今朝の読売新聞の連載は、今の有権者の気持ちをありのままに描いている。
さすがだ。「政党の立場」を解説してみせるのではなく、有権者の心象風景を見事に描き出している。
テーマを決め、それに添った材料をかき集める記事ではない。今回、一番、いいなと思った記事です。
以下、転載します。
≪5≫ 政治の混沌 有権者は当惑(2010年6月22日)
民主党が仮に60議席以上獲得した場合、衆参ともに単独過半数を占め、政権運営は、衆院議員任期の2013年夏まで安定する。こうした政権は、これまで敬遠されてきた「消費税率引き上げ」「憲法改正」といった課題に取り組む余裕を持つ。
逆に、与党が過半数割れし、「ねじれ国会」が再現した場合、連立の組み替えや政界再編が一気に進む可能性が出てくる。
今回の参院選が持つ意味は、これまでになく大きい。しかし、結果の重さに反し、有権者の足元はぐらついている。
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さいたま市南区の男性(56)は、衆院選で民主党に投票した半年後、建設会社を解雇された。取引先の倒産による経営悪化が原因だった。ハローワークに通い始めて3か月になるが、経理40年のキャリアが見向きもされず、面接まで進んだのはわずか1社だ。
事業仕分けをニュースで見て、政権交代による変化を実感したが、それも一瞬だった。「事業仕分けは手をつけただけで何も始まっていない」。もう一度、民主党に託すべきかどうか、迷う。「国のシステムが改善されなければ、経済も立ち直らない」。2人の娘が大学に通うが、「このままなら中退させざるをえない」。
久喜市の主婦今村直子さん(28)の自宅マンション周辺では、ここ数日、街宣車の数が増えた。しかし、「子育て支援に力を入れます」という言葉を耳にしても、今村さんは1年前の夏のように、胸に響かないのを感じる。「本当にちゃんと考えて言ってるの?」
会社員の夫(28)、長女(2)の3人暮らし。今村さんは昨夏の衆院選で初めて民主党に投票した。「月々2万6000円は助かる」と子ども手当に期待した。「政権交代」という言葉も魅力的だった。
それから9か月。扶養控除が一部廃止され、しわ寄せが出ることを知った。「満額にはならないみたいだし。票目当てで言っていたとしか思えない......」。参院選の公示が迫る。投票はするつもりだが、意中の政党も候補者も浮かばない。
年金を受け取りながら約2・5ヘクタールの田んぼを耕す熊谷市の吉野森男さん(69)は、長く自民党を支持してきた。「減反政策で、遊休農地が発生しかねない」と民主党が進める戸別所得補償制度には否定的だ。しかし、農協の政治団体「農協政治連盟」は民主、自民、公明の計4人に推薦を出した。吉野さんは「どの政党もドングリの背比べ。選びたくても選べない」とため息をついた。
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埼玉大の松本正生教授は「あまりに政治が混沌(こんとん)としていて、有権者は判断基準をどこに置けばいいか定められない状態に陥っているのではないか」と指摘する。政権交代、新党乱立、連立離脱、新首相誕生とめまぐるしく変わる風に、政党は翻弄(ほんろう)され、有権者は当惑している。
公示まで残り2日。鳩山前首相は退陣表明の際、「国民が聞く耳を持たなくなった」と語った。正確に、"政治の言葉"が有権者に届かなくなった、と言うべきだったろう。繰り返すが、今回の参院選はきわめて重要だ。政治が真の言葉を取り戻せない場合、有権者の困惑が、一気に不信感へと変貌(へんぼう)しかねないという意味でも。(おわり)
(2010年6月22日 読売新聞)
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