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2006/07/26
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Mr.サイホンは、ガーコがかねてから憧れていた渋い味覚のクリエイターである。ポマードを塗ったかのような艶やかな光沢と丸みを帯びたセクシーな体型。ガーコは彼を見た瞬間、ビビビッ!と感電しそうになってしまった。≪こ、これは、運命の出会い!?≫ ガーコは、いつしか彼を強引にレジの方へと引きずっていった。彼は訝しげな表情を浮かべながらも、ガーコの行動を冷静沈着に見守っている。『君は、誰?』という問いたげな眼差しをよそに、ガーコは無言のままお財布から5千円札を抜き取った。彼の頭のてっぺんには、黄色いお買い上げシールが無造作に貼られ、ガーコは憧れのMr.サイホンと二人っきりになった。そのあと足早に自宅へと連れ込むと、彼は何も聞かずにご自慢のコーヒーを淹れてくれた。ん?これは何かが違う・・・香り?それとも色合い?ガーコは期待に胸を膨らませて、最初の一口に身を委ねた。渋くてほろ苦い後味。色合いにも増して深みがある。これぞ本物のコーヒーなのだ。ガーコは驚きと興奮のあまり、口元を緩めずにはいられなかった。ここだけの話だが、禁じられたラブロマンスは、こんな具合に幕を開けたのだった。。。

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Mr.サイホンがこの家に居座るようになって以来、幸福な一日はあっという間に過ぎた。ガーコは朝から晩まで心を浮き立たせながら、彼の両腕にすがりついた。『ねぇ、サイホン・・・美味しいコーヒーを淹れて下さらない?』スターバックスのロゴが入った黄色いマグカップを手に取ると、彼は何も言わずに御自慢のコーヒーを気前よく注いでくれた。真っ白い湯気が立ち上がった瞬間、彼の表情が不鮮明にボヤけて見えなくなった。彼は今、何を考えているのだろう?カップを口元に近づけると、カフェインの香りが鼻腔を大胆に刺激して、原始的な温もりを甦らせた。イソギンチャクに似たピンク色の舌は、何度も膨らんだり縮んだりしながら、黒い液体を脱脂綿のように吸い込んでいく。ガーコはゆっくりと目を閉じて、その変化を心ゆくまで味わった。胃袋の周囲にはポッと明るい豆電球が灯り、窓から差し込む夕日がガーコの頬を黄金色に染めた。真っ白い湯気はいつの間にか空中の何処かに消え去って、サイホン氏の端正な顔立ちを浮き彫りにした。自信に満ちた誇らしげな表情が、ガーコの豆電球をジリジリと焦がしていくかのようにも見えた。

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あれから何杯のコーヒーを飲み干したことだろう...?家の中は、やけに暑い。コーヒーを飲みすぎたせいだろうか?胃液が喉元にまでこみあげてくる。ガーコの額には、じんわりと大粒の汗が滲んでいた。近くの公園からは無数の蝉の鳴き声が木霊していて、それはどことなく、お寺のお坊さんがお経を読む時のしわがれ声にも似ているような気がした。テーブルの上には、冷たくなったマグカップがひっそりと暗い影を落としている。
≪そういえば、ガーコは彼のコーヒーと同様に、熱しやすくて冷めやすかったんだっけ...?≫
燃えては冷めて、冷めては燃える、浅はかな現実。これじゃ、まるでアメーバーの細胞分裂みたい...そう考えると、ガーコは突然の虚しさを覚えてしまう。無関心なまでにクールなサイホン氏の横顔は、悲しいくらいに味気なく色褪せて見えた。

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今日は気だるい水曜日。ガーコは気晴らしに新しいコーヒー豆を買いに行った。普段はコナかトラジャを選ぶのだが、今回は初めてマンデリンを買ってみることにした。≪やっぱり、毎日同じ味だと飽きちゃうもんね・・・≫
そういえば、サイホン氏は一度も豆を挽いてくれたことがない・・・というよりも、彼は豆を挽く術を身に着けていないのだ。コーヒーを淹れる達人は、その味にのみ、こだわっていれば良いのかもしれない。だとすると、豆を挽く時は、豆挽きの達人にお願いした方がよいに決まっている。そんなわけで、ガーコは喜んで店員さんに豆を挽いてもらうことにした。

買ったばかりのコーヒーを片手に帰宅すると、ガーコはまたもや、サイホン氏への愛しさをつのらせていた。『 ねぇ、サイホン・・・昨日はカフェインのせいで、悪酔いしちゃったみたいなの♪あなたをもう愛していないだなんて、あれは嘘。今日も目の覚めるようなコーヒーを淹れてくださらない? 』そう言ってガーコは、サイホン氏の両腕にいっそう情熱的に絡みついた。ベランダの向こうでは、賢そうなカラスが『 アホゥー、アホゥー 』と甲高い声で鳴いている。彼は、内心の戸惑いを隠すかのように無言で頷くと、熱い湯気の立ち上るコーヒーを満足げに注いでくれた。ガーコは、自らの情熱がすぐさま冷めてしまわないように、それを両手でしっかりと包み込む。嗅いだことのない新鮮な豆の香り。心地よい安堵感が湧いてくる。カフェインを含む黒い液体が体内の奥へ浸透するにつれて、ガーコの目は糸のように細くなった。≪ Oh yes...This is the best!
それは、驚くほど上品で紳士的な“Mr.Siphon”の味がした。





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最終更新日  2006/08/25 11:36:23 AM
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