I xxxx You.(最終話)






間もなく、ノックの音がして、ドアが小さく開いた。

「・・薫?」
「ん・・・起きてる」

遠慮がちに入って来た椎南が、さっき迄母さんが座ってた、ベッド脇にある椅子に腰を下ろす。

「・・少しは楽になったか?」
「ん・・まだ暑いけど」
「・・・御免な」

ちょっとの沈黙の後、俺の髪を撫でながら椎南が小声で言った。

「昨日・・お前ずっと外にいただろ」
「・・・・・」
「判ってたんだ・・でも、開けられなかった。色々考えてて・・泣かしちまったし・・一緒にも、いてやれなかったし・・あんなに、いて欲しいって言ってたのにな、お前」

優しい仕草でゆっくりと俺の髪、撫でてくれてる椎南に凄く安心する。
ずっと感じてた寂しさは何処かに消えた。

「俺達さ。付き合い始めて1年、だよな。これ迄にも、薫の事抱きたい、って思った事、何度もあった。付き合い始める前にも。本当に、手が出そうになった事もあったんだ。俺が、こんなに辛いの何で解んねーんだよ、って」
「・・・・・」
「でも、薫に受け止めてもらってからずっと、そんなのよりも、薫の事ちゃんと大事にしたい、って思って来た。無理矢理して、泣かれる方がキツいからな。昨日ずっと考えてて改めて判った。昨日・・悪かったよ。御免な・・薫?」
「・・え?」
「何で、泣いてんだよ?」

全然気が付かなかったけど、涙が零れてたみたいだ。
泣くなよ、って椎南が拭ってくれる。

「辛い?もう休んだ方がい・・」
「ううん、平気。一緒に、いて?」

立ち上がりかけた椎南を制す。俺の頬に触れてる椎南の手を、きゅ、と握った。

「椎南に、側にいて欲しいんだ。俺を、1人にしないで?椎南の、側にいたい。いてもいいでしょ?」
「薫・・・」
「凄く・・凄く、好き。これ以上誰かを好きになるなんて、不可能なくらい、椎南が、好き。お願い、だから、俺を置いてかないで?」
「・・1人になんてさせねーよ。ずっと、側にいるから。今は早くよくなれよ」


寝苦しくて、うとうとしてもすぐに目が醒めてしまう事を繰り返したけど、椎南が前と同じようにすぐ側にいてくれるから・・・椎南、って呼ぶと、俺の手をきゅ、と握ってくれるから、その度に安心して目を瞑った。

後から母さんに聞いたんだけど、何度か椎南に、もう休みなさい、って言ったのに、頑として言う事聞かなかったんだって。朝方様子を見にきたら、俺が寝てるベッドに突っ伏して寝ちゃってたらしい。椎南に毛布を掛けて、そのままにしておいたのよ、って呆れたみたいに言ってた。

でも、俺が覚えてるのは、夢現で何度も聞いた、側にいるから、っていう言葉と、ずっと握っててくれた椎南の手の感触。
俺が寝込んでる間中、学校に行ってる時間以外は、殆ど俺の所にいてくれたんだ。


俺、椎南の事は、そういう事したい「好き」だけど・・まだ、ちょっと怖い。
でも、いつかそういう事出来たらいいな、って思ってるんだ。


完

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