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01 出会いと始まり
……なっ、何が起きている?
「うおっ!だ、大丈夫か!?」
これは、誰かが攻撃しているのか?
「は、離してはダメだ!」
し、しかし……このままだと……
……っ!離れ……
「うわああぁぁぁぁぁっ!!」
……ここは、どこだろう?風が気持ちいい……
「ねえ、大丈夫?」
あれ?声がする。誰だろう?
「あっ、気がついた?」
ミズゴロウが……しゃべってる?
「動かないから心配したのよ?よかった!」
まだ思うように体が動かないけど、こっちもしゃべってみる。
「えーと……なんでポケモンがしゃべって……?」
「なんでって……あなたもポケモンじゃないの?」
……自分が、ポケモン?
疑いながら、自分の体を見てみる。
黄色い手に、黄色と黒の耳。それにギザギザのしっぽ。
ほ、本当だ……確かにピカチュウになっている!!
「あれ、なんでだ?僕は人間だったはず……」
そう口走ると、そのミズゴロウは驚いているようだった。
「に、人間……?」
おかしい。なぜだ。なんで僕はピカチュウになったんだろう。
……あれ?何も思い出せない。
とにかく、僕は人間だったはず。けど、それ以上のことは……何も……
考え込んでいると、ミズゴロウが再び話しかけてきた。
「名前は?名前は、なんていうの?」
「そうだ、名前は……」
思い出した。
「僕、レイっていうんだ」
「レイ、ね……。あ、私はルナ。よろしくね」
ふと気がつくと、すぐ近くに1本の帯があった。手にとってみる。
紺色のリボンだ。少し使い古した形跡がある。
「ねえ、それなに?」
ルナが話しかけてくる。
「なんなんだろう……けど、大切な物のような気がするんだ」
言いながら、僕はリボンを頭に巻く。似合ってるかな?
「うん、似合ってるわよ!レイ!」
笑顔を向けられる。自分の表情がほころぶのがわかった。
その時、地面が動いた。
「わわっ!地震!?」
「きゃああっ!」
地震はすぐ収まった。
「大丈夫だった?」
「ああ。しかし、いきなり地震なんてびっくりだよ」
「ここ最近よく地震が起きるの。もう毎日が怖くて……」
「だ、誰か助けてー!!」
レイとルナは、声のした方を振り向く。
1匹のバタフリーが、とても急いだ様子で飛んできた。
「あれ、パミスさん?」
「ルナちゃん、た、大変なのよ!うちのクルスちゃんが、地割れに落っこちちゃったのよ!」
飛んできたバタフリー――パミスは、まくし立てた調子で続けた。
「助けようにも、森のポケモン達が我を忘れて暴れだして、私1匹じゃどうにも……お願い助けて!!」
パミスの言葉に、ルナもあせり始める。
「た、助けなきゃ、でも、私の力じゃ……」
その時、レイが口を開く。
「助けに行きたいんだろう、ルナ?僕も行くよ」
一瞬の間を置いて、ルナがその言葉に応える。
「レイ……一緒に来てくれるの?ありがとう!」
「よし、早く行こう!」
「お願いね!」
パミスの言葉を背に、レイとルナは森の奥に進んでいった。
小さな森を進む途中。
「ところで、クルスって誰?」
気になったので、質問する。
「パミスさんのお子さんのキャタピーよ。まだ小さいから、急いで助けないと大変なことに!」
走りながらルナが答える。
と、その時。一陣の風が吹き付ける!
目の前には、小さな鳥ポケモンが2羽。
ポケモンになったばかりの僕にもわかる。敵意を感じる!
「ポッポ、お願いそこを通して!私達はあなた達に危害を加えるつもりはな……」
ルナの言葉をさえぎるように、2羽のポッポは強風を巻き起こしてきた。
今にも吹き飛ばされそうだ。これは戦うしかないのか。
戦うと決めて、改めて相手を見る。
しかし、正面にはポッポが1羽しかいない。もう1羽は?
そう考えた時、後ろに気配を感じる。次の瞬間!
「いたっ!」
ポッポの翼がルナをたたきつけた。
ルナはすぐ起き上がる。大丈夫みたいだ。
けど、このまま何もしないわけには……
……そうだ。僕は今ピカチュウなんだ。それなら……
頬に意識を集中する。
……感じる……電気の流れを感じる……
あとは、それを体の外に放出すればいいはずだ。
「はああぁぁぁぁっ!!」
レイの体から、黄色い閃光が飛び出す!
狙い通り2羽のポッポを捉える。
声も上げず、ポッポ達は地面に落ちた。
「や、やった……」
……できた。でんきショックを放つことができた。
勝利の小さな達成感と同時に、自分がピカチュウになったことを実感する。
「どうしよう……助けて……」
小さな森の奥で、キャタピーの子供――クルスが、うずくまっていた。
そこに現れる2匹のポケモン。
「あ、向こうにポケモンがいる」
「あれ、クルスくん?」
驚いた表情のクルスだが、ルナを見て顔に安心の色が浮かぶ。
「ルナさん……助けにきてくれたの?」
「ええ。お母さんが心配してるから、早く帰ろうね」
こうして、レイとルナはクルスを救出した。
帰ってきた途端、パミスが飛びついてくる。
「よかった、本当によかった、ありがとうルナちゃん、と……?」
まだ名乗っていなかった。
「あ、僕はレイ。よろしく……お願いします」
「ありがとう、レイさん!」
そう言われて、レイはクルスの方を向く。あこがれの目をしていた。
――こういうのも悪くないかな。困っているポケモンを助けてあげるのも、気持ちいいかもね。
「手伝ってくれてありがとう、レイ」
親子がレイとルナにいくつかの木の実を渡して立ち去った後、ルナがぽつりと言った。
「どういたしまして。役に立ててよかったよ」
「それで、あなたはこの後どうするの?」
ルナの問いに、レイは言葉を詰まらせる。
「……どうすると言われても、行く当てないんだよな……」
考え込んだ後の言葉。それに対してルナ。
「ねえ、レイ。私と一緒に探検隊やらない?」
レイにとっては聞きなれない言葉の登場だ。
「探検隊……?」
「宝探しや、未知の世界を冒険するポケモン達の集まりよ。けど最近は地震とか多いから、救助活動も重要な仕事になっているの」
ルナが続ける。
「私も前から救助やりたかったけど、1匹じゃ怖くて。けど、レイとならやれる気がする!」
……しばし、沈黙が流れる。破ったのはレイ。
「わかった、やってみよう。僕がどうしてポケモンになったのか、探検隊やってればわかるかもしれないし」
そういうレイに、ルナが満面の笑顔を向ける。
「やったぁ!!ありがとう!!改めてよろしく、レイ!それで、私達のチームの名前を決めたいんだけど……いい名前ない?」
「名前、か……」
風が吹く。レイが言う。
「思いつきだけど、ウィンズってどうかな?」
その言葉を受けて、ルナ。
「ウィンズ……うん、いい名前!よし、明日からまたがんばろうね!」
こうして、探検隊ウィンズの物語は始まった
その行く手に待ち受ける運命を、彼らはまだ知らない……
Mission01。レイとルナはこうして出会った、という話。
構成としては、最初だけ探検隊にして、あとは救助隊ベースで。
レイが装備しているリボンが紺色なのは、
Blackの波動の色(1回目プレイ時)より。「知的なマリンブルー」。
クルス(キャタピー)、パミス(バタフリー)の名前は、ラテン語から引っ張ってきた。
それぞれ「幼虫」と「虫」。
他に語ることもないので、また次回!
2008.01.09 wrote
2008.01.23 updated
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