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2004年08月10日
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空蝉の 笈(おい)を背負いて 啼(な)きにけり


"空蝉"(うつせみ)とは「この世・この世の人」のことです。
「現(うつ)し臣(おみ)」、つまりこの世の人ということから、「うつせみ」と変化したという説があります。
万葉集では、空蝉・虚蝉・打蝉と表記されます。


万葉集の歌の中では、挽歌や相聞に詠みこまれています。
特に、大伴家持の歌が多いのが特徴的です。
「うつそみ」という表現も見られます。





"笈/負"(おい/おひ)
〔動詞「負う」の連用形「負い」の意から〕
修験者(しゆげんじや)・行脚(あんぎや)僧が仏具・衣類などを入れて背に負う、脚・開き戸のついた箱。きゅう。


笈の小文(貞亨4年10月25日~貞亨5年4月23日)
("芭蕉"44、5歳) 


『笈の小文』は、貞亨4年10月、伊賀への4度目の帰郷に際して創作された作品を集めて一巻としたものです。

『奥の細道』のように"芭蕉"自身が書いた旅行記ではない。



笈の小文(明石)


明石夜泊

蛸壺やはかなき夢を夏の月


「かかる所の秋なりけり」とかや。
この浦のまことは秋をむねとするなるべし。
悲しさ寂しさ言はむかたなく、秋なりせば、いささか心のはしをも言ひいづべきものをと思ふぞ、わが心匠の拙きを知らぬに似たり。

淡路島手に取るやうに見えて須磨・明石の海右左にわかる。呉・楚東南のながめもかかる所にや。
物知れる人の見はべらば、さまざまのさかひにも思ひなぞらふるべし。
また、うしろのかたに山を隔てて、田井の畑といふ所、松風・村雨の古里といへり。
尾上つづき、丹波路へかよふ道あり。
鉢伏のぞき・逆落しなど、恐しき名のみ残りて、鐘掛松より見おろすに、一の谷内裏屋敷、目の下に見ゆ。

その代のみだれ、その時のさわぎ、さながら心に浮び、俤につどひて、二位の尼君、皇子をいだき奉り、女院の御裳裾に御足もつれ、船屋形にまろび入らせたまふ御有様、
内侍・局・女嬬・曹子のたぐひ、さまざまの御調度もてあつかひ、琵琶・琴なんど、褥・蒲団にくるみて船中に投げ入れ、供御はこぼれて鱗の餌となり、櫛笥は乱れて海士の捨て草となりつつ、千歳の悲しびこの浦にとどまり、白波の音にさへ愁多くはべるぞや


逢瀬(おうせ)


源氏物語 "若紫" by紫式部
與謝野晶子訳


春の野のうらわか草に親しみて
いとおほどかに恋もなりぬる   (晶子)


源氏は瘧病(わらわやみ)にかかっていた。
いろいろとまじないもし、僧の加持(かじ)も受けていたが効験(ききめ)がなくて、この病の特徴で発作的にたびたび起こってくるのをある人が、
「北山の某(なにがし)という寺に非常に上手(じょうず)な修験僧(しゅげんそう)がおります、去年の夏この病気がはやりました時など、まじないも効果(ききめ)がなく困っていた人がずいぶん救われました。
病気をこじらせますと癒(なお)りにくくなりますから、早くためしてごらんになったらいいでしょう」

こんなことを言って勧めたので、源氏はその山から修験者を自邸へ招こうとした。


(中略)


「あれはだれの住んでいる所なのかね」
 と源氏が問うた。
「これが、某僧都(そうず)がもう二年ほど引きこもっておられる坊でございます」
「そうか、あのりっぱな僧都、あの人の家なんだね。あの人に知れてはきまりが悪いね、こんな体裁で来ていて」

などと、源氏は言った。美しい侍童などがたくさん庭へ出て来て仏の閼伽棚(あかだな)に水を盛ったり花を供えたりしているのもよく見えた。
「あすこの家に女がおりますよ。あの僧都がよもや隠し妻を置いてはいらっしゃらないでしょうが、いったい何者でしょう」

こんなことを従者が言った。
崖(がけ)を少しおりて行ってのぞく人もある。
美しい女の子や若い女房やら召使の童女やらが見えると言った。
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中略


「雀(すずめ)の子を犬君(いぬき)が逃がしてしまいましたの、伏籠(ふせご)の中に置いて逃げないようにしてあったのに」

たいへん残念そうである。
そばにいた中年の女が、
「またいつもの粗相(そそう)やさんがそんなことをしてお嬢様にしかられるのですね、困った人ですね。
雀はどちらのほうへ参りました。
だいぶ馴(な)れてきてかわゆうございましたのに、外へ出ては山の鳥に見つかってどんな目にあわされますか」
と言いながら立って行った。

髪のゆらゆらと動く後ろ姿も感じのよい女である。
少納言(しょうなごん)の乳母(めのと)と他の人が言っているから、この美しい子供の世話役なのであろう。

「あなたはまあいつまでも子供らしくて困った方ね。
私の命がもう今日(きょう)明日(あす)かと思われるのに、それは何とも思わないで、雀のほうが惜しいのだね。雀を籠(かご)に入れておいたりすることは仏様のお喜びにならないことだと私はいつも言っているのに」

と尼君は言って、また、
「ここへ」
と言うと美しい子は下へすわった。

顔つきが非常にかわいくて、眉(まゆ)のほのかに伸びたところ、子供らしく自然に髪が横撫(よこな)でになっている額にも髪の性質にも、すぐれた美がひそんでいると見えた。

大人(おとな)になった時を想像してすばらしい佳人の姿も源氏の君は目に描いてみた。
なぜこんなに自分の目がこの子に引き寄せられるのか、それは恋しい藤壺(ふじつぼ)の宮によく似ているからであると気がついた刹那(せつな)にも、その人への思慕の涙が熱く頬(ほお)を伝わった。


中略


命婦は人間がどう努力しても避けがたい宿命というものの力に驚いていたのである。
宮中へは御病気やら物怪(もののけ)やらで気のつくことのおくれたように奏上したはずである。
だれも皆そう思っていた。
帝はいっそうの熱愛を宮へお寄せになることになって、以前よりもおつかわしになるお使いの度数の多くなったことも、宮にとっては空恐ろしくお思われになることだった。

煩悶の合い間というものがなくなった源氏の中将も変わった夢を見て夢解きを呼んで合わさせてみたが、及びもない、思いもかけぬ占いをした。
そして、
「しかし順調にそこへお達しになろうとするのにはお慎みにならなければならぬ故障が一つございます」
と言った。
夢を現実にまざまざ続いたことのように言われて、源氏は恐怖を覚えた。

「私の夢ではないのだ。ある人の夢を解いてもらったのだ。今の占いが真実性を帯びるまではだれにも秘密にしておけ」
とその男に言ったのであるが、源氏はそれ以来、どんなことがおこってくるのかと思っていた。

その後に源氏は藤壺の宮の御懐妊を聞いて、そんなことがあの占いの男に言われたことなのではないかと思うと、恋人と自分の間に子が生まれてくるということに若い源氏は昂奮(こうふん)して、

以前にもまして言葉を尽くして
"逢瀬"(おうせ)を望むことになったが、

王命婦(おうみょうぶ)も宮の御懐妊になって以来、以前に自身が、はげしい恋に身を亡(ほろぼ)しかねない源氏に同情してとった行為が重大性を帯びていることに気がついて、策をして源氏を宮に近づけようとすることを避けたのである。源氏はたまさかに宮から一行足らずのお返事の得られたこともあるが、それも絶えてしまった。

初秋の七月になって宮は御所へおはいりになった。
最愛の方が懐妊されたのであるから、帝のお志はますます藤壺の宮にそそがれるばかりであった。
少しお腹(なか)がふっくりとなって悪阻(つわり)の悩みに顔の少しお痩(や)せになった宮のお美しさは、前よりも増したのではないかと見えた。

以前もそうであったように帝は明け暮れ藤壺にばかり来ておいでになって、もう音楽の遊びをするのにも適した季節にもなっていたから、源氏の中将をも始終そこへお呼び出しになって、琴や笛の役をお命じになった。
物思わしさを源氏は極力おさえていたが、時々には忍びがたい様子もうかがわれるのを、宮もお感じになって、さすがにその人にまつわるものの愁(うれ)わしさをお覚えになった。
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以下 略


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ふふ"ふうっ"







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最終更新日  2004年08月10日 02時45分16秒
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