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Jan 22, 2008
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カテゴリ: 本

この本は先の小説中で活躍した、ルポライター前畑滋子が主人公ですので、一応続編とも思える一冊です。

手にとると、上下合わせて800ページにも及ぶ長さ、宮部作品はどの作品についても言える事ですが、長くてしつこい、いえ失礼!これも表現、描写が丁寧ゆえでことです。
ディールの小さなところからコツコツと積み上げて書き続けていくのが宮部流、それこそが宮部ワールドなのですから。

しかし読み始めると読者である自分も、前畑滋子同様に、「知りたい」欲求の大きさに、読み続けることが止められず、数日で読み終えてしまったのです。

小説家鈴木光司による小説にも「楽園」と言うタイトルの本があります。
楽園のイメージって???、この作品で描かれる楽園とは?どのようなものなのでしょうか。


9年前の事件(小説・模倣犯に描かれた事件)、のショックから立ち直れずにいた前畑滋子のもとに、萩谷敏子という女性が訪ねてきました。
その依頼は、事故で死んだ12才のひとり息子が、実は予知能力を持つ超能力者だったかも知れないという・・・・現実離れをしたお話です。

彼は16年前に殺された少女の遺体が発見される前に、自分が描いた「絵」で予言したというのです。
また、滋子の遭遇した9年前の事件を描いた絵も、そこに描かれたことは発表されていませんので何かからヒントを得て描いたものではないと、滋子には理解できた絵だったのです。


依頼者敏子の亡き息子への強い思いを感じた滋子は、調査に乗り出します。
母と子のひっそりとした貧しい暮らしから、突然奪われてしまった子供に対するの敏子の思いの深さ、子供に恵まれない滋子にも充分過ぎるくらいに想像できるものでした。
でも、それだけではない。
「荻谷等はなぜそのような事を知ることができたのか」そして、「16年前に殺された少女=土井崎茜は、なぜ自分の両親に殺されなければならなかったのか」。
真相を知りたいとの強い欲求により行動する滋子は、仕事の合間に丹念にひとつひとつの問題を少しづつ調査していきます。

他の家庭に比べてもひっそりと、慎ましく暮らしてきた夫婦が、なぜ自分の娘を殺して自宅の床下に埋めなければならないまでに追い詰められてしまっていたのか。
中学生とはいえ、どうしようもない人間であると思えてしまうのが、わが子であったなら・・・それは程度の差はあれ、ごく普通のどの家族にも起こる可能性のある問題だと思わざるを得ません。
子育てとは?日々どう子どもに接しどのような愛情を注いで育てていけば、それが正しいといえるものなのか・・・
ひとりの人間形成の途中で繰り返される、親の悩み苦しみは、子育ての経験者であったなら決して他人事ではないはずです。


その過去の殺害をを調べていた滋子は、夫妻がその後、何者かによって脅迫されていたのではないか?と推理します。
茜と当時付き合っていたシゲと呼ばれる男の存在が浮かび上がってきたのです。

現実の社会でも起こりえる事件、細かい描写によって生み出される登場人物の存在感、リアリティー。
下巻では、新たな事件も加わり、さらにスリリングな展開があります。
虐待、弱者への恐喝、性犯罪、暴行、殺人。これでもかと出てくる犯罪の数々は恐ろしいほどです。

登場人物ひとりひとりを細かく描写し、その暗部と本音を描き出していきます。
親子の愛情というだけでは済まされない秘められたそれぞれの思いと葛藤。
事件に関わる人々の心情が描かれていきます。

中でも、萩谷敏子の穏やかで、周りの人に対する愛情の深さは、殺伐としてしまう作品の中でひとすじの光明となっていると言えます。
人々はそれぞれに楽園を見出します。しかしそこには誰かを排除しなければ、切り捨てなければ得られない、楽園もあるのです。

何でもない日常の中にあって、失ってみてはじめて見えてくる幸せ。
人が働いて、平凡な毎日を誠実に送る・・・という小さな幸せ。

ラストに、等を失ってひとりぼっちでまた平凡な日常に戻っていく敏子にも、小さな幸せが。
敏子が生涯に一度だけ望み、しかし叶わなかった夢。
夫と子供のいる平凡な家庭。
等の兄である義夫が自らも捜して、訪ねてきてくれたのです。
重い内容のこの作品、ラストシーンには救いがちゃんと用意されていたのです。





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Last updated  Jan 22, 2008 05:18:24 PM
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