鍋・フライパンあれこれ美味
100万ポイント山分け!1日5回検索で1ポイントもらえる
>>
人気記事ランキング
ブログを作成
楽天市場
000000
ホーム
|
日記
|
プロフィール
【フォローする】
【ログイン】
フリーページ
< 新しい記事
新着記事一覧(全805件)
過去の記事 >
2006年02月15日
"if"---「死者の書」(6)
カテゴリ:
カテゴリ未分類
cont
-----
五
おれは活(い)きた。
闇い空間は、明りのやうなものを漂してゐた。
併し其は、蒼黒い靄の如く、たなびくものであつた。
巖ばかりであつた。壁も、牀(とこ)も、梁(はり)も、巖であつた。
自身のからだすらが、既に、巖になつて居たのだ。
壁が牀であつた。
巖ばかり――。
觸(さは)つても觸つても、巖ばかりである。
手を伸すと、更に堅い巖が、掌に觸れた。
脚をひろげると、もつと廣い磐石(ばんじやく)の面(おもて)が、感じられた。
纔かにさす薄光りも、黒い巖石が皆吸ひとつたやうに、岩窟(いはむろ)の中に見えるものはなかつた。
唯けはひ――彼の人の探り歩くらしい空氣の微動があつた。
思ひ出しだぞ。
おれが誰だつたか、――訣つたぞ。
おれだ。
此おれだ。
滋賀津彦(しがつひこ)。
其が、おれだつたのだ。
歡びの激情を迎へるやうに、岩窟(いはむろ)の中のすべての突角が哮(たけ)びの反響をあげた。
彼の人は、立つて居た。
一本の木だつた。
明りに照し出されるほど、まとまつた現(うつ)し身(み)をも、持たぬ彼(か)の人であつた。
唯、岩屋の中に矗立(しゆくりつ)した、立ち枯れの木に過ぎなかつた。
おれの名は、誰も傳へるものがない。
おれすら忘れて居た。
長く久しく、おれ自身にすら忘れられて居たのだ。
可愛(いと)しいおれの名は、さうだ。
語り傳へる子があつた筈だ。
語り傳へさせる筈の語部(かたりべ)も、出來て居たゞらうに。
――なぜか、おれの心は寂しい。
空虚な感じが、しく/\と胸を刺すやうだ。
――子代(こしろ)も、名代(なしろ)もない、おれにせられてしまつたのだ。さうだ。
其に違ひない。
この物足らぬ、大きな穴のあいた氣持ちは、其で、するのだ。
おれは、此世に居なかつたと同前の人間になつて、現(うつ)し身の人間どもには、忘れ了(ほ)されて居るのだ。
憐みのないおつかさま。
おまへさまは、おれの妻の、おれに殉死(ともじ)にするのを、見殺しになされた。
おれの妻の生んだ粟津子(あはつこ)は、罪びとの子として、何處かへ連れて行かれた。
野山のけだものゝ餌食(えじき)に、くれたのだらう。
可愛さうな妻よ。
哀なむすこよ。
だが、おれには、そんな事などは、何でもない。
おれの名が傳らない。
劫初(ごふしよ)から末代まで、此世に出ては消える、天(あめ)の下(した)の青人草(あをひとぐさ)と一列に、おれは、此世に、影も形も殘さない草の葉になるのは、いやだ。
どうあつても、不承知だ。
惠みのないおつかさま。
お前さまにお縋りするにも、其おまへさますら、もうおいでゞない此世かも知れぬ。
くそ――外(そと)の世界が知りたい。
世の中の樣子が見たい。
だが、おれの耳は聞える。
其なのに、目が見えぬ。
この耳すら、世間の語を聞き別けなくなつて居る。
闇の中にばかり瞑(つぶ)つて居たおれの目よ。
も一度くわつと「目+爭」(みひら)いて、現し世のありのまゝをうつしてくれ、……土龍の目なと、おれに貸しをれ。
聲は再、寂かになつて行つた。
獨り言する其聲は、彼の人の耳にばかり聞えて居るのであらう。
丑刻(うし)に、靜謐の頂上に達した現(うつ)し世(よ)は、其が過ぎると共に、俄かに物音が起る。
月の、空を行く音すら聞えさうだつた四方の山々の上に、まづ木の葉が音もなくうごき出した。
次いではるかな谿のながれの色が、白々と見え出す。
更に遠く、大和國中(くになか)の何處からか起る一番鷄のつくるとき曉が來たのである。
里々の男は、今、女の家の閨戸(ねやど)から、ひそ/\と歸つて行くだらう。
月は早く傾いたけれど、光りは深夜の色を保つてゐる。
午前二時に朝の來る生活に、村びとも、宮びとも、忙しいとは思はずに、起きあがる。
短い曉の目覺めの後、又、物に倚りかゝつて、新しい眠りを繼ぐのである。
山風は頻りに、吹きおろす。
枝・木の葉の相軋(ひし)めく音が、やむ間なく聞える。
だが其も暫らくで、山は元のひつそとしたけしきに還る。
唯、すべてが薄暗く、すべてが隈を持つたやうに、朧ろになつて來た。
岩窟(いはむろ)は、沈々と黝(くら)くなつて冷えて行く。
した した。
水は、岩肌を絞つて垂れてゐる。
耳面刀自(みヽもとのじ)。
おれには、子がない。
子がなくなつた。
おれは、その榮えてゐる世の中には、跡を貽(のこ)して來なかつた。
子を生んでくれ。
おれの子を。
おれの名を語り傳へる子どもを――。
岩牀(どこ)の上に、再白々と横つて見えるのは、身じろぎもせぬからだである。
唯その眞裸な骨の上に、鋭い感覺ばかりが活きてゐるのであつた。
まだ反省のとり戻されぬむくろには、心になるものがあつて、心はなかつた。
耳面刀自の名は、唯の記憶よりも、更に深い印象であつたに違ひはない。
自分すら忘れきつた、彼の人の出來あがらぬ心に、骨に沁み、干からびた髓の心(しん)までも、唯彫(え)りつけられたやうになつて、殘つてゐるのである。
萬法藏院の晨朝(じんてう)の鐘だ。
夜の曙色(あけいろ)に、一度 騷立(さわだ)つた物々の胸をおちつかせる樣に、鳴りわたる鐘の音(ね)だ。
一(いつ)ぱし白みかゝつて來た東は、更にほの暗い明(あ)け昏(ぐ)れの寂けさに返つた。
南家の郎女は、一莖の草のそよぎでも聽き取れる曉凪(あかつきなぎ)を、自身擾すことをすまいと言ふ風に、身じろきすらもせずに居る。
夜(よる)の間(ま)よりも暗くなつた盧(いほり)の中では、明王像の立ち處(ど)さへ見定められぬばかりになつて居る。
何處からか吹きこんだ朝 山颪(おろし)に、御燈(あかし)が消えたのである。
當麻語部(たぎまかたり)の姥も、薄闇に蹲つて居るのであらう。
姫は再、この老女の事を忘れてゐた。
たゞ一刻ばかり前、這入りの戸を搖つた物音があつた。
一度 二度 三度。
更に數度。
音は次第に激しくなつて行つた。
樞がまるで、おしちぎられでもするかと思ふほど、音に力のこもつて來た時、ちようど、鷄が鳴いた。
其きりぴつたり、戸にあたる者もなくなつた。
新しい物語が、一切、語部の口にのぼらぬ世が來てゐた。
けれども、頑(かたくな)な當麻氏(たぎまうぢ)の語部の古姥(ふるうば)の爲に 我々は今一度、去年以來の物語りをしておいても、よいであらう。
まことに其は、昨(きぞ)の日からはじまるのである。
----
cont.
(^死^)
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
いいね!
0
シェアする
最終更新日 2006年02月15日 04時10分38秒
コメント(0) |
コメントを書く
< 新しい記事
新着記事一覧(全805件)
過去の記事 >
【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね!
--
/
--
次の日記を探す
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
広告を見てポイントを獲得する
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
エラーにより、アクションを達成できませんでした。下記より再度ログインの上、改めてミッションに参加してください。
ログインする
x
X
PR
×
キーワードサーチ
▼キーワード検索
楽天ブログ内
このブログ内
ウェブサイト
プロフィール
さんとうか7722
吾輩は牛である
フォローする
お気に入りブログ
一日一冊:読書日記…
本のソムリエさん
30歳で結婚したOL…
美恵子12385さん
ザ・支離滅裂
山下 洋之輔さん
Margin
tempogiustoさん
遙かなる悠久の古典…
美歩鈴さん
コメント新着
乗らない騎手@
ちょっとは木馬隠せw
あのー、三 角 木 馬が家にあるってどん…
開放感@
最近の大学生は凄いんですね。。
竿も玉もア○ルも全部隅々まで見られてガ…
まさーしー@
なんぞコレなんぞぉ!!
ぬオォォーーー!! w(゜д゜;w(゜д゜)w…
バーサーカー@
ヌォォオオ!!!!!!
http://bite.bnpnstore.com/m9n4wb0/ お…
ニキビ侍@
ありがとう!!!!!!!
顔見てるだけでもギンギンでミルク発射し…
© Rakuten Group, Inc.
共有
Facebook
Twitter
Google +
LinkedIn
Email
Design
a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧
|
PC版を閲覧
人気ブログランキングへ
無料自動相互リンク
にほんブログ村 女磨き
LOHAS風なアイテム・グッズ
みんなが注目のトレンド情報とは・・・?
So-netトレンドブログ
Livedoor Blog a
Livedoor Blog b
Livedoor Blog c
楽天ブログ
JUGEMブログ
Excitブログ
Seesaaブログ
Seesaaブログ
Googleブログ
なにこれオシャレ?トレンドアイテム情報
みんなの通販市場
無料のオファーでコツコツ稼ぐ方法
無料オファーのアフィリエイトで稼げるASP
ホーム
Hsc
人気ブログランキングへ
その他
Share by: