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宝生会も「翁」でスタート。今年は東川光夫さんの披キ、千歳も當山淳司さんの披キ。小鼓の頭取が鵜澤洋太郎さん。これも初めて観る気がする。サンバソウが大蔵流なので三番三を大藏千太郎さん。大蔵流「三番三」は和泉流ほど見せるという部分が強くないが、その分土臭いというか朴訥な感じでこれまた面白い。好みでいえば和泉流のほうが観やすいけれども、こういう素朴で力強い「三番三」も良いかなと思う。真摯な印象だった。
それはさておき、狂言「千鳥」をはさんで(善竹十郎さんの酒屋が面白すぎ)、能は「熊野ユヤ」。平宗盛のわがままに翻弄される熊野。辺りは花の盛りであるのに、気持ちが晴れないという形で進行し、最後に病床の母の元へ帰ってよい許しをもらう。権力者の心一つで行動が決まっていく哀しさ切なさを描いた名曲。宗盛のわがままというか肝っ玉の小ささが、『平家物語』の人物造形と重なって興味深い。この宗盛の心を動かすのが、俄に降り出した雨に対して熊野が詠んだ歌ということになるのだが、歌そのものはたいして上手でもなく、宗盛の許しを得る必然性を考えると、演じる方は大変だろうと思う。