約束さ永遠のミステリ~ 妄想と考察と日常の闇鍋

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2025年12月05日
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テーマ: 読書感想文(764)
カテゴリ: 読書感想
今回感想を記すのは、横溝正史の**『幽霊男』**である。
神保町の裏通りにあるヌードモデル仲介業「共栄美術倶楽部」に初めて現れた異相の男、その名も佐川幽霊男。彼の依頼を受けたモデルが、ホテルの浴槽の湯の中で殺され、そしてさらに……。猟奇マニアたちの秘密の巣でもあったその倶楽部に金田一探偵が登場。右往左往しながらも、欲望に溺れて落ちたマニアたちの犯罪を鮮やかに解決! 妖気漂う原色怪奇曼陀羅。(Amazonより引用)
「共栄美術倶楽部」に現れた「幽霊男」は、何とも不気味な風貌の男である。滑るような歩き方や、三本しか歯のない口も相まって、見る者を怯えさせる。この異相の男(佐川幽霊男)は、実は真犯人とは別の変装した人物であった。真犯人はこの「幽霊男」を利用し、乙女の血を求める連続殺人を起こしてしまうのである。真の正体は、吸血嗜好を持つ画家・津村一彦であろうか。さらに事件の裏には共犯までいるという。小指のない男、蜘蛛の入った容器、生き人形など、怪奇要素が多岐にわたる。
しかし、怪奇趣味の中にもきちんと本格ミステリの要素は存在する。蝋人形を運び込む手口や、都築貞子を殺す際のアリバイ工作などである。探偵の目の前で人形を運ぶ手法は大胆としか言いようがない。
私が『幽霊男』を読みたかったのは、この犯人が「横溝クズ選手権」にてランクインしていたからである。ちなみに第一回で6位であったという。(なお、この選手権の第一位は『悪魔が来りて笛を吹く』の新宮利彦であり、なんと3冠を飾っている。)地元の図書館には『幽霊男』が無かったため諦めていたが、今回京都市の図書館に立ち寄った際、偶然見つけてすぐさま借り入れた次第である。
なるほど、クズ選手権ランクインも納得の悪人であった。自分の欲望のために四名もの人間を殺害しておきながら、逮捕されると「私ではない」とごねる姿は甚だ見苦しい。自分は安全圏にいるのが分かって好き放題する態度は、わがままな子供のようである。彼の欲望のために殺された女性が哀れである。頭脳明晰で行動力があることが、さらに質を悪くしている。マダムが救われたのがせめてもの救いである。
真犯人を好き放題させた最初の「幽霊男」の犯行動機は、ディクスン・カーの『帽子収集狂事件』を思い出した。承認欲求は時として大事件の引き金となる。この辺りは今の時代にこそ胸に留めておくべきかもしれない。
金田一探偵は、この妖気漂う怪奇な事件の中で、右往左往しながらも、真犯人の歪んだ欲望が引き起こした猟奇的な一連の犯罪を鮮やかに解決してみせた。怪奇でエログロな雰囲気が際立っており、夜中に一人で読むと背筋がぞわぞわするであろう。ところどころで辻褄が合わないのではないかと思う点もあるが、江戸川乱歩の作品群が好みの読者であれば楽しめる一冊である。





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最終更新日  2025年12月05日 15時00分40秒
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