穏やかな爆弾

穏やかな爆弾

PR

×

Comments

富山県の子@ Re:【声】 こわくて・こわくて(09/17) 富山弁でこわくてこわくて‥は、かたくてか…
ターコ@ Re:マシュマロ戦争 マシュマロ…危ない兵器ですね(>_<) …
ターコ@ Re:はまる男 はまりましたか…(笑)男の人は、たまにある…
ターコ@ Re:【奮】 民間伝承 まぐろ泥棒さん スイカ…私も小さいころ信…
正男@ 久しぶりにキタ━━━━ヽ(゚∀゚ )ノ━━━━!!!! ㄲㄲㄲ

Archives

Oct , 2026
Sep , 2026
Aug , 2026
Jul , 2026
Jun , 2026
Mar 9, 2003
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
しとしとと降り続く雨は、先に季節を告げた一陣の風を

空は、憎らしいほどの分厚い雲を湛え
時折り激しい勢いで、足元に転がる僕らを責め続けています。

頭の先から足の先までを、満遍なく侵食された僕は
雨からも、そして夕刊を配るという仕事からも
逃げるようにして、タバコ屋の軒先に駆け込みました。

既に、撥水加工なんか削げ落ちてしまった
年代モノのカッパでは、張り付くように降りしきる雨には無力。

身体を振って促してやると
僕は一時、現実世界から遊離する為に
湿気た煙草に火を点けるのです。

たゆたう紫煙の先には、僕の決めた休憩場所。

バス停が目と鼻の先にあるそこは、退屈な夕暮れの一時でも
風景として、けして色褪せません。
常に流れていく人の波が、緩やかに流れていく煙のフィルターに阻まれながらも
止め処もない時間の流れを認識させてくれます。

僕はそんな流れを目で追いながら
紫煙を共に、疲労の色を吐き出していました。


いつからでしょう・・。





もともと、あまり赤の他人に興味がない僕は
「趣味・人間観察」なんてのとは、甚だ縁遠い人間です。
何をするわけでもない時間を過ごす時は
何をするわけでもない。
風景となる人々に、意識を向けることなんて余りなかったはずなのですが


(もちろん、この時はそんなこと考えてたわけではないのですけど)


雨は、依然変わる事なく・・世界を削り落としていきます。

冷え切った指先に携えた煙草も
徐々にその天命を全うしようとしています。

緩やかに流れていく時間の河。
絶え間なく流れていく人の河。

そんな光景を漠然と眺めていた僕は、次の瞬間。
視界に入った一人の男性の姿に、ハッと気付かされてしまいました。

何処となく、あどけなさの残る輪郭。

線の細い華奢なシルエットに掛かる、薄氷を踏むような危なげな雰囲気。

その男性の横顔に、似たものを僕は知っています。


そう・・。


かって知ったるその面影は・・



幾ら望んでも、絶対に会うことの出来ない友人のそれでした。



三年前に、この世界から消えてしまった僕の最も大切だった親友。


「あ・・僕は、彼を捜していたんだ・・。」

それに気付いた時・・。
僕は、自分の中から溢れ出る感情を止める術を持ちませんでした。

堰を切ったように流れる涙は、今だ乾かぬ雨の雫と交じり合い
冷え切った頬をデタラメな温度で濡らしていきます。
自分の事で泣くのは嫌だと、心に決め
彼がいなくなった夜ですら流さなかったの涙。


この所の、心の空隙と相俟って
僕はそれを、どうしても止める事が出来ませんでした。


そこから先・・。

案の定、僕は使い物になりませんでした。

仕事がまだ半分も残っているても、面影の呪縛は僕の心を囚えて放しません。
滞る思考と比例するように、重く圧し掛かる彼の残像。
多分・・この時の僕はとんでもなく酷い顔をしていたと思います。

憎らしいほどの分厚い雲から、零れ落ちる冷たい雨が
僕の顔を容赦なく洗ってくれ

・・それだけが僕の救いでした。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Mar 9, 2003 10:26:31 PM
コメント(3) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: