ホテル・コルテスが作られた1925年というと、チャップリンの「黄金狂時代」が公開された年。1920年〜1933年の禁酒法の真っ只中です。禁じられたことによって飲酒がますます魅力的になってしまう。人々、特に若者は飲酒することが何か破天荒でスリルのあることにように考え始め、「スピークイージー」というもぐりの酒場が繁盛しました。客の中には若い女性が多く見られ、これは、ほとんどのバーが男性しか入れなかった第一次世界大戦前には考えられなかった光景でした。楽しいことが好きで気ままな女性たちは「フラッパー」と呼ばれ、それまでは娼婦しかしなかった濃い化粧をし、酒を飲み、タバコを吸うようになりました。政治、経済、芸術、文学、スポーツのどれを取っても20世紀アメリカの飛躍的な成長はこの時代に端を発しており、1920年代の異称としては、 the Roaring 20s the Golden 20s
the Dry Decade the Jazz Age など。破壊と創造が一つのエネルギーとなって渦巻いていた時代で、20年代はアメリカ史上というより世界史上初めての「若者の時代」と言われています。子供と大人の中間の世代という曖昧な位置付けではなく、固有の趣味と行動パターンを持つ若者として社会に認知されたのはこの頃から。エリザベスは1970年代末期のディスコ・クイーンだった時代が一番楽しかったと語っていましたが、狂乱の20年代なくして70年代の若者文化はなかったということです。