マイプライベートBL

マイプライベートBL

か行

金丸マキ
書籍名: 初体験ノスタルジア
出版社:集英社 コバルト文庫

内容:
藤代弓彦はバイト先で、高品広瀬と再会した。中学生と小学生だった2人は弓彦20歳、広瀬17歳に成長していた。過去、早熟だった弓彦は気まぐれに広瀬にセックスを教えた。そして6年前、一生懸命に弓彦を求める広瀬を弓彦は傷つけ突き放したのだ。
成長し再会した広瀬は、大人になった体で弓彦を抱く。広瀬に激しく求められる弓彦だが、真剣には考えられない。大事な人から突き放されて空虚な毎日を過ごす弓彦にとって、恋愛は信じられないものだった。

感想:
この2人、初体験がめちゃめちゃ早い。小5、6・・・私が彼らの頃には、まだマンガ本やアニメに凝っていたっけ。エッチなんて遥か彼方だったもの。

お話は、弓彦はうだうだ考えてる割に身持ちゆるいなぁ、とか、広瀬は学生なりに一生懸命弓彦を愛そうとがんばってるなぁ、という程度にしか感慨はなかったのだ。弓彦の実父のこととか、彼の母親のことを読んでも、そうなんだ、くらいにしか心が動かなかった。何故か椎名林檎の「歌舞伎町の女王」が思い出された。

だけど最後の最後、海里に対する気持ちから醒めて、窓辺でいつものように外を眺める弓彦に手を振る広瀬を見て、送ればせばがら気付く弓彦。「昔もいまも、はぐらかさず裏切らず、弓彦の元を律儀に訪れて、弓彦だけを見つめていてくれたのは」という行で、涙があふれた。心が軋んだ。
手の届かないものを求めていると、近くの大事なものに気付けない。その大事なものにはじめて気付いた瞬間だと思う。
薄幸だった弓彦に何気ない日々の大事さとか、満足をもたらしてくれる広瀬の存在に気付いてくれて、すごく嬉しいと思った。

それと!!
イラストは山田ユギさんなのだが、広瀬がめちゃくちゃかっこいい!!地団駄踏みたくなるほどいい男なんだもん。特に、2人が再会するシーンのパンツ一丁の広瀬。ヨダレたらしたくなったゾ。

評価:C
エッチ度  ☆☆★★★
感動度   ☆☆☆☆☆
ワクワク度 ☆☆☆★★

書籍名: きみはぼくを自由にできる
出版社:集英社 コバルト文庫

きみはぼくを自由にできる

内容:
美大受験予備校の講師。それが桜井遙の仕事である。日々をただ流されるように過ごす遙。過去の裏切りの記憶が彼を臆病にしていた。18の頃自分を愛してくれていたと信じていた男には妻がおり、その男と駆け落ちをしようと決めた日、男は来なかった。その後、愛した男は再生し、雑誌の取材を受け、その中で順風満帆な夫婦関係を喜ぶ記事を読んだ。深く傷ついた遙はいっさいの物事に興味がなくなった。今の仕事も友人が心配して雇ってくれたのだ。
その美大予備校を訪れた高校生・稲葉徹は切りつけるような視線を遙に送ってきた。そのきつい視線が気になる遙。
ある日、美大の経営者であり遙を今の仕事に誘ってくれた友人でもある男を誘ってるシーンを稲葉に見つかってしまった。そのことで遙は稲葉に脅され、レイプされる。しかも携帯写真を盾にその後も関係を強要されるのだった。気に入らないことがあれば殴られる。関係が続くうちに、稲葉のDVもそれなりに受け入れてしまった。そんな遙をなじる稲葉。稲葉にはそのような行動を取ってしまう彼なりの理由があったのだ。

感想:
まずもって、この受け、気に入らんです。ウジウジくん。それでもって、攻めくんも気に入らんです。ビシバシ殴るのはよくない。この本、コバルトシリーズだから対象読者は中高生のはず。よく通ったな、このプロット。

途中からきっと稲葉はいい子ちゃんになるはず、と思っていたけど、やっぱ、殴る蹴るのシーンが続けばいい加減、嫌気がさすものだ。しかもその理由が見えないんだもん。ただ殴ってるって思っていたら、やっぱ殴るだけの理由はあったのね。
稲葉にとって遙は敵だったわけで。なるほど、そういう訳ね、と思ったけど、そしたら後に残ったのは、遙の暗い生き方にまた、納得いかなかった。1つの裏切りが自分の人生を変えるのはわかる。でも、前向きじゃないのが気に入らんです。後ろ向きも後ろ向き。思いっきり後ろ向き。弱すぎだよ。そんなに自分の人生を変えるほど、その男はよかったのか・・・?わからんです。だって日高が今の仕事に遙を誘わなければ、遙は野垂れ死になんだもん。後ろ向きでもいいから、少しづつ再生していくお話なら好きだけど、遙は誰かの手立てがなければ、いつまでもそこから動かないタイプだ。それはイヤだな。

でも、唯一ココロが受け付けたのは、遙は最初から稲葉のことが気になっていたということ。彼は本当に自分を捨てた男を愛していて、その子供である稲葉まで愛するのだから、相当に稲葉の父親を好きでたまらなかったんだろう。因果というか。強欲というか・・・

金丸さん、殴る攻めが書きたかっただとか。私は受けが殴る、というのが好きかも。攻めが殴ったらシャレにならん。

評価:C
エッチ度  ☆☆☆★★
感動度   ☆☆☆★★
ワクワク度 ☆★★★★


神奈木智

書籍名: 征服者の特権
出版社:徳間書店 キャラ文庫
征服者の特権
感想:
霧生晴人(18)は3年前、ヤクザの抗争に巻き込まれ重症を負ったが、ある目的のために死亡したとして葬儀まであげた。ヤクザ組長だった父と母は瀬川組に殺害され、妹は拉致されたのだ。両親の復讐のために瀬川組を潰し、妹を奪還する。それは霧生組跡目候補としての晴人の生きる目標であった。晴人に絶対服従を誓う甲斐哲央と共に、晴人は瀬川組を探る。その中で晴人は、キレ物と名高い弁護士の上妻黎士(あがつまれいじ)と出会う。上妻の目的と晴人の目的は同じだった。瀬川組の崩壊。
上妻とのかかわりの中で、晴人の両親を死に追いやり、妹を拉致した真の敵を知る。蓮見グループ・・・そしてその手下である上妻。しかし晴人には上妻に向けた銃のトリガーがひけなかった。

お話は、これからさらに複雑な内容になりますが、短くしきれないのでここでやめます。
単純に言えば、敵対するはずだった晴人と上妻が恋人同士になって、2人と哲央の3人で敵である蓮見グループを潰しちゃうってお話です。そして蓮見グループの中でも2人にとっての本当の敵は・・・・読んで下さい。
この本、長かったです。
ヤクザものというより、ハードボイルドとかバイオレンスとか、そういった類かな。よくわかりませんけど。
作者はここに登場する町を現実の日本とは思ってない、とのことですが、けっこう存在感あります。世界観としては面白い。
でもダークな感じはあんまり漂わなかったな。町がごちゃごちゃして濡れててビルの廃墟が並んでる風景が見えない。寺館和子の『人間倶楽部』のような雑然とした感じに似てないこともないけど。でもちょっと本作が上品かな。町が整然と片付いてる。『人間倶楽部』は、ダークで重厚だったもん。(種類が違う?)
理由は、晴人がかわいいから。これって理由になるかな?
晴人は一生懸命大人っぽく振舞ってるし、生死を彷徨ったし、ヤクザ跡目として後々のことまで考えた行動をとる優秀な男ではあるけど、地を這いずるような泥臭さが感じられない。つまり、人物として存在感はあるけど、重さがないです。それは上妻も同様です。
アンバランスなんですよね・・・
復讐心に燃えてるのに、上妻に惚れる。そのことに気付いた晴人には全く葛藤がないんです。簡単に受け入れてる。
初エッチで「もっと・・・」って言うんです。
上妻のところへは自ら赴き抱かれる。
そして復讐のため戦う・・・・
晴人の気持ちの流れがよくわからん。
いや、わかるのだけど、上妻と晴人の関係は普通のBLと何ら変わりないと思うのです。
それでは、せっかくのこの世界観が台無し。
敵である上妻に惚れる、そこに葛藤があるからそこ心が燃えるのだ、と思うのは私だけ?
コイツにだけは弱みを見せないと心に誓い、イヤだと思いながら抱かれる、そこに私の萌えがあります。そしてイヤだと思いつつも抱かれ、心に抵抗しながらも、最後に惚れてる事実をやっと認める。
晴人はわりあい早い段階で上妻に惚れてる事実を認めるし、けっこうあまあまなんですよね。
そこがBL的ハードボイルドの限界なのかな?
哲央という男は良かったな。いい感じです。
もっとマッチョでもよかったような気もするけど。
絵がねー、上手なんですが、この小説には合わないと思う。
晴人がかわいすぎ。目の鋭いシャープな感じの絵だったら、物語の印象も変わったかも。

評価:C
エッチ度  ☆★★★★
感動度   ☆☆★★★
ワクワク度 ☆☆☆☆★


栗本薫

書籍名:真夜中の天使1・2・3
出版社:文藝春秋
感想:
まだJUNEしかなかった頃、本屋に行っても今のようにBLコーナーなんてありませんでした。そこをJUNE本探して歩くのが好きでした。学生時代、よく読んでたのは三島、赤江、ワイルドなど。そんな中、本屋で今作品を手に取った私の感動をおわかりになっていただけるでしょうか?
作品は当時よりさらに古い時代に書かれているので、昭和40年代の印象があり、衣装もちょっと古臭いので、新し物好きの方には引けるかもしれません。でも、今西良という少年と滝という男の物語は、古くはないと思います。そして今、巷で量産されているBLとは異なったお手軽さが全くないことに気づくと思います。
ラストで良が唯一幸せになれるかもしれない、と思えた男、結城を滝は事故に見せかけて殺してしまいます。スーパースターとしてだけしか生きていくことのできなくなった良を不憫に思うし、あれはあれでよかったのだと思うし、読書後に葛藤し、怒り、胸にもやもやしたものを抱いた作品は今作品のみです。(あ、『透過率45%』もちょっとだけその仲間です)
小Jで小説道場を開き、優秀な門弟を世に送り出した栗本さんの偉業はすごいです。大好きな榎田尤利さんとか、尾鮭あさみさん、秋月こうさんなども栗本さんの門弟です。それから山藍紫姫子も別名で栗本さんの門弟になってらっしゃいます。
今、本屋にBLコーナーができたのも彼女のおかげだと思います。
ま、栗本さんとしては、今のBLの在り方(文章力の無さ、設定力の無さ)に意義を唱えていますが。
昨年、JUNEで小説道場を一時期、復活されましたが、あの時の切り捨て方はこれまたすごかった。その情熱が羨ましいです。
初期のJUNEは別名を使った栗本さんの作品でいっぱいでした。今や、JUNEそのものはなくなってしまったし、小Jは危機なの?と聞きたいくらい3ヶ月に1回の出版になってしまったし。ただ、BL本はあふれていますね。その中で優秀作品を見つけるのが、今の私の楽しみになっています。

評価:A
エッチ度  ☆★★★★
感動度   ☆☆☆☆☆
ワクワク度 ☆☆★★★

書籍名: タトゥーあり
出版社:成美堂出版 クリスタル文庫

タトゥーあり

内容:
36歳にして最高学府T大の教授であり、美貌を誇る私こと島優一郎は、品行方正で非の打ち所がない。しかし最近は2丁目に出入りしている。島はそこでやくざ・志賀丈二と出会う。全身が刺青で覆われた陋劣な男。島をレイプし、関係を続けようとする。最初、志賀を拒絶するだけだった島は、志賀の単純な思考と行動から、自分の真の姿を知る。肉体は志賀のセックスを拒絶しながら、思考は志賀を欲する。真の姿の島は父親からの開放を願っていた。

感想:
ボーイズラブではない。区別するならやおい。JUNEともちょっと違う気がする。ま、JUNEとやおいの違いを書きなさいといわれたら、書けないけど。
栗本先生のパワーが凄かった。「本当のやおいはこれよ!」とでも言いたげな小説。並々ならぬ気概と気魄があふれている。

普通の男×男の恋愛小説ではない。島と志賀はラブラブではないし、それぞれの思惑がある。島は哲学教授だけあって、志賀との関係を掘り下げて考え、最終的には志賀をコントロールする。何故自分がそのような行動を取らねばならないのか、考察し、最終的に島自身の意思を管理してきた父への復讐と化す。
感想なんて、書くのはおこがましいけど、島はまったく志賀の気持ちを無視しているわけではないのだと思う。志賀に対する恋愛の情は少しはあるのだと思うのだけれど。いや、おおいに?志賀という自分の思い通りに動く男を手中にすることによって、島は自由に思考でき、志賀の存在があるからこそ自由に行動できるのだと思ったのだけど、どうかな?鳥海教授との情事もその延長上にあると思う。

私、実に乙女なので、真珠はどーしてもイヤなんだけど。志賀のは必需品なので嫌気がささない。以前、外見は上品で美しく、デキるインテリやくざなのに、真珠入りのペ○ス男のお話しを読んだ時、非常になえた。
志賀は下劣で下等でコテコテのやくざである。そんな彼が真珠入りであっても、なんら違和感がない。最初は志賀は、島をレイプするのがすごく楽しくて感じるのだけど、島の思考が変化してからはストレートに島を愛する。そこらへん、志賀はとても純粋だし、反対に父親に復讐を図る島はねじまがっている。悪徳かも。純な志賀は好感だが、だからと言って、志賀は私好みではない。

志賀×島編は結局、あれで最後かな。父親の前でエッチはないのかしらん。やってほしい。
それと、鳥海×島はすごいな。62歳×37歳だもん。62歳が愛してる男は75歳。高齢やおい・・・2人のエッチがあったらすごかった。でもなかった。それはそれで、ほっ。

昨今読むBLはあまりにも平易に文章が書かれていてとっても読みやすい。そんな本に慣れてるものだから、久々に文学的表現の言い回しとか、哲学とか、読んだ。そうなんだ。ソクラテス、昔、ヨコシマで読んでいた。

栗本先生曰く、「必要とされるかた」だけ読んでほしいとのことです。久しぶりに、昔馴染んでいた世界にひたれました。BLゾッコンのかたは読まないほうがいいかもしれません。

評価:B
エッチ度  ☆☆☆☆☆
感動度   ☆☆★★★
ワクワク度 ☆☆☆☆★


剛しいら

書籍名:  花を撃つ
出版社:大洋図書 シャイノベルス
 花を撃つ
感想:
警視庁警備部警護課の刑事×政治家の御曹司の物語です。

代々政治家の家に生まれた八十島聡一郎は、法務大臣である父が何者かに狙撃され引退を余儀なくさせられたその後継者として、衆議院議員選へ出馬させられる。26歳の聡一郎には荷が重かった。そんな選挙戦の最中、警視庁警護部警護課の男、大鞆斉昭が聡一郎の命が狙われているとして警護に当たるという。決して感情を表にしない大鞆であったが、その裏に隠された自分への気遣いに、聡一郎は心が揺れる。そして選挙戦最中にもかかわらず、聡一郎は大鞆と別荘を訪れ、気持ちを確かめる。
落選を祈っていたが、聡一郎は衆議院議員に当選。再び犯人からの挑戦状が警察に届く。警備を強化したが、聡一郎は何者かに拉致されてしまう。

ハードボイルドタッチのお話は好きです。映画で言えば「ボディガード」ですね。あれは結局悲恋だったけど、これはBL仕様なので安心して読めます。危機を乗り越えていく姿も、聡一郎の成長物語も、文句ない・・・のですけど。

ゴジラ先生の作品読むと、いつも「もうちょっと!」って思うんです。ファンには申し訳ないのですが。奥行きが足りないと言うか、うーん、何と言ったらいいか。
満足MAXが10だったら、私は8しか感じられない。

今回も、ほんのちょっとしたことなのですよ。
例えば父親のライフル狙撃ですが、浩一郎を狙撃した高性能なライフルと書くのではなく、スコープ付のM16(古いです。これしか知らんので今は我慢して)とか薬莢もその名前とか、それをちょこっとだけ書くことによってよりハードボイルドさが深まったような気がしません?
コロンとタバコの匂いも、彼がボディガードだったら多分匂いのつくものは体に使用しないのではないか、と思うんですよねぇ。いや、本当かどうかは知らないけど、例えばスパイだと絶対にそんなもの禁忌ですもん。昔の忍者は口臭を予防するために忍びの最中は常に口をもぐもぐさせていたらしいし・・・
でも大鞆はボディガードやスパイではなくてSPなわけで、無臭にこだわる必要はないのかなぁ。

大鞆の感情の変化にもちょっとついていけなかったな。攻めさんなので聡一郎を好きにならないと話は始まらないのですが、ちょっと強引な展開なようにも感じました。でも、映画でもそうだったし、守るものは守られる者を好きになる宿命なのかな?
林でエッチシーンと、ラスト付近で、2人で山中をまっぱで歩くシーンはよかったです。

小笠原宇紀さんのイラスト、好きなんですよね。遠野春日著 美貌の誘惑 でもイラスト描かれていましたが、あれでゾクゾクしたんです。この方の受けさんはめっちゃ色っぽい。

評価:C
エッチ度  ☆☆★★★
感動度   ☆☆★★★
ワクワク度 ☆★★★★

書籍名: 色重ね
出版社:徳間書店 キャラ文庫
色重ね
内容:
黒崎希星は日本の美術品を海外向けに売りさばく美術品のブローカーである。彼は『赤猫狂死』という贋作師の手掛けた浮世絵に出会う。贋作浮世絵の出所は鎌倉の「赤猫堂」。そこで出合ったのは、今どきのサーファー風情をした赤間京司だった。京司が『赤猫狂死』だと見破った黒崎は、彼に春画を依頼する。京司は肉体的に潔癖症で、贋作春画すらも拒絶し、断固断る。しかし彼には弱点があったのだ。黒崎の手には真っ白な縄・・・

感想:
こういうの、大好き!
黒崎が最初、「赤猫堂」をさがす件から興味がわいた。鎌倉の町にポツネンと存在する赤猫堂が見える気がした。古い饐えた臭いも感じる。
赤猫狂死が意外にもサーファーの格好をしてるのも、良い。

快楽に乱れる自分に恐怖する、って少女っぽいです。でも、京司だと可愛いというか、可憐というか。縛られる快楽を覚えたら、それに執着する、その一途さも好感です。黒崎が京司の全てを縛るのに努力を要するあたり、大変ですな。
京司が黒崎を支配してる。
そうなのかもしれない。「キャンディ」でも上杉が嘉島を大事に大事にしてたし。私も黒崎だったら、京司をいたぶりながら京司に振り回されるだろうな。

黒崎という男のスタンスがすごくいいです。
悪い男です。でも表立ってのワルじゃない。策略を練り、自分は傍観者を気取りながらじわじわと攻め入る感じ。そういう人間って好きなのですよ。
自信過剰かと思いきや、京司に惚れるあたり、BL的満足度もアップさせてくれる。

それと、京司がドラッグでトリップする描写も面白かった。彼が見たままの魑魅魍魎がウジャウウジャする所、それから刺青が動くところ、よかったです。

ところどころ、現代的言葉使いで、「うーん」と思うところや、それこそ、1行1文なところもまた「うーん」と思うだけど、そんなことよりも、作品の持つ雰囲気の良さのほうが凌駕してた。お気に入りの作品は、どんな文章でも好きは好き、ってことか。げんきんな私だ。

絵がまた、ピッタリで。
剛さん、高口さんの絵を意識しながら書かれたのかしら?特に京司。高口さんの受け男は、いつも可愛らしいな、と思ってるのですが、今回も京司のイメージと絵が融合してるようだ。

「顔のない男」シリーズ以来、久々に剛さんの作品の中で満足度が高かった。

評価:B
エッチ度  ☆☆★★★
感動度   ☆☆★★★
ワクワク度 ☆☆☆☆★

書籍名: 時のない男
出版社:徳間書店 キャラ文庫

時のない男 顔のない男(3)

内容:
大スター飛滝惣三郎と日陰ながら相思相愛になった俳優歴3年目の篁音彦は、ほとんど同棲しているのと同じ生活を送りながらも、隠れて飛滝のDVDを見るほどに俳優として彼を尊敬し、日常では飛滝を愛してやまない。
今回の飛滝はイギリスドラマの大作ドラマに出演することになった。つまりは音彦は飛滝と離れ離れの生活を送らなければならない。我慢できない音彦は飛滝に内緒でイギリスを訪れる。秘かに飛滝のシーンを覗き見るのが目的だったが、アクシデントに見舞われ、ついには飛滝と共演するはめになってしまう。

感想:
上記の内容は表題「時のない男」で、この前に雑誌に掲載されたらしい「愛のない男」がある。こちらはCMで共演する犬を音彦が連れてきて、飛滝が犬に拒否反応を見せながらも、一生懸命世話をする、というお話。子犬が愛嬌を振りまいて可愛らしいけど、好きじゃない人には、ま、確かに迷惑な話しだと思う。家で犬を飼うのは、あの犬の臭いが嫌いな人にはたまんないだろうな。それでも何とか世話をする飛滝は、愛のない男というよりは、愛しかたを知らなかった男とでも言うべきかしら。犬を愛する=愛情がいっぱい、という図式には納得いかない。冷たい態度を取ったって、犬が好きな場合はあるし・・・f(´-`;)ちょっと自分のための言い訳かも・・・

音彦にかまう飛滝は、たくさんの愛情を得られなかった頃を取り戻そうとしているのだろう。愛されたいからたくさんの愛情を注ぎ、関心を示されたいから関心を示す。自分の意思を伝えながらも、犬の世話焼く。相手のことを想っていないと出来ない芸当だ。描写されてる飛滝は、何となく無表情でクールでとっつきにくい感じが見えるけど、本当に音彦のことが好きなんだなぁ。

「時のない男」は、単純に、よかった。
いくら飛滝を愛してるからっていって、音彦がイギリスまで飛滝の演技を見に行くところは、なんだかな、と思ってしまったが、音彦視点になっているため、彼がイギリスへ出向かないと飛滝の憑依的演技が見れないので、しかたない。

しかし、私生活から役柄になりきって生活するということは、どういうことなんだろう。役作りが日常生活に入り込む役者さんっているらしいけど、飛滝の場合、憑依したかのようにそのものになってしまう。音彦と前田男爵になった飛滝が会うシーンでもわかるとおり、彼らの会話は音彦と前田男爵になってしまうのだけれど、実際、そんな場面に居合わせたら、きっと異様な風景だろう。今の時代にバロンの恰好してる男は、異様を通り越して滑稽かもしれない。
でもそのスタイルが飛滝の個性であり、彼の仕事への情熱なんだろう。本物のドラマを見たい気もするな。

ところで、飛滝のイメージ、私、なぜか高倉健さんなんだよね。寡黙でクールで一途で。でも北畠あけ乃さんのイラストのイメージと健さんは、かけ離れている。ビジュアル的な飛滝のイメージは、さらによくわからない。彼が作中で模索している通り、型にはまったイメージがわかないから。だからイラストで彼を見たとき、「なんか違う」と毎回思ってしまう。北畠さんには悪いけど。
ただ今回、最後あたりの墓地の飛滝は、「あれ?いつもの硬質な感じと違う」と思った。このイラストの飛滝は好きだな。

いつも「惜しい!もう一歩!」という作品が多い剛さん。剛さんにはたくさんのシリーズがあるけど、その中でこのシリーズは一番好きだ。飛滝の淡々とした自分探しをするかのような生き方が気に入ったんだと思う。

評価:B
エッチ度  ☆★★★★
感動度   ☆☆☆★★
ワクワク度 ☆☆☆★★


小塚佳哉

書籍名: 熱視線
出版社:雄飛 アイノベルズ
熱視線
感想:
イラスト買いです。表紙の息吹が綺麗だなと思って買いました。
有名作家と有名女優を両親に持つ息吹は若い女性のヌード専門の写真家で、被写体と寝ることで有名だった。そこへ人気上昇中の新人俳優・千住が写真集を依頼してくる。2歳年下のくせに傲慢そうでぶっきらぼうな千住に息吹は「寝た相手しか撮らない」と言って断る。しかし思惑とは反対に千住は息吹を強引に抱くのだった。
エッチ以外のエピソードは好きです。例えば有名な両親が息吹の重圧になってること、父はマニアックなコレクター、自然の中での撮影、ライカ使用など。いつも自虐的に「男のズリネタを撮ってる」と息吹は独白しますが、はやり自分の仕事にはそれなりの自尊と自信があるわけで、被写体が一番綺麗に写る方法を感じ取ったりするところなどは、好感が持てました。しかし、エッチはなぁ。BLの王道です。ハイ。
最初はイヤイヤ、途中で(それも前立腺とやらへの刺激で)気持ちよくなり、最後は自ら腰を振るという、典型的なパターン。バックバージンで女好きの息吹が、初の受けで腰を振る・・・。体の相性がいいから、相手のことも好きなる。ま、主人公同士がくっつく話なので、それでないと面白くないのですけど・・・もっと、ひねりが欲しい。
それから、今回も思ったのですが、1行に1文。何故?続けて書けばいいのに。千住の人となりを紹介する文も3行で書けそうな文を、6行使用。意味のある6行とも思えない。近代文学のように、段落がほとんどなくて長い文節が続くのがいいというわけではないけど、短い文が1行を占領すると、あまりにもスカスカした印象を受けるのです。
この本も詰めて書けば3文1は余白ができるでしょう。

評価:C
エッチ度  ☆☆☆★★
感動度   ☆★★★★
ワクワク度 ☆☆★★★


ごとうしのぶ

書籍名: 熱情
出版社:徳間書店 キャラ文庫
熱情
感想:
高校教師の志摩邦明に片思いしてしまった海野光は高校3年生で受験生。光は情動にかられ志摩を無理やり抱いてしまった。志摩はいたたまれない光に償いを考えろと言う。しかし思慕を募らせる光を哀れに思ったか志摩は、ごっこだったら付き合う、と言った。光が高校を卒業するまでの恋人ごっこ。光は志摩の言うとおり、受験を頑張る。土曜ごとに志摩のアパートを訪ね、体を重ねる。そして大学受験に合格し、卒業。志摩との別れ。
大学生になった光は母校の文化祭に来た。そして志摩をレイプした最初の教室を訪れた。

のっけから興味をそそる内容でした。光が志摩をレイプしてるんだもん。光は見た目はいい男だけれど、本当は朴訥とした少年です。志摩を好きで好きで仕方がなく、志摩の気持ちが見えないから不安になったりします。そんな揺れ具合が可愛い。また志摩も、昔の男に元さやを持ちかけられても断ります。そして光にはつれなくしてるのに、彼が喜ぶことをして尽くしてる。志摩自身もかなり不器用という印象です。その不器用さが見てると切なかったります。

一度は別れてしまう2人ですが、元彼のお陰でもう一度やり直しになります。BLだから別れないという気持ちがあったものの、もしかして本当に別れるか?と思っちゃいました。よかったです。2人の気持ちの伝書鳩になってくれてありがとう、雨宮。
けっこう「へ~~」と感動したのは、最初のレイプは実は誘ったのだ、レイプされながら志摩が実は光をレイプしていたという告白。誘い受け?

これは本当はコミックの原作用に書いた小説だそうで、マンガがあるらしい。買わねば!

超久々のごとうさんの小説でした。本を読み始めて、最初の感覚が「あー、ごとうしのぶだぁ・・・」って感じでした。彼女には多くのファンがいらっしゃるようなので、あんまりいろいろ言えないけど、私の好きタイプの物書きではないのですよ。言葉では言えない、読んだ時の感覚が好みではなく・・・タクミくんシリーズもそれが原因でそれほど好きになれなったわけで。
でも、今回、それは払拭されたような気がします。
光の一生懸命と志摩の切なさがとっても、とってもよかったです。

評価:B
エッチ度  ☆☆★★★
感動度   ☆☆☆☆★
ワクワク度 ☆☆☆★★




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