ー安定性と利己的機械/遺伝子道/家族計画/世代間の争い/雄と雌の争い/ぼくの背中を掻いておくれ、お返しに背中をふみつけてやろう/ミームー新登場の自己複製子/気のいい奴が一番になる/遺伝子の長い腕<読む前の大使寸評>待つこと2週間、わりと早くゲットできたが・・・世界的なベストセラーという本でも、ちょっと古いのが狙い目かも♪<図書館予約:(12/05予約、12/18受取)>rakuten利己的な遺伝子お薦めの4冊1 リチャード・ドーキンス『利己的な遺伝子』2 カール・セーガン『COSMOS』3 ブライアン・グリーン『エレガントな宇宙』4 福田和代『宇宙へ』『サイエンス・ブック・トラベル』3:利己的な遺伝子『サイエンス・ブック・トラベル』2:進化とは何か『サイエンス・ブック・トラベル』1:歴史を変えた火山噴火
2024.05.21
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手許不如意の大使は外出時には、サイゼリアですますことが多くなりました。だって最近はラーメンが千円近くするので、サイゼリアのコスパがより魅力的に映るわけです。・・・というわけで、ヤマザキマリが説くイタリア料理を復刻して読み直してみます。*********************************************************図書館で『パスタぎらい』という本を、手にしたのです。ヤマザキマリが説くイタリア料理ってか・・・これはいけるかも♪【パスタぎらい】 ヤマザキマリ著、新潮社、2019年刊<「BOOK」データベース>よりイタリアに暮らし始めて三十五年。断言しよう。パスタよりもっと美味しいものが世界にはある!フィレンツェの絶品「貧乏料理」、シチリア島で頬張った餃子、死ぬ間際に食べたいポルチーニ茸、狂うほど愛しい日本食、忘れ難いおにぎりの温もり、北海道やリスボンの名物料理…。いわゆるグルメじゃないけれど、食への渇望と味覚の記憶こそが、私の創造の原点ー。胃袋で世界とつながった経験を美味しく綴る食文化エッセイ。<読む前の大使寸評>ヤマザキマリが説くイタリア料理ってか・・・これはいけるかも♪rakutenパスタぎらい第3章でオリーブ・オイルが語られているので、見てみましょう。p85~87<第3章 それでもイタリアは美味しい>■「万能の液体」オリーブ・オイル イタリアの家庭において絶対に切らしてはいけない調味料といえば、オリーブ・オイルをおいて他にない。 いざ料理する段階となって、オリーブ・オイルを切らしているのに気付くイタリア人で、軽いパニックになる人は少なくないはずだ。実際私も、舅が最後のオリーブ・オイルを使い切っておきながら、新しいのを補填しなかったことに姑が激怒して、その日の食事の準備を放棄してしまったのを目にあたりにしたことがある。 かといって、慌てて近所のスーパーで買ってきたところで、事態が円満に修復されるとは限らない。イタリアではその家庭それぞれにオリーブ・オイルへのこだわりというのが強くあり、どこのものでもいいということは決してない。例えば我が家の場合であれば、オリーブ・オイルはスーパーなどで小売店で購入するのではなく、二世代前から世話になっている農家から分けてもらっているものを使うのが定番だ。どんなに高級で高いオリーブ・オイルを買ってきても、喜んで使ってくれるわけではないのである。 イタリアのサッカーのナショナルチームが海外に遠征する時に、専属の調理師を伴っていくのは有名な話だが、その時に携帯する調味料として絶対に欠かせないのがオリーブ・オイルである。それもおそらく慣れ親しんだものでなければいけないはずだ。 選手によっては自分のコンディションの不調をオリーブ・オイルの味が普段と違うことを理由にしたりもするだろう。もし、普段使っているものが入手できない場合は、せめていつも使っているのと同じ生産地域のもの、それが厳しければせめてイタリア国内のもの、という優先順位になるだろう。 十年ほど前、当時暮らしていたポルトガルからイタリアの実家に持ってきた、お薦めのポルトガル産オリーブ・オイルは、いまだに台所の棚の中にしまわれていて、使われる気配はない。オリーブ・オイルはワインと並び、彼らにとって極めて保守的な食材なのである。 日本だと「オリーブ・オイルごときでそんな大袈裟な」と思われる方もいるかもしれない。例えば醤油にしても、決して全ての料理に使う訳ではない。しかしオリーブ・オイルに関しては、あらゆるイタリアの食事にとって必要不可欠なものなのだ。 パスタでもスープでも調理の段階で用いるだけではなく、食べる直前にも、さらにオリーブ・オイルを上から垂らす。ドレッシング文化のないイタリアでは、サラダを和えるのにもオリーブ・オイルは欠かせないし、肉や魚がどのような形態で調理されても、その上にはやはりオリーブ・オイルが掛けられる。 私が貧乏学生時代によく食べていた「アーリオ・オリオ・エ・ペペロンティーノ」にしても、オリーブ・オイルさえそこそこ美味しければ、かなり贅沢な気持ちになれる。 古代ギリシャや古代ローマの人たちは、朝ごはんにオリーブの実を食べたり、オリーブ・オイルの掛かったパンを食べていたとされているが、「地中海人」たちの徹底的なオリーブ・オイルへの執着は、おそらくあの頃から培われたものなのだろう。『パスタぎらい』3:スパゲッティ・ナポリタン『パスタぎらい』2:恋しいラーメン『パスタぎらい』1:アーリオ・オリオ・エ・ペペロンティーノ*********************************************************
2024.05.21
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図書館に予約していた『南海トラフ地震の真実』という本を、待つこと7ヵ月ほどでゲットしたのです。気象庁の公表情報でも発生確率70~80%という数値が出ているわけで・・・この本の告発が興味深いのである。【南海トラフ地震の真実】 小澤慧一著、東京新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より「南海トラフは発生確率の高さでえこひいきされている」。ある学者の告発を受け、その確率が特別な計算式で水増しされていると知った記者。非公開の議事録に隠されたやりとりを明らかにし、計算の根拠となる江戸時代の古文書を調査するうちに浮かんだ高い数値の裏にある「真実」。予算獲得のためにないがしろにされる科学ー。地震学と行政・防災のいびつな関係を暴く渾身の調査報道。科学ジャーナリスト賞で注目のスクープを書籍化!<読む前の大使寸評>気象庁の公表情報でも発生確率70~80%という数値が出ているわけで・・・この本の告発が興味深いのである。<図書館予約:(10/20予約、副本?、予約44)>rakuten南海トラフ地震の真実まず「第1章」の冒頭から、見てみましょう。p15~18<第1章 「えこひいき」の80%>■地震学者の告発「南海トラフ地震の確率だけ『えこひいき』されていて、水増しがされています。そこには裏の意図が隠れているんです」 取材は、地震学者からの衝撃的な「告発」で始まった。 それは2018年2月9日、地震調査委員会が南海トラフ地震が30年以内に発生する確率を「70%程度」から「70~80%」に変更されるとの情報を事前にキャッチした。「いよいよ東海地方に大地震が迫っている」と直感した私の頭の中では「防災対策は十分か」「自身が起きた場合の被害予測は」など、さまざまなニュースの切り口が駆け巡った。 まずは専門的な観点が必要と考え、本社から名古屋大の鷺谷威教授(地殻変動学)に電話した。鷺谷氏は南海トラフの発生確率の検討に関わった政府の委員会の委員だ。当然、このときは防災のために警鐘を鳴らすコメントが返ってくると期待していた。しかし返ってきたのは、冒頭のえこひいきという意外な発言だった。なぜ、自らが検討した確立を否定するのか・・・。訳がわからなくなりかけている私に、鷺谷氏は続けた。「個人的には非常にミスリーディングだと思っている。80%と言う数字を出せば、次に来る大地震が南海トラフ地震だと考え、防災対策もそこに焦点が絞られる。実際の危険度が数値通りならいいが、そうではない。まったくの誤解なんです。数値は危機感をあおるだけ。問題だと私は思う」 ミスリーディング? 誤解? 問題? 予想外の言葉に頭が混乱した。要領を得ない私に鷺谷氏はさらに驚くことを言った。「南海トラフだけ、予測の数値を出す方法が違う。あれを科学と言ってはいけない。地震学者たちは『信頼できない』と考えています。他の地域と同じ方法にすれば20%程度にまで落ちる。同じ方法にするべきだという声は地震学者の中では多いんです。だが、防災対策を専門とする人たちが、今さら数値を下げるのはけしからん、と主張しています」 科学とは言えない? 20%? 下げるのはけしからん? 想定外のコメントの数々が、ますます頭を混乱させた。だが、80%の数値に何かカラクリがあれば、それを知っておく必要がある。 鷺谷氏によると、地震学者たちは、いったんは全国で統一の計算方法を用いて算出した「20%程度」という確率を素直に発表する案も検討したという。ところが、その方針を政府の委員会の上層部に伝えると、大反対が巻き起こった。 確率の出し方は大きく分けて2通りあり、それぞれのメカニズムを電話のやりとりだけで理解するのは難しかった。だが、南海トラフ地震の確率が高いのは特別な算出方法のためで、その方法を地震学者たちが変えようとすると上から圧力がかかったということに、裏の意図があるらしいことは理解できた。 東海地方に住む人間にとって、南海トラフ地震はずっと「必ず来る」と言われ続けている地震だ。そのため、名古屋出身の私も幼い頃から学校などで防災訓練を念入りに行ってきた。しかし、発生確率が作られた数字だったとしたら・・・。この問題は、しっかりと取材しないといけない。そう直感した。 そのときはひとまず電話を終え、デスク(原稿のまとめ役)に報告した。デスクも「70~80%」の数字の大きさだけがことさら目を引くことを警戒し「そんなにでかでかと書かない方がいいな。粛々と報じよう」と冷静に反応した。
2024.05.20
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図書館で『映画の巨人たち リドリー・スコット』という本を手にしたのです。なんか既視感のある本であるが・・・再読でもいいかということでチョイスしたのです。帰って調べると、やはり再読となっています。で、この記事を(その4)とします。*********************************************************図書館で『映画の巨人たち リドリー・スコット』という本を、手にしたのです。「ブレードランナー」「ブラック・レイン」「テルマ&ルイーズ」とくれば・・・もっとも好きな監督になるのかなあ。【映画の巨人たち リドリー・スコット】佐野亨著、辰巳出版、2020年刊<「BOOK」データベース>よりSFから歴史劇まで、幅広い題材を描きながら、人間の悪意や文明論など明確なテーマ性と独自の映像美で、いまなお第一線で活躍し続けるリドリー・スコットーその魅力と本質をさまざまな角度から読み解く!<読む前の大使寸評>「ブレードランナー」「ブラック・レイン」「テルマ&ルイーズ」とくれば・・・もっとも好きな監督になるのかなあ。rakuten映画の巨人たち リドリー・スコットリドリー・スコットの生い立ちなどが語られているので、見てみましょう。P30~32<リドリー・スコットの生い立ちと原体験:稲田隆紀> リドリー・スコットにはこれまで三度、インタビューを行った。思い起こせば、1980年代は話題作であればプロモーションのために監督、俳優が来日することが定番化していて、取材する機会も頻繁にあった。 最初はスコットが『ブラック・レイン』のロケハンで来日し、『誰かに見られてる』のプロモーションに時間を割いた1988年だった。『誰かに見られてる』はアメリカでの評判も芳しくなく、スコットは意気消沈した風情で取材に応じた。 2回目は1989年、『ブラック・レイン』公開直前のプロモーションで、今度は意気軒昂の彼に取材した。(中略) この時点では彼は巨匠としての風格を身につけていた。 だが、本稿で求められているテーマはスコットの“匠に至る道”ではなく“生い立ちと原体験”だ。これまでの取材のコメントを洗い出し、資料を駆使して挑んだ。 資料によれば、リドリー・スコットは、1937年11月30日に北海に面したサウスシールズ、タイン・アンド・ウェアで生まれた。父親フランシス・バシー・スコットは王立工兵連隊(Royal Èngineers)の将校だった。母親のエリザベスは留守の多い父親に代わって、兄のフランク、リドリー、弟のトニーの三人をタフに育て上げた。彼女は口答えも許さない絶対的存在、強く尊敬に値する女性だった。後にスコットが生み出すタフな女性キャラクターの原型が母親であったことは間違いがない。 時代は第二次世界大戦前夜。父の任地がイギリス、ヨーロッパ各地に及び、家族は父と行動をともにして、各地を巡ることになる。第二次大戦後、スコット一家はダラム州ハートバーン、グリーンズ・ベック・ロードに定住することになった。 スコットが海洋冒険小説、特にジョゼフ・コンラッドなどのファンになったのは、父親の影響だと思われる。実際、彼は兄のフランクが既に輸送船団の一員となっていたこともあり、子供らしい夢として王立工兵連隊に加わりたいと考えていたようだ。 一方で、父親が水彩画を描くのが好きだったこともあって、スコットは絵画やコミックに興味を持つようになり、彼もまた絵を描くのが好きになった。父親は彼に芸術的才能を見いだし、それを伸ばすように勧めた。 さらにこの世代の子供らしく、スコットもまた映画に魅せられた。映画館のスクリーンをみつめながら、夢を育む日々を送っていた。「影響を受けたのは1940年代の英国映画だ。ゾルタン・コルダの『ジャングル・ブック』や『サハラ戦車隊』、マイケル・パウウェルの『赤い靴』、デヴィッド・リーンの『大いなる遺産』。さらにリーンが後に生み出した『戦場にかける橋』や『アラビアのロレンス』にも感動させられた。キャロル・リードの『落ちた偶像』や『第三の男』も忘れられない。みな卓抜したストーリーテラーだった。ハリウッドの作品も見たが、面白いだけで、感銘はなかった」 このコメントは1988年に引き出したのだが、どうも後付け臭い。当時はきれいな映像だけの男という評価に悩み、ストーリーテラーになるべく模索していた頃で、子供時代にこうした監督たちに惹かれたとは考え難い。他のインタビューでは、H・G・ウェルズの小説に熱中し、『恐怖の火星探検』や『放射能X』、『地球が静止した日』などのSF作品を、十代の頃に好んだと語っていた。こちらの方がよほどしっくりくる。 ともあれ、スコットは父の勧めに従い、ウェスト・ハートルプール美術カレッジに進んだ。1954年から1958年まで、彼は本格的に絵画を学び、写真技術やグラフィック・デザインにまで手を広げた。ヴィジアルセンスの何たるかを学んだ時期といえるだろう。 卒業後、今度はロンドン王立美術大学の奨学金を得て、美術的感性をさらに深めていく。デヴィッド・ホックニーやアラン・ジョーンズといった現代を代表する画家とともに学んだことで、スコットの感性は磨きがかかっていった。 この頃からスコットはオーソン・ウェルズや黒澤明をはじめとする世界の映画監督を知り、映画の多様さに眼が開いた。大学の映画部門の設立を積極的に働きかけ、大学の戸棚に置かれていた十六ミリカメラを駆使して、『少年と自転車』という短編を撮り上げる。父親フランシスと、嫌がる弟トニーを出演させたエピソードはつとに知られている。『映画の巨人たち リドリー・スコット』3:「ブレードランナー」の論考『映画の巨人たち リドリー・スコット』2:「テルマ&ルイーズ」の論考『映画の巨人たち リドリー・スコット』1:冒頭の論考
2024.05.20
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早朝に散歩する太子であるが、南東の空に月と金星が見えるのです。ちょうど三日月の内側に金星が位置しているが、これって中東諸国が好むマークではないか。また、このマークは春分と関係があるのではないか?このところ夏日とはしり梅雨のような日が立ち代わりに現れているが、梅雨入り宣言はいつ出るのでしょうね?『日本のならわしとしきたり』という蔵書に二十四節季の記事があることを思い出したのです。【日本のならわしとしきたり】ムック、 徳間書店、2012年刊<内容紹介>ありふれたムック本ということなのか、ネットにはデータがありません。<大使寸評>とにかく「今日は二十四節季でいえば、何になるか♪」を知りたいロボジーにとって、座右の書となるでしょう♪Amazon日本のならわしとしきたり麦秋この本で、小満のあたりを見てみましょう。和暦p15<小満>万物が次第に成長して、大きくなること 立夏から15日目ころにを小満の節を迎える。期間は5月15日ころから次の節である芒種の前日までである。小満に入るころは「万物が次第に成長して、大きくなること」であり、なかでも、秋に蒔いた麦に穂がつくころにあたる。「小満」は、その出来具合に「少し満足する」といった意味である。 ちなみに『暦便覧』では「万物盈満すれば草木枝葉繁る」とある。盈満の意味は、広辞苑によると「物事が充分に満ち足りること」。小満は、現時点での出来具合が「まずまず」といったほどの意味。 旧暦時代の暮らしでは、作物、なかでも米麦などの穀物の出来が暮らしと経済を左右していたため、収穫までは目を離すことができない。歳時記は、こうした季節の移ろう状態を短い言葉でまとめた冊子だが、農作業の重要な指針とも、なっていたのである。 また小満は穀物だけでなく、梅、桜桃梅(ゆすらうめ)などの草木が実をつけ始めるころでもある。さらに、七十二候に「蚕起食桑」があり、養蚕の蚕が盛んに桑の葉を食べ始めるのも小満のころだ。 小満の期間の七十二候は、次の通り。 初候「蚕起食桑(かいこ、おきて、くわを、はむ)」 次候「紅花栄(べにばな、さかう)」 末候「麦秋至(むぎのとき、いたる)」二十四節季の立夏に注目(復刻3)令和 6年(2024) 暦要項
2024.05.19
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図書館で『中国の論理』という新書を、手にしたのです。理屈のこね方・論理のパターンには日中間に違いがあると注目する著者であるが・・・深みのある洞察ではないか♪*********************************************************【中国の論理】岡本隆司著、中央公論新社、2016年刊<「BOOK」データベース>より同じ「漢字・儒教文化圏」に属すイメージが強いためか、私たちは中国や中国人を理解していると考えがちだ。だが「反日」なのに日本で「爆買い」、「一つの中国」「社会主義市場経済」など、中国では矛書がそのまま現実となる。それはなぜかー。本書は、歴史をひもときつつ、目の前の現象を追うだけでは見えない中国人の思考回路をさぐり、切っても切れない隣人とつきあうためのヒントを示す。<読む前の大使寸評>理屈のこね方・論理のパターンには日中間に違いがあると注目する著者であるが・・・深みのある洞察ではないか♪rakuten中国の論理マカートニーを謁見する乾隆帝「Ⅳ 近代の到来」でアヘン戦争あたりを、見てみましょう。P130~134<1 「西洋の衝撃」と中国の反応>■マカートニー使節 かくて中国・東アジアは19世紀を迎えた。この時代は「中国の論理」が西洋近代に直面して、転換をとげてゆく過程にほかならない。それはここまでⅠ・Ⅱ・Ⅲ章に述べてきた時間観念・社会構成・世界秩序のそれぞれで生じたことであり、その結果、現代の中国が誕生する。 しかしながら、すべてが同時に、また一様に起こったわけではない。たがいにタイムラグがあり、深浅もまちまちだった。 ごく単純にいってしまえば、Ⅰ章とⅡ章の観念・社会というエリアでは、変化が容易に起こらなかったのに対し、Ⅲ章の世界秩序では、論理の相剋と破綻をきたした。そこを起点に中国が自らの姿を次第に、やがて全面的にあらためてゆく、というシナリオになろうか。その過程をわれわれは近代化、中国革命と呼んでいる。 そのためこうした転換をみるには、第三の世界秩序からはじめるのが便宜であろう。まず縁遠かったはずの外国人に、登場いただきたい。イギリスが1793年、史上はじめて派遣した全権大使・マカートニーである。 イギリスは18世紀の後半、すでに中国との貿易を大幅に伸長させていた。中国はその茶買付で、未曽有の貿易黒字と好景気を謳歌していたのである。それはイギリスから見れば、貿易赤字なので、改善の余地が少なからずあった。マカートニー使節の派遣は、そんな貿易の規制緩和と中英の国交樹立を実現するのが目的である。マカートニーを謁見する乾隆帝 マカートニーは乾隆帝に謁見を果したものの、その使命についていえば、まったくの失敗だった。乾隆帝はマカートニーに、イギリス国王ジョージ三世あて勅命を下げわたしている。いわく、わが「天朝」は「外夷の貨物に頼る」必要はないのに対し、「天朝」所産の「茶葉・磁器・生糸」は、西洋に欠かせない必需品なので、「恩恵を加えて優遇」し、貿易をさせてやっているから、過分の要求など以ての外、「遠人に恩恵をあたえ、四夷を撫育する道義をないがしろ」にする、との文面だった。物知らずな「外夷」・野蛮人に教え諭す口吻である。 そもそもマカートニー使節団は全権大使だから、西洋的な基準でいえば最も高位の使節、相応の礼遇があってしかるべきだった。ところが清朝側の待遇は、まったくの「朝貢」使節に対するものである。そこで「朝貢」使節のマナーである、皇帝に対する叩頭の礼も、実践しなくてはならなかったところ、さすがに宥免してもらった。あまりにも遠いところから来た「遠人」・野蛮人だから、ということで、これまた特別の「恩恵」ではある。 要するに、清朝では君臣こぞって、朱子学的な「華夷」意識一色だった。イギリスとの貿易は、それを極力排除したはずの「互市」カテゴリーにあったはずだが、そこにもすでに浸透していたわけである。多元的な秩序体系の併存がくずれつつあった兆候と見てもよい。 使命は果たせなかった一方で、マカートニーたちは滞在中、清朝の実地調査にいそしみ、多くのレポートを書き残した。その統治が危機的な情況にあることを「ボロボロに傷んだ戦闘艦」にたとえており、その末路を正確に予言さえしている。 そして野蛮人の待遇を受けたはずのかれは、清朝の人々を「現代のヨーロッパ諸国民と比べると、半野蛮人となりはてている」と断定した。互いを野蛮人と見下しあっているわけで、東西双方の世界秩序は、もはや大きな矛盾をきたし、衝突を待っていたといえよう。■アヘン戦争 そのイギリスは、旭日の勢いである。東アジアも当然、それとは無縁ではありえない。18世紀も後半に入って、世界経済が始動するなか、イギリスは本格的な工業化をはじめると同時に、中国からおびだたしい量の茶を買い付けた。その経済力はもはや清朝の世界秩序をも左右するほどになっていたのである。 そうしたなか、イギリスは清朝の待遇そのものに不満をいだきはじめた。それは個別の関係や取引からはじまって、全体的な統治構造・秩序体系全体にも及んでいる。それを象徴するのが、アヘン貿易であった。 アヘンは麻薬であり、清朝でも当然、禁制品である。しかし当時のイギリスと世界経済は、その中国への売却を必要不可欠としたばかりではなく、「自由貿易」というシステムで、それを正当化しようとした。 清朝側でも秘密結社の密売人など、強力な受け入れ体制 が厳然として存在している。双方あいまって、清朝が想定する対外秩序を掘り崩していった。 それを押しとどめようと奮闘したのが林則徐である。かれは時の天子、道皇帝の委任を受けて、アヘン貿易禁圧に乗り出した。しかし帝も林則徐もいかに善意で明察だったにせよ、世界観・秩序観では旧態依然、乾隆帝と選ぶところがない。さすがに有能な林則徐は、任に当たって相手のイギリスのことを知るべく、情報を集めて研究しはじめた。けれども実際の政策や態度は、「華夷」「攘夷」でしかありえなかったのである。『中国の論理』1:はじめに
2024.05.19
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図書館で『中国の論理』という新書を、手にしたのです。理屈のこね方・論理のパターンには日中間に違いがあると注目する著者であるが・・・深みのある洞察ではないか♪*********************************************************【中国の論理】岡本隆司著、中央公論新社、2016年刊<「BOOK」データベース>より同じ「漢字・儒教文化圏」に属すイメージが強いためか、私たちは中国や中国人を理解していると考えがちだ。だが「反日」なのに日本で「爆買い」、「一つの中国」「社会主義市場経済」など、中国では矛書がそのまま現実となる。それはなぜかー。本書は、歴史をひもときつつ、目の前の現象を追うだけでは見えない中国人の思考回路をさぐり、切っても切れない隣人とつきあうためのヒントを示す。<読む前の大使寸評>理屈のこね方・論理のパターンには日中間に違いがあると注目する著者であるが・・・深みのある洞察ではないか♪rakuten中国の論理まず「はじめに」あたりを、見てみましょう。中国嫌いの著者のスタンスが見えるのがええでぇ♪Pⅲ~ⅶ<はじめに>■謎の国 見た目にはとっつきやすく、わかりやすそうな中国は、ほんとうは謎の国である。「ロシアのほうがはるかにわかりやすい」といったのは、西洋史学の大家だった。しかしわれわれ中国を専門に学んでいる者にとっても、やはり中国は謎である。その謎がおもしろい。おもしろさが嵩じて、うかつにも専門の職業としてしまった面もある。■言行不一致 もっとも、おもしろがってばかりはいられない。不可解、謎というのは不気味で、不安をかき立てるし、実害を被る時さえある。謎の中国をめぐっては、往々にして不愉快な事象もまぬかれない。 言行が一致しないことは、その1つ。いっていることとやっていることが著しく異なる、というわけで、なかんづく政府の言動がきわだっている。政治・権力というのは、多かれ少なかれ二枚舌の習性があるものだが、中国は格段に甚だしい。 日本人からみれば、自らに関わる尖閣など、領土問題もそうだし、相手のことなら、その内政じたいがそうである。「腐敗」が蔓延しながら、「法治」を呼号し、しかも言論を弾圧しているのは、いかにも理解しがたい。 政府だけではない。全体についても同じ、やはり日本に対する態度が、典型的である。中国人の多くは「反日」だろうが、その同じ中国人が日本を好んで、大挙して「爆買い」にやってくる。どうにも不気味で、愉快な光景ではない。 もっともそれを極論して、全くのウソつき、と断じてしまうのは、いささか躊躇する。おそらく故意にウソをついているのではない。中国人じしんにとっては、むしろごく自然なふるまいなのだろう。われわれにはそれがウソ、不自然に見えてしまうところに、謎の核心がある。 にもかかわらず、日本人は往々にして、自らの常識で中国をはかりがちである。欧米人とはちがって、近隣に暮らし、姿形も似ているし、同じ文字を使っているからである。しかし言行が一致しないことが、中国の謎から来ているのだとすれば、それをウソつきと片づけてしまっては、単なる知的怠慢にすぎない。謎は謎として、向き合う必要がある。■「一つの中国」 では、その謎はどうやったら解けるのか。そんな問いに対する解答があるなら、筆者が真っ先に知りたいところである。自身はようやく謎が謎であることを認識したにすぎない。 そうはいっても、謎であるとわかったら、貧しい知見ながら、その解き方を模索することはできる。なぜ言行が一致しないのか、そんなふるまいと、それをみるこちら側の常識・見方とが、どうしても食い違ってしまうのか。そうしたことを考えてみるのが、まず第一歩である。(中略) やはり現実は決して「一つ」ではない、けれどもその現実は認めがたい、だからこそ「一つ」であらねばならないし、「一つ」だといわねばならぬ。これが中国側の主張であって、やはりそこには、日本人の容易にはかりしれない論理がはたらいている。■「論理」と歴史 こうした中国の論理、ひらたくいえば、理屈のこね方は注目に値する。そもそも理屈というのは、時と場合、ないしは立場によって千差万別、いろいろ変わっても不思議ではない。しかしそんな表に出る多様な理屈をこねまわす方法、あるいは主張を成り立たせる骨格には、身に染みついた一定のパターンがあって、たやすくは抜けない、変わらないものである。日本人には日本人の理屈のこね方があり、中国人には中国人の理屈のこね方があって、そこにこそ、まとまった集団の個性があろう。 だから個々の理屈、その字面はわかったような気がしても、理屈のこね方、論理に考えを及ぼすと、わからなくなってしまうことも少なくない。「一つの中国」は、その典型である。相手をほんとうに理解しようとするなら、そこまで考えなくてはならない。 だとすれば、中国の謎とは、その論理にある。なぜそう思考するのか、発言するのか、行動するのか。そこに通底しているはずの論理を考察してみようというのが、本書の試みである。
2024.05.18
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定年退社前の仕事で、「個体燃料電池を組み込んだ試験用発電設備」の設計、製作、試運転に携わったことがあるのですが・・・ネットで「グリーン水素革命目指す欧州」という記事を見たので紹介します。*********************************************************水素関連で500社弱出展のハノーバーメッセ、「グリーン水素革命」目指す欧州よりドイツ・ハノーバーで開催された「Hannover Messe 2024」の主要テーマは「Energizing a Sustainable Industry(持続可能な産業を活性化する)」。約4000社の出展のうち、多くが「Industry 4.0」、すなわち工場のオートメーション化やデジタル化を軸に出展した。 その中でやや異色だったのが「Hydrogen+Fuel Cells(水素と燃料電池)」をテーマとした出展だ。Hannover Messeでは30年近くも続いているテーマだが、今回は、「Hydrogen+Fuel Cells EUROPE」というコミュニティーに所属する企業だけで300社超。それ以外の企業も含めると出展社500社弱(日経クロステック調べ)と過去最大規模になった。水素関連だけでこの出展規模は世界最大級といえる。Bosch社の個体燃料電池■水素社会実現のインフラ、サプライチェーン構築へ 会場には、「ENERGY 4.0」や「green hydrogen revolution(グリーン水素革命)」といった刺激的なキャッチコピーが目立つ。出展内容も、水素またはアンモニアやメタノールなどの水素キャリアの生産技術、その圧縮や貯蔵システム、パイプラインの敷設計画、水素の充填ステーション、そして燃料電池や燃焼システムまで、水素の様々なサプライチェーンやインフラが出そろった。 中でも人気を集めたのがドイツRobert Boschの出展や講演だ)。同社は、日本では自動車関連の部品・部材メーカーとしての印象が強いが、水素関連でもサプライチェーン・システムの多くを手掛けている。
2024.05.18
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ウツギ類やコデマリの白い花が見ごろになっている昨今ですが・・・私のブログの画像としているヤブデマリを京都府立植物園に見にいきたいのだが・・・とりあえず、昔の(12年前の)日記を復刻して覗いてみたのです。*********************************************************ドングリ国のウツギ類、コデマリの咲き具合から類推すると・・・・・京都府立植物園のヤブデマリが見頃だろう。連休が過ぎた頃、ここのヤブデマリの見頃に合わすように繰り出すのが大使のパターンなんですが、今年のこのピンポイント予想がバッチリ大当たりでした♪ヤブデマリ1ヤブデマリ2比叡山を借景にしてうっそうとした感じがいいですね。植物園1クスノキの並木もなかなか年季が入っているようです。植物園2東福寺まで足をのばして、「八相の庭」を見てきました。紅葉の名所は、この時期は若葉がきれいで人出も少ないし・・・・気分はええでぇ♪東福寺ちなみに京都府立植物園にてに、2年前のヤブデマリが見られます。
2024.05.17
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今回借りた4冊です。 だいたい支離滅裂に借りているけど、今回の傾向は強いていえば、「手あたり次第」でしょうか♪<市立図書館>・南海トラフ地震の真実・映画の巨人たち リドリー・スコット・中国の論理・宇宙へ(借り出し2回目)<大学図書館>(ただいま市民への開放サービスを休止中)図書館で手当たり次第で本を探すのがわりと楽しいが・・・これが、図書館での正しい探し方ではないかと思ったりする(笑)***********************************************************【南海トラフ地震の真実】 小澤慧一著、東京新聞出版、2023年刊<「BOOK」データベース>より「南海トラフは発生確率の高さでえこひいきされている」。ある学者の告発を受け、その確率が特別な計算式で水増しされていると知った記者。非公開の議事録に隠されたやりとりを明らかにし、計算の根拠となる江戸時代の古文書を調査するうちに浮かんだ高い数値の裏にある「真実」。予算獲得のためにないがしろにされる科学ー。地震学と行政・防災のいびつな関係を暴く渾身の調査報道。科学ジャーナリスト賞で注目のスクープを書籍化!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/20予約、副本?、予約44)>rakuten南海トラフ地震の真実【映画の巨人たち リドリー・スコット】佐野亨著、辰巳出版、2020年刊<「BOOK」データベース>よりSFから歴史劇まで、幅広い題材を描きながら、人間の悪意や文明論など明確なテーマ性と独自の映像美で、いまなお第一線で活躍し続けるリドリー・スコットーその魅力と本質をさまざまな角度から読み解く!<読む前の大使寸評>「ブレードランナー」「ブラック・レイン」「テルマ&ルイーズ」とくれば・・・もっとも好きな監督になるのかなあ。rakuten映画の巨人たち リドリー・スコット【中国の論理】岡本隆司著、中央公論新社、2016年刊<「BOOK」データベース>より同じ「漢字・儒教文化圏」に属すイメージが強いためか、私たちは中国や中国人を理解していると考えがちだ。だが「反日」なのに日本で「爆買い」、「一つの中国」「社会主義市場経済」など、中国では矛書がそのまま現実となる。それはなぜかー。本書は、歴史をひもときつつ、目の前の現象を追うだけでは見えない中国人の思考回路をさぐり、切っても切れない隣人とつきあうためのヒントを示す。<読む前の大使寸評>理屈のこね方・論理のパターンには日中間に違いがあると注目する著者であるが・・・深みのある洞察ではないか♪rakuten中国の論理【宇宙へ】福田和代著、講談社、2012年刊<「BOOK」データベース>より【目次】職業メンテナンスマン。仕事場は、宇宙!2031年、原田拓海は宇宙へ上がる。天に向かい、まっすぐ伸びていく“宇宙エレベーター”で。誰もが宇宙へ行ける時代の到来。夢のその先には、誰も味わったことのない未知なる“お仕事”が待っていた。 遙かなる宇宙の歌/メンテナンスマンはマタ・ハリの夢を見るか?/アストロノーツに花束を/わが名はテロリスト<読む前の大使寸評>著者は神戸市生まれの理系女性で、宇宙エレベーターに関するハードSFを書いているのがええでぇ♪rakuten宇宙へ
2024.05.17
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『朝日デジタルの書評から』フォームや『読みたい本』フォームを作っているのだが、これを市図書館の予約に利用しようと、思い立ったのです。これまでの予約内容と予約候補は以下のとおりです。<予約中>・川上未映子『黄色い家』(7/24予約、副本?、予約504)現在138位・三浦しおん『墨のゆらめき』(8/9予約、副本12、予約373)現在57位・堤未果のショック・ドクトリン(8/25予約、副本7、予約177)現在32位・『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』(9/18予約、副本5、予約126)現在29位・原田ひ香『図書館のお夜食』(10/04予約、副本17、予約402)現在124位・斎藤幸平『マルクス解体』(11/28予約、副本?、予約?)現在3位・吉岡桂子『鉄道と愛国』(12/04予約、副本?、予約?)現在4位・高野秀行『イラク水滸伝』(1/06予約、副本3、予約86)現在49位・大学教授 こそこそ日記(1/12予約、入荷待ち、予約?)現在20位・絲山秋子『神と黒蟹県』(3/02予約、副本3、予約63)現在50位・三浦しおん『しんがりで寝ています』(4/12予約、副本?、予約106)現在94位・カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」(4/27予約、副本1、予約48)現在47位・前田和男『昭和街場のはやり歌』 (5/10予約、副本?、予約8)現在8位・小倉ヒラク『アジア発酵紀行』 (5/14予約、副本2、予約21)<カートで待機中>・N・ネフスキー著『月と不死』・グレタたったひとりのストライキ・カズオ・イシグロ『夜想曲集』・沢木耕太郎『深夜特急』<予約候補>・中野翠『ほいきた、トシヨリ生活』・鴨志田譲×西原理恵子『アジアパー伝』:図書館未収蔵・ジョージ・ミーガン『世界最長の徒歩旅行』:図書館未収蔵・李琴峰『彼岸花が咲く島』:第165回芥川賞受賞作(21年)・井上ひさし『本の運命』・ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』・ケン・リュウ『草を結びて環を衡えん』:図書館未収蔵・九段理恵『東京都道場塔』:図書館未収蔵・外山滋比古『思考の整理学』・ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』・西東三鬼『神戸・続神戸』・「中国」はいかにして統一されたか・街道をゆく「モンゴル紀行」「南蛮のみち」・地球の歩き方 日本・畑正憲『どんべえ物語』:図書館未収蔵<予約分受取:2/27以降> ・村上春樹×柴田元幸『翻訳夜話』(2/15予約、2/27受取)・楊双子『台湾漫遊鉄道のふたり』(6/23予約、2/27受取)・川添愛『世にもあいまいなことばの秘密』(1/26予約、2/27受取)・呉叡人『フォルモサ・イデオロギー』(2/03予約、3/11受取) ・森見登美彦『太陽と乙女』(3/23予約、3/31受取)・Wedge 2024年2月号 霞が関の危機は日本の危機 (4/16予約、4/28受取)・本川達雄『ウマは走るヒトはコケる』(3/31予約、5/10受取)・南海トラフ地震の真実(10/20予約、5/15受取予定)**********************************************************************【黄色い家】川上未映子著、中央公論新社、2023年刊<「BOOK」データベース>より2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(7/24予約、副本?、予約504)>rakuten黄色い家【墨のゆらめき】三浦しおん著、 新潮社、2023年刊<出版社>より実直なホテルマンは奔放な書家と文字に魅せられていく。書下ろし長篇小説! 都内の老舗ホテル勤務の続力は招待状の宛名書きを新たに引き受けた書家の遠田薫を訪ねたところ、副業の手紙の代筆を手伝うはめに。この代筆は依頼者に代わって手紙の文面を考え、依頼者の筆跡を模写するというものだった。AmazonのAudible(朗読)との共同企画、配信開始ですでに大人気の書き下ろし長篇小説。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/9予約、副本12、予約373)>rakuten墨のゆらめき【堤未果のショック・ドクトリン】堤未果著、幻冬舎、2023年刊<「BOOK」データベース>より「ショック・ドクトリン」とはテロや大災害など、恐怖で国民が思考停止している最中に、為政者や巨大資本がどさくさに紛れに過激な政策を推し進める悪魔の手法のことである。日本でも大地震やコロナ禍という惨事の裏で、知らない間に個人情報や資産が奪われようとしている。パンデミックで空前の利益を得る製薬企業の手口、マイナンバーカード普及の先にある政府の思惑など…。強欲資本主義の巧妙な正体を見抜き、私たちの生命・財産を守る方法とは?滅びゆく日本の実態を看破する覚悟の一冊。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(8/25予約、副本7、予約177)>rakuten堤未果のショック・ドクトリン【ぼくはあと何回、満月を見るだろう】坂本龍一著、新潮社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「何もしなければ余命は半年ですね」ガンの転移が発覚し、医師からそう告げられたのは、2020年12月のこと。だが、その日が来る前に言葉にしておくべきことがある。創作や社会運動を支える哲学、坂本家の歴史と家族に対する想い、そして自分が去ったあとの世界についてー。幼少期から57歳までの人生を振り返った『音楽は自由にする』を継ぎ、最晩年までの足跡を未来に遺す、決定的自伝。著者の最期の日々を綴った、盟友・鈴木正文による書き下ろし原稿を収録。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(9/18予約、副本5、予約126)>rakutenぼくはあと何回、満月を見るだろう【図書館のお夜食】原田ひ香著、ポプラ社、2023年刊<「BOOK」データベース>より東北地方の書店に勤めるものの、うまくいかず、仕事を辞めようかと思っていた樋口乙葉は、SNSで知った、東京の郊外にある「夜の図書館」で働くことになる。そこは普通の図書館と異なり、亡くなった作家の蔵書が集められた、“本の博物館”のような図書館だった。開館時間は夜7時から12時まで、まかないとして“実在の本に登場する料理”が出てくる「夜の図書館」で、本好きの同僚に囲まれながら働き始める乙葉だったがー。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(10/04予約、副本17、予約402)>rakuten図書館のお夜食【マルクス解体】斎藤幸平著、 講談社、2023年刊<「BOOK」データベース>よりいまや多くの問題を引き起こしている資本主義に対する処方箋として、斎藤幸平は、マルクスという古典からこれからの世の中に必要な理論を提示する。本書『マルクス解体』は、マルクスの物質代謝論、エコロジー論、プロメテウス主義の批判から、未来への希望を託す脱成長コミュニズム論までを精緻に語る。これまでの斎藤の活動の集大成であり、同時に「自由」や「豊かさ」をめぐり21世紀の基盤となる新たな議論を提起する書である。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(11/28予約、副本?、予約?)>rakutenマルクス解体【鉄道と愛国】吉岡桂子著、岩波書店、2023年刊<「BOOK」データベース>より戦後日本の発展の象徴、新幹線。アジア各地で高速鉄道の新設計画が進み、中国が日本と輸出を巡って競い合う現在、新幹線はどこまで日本の期待を背負って走るのか。一九九〇年代から始まった新幹線商戦の舞台裏を取材し、世界最長の路線網を実現した中国の高速鉄道発展の実像に迫る第一部、中国、香港、韓国、東南アジア、インド、ハンガリーなど世界各地をたずね、鉄道を走らせる各国の思惑と、現地に生きる人々の声を伝える第二部を通じて、時代と共に移りゆく日中関係を描き出し、日本の現在地をあぶりだす。<読む前の大使寸評>追って記入。<図書館予約:(12/04予約、副本?、予約?)>rakuten鉄道と愛国【イラク水滸伝】高野秀行著、文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>よりアフワールーそこは馬もラクダも戦車も使えず、巨大な軍勢は入れず、境界線もなく、迷路のように水路が入り組み、方角すらわからない地。権力に抗うアウトローや迫害されたマイノリティが逃げ込む、謎の巨大湿地帯。中東情勢の裏側と第一級の民族誌的記録ー“現代最後のカオス”に挑んだ圧巻のノンフィクション大作!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/06予約、副本3、予約86)>rakutenイラク水滸伝【大学教授 こそこそ日記】 多井学著、三五館シンシャ、2023年刊<「BOOK」データベース>より「いくらでも手抜きのできる仕事」。現役教授が打ち明ける、ちっとも優雅じゃない生活。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(1/12予約、入荷待ち、予約?)>rakuten大学教授 こそこそ日記【神と黒蟹県】絲山秋子著、 文藝春秋、2023年刊<「BOOK」データベース>より「黒蟹とはまた、微妙ですね」。日本のどこにでもあるような「地味県」の黒蟹県。そこで暮らす、そこを訪れる、名もなき人々や半知半能の神がすれ違いながら織りなす、かけがえなく、いとおしい日々。まだ名付けられていない人間関係を描き続けてきた著者真骨頂の連作小説集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(3/02予約、副本3、予約63)>rakuten神と黒蟹県【しんがりで寝ています】三浦しおん著、 集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>より雑誌「BAILA」での連載4年分に、書き下ろしを加えた全55編!三浦しをんの沼にどっぷりハマる、最新&爆笑エッセイ集。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/12予約、副本?、予約111)>rakutenしんがりで寝ています【カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」】 室橋 裕和著、集英社、2024年刊<「BOOK」データベース>よりいまや日本のいたるところで見かけるようになった、格安インドカレー店。そのほとんどがネパール人経営なのはなぜか?どの店もバターチキンカレー、ナン、タンドリーチキンといったメニューがコピペのように並ぶのはどうしてか?「インネパ」とも呼ばれるこれらの店は、どんな経緯で日本全国に増殖していったのか…その謎を追ううちに見えてきたのは、日本の外国人行政の盲点を突く移民たちのしたたかさと、海外出稼ぎが主要産業になっている国ならではの悲哀だった。おいしさのなかの真実に迫るノンフィクション。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(4/27予約、副本1、予約48)>rakutenカレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」【昭和街場のはやり歌】前田和男著、 彩流社、2023年刊<「BOOK」データベース>より「はやり歌」から、明日の日本の姿が見えてくる…。歌とともに時代を共有した「団塊」といわれるベビーブーマー世代が、エピソードを交え描く歌謡社会文化論!<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/01予約、副本?、予約8)>rakuten昭和街場のはやり歌【アジア発酵紀行】小倉ヒラク著、文藝春秋、2023年刊<出版社>よりアジアの巨大な地下水脈をたどる冒険行。「発酵界のインディ・ジョーンズ」を見ているようだ!ーー高野秀行(ノンフィクション作家) 自由になれーー各地の微生物が、奔放な旅を通じて語りかけてくる。ーー平松洋子(作家・エッセイスト)発酵はアナーキーだ! チベット~雲南の「茶馬古道」からインド最果ての内戦地帯へーー前人未到の旅がいま幕をあける! 壮大なスケールでアジアの発酵文化の源流が浮き彫りになる渾身作。<読む前の大使寸評>追って記入<図書館予約:(5/14予約、副本2、予約21)>rakutenアジア発酵紀行【月と不死】N・ネフスキー著、平凡社、1971年刊<出版社>より著者は日本民俗学界の異色の存在として知られるロシア人学者で,柳田国男,折口信夫らと親交を結び,沖縄,東北などの民俗を採録した。本書は日本語で発表された論文・書簡を網羅した唯一の著作集。<読む前の大使寸評>ロシア人にして、日本民俗学界の異色の存在が気になるのです。<図書館予約:(とりあえずカートに入れておこう)>heibonsha月と不死図書館予約の運用にも慣れて、速攻で入手するコツも何となくつかんだと思うのだ♪・朝日書評欄で探すとしたら、3ヶ月前掲載くらいのモノが狙い目かも。・専門的すぎるほどのモノは、予約0となっていることが多い。・受取館に収蔵しているモノは、移送する手間が省けるので早くなるだろう。・本屋の店頭に出た直後の新刊本・ウィキペディアでめぼしい著作を探す・神戸市図書館の予約順位は毎週火曜日(午前1時~3時) に更新されます。・Kindle版を購入すれば、その本の全て読めるのだが、紙の本から書き写す手間が好きなわけでおます。予約分受取目録R26好書好日トップ図書館情報ネットワーク 蔵書検索
2024.05.16
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図書館で『フランス語っぽい日々』という本を、手にしたのです。どこを開いても・・・夫の描くマンガの頁、妻の述べる説明の頁がセットになっていてわかり易くて興味深いのである♪【フランス語っぽい日々】じゃんぽ~る西×カリン西村著、白水社、2020年刊<「BOOK」データベース>より外国語を愛する、外国語に苦しむすべての人に。日仏夫婦が漫画とコラムでつづる、異文化・外国語学習・子育ての悲喜こもごも!<読む前の大使寸評>どこを開いても・・・夫の描くマンガの頁、妻の述べる説明の頁がセットになっていてわかり易くて興味深いのである♪rakutenフランス語っぽい日々海外県のフランス語が語られているので、見てみましょう。p40~41<17 海外県のフランス語 Le francais d‛outre—mer> 歌手のダニエル・バラヴォワーヌは、フランス語はよく響く言語だと言いました。その通り。フランス語は遠くまで響く言語、カナダや太平洋のど真ん中、ニューカレドニア、マルキーズ諸島やタヒチにまで響き渡る言語なのですから。海外県のフランス語に接する機会があると、愕然とすることがしばしばあります。 ラジオ・カナダで時評を担当するわたしが接する人たちは、独自の美しい表現も編み出す見事なフランス語を操るのですが、彼らのなまりやイントネーションに思わず不意を打たれ、つまり、笑いそうになってしまうことがあるのです。 ケベックのフランス語話者たちは、かなり独特な話し方をします。具体的に説明するのは難しいですが、主な特徴のひとつに、巻き舌のRがあります。半分Rのような半分Lのような発音で、日本人のそれと少し似ています。 夫とともに招待されたタヒチのサロン・ド・リーブル(ブックフェア)に訪れたときのこと。タヒチのフランス語話者たちもまた、この巻き舌のR()を使うことを知り、おどろいたのなんの。さらに彼らにはフランス語と現地の言葉を頻繁にしかも絶妙に混ぜ合わせる、一風変わった癖があります。結果、本土のフランス人であるわたしには、彼らの言うことの半分しか理解ができません。 旅先であれ、フランス国内であれ、その土地によって多少なりともなまりはあるもの。よく言われるのはマルセイユ、トゥールーズ、そしてエクサンプロヴァンスのなまり。パリジャンだって「粘ついた」フランス語を話すと言われています。 わたしはといえば、ブルゴーニュ出身、厳密にはヨンヌ県の生まれです。さて、みなさんごぞんじでしょうか。お隣のソーヌ・エ・ロワーヌ県の人たちにもある変わった特徴があるんです。それは、なんと巻き舌のRです。『フランス語っぽい日々』2:新旧のシャンソン『フランス語っぽい日々』1:言葉とは思考の方法
2024.05.16
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図書館に予約していた『ウマは走るヒトはコケる』という新書を、待つこと40日ほどでゲットしたのです。なんか、力学とか流体力学とかも引用しながら説明する箇所があって・・・これまでよりハード志向であり、読むほうにも覚悟が求められているようです。【ウマは走るヒトはコケる】本川達雄著、 中央公論新社、2024年刊<「BOOK」データベース>より背骨と手足を得て、脊椎動物は速く長距離を移動できるようになった。走る、泳ぐ、飛ぶと方法は異なるが、動物それぞれが素早い動きを可能にする体のデザインを持っている。ヒトはコケつつ歩くが、これがめっぽう効率が良くて速い。なぜ?鶏の胸肉はササミよりも3倍も大きい。なぜ?渡り鳥が無着陸で何千kmも飛べる。なぜ?魚やイルカには顎がない。なぜ?皆、納得のいく理由がある。動くための驚きの仕組みが満載!<読む前の大使寸評>なんか、力学とか流体力学とかも引用しながら説明する箇所があって・・・これまでよりハード志向であり、読むほうにも覚悟が求められているようです。<図書館予約:(3/31予約、副本1、予約5)>rakutenウマは走るヒトはコケる「第2章 歩く力・走る力」あたりを見てみましょう。p50~52<ヒトの2足歩行―ヒトはコケながら歩く>■ヒト、恐竜、鳥 ヒトは立ち上がって2足歩行をするようになった。2足歩行の利点として次のようなものが考えられるだろう。①手が自由になった。②高い位置から見晴らせるようになった。③脳を重くしても、真っ直ぐに経っていてその真上に脳が乗っているので、支えるのが楽。④2足でしか立っていないので体が不安定になるが、その不安定さを利用して、歩くエネルギーを節約している。⑤直射日光が当たる面積が小さくなり過熱が防げ、また体が地面から離れているため、暑さ寒さの影響を受けにくい。 2足歩行をしているものには、ヒトの他に恐竜とその子孫である鳥がいる。ただし彼らはバランスの取り方がヒトとは違う。恐竜は永くて太い尻尾をもち、胴も尾もともに水平に保ちながら、重心のある位置あたりから肢を垂直に下ろして立っていたとされる。これはT字のやじろべえの姿勢であり、バランスのとれた安定した姿勢である。 鳥の場合は体を軽くするために長い尻尾を失ったし、飛ぶための強大な筋肉を胸のところにもった。そのため体の重心は股関節よりずっと前に移動した。それでもやじろべえ方式で立つために、大腿骨を水平にして前に向け、膝をほぼ重心の位置までもってきて、その位置で膝を曲げて脛(すね)から先を垂直に下ろした。鳥の肢は一見、われわれのものとは逆向きに膝関節が曲がっているように見えるが、あれは不座ではなくくるぶしの関節である。 鳥も恐竜もやじろべえ方式の安定した姿勢を保っているが、ヒトの場合は胴を垂直に立ててしまったため、トップヘビーの極端に不安定な姿勢になった。その点を逆手にとって省エネしているというのが、ここからの話題である。■胴の形 四肢動物は2つのやじろべえが前後に並んだものと見ることもできる。1つのやじろべえは、頭+「胴の前半分」の水平の棒が、真ん中で前肢に支えられているもの、もう1つは、「胴の後半分」+尻尾の水平の棒が後肢で支えられているやじろべえ。やじろべえだから体が安定する。 さらに頭と胴が釣り合い、また胴と尻尾が釣り合っているのだから、重力で頭や胴が垂れ下がらないようにと筋肉で持ち上げ続ける必要がなくなり、省エネになる。とくに胴は重いものだから、陸の大型動物は胴が真ん中で垂れ下がらないように工夫しなければならず、これが工夫の一つである。 ここで胴の形について考えておきたい。胴はおおまかに見れば前後に長い円柱形だが、断面の形は動物群ごとに違う。魚でもよく泳ぐものたちの胴の断面は幅が狭く背腹に長い楕円形であり、これは胴のくねりで水を押す面積をおおきくしていると解釈できる。 四肢動物の胴でも断面は背腹が少々長い楕円形である。重力で前後の肢の間の腹が垂れ下がらないように脊柱をアーチ状に上に凸にし、脊柱から内臓を吊り下げた。このため横幅より背腹の方が長い。胴は建築学的に見れば梁である。梁とは水平方向の支持材のことで、垂直方向の支持材が柱。胴を梁、肢を柱と観ることができる。梁は重力のかかる方向が厚い方が下にたわみにくい。だから胴も四肢動物のように背腹方向に厚い方が力学的に強くて重力で胴が垂れ下がりにくい。『ウマは走るヒトはコケる』1:ウニの歩行
2024.05.15
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図書館で『空港時光』という本を、手にしたのです。おお 温又柔の短編小説ではないか。日本―台湾の間で出国、帰国を繰り返す台湾系ニホン語人作家の飛翔作とのこと・・・面白そうである。【空港時光】温又柔著、河出書房新社、2018年刊<「BOOK」データベース>より「出発」「日本人のようなもの」「あの子は特別」「異境の台湾人」「親孝行」「可能性」「息子」「鳳梨酥」「百点満点」「到着」…最注目の気鋭が描く、10の物語!エッセイ「音の彼方へ」併録。台湾系ニホン語人作家の飛翔作。<読む前の大使寸評>おお 温又柔の短編小説ではないか。日本―台湾の間で出国、帰国を繰り返す台湾系ニホン語人作家の飛翔作とのこと・・・面白そうである。rakuten空港時光台湾と日本を行き来しながら育ちましたより「音の彼方へ」で入国カウンターでの躊躇を、見てみましょう。p148~150<台湾> タイワン、のイントネーションについて。 日本では、タイワンと尻下がりのイントネーションで発音するのがふつうだろう。タイワンの「ワン」を、ワーン、と平らに伸ばして発音すると、途端に中国語っぽくなる。「タ」を少々濁らせて、「ダイ」と「ワン」をそれぞれ低く抑え込みながら言えば、もう立派な台湾語。(あくまでも私の個人的な感覚です) タイワーン、とダイワン。 日本生まれの妹はときおり混乱するようだが、台湾で生まれ、二歳半まで台北に住み、四歳の春に日本の幼稚園にあがるまではほぼ中国語と台湾語だけを聞いていた私は、どちらが中国語で台湾語なのか瞬時に判る。けれども私は、「台湾」が、日本語ではタイワンと発音すると知ってからは、タイワーンともダイワンとも言わないようになった。 友だちや先生といった日本人に対してはもちろん、たいわんじんである両親や親せきが相手の時も、日本風にタイワンと言うようになった。ほとんど無意識のうちにそうしていた。日本の学校に通うようになり、日本語を習得しつつあった私は、自分でも知らずしらずのうち、自分の中にある非日本的な響きを疎んじるようになっていたのである。 ・・・BR189便が台北松山空港に到着する。いよいよ「台湾」だ。今の私が、台湾、と日本語で思うとき、その「タイワン」という響きは、少なくとも三つのイントネーションを同時に秘めている。飛行機から一歩降りると、まだ建物の中にいるというのに、もう、南の匂いのする風に撫でられている気分がした。東京はあれほど冷え込んでいたのに。 これから国内線に乗り換えて、さらに南の台東へと向かう。まずは「入国」。ここでまた、エイコさんとはいったん別れなければならない。「外國人」の列の最後尾についたエイコさんに、あとでね、と手をふって、「本國人」の列へと向かう。「外國人」の列よりもそれはずっと短かった。 エイコさんや同じ飛行機に乗っていた日本人たちを何人も追い抜いて、その短い列に並ぶのは抜け駆けのようでちょっとうしろめたい。いや、堂々と振る舞えばいい。タイワン。私は、ここでは、外国人ではない。今、手にしているパスポートが、そのまたとない証ではないか。 私は、台湾(ここ)では外国人ではない。 私がそれを最も意識する場所は、空港だ。それも入国カウンターで、だ。何よりもまず、訪れた個人がどこの国家のパスポートを持っているかを問う場所。たとえ私が、どちらかといえば自分は日本人だと感じている、と主張したとしても、それがどうした。審査官は、私がナニジンであるかを私の持つパスポートによって判断する。 前のひとの審査が終わったようだ。赤い線の向こうに踏み出そうかどうか躊躇している私を、早くしろ、とばかりに審査官が見やる。そもそも一段高いところに座っているので、その視線は、どうしてもこちらを見下ろすものになる。審査する側とされる側。される側の私は、なすすべもない。それでも(それだから?)私は、明るく感じよくふるまう。『空港時光』1:出発と再入国
2024.05.15
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図書館で『空港時光』という本を、手にしたのです。おお 温又柔の短編小説ではないか。日本―台湾の間で出国、帰国を繰り返す台湾系ニホン語人作家の飛翔作とのこと・・・面白そうである。【空港時光】温又柔著、河出書房新社、2018年刊<「BOOK」データベース>より「出発」「日本人のようなもの」「あの子は特別」「異境の台湾人」「親孝行」「可能性」「息子」「鳳梨酥」「百点満点」「到着」…最注目の気鋭が描く、10の物語!エッセイ「音の彼方へ」併録。台湾系ニホン語人作家の飛翔作。<読む前の大使寸評>おお 温又柔の短編小説ではないか。日本―台湾の間で出国、帰国を繰り返す台湾系ニホン語人作家の飛翔作とのこと・・・面白そうである。rakuten空港時光冒頭の「出発」の手続きを、見てみましょう。p6~8<出発> IMMIGRATION 出国 DEPARTED 入国審査官―日本国 HANEDA A.P 12 MAR. 2002 真新しいパスポートの一頁に、出国スタンプの判が捺された。ついに、出発だ。大祐(だいすけ)の興奮は募る。搭乗券に印字された搭乗口は「G 05」。Gに続く「0」を、アルファベットの「O」と一瞬みまちがえる。「Go」と「5」で、ゴーゴーか。大祐は可笑しくなる。 搭乗時刻まではあと半時間ほど余裕があった。あたりを見渡せば、名だたるブランド店が連なっている。子どもの頃に祖母や大叔母に連れられておとずれた百貨店の風景ににていると大祐は思う。ちがうのは、そこらじゅうに「免税 duty-free」という文字が躍っているということ。そして、天井まであるガラス窓一枚隔てたむこうには、滑走路が広がっていること。 雲一つない、よく晴れた空にむかって離陸する飛行機が見える。空を斜めによぎりながら遠ざかってゆくその姿を目で追っていたら声がよみがえる。・・・あたし、飛行機は自分が乗る日にだけ飛ぶと思ってたんだ。 かのじょとは、大学一年生のとき、中国語のクラスで知り合った。初回の授業で、就職に役立てたい、とか、三国志演義が好きだから、とか、漢字なら何とか読めそうなので、などいったことを第二外国語に中国語を選んだ理由としてクラスメートたちは答えていた。大祐も自分の番がまわってくるまでに何かそれらしいことを言わなければと思い、あまり深く考えずに、ジャッキー・チェンが好きだから、と答えた。「音の彼方へ」で再入国の手続きを見てみましょう。p138~140<台湾(中国)> 私の国籍。私という個人が属していることになっている国家の名称。それについて考えるとき、私は揺れる。ボールペンを置き、傍らのパスポートを手にとる。私とパスポートの付き合いは長い。考えてみれば三十年近くの歴史がある。三歳になるかならないかの頃からずっと、パスポートは私の身分を証明してきた。私が温又柔であると保証していた。ほかでもない私自身が、お名前は? と訊かれて、オンユウジュウです、と答えることができなかった時期から。 それ以来、一度も途切れることなくパスポートを更新し続けてきた。数えたことはないけれど通算十数冊目であるはずの私のパスポートの表紙には「中華民國 REPUBLIC OF CHINA」と金色の文字が記されている。真ん中あたり(日本のパスポートなら菊の紋章に該当する位置)には、太陽の形のマークが描かれてある。 これは中国国民党の党章を基本とした「中華民國」の「国章」だそう。国章の下側には「TAIWAN護照PASSPORT」とある。以前は「TAIWAN」の表記はなかった。それが記されるようになってからまだ十年も経っていない。(中略) 中華民国(=台湾)外務省の発行したパスポート。表紙に「REPUBLIC OF CHINA」と「TAIWAN」が同時に並ぶパスポート。台湾(=中華民国)じたいが、「中国(CHINA)」と「台湾(TAIWAN)」の間で揺らいでいる。「再入国記録」の国籍蘭には、「Nationality as shown on passport」という英文が添えられている。ただ「国籍」というのであれば「Nationality」だけでいいはずだ。何故「as shown on passport」と続くのだろう。パスポートを持たない人は、どうすればよいのだろう。もちろんそんなことはありえない。「再入国記録」の記入は、(渡航先がどこであろうと)日本からの出国を前提とした行為なのだ。そして、出国には、パスポートの掲示が不可欠なのである。
2024.05.14
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図書館に予約していた『ウマは走るヒトはコケる』という新書を、待つこと40日ほどでゲットしたのです。なんか、力学とか流体力学とかも引用しながら説明する箇所があって・・・これまでよりハード志向であり、読むほうにも覚悟が求められているようです。【ウマは走るヒトはコケる】本川達雄著、 中央公論新社、2024年刊<「BOOK」データベース>より背骨と手足を得て、脊椎動物は速く長距離を移動できるようになった。走る、泳ぐ、飛ぶと方法は異なるが、動物それぞれが素早い動きを可能にする体のデザインを持っている。ヒトはコケつつ歩くが、これがめっぽう効率が良くて速い。なぜ?鶏の胸肉はササミよりも3倍も大きい。なぜ?渡り鳥が無着陸で何千kmも飛べる。なぜ?魚やイルカには顎がない。なぜ?皆、納得のいく理由がある。動くための驚きの仕組みが満載!<読む前の大使寸評>なんか、力学とか流体力学とかも引用しながら説明する箇所があって・・・これまでよりハード志向であり、読むほうにも覚悟が求められているようです。<図書館予約:(3/31予約、副本1、予約5)>rakutenウマは走るヒトはコケるBuNa第1回 ウニの世界より最終章の「第11章 ウニの歩行」あたりから食いついてみようと思う次第です。p269~271<ウニの体はまったくユニーク> 私自身が研究したことにも若干触れて本書を閉じたい。私がもっぱら研究してきたのは棘皮動物、つまりナマコ、ウニ、ヒトデの仲間で、どれもきわめてゆっくりと海底を這う。こんな逃げ足の遅い動物はたいてい隠れているものだが、棘皮動物は海底に露出して暮らし、それでも食われてはいない。そのことは沖縄の海でナマコの多さに驚き、磯焼けの海のウニの多さにうんざりすればわかる。のそのそしていても食われないのはなぜかが、そもそも私の疑問だった。 その答えは3つの手段で身を守っているから。①毒(ナマコやヒトデ)、②硬い殻と棘(ウニ)、③硬さの変わる結合組織(これは棘皮動物すべてにある) ③については説明が要るだろう。ナマコやヒトデの皮(結合組織)は緊急時に非常に硬くなって動物を守る。このような硬さのすばやく変わる結合組織を私は「キャッチ結合組織」と呼んでおり、棘皮動物独特なものである。 ウニにもキャッチ結合組織があり、やはり身を守ることに関係している。ウニの殻はちょうど栗の毬(いが)のように見えるが、栗とは違い棘を動かすことができる。棘は殻の上の小さな丸い膨らみ(いぼと呼ぶ)の上に乗っており、棘といぼの間はボールジョイントそっくりの関節になっている。関節には筋肉があり、これで棘を振り動かす。 関節には筋肉の他に靭帯があり関節の脱臼を防いでいるのは哺乳類の関節と同様だが、この靭帯がキャッチ結合組織なのである。 これは緊急時には硬くなり、棘をガチッと立てて不動にし、槍ぶすまをつくって身を守る。このキャッチ結合組織が私のライフワークだった。だからいかにして動かなくて済むかの研究をずっとやってきたことになる。そんな人間が本書を書いてしまったのだが、移動運動の研究をまったくやらなかったわけではない。 ウニの棘の根元のキャッチ結合組織は固くなって身を守るだけでなく、ふだんは棘の動きのじゃまをしないように柔らかい状態になっている。だから棘を大きく倒して狭い隙間を通り抜けることもできるし、棘を振って歩くウニもいる。大学を定年退職する前の数年間、ウニの歩行の研究をしたのでここに紹介したい。<歩帯> まずウニの体について説明しておこう。ウニの殻はちょっと上下につぶれたボール状であり、これを地球儀に見立てる。殻の頂上が北極(背中側の真ん中)で、ここに肛門がある。口は南極、つまり地面に向いている面の真ん中が口。北極と南極の中間が赤道で、ここが殻の一番太った部分。赤道より下の南半球を口側、北半球を反口側と呼びならわしている。(中略) ウニの体は球形だがやはり5放射相称で、歩帯が5本、放射状に配列している。各歩帯は南極と北極をつなぐ経線に沿って走っており、そこに管足が並んでいる。歩帯と歩帯の間が間歩帯で、ここに歩くための棘がある。ウーム、やはりちょっと専門的すぎるようで、食いつき難いのでおま♪
2024.05.14
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