マイプライベートBL

マイプライベートBL

榎田尤利

榎田尤利

書籍名: リムレスの空
出版社:クリスタル文庫
リムレスの空
感想:
通称・魚住くんシリーズの5巻目です。JUNEに掲載された当時、私はこのシリーズを読んだことがありませんでした。読まなかった理由は、小Jで中島梓さんがやってた小説道場に 『夏の塩』 が取り上げられた当時、中島先生のコメントが確か「この作品はJUNEでなくてもやっていける」とか何とかだったと思います。
級はやたらと良かったのですが、私は「JUNEじゃないんだったら読まなくていいや」なんて思って、読んだことがなかったんです。
数年前、『リムレスの空』のエッチシーンだけたまたま読んで、「面白い」と思ってぜんぶ読んで、その後は押入れ捜索開始、魚住くんシリーズの掲載されたJUNEを読みまくったのでした。
あの時ほど中島先生を恨めしく思ったことはないです。「JUNEとして書かないでもやっていけるほどの文章力がある」という誉め言葉だったのだろうと思いますので、勘違いした私がアホなのですが。
ボーとしてないと生きてられなかった辛い人生を歩んでいる魚住くんと、一般常識の男・久留米の恋愛は何とも微妙なハーモニーです。特に久留米というキャラは、「この兄ちゃん、隣の家にいるかも」と思わせるくらい現実的なのに、魚住くんを好きになってしまう非現実性がとても面白い。
何より魚住くんの人生にしゃしゃり出ることなく、でも彼を支えているところが、理想的な彼氏、と言えます。
脇キャラにも、個性的で人を引き寄せる魅力があります。それとわりと早い時期からPTSDとかその薬のSSRIなど取り上げられており、勉強になりました。
ラストの魚住くんのセリフは、彼の幸せを象徴しているようで、感動しました。

評価:A
エッチ度  ☆★★★★
感動度   ☆☆☆☆☆
ワクワク度 ☆☆☆☆★

書籍名: 少年はスワンを目指す
出版社:ビブロス
少年はスワンを目指す
感想:
榎田さん初の高校生カップルです。櫛形=王子の可憐さに惹かれる原=ハラセンの物語ですが、流れとしては無理がなく、櫛形の可憐さもとってつけた感じもなく、よかったと思います。
また、詳細な描写で主人公たちの背景や歴史、気持ちなど、把握しやすく、
榎田さんならではの作風です。ただ、バレエが好きな人には面白いかもしれませんが、そうでもない場合(私の場合)、バレエってそこまで楽しいかね、と思っちゃいました。
榎田さんの作品の登場人物には、魅力的な脇キャラが登場しますが、今回もくしゃみと鼻水の男・タカアキの存在は、かなりいい線でした。
そこそこといった感じでしょうか。やはり恋愛にいたるまでのシチュエーションがスムーズであると、小説の面白さは半減するような気がします。

評価:C
エッチ度  ★★★★★
感動度   ☆☆☆★★
ワクワク度 ☆☆★★★

書籍名: 100ラブレターズ
出版社:大洋図書 シャイノベルズ
100ラブレターズ
感想:
Love&Trustシリーズの第3弾です。これでお話としては終了、とのことだそうです。
兄・核と弟・天はお互いにブラコンなので、私好みのお話ではないんです。
ブラコン、シスコン、ファザコンにマザコン、そういった類は好きじゃないんですよね。近親相姦ものも嫌いな方です。ま、読みますが。でも今回は、けっこういけました。
主人公は銃器と麻薬以外のものは宅配するという速配便を経営する、坂東核、坂東天兄弟です。他に毎回登場する主要キャラに、天の恋人の興福正文、核のセックスフレンドの沓澤亮治がいます。沓澤はインテリ極道です。
今回の物語は、沓澤の属する組の組長妻からの依頼で、100通の書類を毎日1通ずつ誰にも気づかれず、敵組の元姐さんに届けるという仕事を遂行中、いろんなトラブルが生じるというものなのですが、真の主要物語は、核と沓澤の恋愛駆け引きです。物語冒頭から核と沓澤のエッチシーンで、核ってこんなに色っぽかったんだーって認識させられました。セックスフレンドであったはずなのに、沓澤は核にぞっこんです。だけど核は沓澤との関係を終わらせたいと考えます。その理由は、このまま関係を続けても極道の愛人に成り下がってしまう将来的展望に、核の男としてのプライドが許さないこと。核は実に、プライドが高くて美しく頭のきれるという設定に見合った男です。

物語の最後は、核の危機を沓澤が救い、その時傷を負った沓澤は核を連れて組長の別荘で静養、そこには天と正文もご一緒する、という具合なのですが、結局、あのラストは、ハッピーエンドかな?核が沓澤に好きだと耳打ちしようとするのだけど、天と正文に邪魔されるんですよね。かわいそうな沓澤。

今回の沓澤はちょっと鬼畜入ってました。肋骨を骨折した核を薬を使って犯すなんて、痛そうだったな。
さすが榎田さん、文が上手いなぁ。登場人物(主要キャラ以外にも多くのキャラが登場するのです)にはみんな個性があって、文を読むだけでそれぞれを認識できました。誰が誰でって、混乱しない。そして、絵もいいんですよ。石原理さん。石原さんの核はエロい!目の保養~

評価:B
エッチ度  ☆☆☆☆★
感動度   ☆☆★★★
ワクワク度 ☆☆☆★★

書籍名: ゆっくり走ろう
出版社:徳間書店 キャラ文庫
ゆっくり走ろう
感想:
自動車メーカーに勤める里美廣之は表情が乏しい。彼は地方の販売所に出向してきた。営業指導が目的で、理路整然としたディーラーへの改善要求が社員や所長から反感を買い、2週間で車1台を販売できたら改善をのむと言われる。なかなか売れない車の販売に途方に暮れる里美だったが、販売所トップの車販売の成績を誇る立浪寛一の笑顔に救われるのだった。

久々の榎田さんの作品は、自動車メーカーで働くリーマンものでした。
うまいなー。主人公の2人だけでなく、近所近辺、同僚などわかりやすく書いてくれるし、そこら辺にある風景なので想像しやすい。
主人公達に至ってもなぜ彼がそういう職業についたのかとか、仕事への愛着とか、読んでて理解できる。そこがいいんですよね。榎田さんの文章力のなせるわざ、といいますか。
しかし今回、立浪が里美に好意があるのはわかったのですが、肝心の里美が立浪に傾倒していく過程がちょっとあやふやな感じでした。車中でキスできなかったシーン、里美は全く慌ててない。それと「お前は特別だよ」というシーンも。里美の感情が読めてなかった私には(ま、2人がくっつくことは最初からわかっちゃいるけど)唐突感がありました。
「これは大人の恋だから」の羽賀さんがいい感じです。この方の恋が成就するお話を読んでみたい気もする。

評価:C
エッチ度  ☆☆★★★
感動度   ☆☆☆★★
ワクワク度 ☆☆☆★★

書籍名:  寡黙な華
出版社:大洋図書 シャイノベルズ
 寡黙な華
感想:
昭和3年。三峰邦彦は櫻林院(おうりんいん)侯爵家の養子に入ることを決意していた。櫻林院家には邦彦より1歳年上の一人息子、千早がいる。しかし、いつしか千早は人前から姿を消し隠匿とした生活を送っていた。ほっそりとした体躯に美しい顔、黒く長い髪。千早は上品で百合の花を思わせる。櫻林院家の跡取りであるはずの千早は邦彦が養子に入り跡取りになることに対し、不服はなくむしろ歓迎していた。この千早の存在、それが邦彦が櫻林院家の養子になろうと思った理由であった。

私は女性的に描写される男性が好きじゃありません。なよなよしてるのは論外に嫌いなはずだった。おまけに長い髪ときている。千早は爪もアヤという女中さんに切ってもらっている。25歳にして!
女装までしちゃうし、男の必要性があるのか疑問だったんです。
途中まで。
文はきちんと書かれてるので読むのを止めようとは思いませんでした。
でもさすが榎田さん。最後は・・・涙がちょちょ切れました。
事の3年後に髪を切って燕尾服に身を包んだ千早と邦彦が再会したあと、邦彦の自宅での会話。目がウルウルしてしまいました。
千早が精神的に逞しくなっていたのが多分ツボにはまったのでしょう。
それと邦彦が千早に惚れて惚れきっていたことにも羨ましいと言うか、好印象。
さらに絵が雪舟薫さんだもの。イメージ通りの綺麗な絵でした。

評価:C
エッチ度  ☆☆★★★
感動度   ☆☆☆☆★
ワクワク度 ☆☆★★★

書籍名: 誓いは小さく囁くように
出版社:大洋図書 シャイノベルズ
誓いは小さく囁くように
内容:
ブライダルプロデュースの会社を経営している若宮瑛児はある夜、酔っ払って意識のない若い男を拾った。しかも、あつらえたばかりのスーツにゲロを吐かれる。その男は南智夏。彼が天才的なマリエデザイナーだと知るが、今はもうデザインはやっていないと言う。スーツの代償のために自社で南を働かせる若宮。帰るあてもない南は寝食を会社で行なう。しかし南は風邪を引き高熱を出してしまった。そんな南を捨て置けずに、若宮は自分のマンションに引き取り、甲斐甲斐しく世話を焼く。

感想:
可愛らしい作品だと思った。マリエデザイナーという職業が南によく似合ってる。桂○美さんのおかげで、私の中でブライダルデザイナーは女性という固定観念があったんだよね。

南の気の強さに反比例する何も出来ないぶりがおかしかった。こんなに何も出来ないから、きっと若宮のような器用な男がいいのかな。なんでも本格的じゃないと気がすまない、という若宮もヘンだと思ったけどね。でも、色々なことにこだわる男性って多い気がする。そこから物事を学習して会社を興し、発展させるための動力となるんだろうな。
若宮は最初、お金に執着してるのか、とも思ったけど、そうでもなかった。
だけど最終的に南を口説き落とし、彼にウェディングドレスを作らせたのは、やっぱり男性としての魅力とあいまって、社長としての手腕でもあるんだろう。

榎田さん、1本1涙です。毎回たいてい涙を流してしまう。

今回は、花嫁の前に現れた幻の晴夏に涙してしまった。「おめでとう、とても素敵なドレスね」という春夏のセリフ・・・普通に考えたら空恐ろしいんだけど、春夏が伝えたかったことが想像できるだけに、かなり切なくなってしまった。

絵のイメージがピッタリ。表紙はあんまり好みじゃなかったけど、読後はこの絵でいいんだって思えた。

評価:C
エッチ度  ☆☆★★★
感動度   ☆☆☆☆★
ワクワク度 ☆☆☆★★

書籍名:  権力の花
出版社:大洋図書 シャイノベルズ

権力の花

内容:
思想検事の蔵持楓は被疑者、陣内幸也の尋問をしていた。彼は楓の出身大学で助教授を務める。人を食ったような男は反抗思想を実行に移すとは思えなかったが、いけすかない。結局釈放したが、楓を口説きにかかった。
一方、父親との関係を良く保つがために、父親の言いなりになる楓。政治家と癒着した父親は政治家に楓を売ったのだ。どんな無体なことでも言いつけに従った。しかし、自分の中にある正義だけは裏切れない。1型糖尿病という病気を抱え、そのことを隠している楓に追い討ちをかけるような陰謀が・・・

感想:
一読一涙。榎田さんの作品につき物です。
「子供はみな、愛されなくてはならない」「なぜなら、人は愛されなくては、愛を知ることができないからだ」
きました。ググッと。涙。。。

楓が父親に認められたいという気持ちによって自分の存在をおかしな方向に進めていく。おまけに1型糖尿病という病気を抱え、常に病気の脅威にさらされている。弱みを見せまいと頑張っている楓が、とっても苦しい。何故にそんなに父親でなければならないのか、と。でも、愛を知りたいから、愛されたいのだし、子供が自然に親を慕うのは当たり前だし、そうなると、楓の生い立ちが四面楚歌のように覆いかぶさって、楓はこう生きるしかなかったんだね、と思った。不幸なことだなぁ。

陣内の明るさが軽快でいい。彼と相対する時の楓は快活だと思う。父親と接する時のズドーンとした雰囲気がないもの。
レイプされた楓が助けを求めたのが陣内でよかった。ま、主人公同士だからくっ付くわけですけどね。なんだかんだ言いながら、陣内ってやさいいよね。いっぱいいっぱいの楓を理解してくれてる。

蓮沼は、最初から怪しかったなぁ。もっと上手い隠れ方はなかったものか。そこが少し残念。携帯が無くなった事件で、確定しちゃったもの。

今回は、BL好きぃの私と、現実世界の自分がせめぎあってしまったのだ。うーん。榎田さん、よく調べたなぁと思うし、もうちょっと、だと思うし。複雑。


評価:C
エッチ度  ☆☆☆★★
感動度   ☆☆☆☆★
ワクワク度 ☆☆☆★★

書籍名: 無作法な紳士
出版社:ムービック ゲンキノベルズ

無作法な紳士

内容:
九重桜彦(17)が目を覚ますと、そこは銀世界だった。家督相続でもめている姉に嵌められ、東北のどこともわからぬ場所へ置き去りにされたのだ。そんな桜彦を救ってくれたのは、炭を焼く、熊のような容貌の克郎だった。
熊のような克郎も温泉に入り、髭を剃ると、ものすごくいい男。克郎を見て、ふと、桜彦を陥れた姉を逆に陥れる策略がひらめく。桜彦はどうしても九重財閥の後継者になりたかった。そのためには姉を陥れなければならない。克郎を口説いて東京に連れ帰り、彼を紳士に仕立て上げる桜彦。見てくれは紳士でも、どうしても態度までは紳士になりきれない克郎。そんな彼にイラつきながらも時々桜彦の心はキュンとする。その感情は初めてのものだった。

感想:
いろんな職業があるのものだ。BLを読むとき、いつも主人公たちの職業が気になる。今回は炭焼き。めずらしいです。
しかもトイレはどっぽんトイレ。
多分、都会の人にはわからないだろうな。ここ最近、私の住む町も近代化が進み、家の中にトイレがあるのが常識になってるけど、いまだにトイレは外、という家庭もある。そしてこの本の中に登場するトイレですが、実は私、子供時代に経験したことがある。桜彦じゃないけど、あのトイレは私も嫌いだったなぁ。穴掘っただけだもん・・・

・・・のっけからトイレ談義はなかろう>私。ごめんなさい。

美しいものを主体とするBLにあえて熊のような外観の男を登場させるあたり、榎田さんだわーって思った。ヒゲぼうぼう。ススで顔真っ黒け。ま、ヒゲ剃ったらいい男はお約束です。

そして醜いまでに跡継ぎ騒動を起こす姉・鈴香と桜彦だけど、彼らにもそうなってしまうだけの理由がある。鈴香は女である自分を父親に認められたい、桜彦は母親と暮らしたい。そんな彼らを、騙す形となった父親の冷たさが、私はイヤだなぁと思った。作中、私は何故か「父と百井はデキてる」なんてアホなこと思ったのだけど、いんや、百井はこの父親には勿体ない。(と、何故か百井が気に入ったらしい私)

桜彦はおぼっちゃま育ちだけど、頑張り屋さんである。金銭感覚は少々ズレてるが、バイトしてお金貯めたり、一つのことを通して学ぼうとする意欲がある。そこがすごく気に入った。彼、悲嘆に暮れてないんだよね。鈴香に嵌められて死にそうになっても、助けられた場所がとんでもないど田舎でも、前向きだし。

一方、克郎は、私、よく理解できなかった、というのが本音です。どういった気持ちで桜彦のをさすったり、坐薬の残りをかき出したりできたんだろう。しかも淡々と。多分桜彦を特別な目で見てないからだろう、と思うのだけれど、桜彦が後継者になりたかった本当の理由を知った後に、克郎の気持ちはどうも動いたらしい。そこ付近の気持ちが何となくいきなり感があった。「こいつ気に入った」、から、「エッチしよう」、までの時間が、ね。
文章力のある方だから、違和感はなかったけど。

榎田さんの作品を、例えば文章力や作品として評価した場合、とっても優秀な作家さんだと思う。BLとはいえ主人公たちの生きてきた過去・現在を掘り下げて書いてある。だから彼らの気持ちの流れを読者はスムーズに掴むことができる。
ただ、私って欲張りなんだよね。私の心を突きぬけるものが欲しいんだよなぁ。
なんと言えばいいか。
読んで「フムフム、そうかー、おもしろいなー」というのが胸のとこまでの感動としたら、「きゃー!これ、いい!」と無条件に思える情熱を呼び覚ます感動は、頭の頂上。

でも、頭の頂上までくる心を動かすのって、どの作家さんの作品でも、1つあるかないかの希少な感覚である。
そんな作品を書くのは、難しいんだろうなぁ。

あと、今回絵を金ひかるさんが担当されたのですが、うーん、桜彦のイメージがちょっと違う気がした。克郎はイメージどおりなのだけど。砂糖菓子のように甘い感じの絵がよかったような気がする。


評価:C
エッチ度  ☆☆★★★
感動度   ☆☆☆☆★
ワクワク度 ☆☆★★★



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