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MUSIC LAND -私の庭の花たち-
童話「ベラのペンダント」7
「ベラのペンダント」1・2
です。
フリーページの最後の「続き」をクリックしていただくと続きが読めます。
また、挿入歌として
「遥かなるあなたへ」
を作詞作曲してみました。
上の題名をクリックして聴いてくださいね。
少女ベラは、おかみの手紙を受け取ると
早速、出発しようとした。
そこへおかみが声をかけた。
「そんなに急がなくても
まだ日は暮れないよ。
朝ご飯ぐらい食べておゆき。」
ユリウスは、すかさず
「ありがとうございます!
喜んでご馳走になります!」
と相変わらず調子がいい。
ベラはちょっと困ったような顔をしながらも、
「ありがとうございます・・・」
と頭を下げた。
「素直になってきたじゃないか。」
と、おかみもユリウスと顔を見合わせる。
質素だが、おかみの心のこもった朝食をいただき、
二人は昨日から夕べから何も食べてなかったことを思い出した。
ベラはサロの作ってくれたお握りを昼に食べたきりだったし、
ユリウスも出がけにうちにあるものを
つまんできただけだったのだ。
掻きこむように食べる二人を見て、
おかみは呆れながら言った。
「そんなにお腹が空いてるんなら、
もっと早く言えばいいのに!」
その声も耳に入らないほど、
二人はお腹に詰め込んでいた。
おかみは、残ったご飯で
塩むすびを作って持たせてくれた。
二人には何よりのご馳走だった。
「ありがとうございました!
羊小屋に泊めて頂いた上、
お役人への手紙と食べ物まで下さって!」
ユリウスが大声でお礼を言うと、
後ろでベラもぼそぼそと
「本当にありがとうございました」
とつぶやいた。
「ん、なんだい?聞こえないよ。」
おかみが耳に手を当てて尋ねると、
「ありがとうございました!」
とベラが叫んだ。
「言えるじゃないか。
恥ずかしがってたら生きてけないよ!」
と、おかみがベラの肩を叩いた。
また羽織っていたおくるみの布がずれて、
胸元のペンダントが光って見えた。
「そのペンダントはどうしたんだい?」
「これは祖母の形見なんです。
父母の手がかりになるそうなんですが・・・」
「そうなんだ。
綺麗なペンダントだね。
ちょっと見せておくれ。」
首にかけたまま、
おかみはペンダントヘッドを手に取った。
碧く光る石は、高価なものだろうと思われる。
この娘は一体何者なんだろう。
空恐ろしくなってきた・・・
「私には分からないけど、
高そうな石だね。
大事にするんだよ。」
おかみは手を離し、それしか言えなかった。
ベラは少し拍子抜けしたが、
「そうします。」と言って、
ユリウスとおかみの家を後にした。
「さようなら!
お元気で!」
とユリウスは振り向きながら手を振った。
ベラは後ろを向いたら、
もう進めないとでも言わんばかりに
前だけ向いて歩いていった。
そして昼過ぎにようやく国境の関所に着いた。
「通行手形を出してもらおうか。」
と居丈高に怒鳴る役人に、
ユリウスはおかみの手紙を差し出した。
「これは、ローラの筆跡ではないか・・・」
役人は驚いて、おしいだくように
上役に持って行った。
ユリウスがベラに駆け寄り、
「あのおかみさん、ローラっていうんだ。
結構凄い人なのかも・・・」
と耳元で囁いた。
ベラも意外だったが、
ユリウスには何食わぬ顔をして、
「そうらしいわね。」と澄まして言った。
帰ってきた役人と上役は、
「なぜ、お前達がこれを持ってるのだ?」
と咎めるように言う。
「昨日、ローラさんに泊めて貰い、
通行手形を持ってないことを言ったら、
この手紙を書いてくれたのです。」
ユリウスが慌てて言った。
「うーん、そうか・・・
ローラがお前達をなあ・・・」
胡散臭そうに眺めながらも、
「ローラが信用したなら仕方ない。
ここを通ってもよいぞ。」
と関所を通してくれた。
「ローラさんって、どんな人なんですか?」
ユリウスが明るく尋ねた。
こんな時、何でも聞けるユリウスが
羨ましいとベラは思った。
「ローラは昔、巫女でなあ。
結婚して妖力は失ったものの、
人の心を見抜く力はまだ残ってるから、
みんな畏れておるのだ。」
秘密を打ち明けるような口振りだ。
「そうなんですか。」
その秘密を何気なく聞き流すユリウス。
「お前達が怪しい人間なら、
ローラは家から出さなかっただろうよ。」
と脅されたが、
ユリウスは笑い飛ばしていた。
頼もしいのか、頼りないのか?
でも、ローラがそんな力を持っているのなら、
おくるみやペンダントから何か分からなかったのだろうか?
それともやはりもう妖力は失ってしまったのか・・・
何かわかっていれば教えてくれるはずだと
ベラは思い直した。
気のいい田舎のおばさんにしか見えなかったけど、
本当にそうなってしまったのかもしれない。
一人で考え込んでいると、
ユリウスが心配そうに顔を覗き込んできた。
「どうしたんだい?
大丈夫?」
「大丈夫よ!」
ついユリウスには邪険にしてしまう。
「それならいいけど。」
能天気そうな顔を見ていると、
なぜか無性に腹立たしく思える時がある。
悩みはないのだろうか?
「そういえば、ユリウス、
お父さんやお母さんが心配してるんじゃない?」
「今更なんだい?
俺には親なんて居ないよ。」
事も無げに言われてしまった。
「ユリウスも親居なかったの?
ごめんなさい・・・」
急に悪いことを言ってしまったと思った。
「いいよ、別に。
もう気にしてないから。
でも、ベラの両親みたいに
どこかに生きてたらいいなと
思ったりはするけどね。」
ベラは、恐る恐る尋ねた。
「もしかしたら死んじゃったの?」
「俺の小さい頃に火事で
二人とも死んじゃったんだって。
だから、俺には何も思い出は残ってないんだ。」
あっけらかんと話すユリウスは、
かえって淋しそうに思えた。
「写真とかもみんな無いの?」
「みんな燃えちゃったから、
写真もおくるみもないんだ。」
悩みなんて無さそうに見えたのに、
私よりも不幸だったなんて・・・
「ひきとってくれた叔父さん夫婦にも
面倒かけたし、このへんで家出ないとな。」
「じゃあ、私の為に家出したんじゃないの?」
ちょっとがっかりした・・・
「それもあるよ。こういうことでもないと
なかなか家出る勇気出ないもんな。」
遠くを見つめるユリウスが少し大人っぽく見えた。
「それより、お腹空いたよな。
早くおかみさん、いやローラさんにもらった
塩結び食べようぜ!」
思い立ったように、包みを開け、
塩結びにかぶりついた。
ベラも負けずにかじったが、
塩が沁みたのか、
思わず涙ぐんでしまった。
(続き)
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