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Mar 11, 2009
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カテゴリ: DVD・映画

その後も「ミステック・リバー」「硫黄島からの手紙」と撮る作品はどれもが傑作ばかり、監督として優れた仕事をし続けているクリント・イーストウッド。


今回の作品は、歴史に埋もれていた実話を映画化した 「チェンジリング」 です。

今から80年前の1928年。
シングルマザーのクリスティン=アンジェリーナ・ジョリーは、ロサンゼルス郊外の町で9歳の息子ウォルターとふたりで暮らしていた。

ある日、同僚に泣きつかれて断り切れずに休日を返上して仕事場へと向かう。
暗くなって帰宅すると、家でひとり留守番をしているはずの息子の姿がどこにもなかった。


その5ヵ月後警察から息子が見つかったとの連絡が。


ここまではテレビCMで流れている・・・映画の本題が始まるのは、実はここから・・・・

「チェンジリング」とは「取り替えられた子ども」の意味をもつと言う。
この映画はお母さんが我が子探しをする映画、でもただそれだけで終わらないところは、さすがはイーストウッド監督によるものかと。

知らない少年を警察からに押し付けられたクリステインは否定をするが、警察は勿論、警察が差し向けた医師からもその態度を批判されてしまい次第に孤立していく。


警察の無能ぶりを伝えるマスコミと、約半年経っても少年を見つけることのできないロサンゼルス市警への反発を恐れた警察が、適当な少年をウォルターの身代わりとした。
この事件は、当時のロサンゼルス市警察の恐るべき体質が背後に隠されていたのである。

少年自身は自分はウォルターだと言い張り(実は大変な嘘つき少年であった)、クリスティンが一人暮らしをしている間に子供が邪魔になったからそのようなことを言っているのでは?と疑惑の目を向けられる始末。
しかし彼女の願いはただひとつ、失踪した息子を探す事であった。

クリスティンの不屈の戦いはここから始まる。

しかし対するのは、腐敗しきった巨大な警察組織。
権力に立ち向かうには、たったひとりの女性の身では手ごわ過ぎた。


そこは絶対的な支配と暴力、精神と身体を蝕む薬が全ての、刑務所よりも恐ろしいところ。
入ったら最後、逃れる術はないと思われた。
そんな環境の中で事あるごとに今の事実を認めるようサインを強制されるが、それに対して毅然と「ノー」を言う、何事にもひるむことのないクリステンの態度。


彼女の身を案じた市民活動家ブリーグレブ牧師=ジョン・マルコビッチの助けで病院からは出るが、そこにまっていたのはウォルターはすでに殺されていたのでは?という報道であった。


忠実に再現された80年前のロスの街並み、当時の車や路面電車、ラジオといった「時代」を意識させるものの数々。



イーストウッドの演出に導かれたA・ジョリーの名演も素晴らしいです。
全身で表す息子への愛情の強さ。実話の持つ重みをしっかりと受けとめて演じています。

アンジーとJ・マルコビッチ以外に、あまりメジャーな俳優を使っていないのは、セットにお金がかかってしまった為でしょうか。
しかし返ってそれによって、私はストーリーに感情移入できたように思えました。
ここで描かれた信じられないようなエピソードのほとんどが、脚色ではなく事実だったのですから。


警察に逆らい邪魔をするもの、特に弱い立場の女性、身寄りのないものなどを精神病院送りにするという当時のロサンゼルス市警察の腐敗した体質が強く描かれている。
病院から出たクリステインの戦い、それは警察組織と一人の人間との戦いである。

人は自分達の面子や保身のためであればここまで非情になれるという事。
自らの不利となるものは、闇から闇へと葬ってしまおうとする。
振り返ってみればわが国においてもそれはいくらでもあり得る事かと・・・・

また、誰もが持つ面倒な事には巻き込まれたくはないという気持ちや無責任さも描かれていると思います。

犯人のゴードン・ノースコットが死刑の前後に錯乱する様子、自分の犯したことは忘れ去ってしまったかのようで、人間の身勝手さがそこに見えた。
それに対して、事件で逃げきった子供が数年後に見つかって警察に調べられているシーン、被害者であるのに関わらず自分が名乗り出なかったばかりにその後も犠牲者が出たと自分を責める少年。


これら全てを言い表すものは、ありきたりな言葉ですけれど、人間のもつ「善」と「悪」。
心の中の「光」と「闇」。
人の持つ「強さ」と「弱さ」。

彼女の「ホープ=希望を持ち続ける」と言う台詞には、まだ生きているかも知れない息子を何とかして助け出したいという一途な気持ちが現れている。
人が何と言おうと、自分だけの心の中では「信じよう」という事。


物静かに流れるテーマ曲、しかし訴えるものは重く、深く、大きい。


他国の人権問題へまで干渉をしてくる国・アメリカ。
そのアメリカ国内でさえ、女性には何もできないだろうと思われていた時代であり、その頃のの女性の立場は目を覆うほどに低いものであった事には驚きました。


過去の上映作品にも数々あった猟奇殺人事件もの。
異常な誘拐殺人者と検察官との対決を描いた「羊たちの沈黙」。
カーティス・ハンソン監督の「LAコンフィデンシャル」に描かれたのは50年代のロス市警の腐敗ぶりでした。
「デッドマン・ウォーキング」でテム・ロビンスが監督して私達に突きつけた、死刑制度の是非など・・・・ここから連想された映画が幾つかあります。

ミステリー仕立てに始まっての2時間を越える長編。
それに関わらず、一気に見終わってしまった気分です。
共に涙する事はなかったけれど、心に残ったものは深く大きかったです。圧倒されました。

アンジーの迫真の演技、見るものがぐいぐいと引き込まれる飽きさせない展開、ミステリアスなラストへと、C・イーストウッドの演出はさすがだと思います。

2~3本の映画を続けて見てしまった、そんな気分になる映画です。



※本映画の開始前に、イーストウッド監督・主演作「グラン・トリノ」の予告編が。
「チェンジング」と同じ年に公開されたこちらの作品。
現代のアメリカ社会の変化を見据えたテーマを持つ映画として、本国では大ヒットを記録したものだとの事。
こちらも是非見たいものですね。





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Last updated  Mar 11, 2009 05:26:51 PM
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