約束さ永遠のミステリ~ 妄想と考察と日常の闇鍋

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2025年12月16日
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テーマ: 読書感想文(764)
カテゴリ: 読書感想
今回感想を記すのは、飛鳥部勝則の**『黒と愛』**である。
奇妙に傾く狂気の城、奇傾城――血と内臓と腐肉が主題の絵画が集う一室に幽霊が出没する噂がたち、「探偵」亜久は心霊特番に協力して城を訪れる。遅れて「霊能リポーター」役の女子高生、全身黒服の少女・黒が現れ、亜久にそっと囁いた。「あなたは、鋏が好きですか」……やがて密室状況で、黒と親しい男がくだんの部屋で首を切断された。これは幽霊の凶行か? 呪わしく美しい純愛(変愛)本格ミステリ(Amazonより引用)
心霊番組の撮影のため「奇傾城」を訪れた撮影クルー一行。友人の崔川に頼まれて撮影に同行することになった亜久直人は、不思議な魅力を持つ少女、示門黒に出会う。怪しげな城主の北条夏夫と、その従者である渕沼カネに出迎えられ、「奇傾城」の中に入るが、そこは外見だけでなく中身すら歪んだ異形の城であった。復員兵の幽霊が出ると噂のある部屋「絵画の間」にプロデューサーの蒲生が泊まることになる。
亜久は放送作家の桜井康彦と「ブランコの間」を体験する。部屋が一回転するという仕掛けに驚いていると、崔川が蒲生の様子がおかしいと言い出した。内側から鍵が掛けられ、何度呼び掛けても返事がない。仕方なくカネがチェーンソーでドアを壊すと、中には首を斬られた蒲生の死体と小刀が転がっていた。蒲生の身体は椅子に縛り付けられており、自殺とは思えない。どうやって密室の中で蒲生を殺したのか、犯人は復員兵の幽霊なのか。探偵として亜久は謎を解き、桜井康彦が犯人だと指摘する。


人と獣を掛け合わせた奇形のクリーチャーが出てくるが、密室の謎や犯人についてはミステリーの要素が強い。ブランコの仕掛けを使った密室トリックはなかなか斬新だ。首を切断した動機は幽霊を否定したいというものだったが、これはいまいち分からなかった。幽霊を否定したいなら、他に方法がありそうなものである。人物を勘違いさせる叙述トリックは驚かされたが、実は犯人に直接繋がるものではない。黒を中心とした人間関係は大事な要素であるし、動機に大きく関わってはくるのだが、涼子が男であろうと女であろうと事件は起こっていただろう。
登場人物たちは皆、示門黒に魅了されていくのだが、この辺りもいまいち共感できなかった。容姿はものすごい美少女らしいし、常識を外れているからこその退廃的な魅力はあるだろうが、あまりにぶっ飛びすぎている。ロープを舐めたり死体を隠し持ったりは流石にちょっと……と思ってしまった。というか、後者は完全に犯罪である。しかもこのキャラクターは作ってた節もあるらしい。中二病をものすごく重くしたみたいなもんだろうか。ある種の防衛反応だと思うので黒だけが悪い訳ではないだろうが、周りももうちょっと、注意するなりカウンセリング勧めるなりしたれよと思ってしまった。
とはいえ私が一番注目して楽しみにしていた部分はそこではない。最も楽しみにしていたのは杉さんこと杉崎廉の大暴れである。冒頭の回想は杉崎のものであった。死んだ少女のかたき討ちのため、彼は「奇傾城」に乗り込む。爆弾で地下を破壊し、怪物たちを葬っていく。これがとてつもなく恰好いい。蹴りで怪人の首を吹き飛ばし、手刀でその胸を貫く。圧倒的な強さは戦場で培った技術と強い信念によるものか。同作者の『ラミア虐殺』の時よりも強くなっている気がする。杉崎の内心はあまり描写されていない。でも何となくわかる気もする。上手く言語化できないのだが、同情や共感、それよりももっとあやふやな何かが彼の背を押したのではないだろうか。
この話はあちこちに仮面ライダーのパロディが差し込まれている。緑川ルリ子は初代仮面ライダーのヒロインだし、玉木純子はV3のヒロイン珠純子からだろう。高校教師に本郷がいるし、小野寺正太郎は石ノ森章太郎の本名と一字違いだ。杉崎に倒された八人の怪人たちも同モチーフが仮面ライダーに登場している。(仮面ライダーの怪人モチーフは多いので被らない方がおかしいかもしれないが)以下は同モチーフの怪人たちだ。
カニ怪人:カニバブラー
トカゲ怪人(渕沼カネ):トカゲロン(怪人たちを引き連れて出てくるあたりも同じ)
ジャガーマン、蜘蛛男はそのまま同名の怪人
大コウモリ:蝙蝠男
蛾人間:ドクガンダー
アルマジロ人:アルマジロン
サイ怪人:サイギャング
他にも三葉虫の怪人やサボテンの怪人も仮面ライダーにいるので、お好きな方は照らし合わせてみるのも楽しいかもしれない。
『黒と愛』は逆転の物語だと思う。黒と白、愛と殺意、生と死、男と女、人と怪物など対となる要素が反転していく。まるでブランコの部屋が回転するようだ。不思議で退廃的な雰囲気に酔う人もいるかもしれないが、好きな人は凄く好きな作品になるだろう。恋愛小説ではないので、紹介文で勘違いせぬようにだけご注意を。
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最終更新日  2025年12月16日 14時19分22秒
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