心の叫び~~モントレーの山奥から

心の叫び~~モントレーの山奥から

2011.04.12
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カテゴリ: カテゴリ未分類
野うさぎ」 3055字 2・5・2011

 ウサギは人間を呪うか? 20数年前、野ウサギに強烈に呪われたことがある。フリムン徳さんだけではない、長男の息子も二人一緒である。ロスアンジェルスからシアトル近郊のグラハムという山の中へ引越して2年目だったと思う。高い、高いクリスマストゥリー(ダグラスファー)が生い茂る森に囲まれた4エーカー(1万6千平方メートル)が私の土地であった。4千平方メートルほど敷地をブルドーザーで整地させて、新しいモービルホームを入れた。

 こんな山の中なら自給自足の生活が出来ると思い、鶏を5羽ほど飼った。卵を産ませるためである。家族で食べきれないほどの卵の処分に困り、前の道を通りかかるアメリカ人に、「卵を上げますよ」と言っても、コレストロールが高いから要らんという。ヤギも飼った。庭の芝をヤギに食べさせて、芝刈りを怠けようと思ったからである。ところが、ヤギはおいしそうな新芽の芝は食べないで、禿げた所のあまり伸びない古い芝ばかり食べるのであった。芝刈りをヤギに期待したのは失敗だった。

その次にしたのは裏庭に10畳位の広さの野菜畑を作って野菜を植えた。にんじん、ほうれん草、キャベツ、大根、などである。種はタコマの仏教会のメンバーである昔百姓をしていた日系2世の方から分けてもらった。鶏のフンを肥やしに入れて、水をかけ、毎日楽しみにして育てた。酔っ払いの大工の徳さんが、バッドワイザーのビールを片手に飲みながら、野菜の成長を眺めるのは、大工仕事をして家に帰ってからの楽しみであった。鶏の糞と水がよく効いたのか、見事に野菜は育った。もうすぐ食べられると思いながら、楽しみにしていたら、ある日から野菜が何物かに食べられ始めた。

犯人は山の中に住んでいるウサギ達である。1匹だけなら、そうも腹が立たなかったと思うが、5匹、6匹に集団で食べられるから、腹が立った。一人のどろぼうに盗まれるのと、集団の泥棒に盗まれる憎しみの違いは、泥棒の数だけ、憎さが増えるようだった。真っ白、黒、茶色、黒白の斑と色とりどりのウサギたちであった。

もう我慢ができなかった。畑の半分ほどの野菜が食べつくされた。
高校生なり立ての息子と二人で空気銃で撃つことにした。ある日、3匹ほどで野菜を食べていた。家の中にいる息子を呼んで、空気銃を持ってきたもらった。腰をかがめて、そーっと近くへ行ってもなかなか逃げない。何年か前に近くに住んでいたアメリカ人が100匹以上のウサギを飼っていたが、ウサギを山の中に放して、どこかへ引越ししたらしい。そのウサギたちが野生化したのである。もともとが野生のウサギでないから、そう人間を怖がらないようであった。7、8メートル近くまで近づいたら、2匹は逃げていった。残って堂々と食べているのは真っ白いウサギ1匹だった。



 真っ白いウサギの赤い目がいつまで経ってもまだ私の脳裏に焼きついている。雪のように真っ白いウサギの透き通るような真っ赤な二つの目から涙を出していた姿がまだはっきり思い出せる。涙を流さんばかりの重たい悲しい、すまないことをしたという気持ちで、土地の奥の森の中に穴を掘って埋めた。

故郷喜界島で小さい頃、年に1回豚肉を作るために豚を殺すのは何回も見て、慣れていたから、ちっともかわいそうとは思わなかった。南米のパラグアイでも、食用に肉にするため飼い豚を2回ほど自分で殺したが、そうかわいそうとは思わなかった。
飼い豚を食肉用に殺すのは、「仕方がない」「あたりまえ」と思うから、そう、かわいそうとも思わなかった。ところが豚よりも小さいウサギを撃ち殺したのはかわいそうだった、悲しかった。食用でない動物を殺す惨めさが強烈にわかった。自分の愚かさも怖くもなった。

 それから二日後にウサギに息子も私も呪われた。
正月の第1日曜日だった。タコマの仏教会に行った。その日の坊さんの話がウサギがいじめられて、鉄砲で撃たれ、無残に死んでいく話だった。二日前に息子と二人で殺したウサギの話と瓜二つの話だった。ウサギの色まで同じ白色だった。隣に坐っていた息子と思わず顔を見合わせた。世の中にこんなことがあるんだろうか。それから長い間フリムン徳さんの気持ちは沈んだ曇り空だった。これが人間の泥棒でも殺したら、一生、ざんげの思いで生きていかなければならなかっただろう。

 あれから10年近く、フリムン徳さんの反省の気持ちが通じたのだろう。ウヤフジは今度は野うさぎを大事にしなさいと、また野ウサギとの出会いを作ってくれたらしい。今住んでいるモントレーの山の砂漠と呼ばれるブラッドレーのフリムン徳さんの土地には野うさぎが沢山来る。庭先にも来る。今は撃つのじゃなく、餌を毎朝毎晩与えている。朝はお日様の昇る前ぐらいから、夕方はお日様が沈みそうになる頃から、庭に1匹、2匹と餌を待って集まってくる。馴れ馴れしいウサギは玄関のドアの前にちょこんと待っているのもいる。なんともほほえましく、かわいらしい風景でもある。手元にカメラがあったらとりたくなる。たまにうちに尋ねてくる人たちは珍しがって、ウサギを見つめている。

 この野うさぎたちはフリムン徳さんに恩返しをしてくれる。
前庭の芝生を綺麗に食べるから、フリムン徳さんは芝刈り機で芝を借りる必要がない。芝生を食べて綺麗にするだけではない、正露丸みたいな糞を肥しとして、いっぱい撒いてくれる。
一瞬、芝生の庭いっぱいに正露丸ウサギの糞が蒔かれているのかと勘違いするぐらい沢山の
ウサギの糞が散らばっている。間違いなく、もう肥やしを買って蒔く必要はない。


 ここ山の中の周りのアメリカ人は用心のために玄関にライフル銃を立てている人達がいっぱいおる。悪人、泥棒、カヨーテ、いのしし、野うさぎ、鹿を撃つためである。フリムン徳さんは1本のゴルフクラブを立ててある。撃つよりたたいたほうが後での悔やみ方が違う。
相手が悪人でも泥棒でも撃って、一生悔やむより、自分が撃たれた方がましだと思っている。そこに銃があるから撃つ、銃がなければ撃たない。どんな理由でも、生き物、人間も撃ってはいけないとフリムン徳さんは思う。アメリカは日本みたいに銃の販売を禁止したらええと思う。生き物は撃つべきではない。 
  フリムン徳さん










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Last updated  2011.04.12 23:40:20
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Comments

うぬつっつ@ Re:「男の名前で生きていきます」(12/24) 久しぶりに徳さんが夢に出てきてブログ見…
フリムン徳さん@ Re:「男の名前で生きていきます」(12/24) 禿げ1723さん、おおきに、ありがとう…

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