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   「ダイキリを頂戴」


   「ダイキリですね。かしこまりました」
   軽く一礼して、ジェットは店の奥のカウンターへと向かった。

   ほどなくしてグラスとシェーカーを手に戻ってくると、すっとグラスをテーブルに置く。
   かしゃかしゃと鳴るシェーカーの音が店内に響いた。

   なかなか様になってるじゃない?
   昔見た映画の主人公、とまではいかないけど。

   きっとカクテルの作り方も特訓させられたのだろう。


   「どうぞ」
   注がれたカクテルに口をつけると、隣に座ったジェットが覗きこむようにしてその様子を見ていた。
   その不安げな色の瞳に、ふと悪戯心が起こる。

   「あの、どうですか?お味は」
   「そうね…ちょっとラムが強すぎるかしら」
   「! すみません!俺、作り直してきます」
   「ふふっ。いいのよ。今日はちょっと酔いたい気分だったから」
   「本当にすみません…俺、まだあんまり上手くなくって…」
   「そういうことは、客には言わないほうがいいんじゃない?」
   「そうですね。すみません…」
   「さっきから謝ってばっかりね」
   「! すみません、あ!」

   慌てて口を閉じるジェットに、彼女は思わず声を立てて笑う。

   「これから先は謝るのはなし、ね。今日はここに楽しみに来たんだから。謝罪はもう結構よ」
   「あ、はい!是非楽しんでいってください!」
   「楽しめるかどうかはあなたにかかってるのよ?」
   「あ、そうですね。俺、頑張ります!!」

   …そんな主張を力一杯するホストってのも珍しいんじゃないかしら?

   おもしろいわ、この子。

   ジェットに対してますます興味の湧いてきた彼女は、
   この時点でもう一度自分がこの店に来ることが確信できるような気がした。


   「あなたも何か飲む?」       「ボトルを入れようかしら」



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