ふらっと日記

ふらっと日記

路上




   私は帰っていくことができる


   私は歩いていた
   線路わきの並木道を
   真昼をてらす外灯が影をくゆらし
   故意に投げ捨てられた
   空き缶や空き瓶の商標が
   けられていく
   家々のアンテナを目に突き刺されて
   私は歩いていた

   警笛に笑い声をふりかけて
   横暴に統一される人の足並み
   複製されたようなおとなや子供が
   アイサツをかわし
   犬は本能の不満におびえながらつながれている

   私は鉄路を歩いていた
   声を奪われた子が
   私の替わりのように
   撃たれねばならなかった過ち

   私は歩いていた
   柵で隔てられた
   線路沿いの道を

   奇妙な同行者が現れては
   私の背を押し追い立てる
   たとえば××××と刻印された手足に
   音のつぶてが絶え間なくおそいかかり
   私の意志を阻むのだ
   網膜をつきさく喧騒のたわむれに
   日は落ちていく

   声を奪われた子の明日を
   踏み潰そうとする
   あってはならない侵犯が
   続いていたのだ

   私は帰っていくことができない
   あふれでた涙に
   私は帰らない
   釣り糸のような
   杖のような言葉に
   私は帰っていく
   奪われた声に
   失った言葉に
   返礼の言葉に
   閉ざされた声に
   私は帰っていくことができる















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