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2009.03.21
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テーマ: 愛しき人へ(903)
カテゴリ: ひとやすみ
kagerou2.jpg

靴を磨く。
たいていは、金曜か土曜に磨く。
日曜には磨かない。日曜に磨くと気が滅入る。
靴は、背広と同じく仕事とつながるアイテムだが、
果たして、仕事が好きなのか、嫌いなのか。。。

靴を磨くのは、他界した親父の影響だろう。
地位も名誉も金も、人に優れて得ることは無かった男だったが、
良く靴を磨く男だった。

人あたりが柔らかく、分け隔てをしない人柄と言われた様だが、
それは、生まれ持った性格であって、努力して磨き上げた性格ではなさそうだ。

その人生にも、時には、楽しいこともあっただろう。
たまには憤ることもあっただろう。
小ずるい事も、おそらく、しただろう。
知る術は無いが、艶っぽい事柄もあったのかもしれない。
けれど、強烈で、激しい人生を送ることはありえないし、望みもしない。
息子から見れば、その人生は、穏やかで平凡なものであったと思う。

靴を磨く後姿。思い返すのは、そんな、ささいなことばかりだ。
かつて、そんな親父を超えたと思ったときがあった。
ただ、今思えば、それは一時の気の迷いか、何かの勘違いだったようだ。

自分の中にある、父親から受け継いだもの。
それを、かつては嫌だと思ったが、今は静かに、それと対話ができる。
道標となるような男ではなかったが、この上ない親父だった。

今日は彼岸。

朝方には激しい雨が降ったが、昼過ぎに止み、やがて透き通る青空になった。
彼岸と此岸が交じり合う、この日にふさわしい「はからい」なのかもしれない。

「はからい」というものが、もし、あるとするならば、
それは、きっと、このような、ささやかなものに託されている。

今は、そう思う。






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Last updated  2009.03.22 16:31:05
コメント(6) | コメントを書く
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もったいない  
vanilla9710  さん
このブログにだけ載せているのはもったいないようなすばらしい文章です。
私も思わず、父を想いました。

しかしながら
息子が父を想うことは、
娘が父を想うこととは
また違うような気がします。
男同士は、語り合うことが少ない分
ささやかな記憶も、鮮明によみがえるものなのかもしれません。
(2009.03.22 01:44:20)

Re:もったいない(03/21)  
vanilla9710さん

過分なお言葉です。ありがとう。

おっしゃるように、男と女は、やはり違います。
それは、きっと些細な違いですが、確実に違うものだろうと思います。

違いに目をやるのか、些細なことと思うのか、
その時々で、それを楽しむ余裕を持ちたいと思っています。

>このブログにだけ載せているのはもったいないようなすばらしい文章です。
>私も思わず、父を想いました。

>しかしながら
>息子が父を想うことは、
>娘が父を想うこととは
>また違うような気がします。
>男同士は、語り合うことが少ない分
>ささやかな記憶も、鮮明によみがえるものなのかもしれません。
-----
(2009.03.22 16:36:52)

父の思い出  
あかり0729  さん
昨年亡くなった私の父も
靴の手入れをよくしている人でした。
父の革靴はいつも磨き上げられていて
靴の手入れをしないと叱られたものでした。

離婚した夫は、外国製の靴を好みました。
それは身の程知らずな上等なものでしたが
彼は靴の手入れを全くしない人でもありました。

父の影響でしょう。
家事の何1つ夫に委ねたことのない私でしたが
靴磨きは自分でするものだという観念が抜けず
靴を磨かない夫に不思議な気持ちしかなかった気がします。

8年前、愛しい人にめぐり逢い
初めて逢った日、私はふと靴を見たのでした。

キチンと手入れされている物だとひと目でわかり
何だかとても嬉しかった記憶があります。

それは今も変わることはありません。
彼の靴に、私は時折父を想い、父を重ねます。

今日、読ませていただきながら
亡き父の思い出を書かせていただきました。


(2009.03.22 23:45:20)

Re:父の思い出(03/21)  
あかり0729さん

男の革靴には、何か、不思議な何かが醸し出されている場合があるものだと感じています。
それは、自分のものでは感じられず、かといって縁遠い人にも感じられない。。。
近しい人に、その何かを感じる気がします。
その何かを、近い言葉で言い表せば、生き様という言葉が近い気がします。

僕だけかもしれませんが。。。




>昨年亡くなった私の父も
>靴の手入れをよくしている人でした。
>父の革靴はいつも磨き上げられていて
>靴の手入れをしないと叱られたものでした。

>離婚した夫は、外国製の靴を好みました。
>それは身の程知らずな上等なものでしたが
>彼は靴の手入れを全くしない人でもありました。

>父の影響でしょう。
>家事の何1つ夫に委ねたことのない私でしたが
>靴磨きは自分でするものだという観念が抜けず
>靴を磨かない夫に不思議な気持ちしかなかった気がします。

>8年前、愛しい人にめぐり逢い
>初めて逢った日、私はふと靴を見たのでした。

>キチンと手入れされている物だとひと目でわかり
>何だかとても嬉しかった記憶があります。

>それは今も変わることはありません。
>彼の靴に、私は時折父を想い、父を重ねます。

>今日、読ませていただきながら
>亡き父の思い出を書かせていただきました。
-----
(2009.03.23 00:01:21)

Re:- 靴を磨く -  もしくは「はからい」あるいは「彼岸」  (03/21)  
baby♪  さん
こんばんは♪

これはまた~ とっても幻想的で素敵なお写真ですね。
カゲロウですか・・ すばらしいです♪*^-^*

最初から感じていたことですが・・
ゲルマニクスさんって、文章にも現れる感性や視点が
どこか独特のものを持ち合わせておられます。*^-^*

生まれ持った気質は変えられないといいます。
性格は環境等で培われていくものなので変えられるそうですが・・

ゲルマニクスさんの真面目さは
お父様から受け継がれたものなのですね。*^-^*

(2009.03.25 22:44:59)

Re[1]:- 靴を磨く -  もしくは「はからい」あるいは「彼岸」  (03/21)  
baby♪さん

真面目かなぁ。。。(笑)
たしかに親父は真面目な男でしたが。。。


>こんばんは♪

>これはまた~ とっても幻想的で素敵なお写真ですね。
>カゲロウですか・・ すばらしいです♪*^-^*

>最初から感じていたことですが・・
>ゲルマニクスさんって、文章にも現れる感性や視点が
>どこか独特のものを持ち合わせておられます。*^-^*

>生まれ持った気質は変えられないといいます。
>性格は環境等で培われていくものなので変えられるそうですが・・

>ゲルマニクスさんの真面目さは
>お父様から受け継がれたものなのですね。*^-^*
-----
(2009.03.29 21:22:06)

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