2006.02.02
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カテゴリ: 狂気


~ 第一章 ~

第三者の視点




彼は今までずっと生きるのでは無く、耐える事にその人生を費やしてきた

日の当たる世界にはそもそもから無縁で、

常に暗く寂しい場所に身を置いてきた

彼自身はそういった事は当たり前の事として過ごしてきた

彼が生まれた場所

その場所が既に、暗くて生暖かい。

彼は沢山の兄弟とともにこの世に生まれ

他の兄弟がそうであるように彼も両親を知らずに育った

他の兄弟の辿った運命や末路を見れば

恐らくは、彼の両親もきっと

まさしく叩き潰されるように、そして

その死は誰にも顧みられる事無く迎えたに違いなかった

そんな環境で育った彼は

人一倍に忍耐強くて用心深く、全てを受け入れ、また諦めていた

常に誰からも注目されないように

日の光にさえも怯えながら過ごしてきた

しかし、その日だけは違った

きっと、ほんの少しの気のゆるみ

若しくは、今までの経験による慢心

彼が気づいた時には

全てが手遅れだった

彼の体は突然押し寄せる大量の水に押し流され

一瞬のうちに暗く、深い穴の淵まで押し流された

生まれて初めて彼はもがいた

必死に。

なんとか穴の淵から遠ざかり

身を確保しようと手足をばたつかせながら、もがいた

彼の体の周りに溢れかえる水

そして、降り掛かってくる粘性の高い液体

その液体は彼の口を塞ぎ

呼吸を妨げ

最後の抵抗を封印するには十分すぎるほどに彼を痛めつけた

遠のき始めた彼の意識

遠のいていく光の有る世界

彼の体は、暗い深淵に。





~ 第二章 ~

彼の視点




今までずっと長い間、人目につかないように

目立たないように生きてきた

他人の気配から逃げ

常に陰を伝いながら歩いてきた

両親は見た事もないし

話も聞いた事が無い。

幼い頃には一緒に居た兄弟達も

今では誰一人と僕の周りには居ない

何処かに移り住んだか、

何処かで野垂れ死んでると思う。

今日も同じように僕は暗い場所から湿った場所を渡り歩く

こんな生き方をしていても飲む物や食べる物は必要だった。

取り敢えずは何かを飲もうと台所に向かった

台所に行けば水は沢山有る

それにきっと何か食べる物もあるはず。

今日も、運良く飲み物と食べ物がある!

何時もありつけるとは限らないから

夢中でそのすべてにむしゃぶりつく

何処か遠くの方で物音がする

けど、今はそれどころじゃなかった

こんなに沢山の食べ物にありつける事は

まず、滅多には無い



いきなり

世界が明るくなった

いきなり何かがもの凄い勢いでぶつかってきた

...そして一気に、僕を暗い穴へと誘うように...

考える間もなく僕はもがき続ける

これは、大量の水

僕の体は水に押し流されてる!

それでも、もがき続ける

後ろで大きな口を開けて待ってるあの穴にだけは近寄りたくない

必死で前に進もうとする




何かが体に降り掛かってきた

僕の体にまとわりつき、体の自由が利かなくなる

呼吸も出来なくなってきた

体がどんどん動かなくなる...







~ 第三章 ~

僕の視点




一瞬だけびっくりした

でも、最近は僕も大分逞しくなったと思う

迷いもなく蛇口をひねる

一気に排水溝まで押し流されるゴキ

必死でもがくゴキ

段々這い上がってくるゴキ

生命力の強いゴキ

気持ち悪いゴキ

うへっ

やっぱ怖い!

洗剤

かけてみた

トロトロトロって

一気に弱るゴキ

一気に排水溝まで戻されるゴキ

遂には暗い穴の底に滑り落ちて行くゴキ

後は、スイッチオン!

グイーーーーン!!

排水溝の中からは泡がモコモコ出てくる

洗剤を大量に流したから

中で回転するカッターに撹拌されてるんだね

粉々になってるんだろうねゴキ

ええ、僕のアパートの流しには

こんな機能がついてます

生ゴミとかを粉砕する機械が排水溝の中に有ります

普段は環境に良くなさそうなので使いませんが

今日はね

ゴキだしね。

























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Last updated  2006.02.02 12:51:55 コメント(12) | コメントを書く


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