マイプライベートBL

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夏陰(cain)箍冬(cotoh)

夏陰(cain) 箍冬(cotoh)
著者名:水原とほる
出版社:マガジン・マガジン

夏陰(cain) 箍冬(cotoh)

内容:
<夏陰(cain)>
ヤクザ・岡林祐司×大学生・沢田雪洋。
雪洋はバイト中、バーに訪れた岡林と出会う。岡林はどう見てもヤクザ。そんな男に些細なことでたてついた雪洋は、店の中でレイプされる。しかも岡林はそんな雪洋を気に入り、連れ合いとして強引に自分のマンションへ連れて来る。雪洋は予定されていた姉の結婚を盾に取られ、納得できないまま岡林の連れ合いとしてマンションで暮らすようになる。

<箍冬(cotoh)>
岡林を愛しながらも恐怖する雪洋。岡林は雪洋を連れ合いとしながらも、大学へは通わせてくれた。研究に没頭する雪洋は信じていた先輩の裏切りを知る。されに追い討ちをかけるように、岡林とセックスする時に起こったPTSDの発作に苦しむ。

感想:
最初から痛いレイプシーンだった。雪洋は強気な性格で、岡林に手首を握られそうになって拒絶する。ヤクザにそんな物言いはないよなぁ、と思いながら読んでいたら、案の定、暴力。その後のレイプは、ま、それ相応のお話なので深くは追求しない。
強気の雪洋を捻じ曲げていく快感は、岡林の気持ちもわかる気がする。強気であればあるほど、暴力でねじ伏せてやる、みたいな。それがヤクザの本能でもあるし。そこへピタリと嵌ったのだろう。

「儀式」と称したレイプもひどかった。岡林にとっては、ある意味、婚姻と同じだったのかな。でもあれは雪洋もタイヘン。反対に言えば、それだけ岡林が雪洋に執着してることなんだろうけど。

そんな暴君な岡林も、彼が必死で上昇してこなければならなかった事情がある。妾腹の子として本妻、本家の兄弟に苛められる。孤独な幼少時だったからこそ、本気になってしまった雪洋を独占・執着してしまうのだね。

こんなハードなお話の中で温かいのが明の存在である。明は雪洋の世話を任された岡林の子分なのだけど、事実彼は雪洋のオアシスだった。その明が自分を庇い、死んでしまう。
その後のエピソードの明の子供を身籠った女性に、花束でたたかれるシーンは泣けた。明には明の人生があったのだと思い知らされる。非常に切ないシーンだと思う。
その後に明を射殺した男の指を岡林と共に雪洋が切断するシーンは、少々吐き気をこらえてしまった・・・

「夏陰(cain)」のラスト、自分の気持ちが岡林へ傾倒していることを自覚する雪洋だったが、そこが、「あれ?」と思ってしまった。こんなに好き勝手に振り回されて、反抗して、強制エッチされて、最後に愛してた、という気持ちの変遷が少々理解できなかった。急展開といった印象。

「夏陰(cain)」の続編が「箍冬(cotoh)」です。
印象としては「夏陰(cain)」が強烈なので、こちらの方は若干印象薄い。しかし読み応えはある。存在感が強いというか。

今回は大学のエピソードが中心だが、私の中で興味を引いたのが雪洋のPTSD又はパニック障害。本では、エッチの時に雪洋に吐き気が生じる。PTSDかパニック障害だろう。多分岡林にレイプされた時の恐怖が再現されるのだと思う。
このシーンもかなり切ない。それだけ雪洋が受けた過去のレイプや「儀式」はショックだった、という証拠だから。それでも岡林を愛してると言う雪洋は、穿った見方をすれば、そう思わないと生きていけないのかもしれないと感じた。つまり、緊急事態の環境ではその環境に慣れるために、心も環境に合わせるという人間の防衛本能である。

だからラストでは吐き気に苦しみながらも岡林とのエッチを敢行する雪洋に少々の疑問を抱いた。実際、そんなことが出来るのかどうか。
見えない恐怖と戦いながらのエッチ。しかも恩田という、明の後を継いでくれた男の前でのエッチ。
しかしそんなこと抜きにすると、このシーン、なかなか壮絶でよかったナ。



評価:B
エッチ度  ☆☆☆☆☆
感動度   ☆☆☆★★
ワクワク度 ☆☆☆★★


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