2004年11月29日
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カテゴリ: エッセイ
 12歳の我が家の息子は、海外の通販番組が好きらしい。
なにか新しい商品の放送見るとてぐすね引いて待っていて、
「ママ、すごくいい物を宣伝してたんだよ、今日。あれ買いなよ!」
と、勧めてくる。

 同じ内容の番組を、何回もやっているせいか、
息子は、大体の商品の売り口上も覚えていて、
そっくり通販番組を再現しては勧めてくる。
或る日、一緒に通販番組を見ていると、
また例の如く、息子が番組と一緒になって商品を売りつけて来た。

番組よりも先に、商品の特徴やらなんやらを私に説明してくる。

そして最後に「ね?すごいでしょ?買いなよママ!」と言って、
タレントさながらの笑顔でコッチを見るのだ。
その日は、なんだかんだ言い逃れをしてその場を凌いだのだが、
またあの勢いで勧められたのではかなわない。

 数日後、また通販番組が始まった。息子は、また例の如く売りつけようと、
チラチラとコッチを見ている…。
さて商品の説明が始まり、
「これはこんな風に使えるんです、すごいでしょ」
と司会者が観客に同意を求める。
すると、私は間髪入れずに、その商品の宣伝文句を、

つまり、「○○な時にも便利!」といわれれば、
「○○な事なんか起こらないし、起きても今ある△△があるから、
新しい物は買わなくてもいい」という具合である。

 最初は、「ママ変!」なんて言ってた子供達も、
私がことごとく否定していく時の理由のつけ方が面白い!と言い出し、

ゲラゲラ笑い出して、しまいには「ママには負けたよ?!」と言った。

するとその時、電話が掛かってきた。
なにやら、子供の教材を買いませんか?という宣伝の電話だった。
私が、さっきの通販番組の売り口上を否定するような感じで説明して、
「要りません」と言って電話を切ると
「ママに、物を売ろうなんて、百年早いね」と娘が言った。

 しかし私は過去に、この我が家の「売る男」から、
まんまと物を買わされたことがある。

 もう8年くらい前の話だ。
当時娘は幼稚園に通っていて、息子は3歳くらいだった。
その日は娘の友達が遊びに来て、娘とリカちゃん人形で遊んでいた。
その横で、息子は一人でウルトラマンと怪獣の人形を闘わせて遊んでいたのだが・・・。

「ビィ~、ギャンギャン、ドッァカーン!!」と
ウルトラマンと怪獣を闘わせている息子に向って、
いきなりリカちゃんのお母さん達(娘と友達)が抗議を始めた。

「ちょっと、ウルトラマン!赤ちゃんが寝てるのよ、
もっと静かに怪獣を倒しなさいよ!正義の味方でしょ!!」
いきなりの抗議にかなり驚いた様子の息子だったが、
「正義の味方」といわれれば、
赤ん坊の昼寝の邪魔をするわけにもいかないと思ったのか?
ちょっと静かになったな~、と思ったら。
正義の味方のウルトラマンの息子はささやくような小さな声で
「ヤァー!タァー!」といいながら、静かに怪獣を倒していた。
(う~~ん、ウルトラマンよりリカちゃんのほうが強いのか~)

 しばらくすると、なにやら和やかな雰囲気の会話が聞こえてくる。
そっと覗いてみると?
ウルトラマンは、リカちゃんのうちにお茶に招待されていた。

 なんでも、赤ちゃんのお昼寝を邪魔することなく、
無事に怪獣を倒したご褒美らしい。ま、一件落着でよかった。

 と思っていると。
今度は、息子が娘達の遣いとして、私のところにやってきた。

「なに?なにか御用ですか?」と聞くと。
「ママに買って欲しいものがあるんだけど」と息子。
それでも、なにか気が進まないのか?
息子はもじもじしながら一言言うたびに、
扉の向こうからこっちを覗いている姉に助けを求めるような視線を送る。

陰で息子を操る娘は、息子がチラッと見るたびに、
ホラホラというようにして、息子に「行け、行け」と合図を送る。

 仕方ないといった表情の息子は
「だから、買って欲しいものがあるの」とまた私に向って言った。

「なに?お菓子?ジュース?」と聞くと、
息子は首を大きく振って、また無理無理・・と、いった様子で娘を見る。

しかし娘は、あっちあっちと私の方を指差している。
「あのさ~、りんご買って」と息子。
「りんご~?買ってあるけど剥く?」と聞くと。
「ちがうの。このりんご買って欲しいの」と、
おもちゃのりんごを差し出して来た。
娘のおままごとのりんごである。

「え~、でも本物あるしな~、今日はいいや」と断ると、
息子はそそくさと娘のところに戻って行った。

 それから数分後。また息子が私のところに派遣されてきた。
姉になにやら入れ知恵をされてきたらしい。

さっきと違って、ちょっと自信をつけた様子で話始めた。
「ねえ、このりんごやっぱり買ってよ、美味しいよ~」
「だって、もうあるんだもん、いらないよ」と私が言うと。
「このりんごは、その辺にあるりんごと違うんだよ!お買い得だよ」と勧めてくる。
「ふ~ん、どこが違うの?」と聞くと
「これはね、毒りんごなんだよ~」と息子。
いかにも美味しいよぉ~と誘うような口調で
「毒りんごなんだよぉ~」と笑顔でいう息子の姿に、
噴出しそうになるのをこらえて
「え~、毒りんごなんでしょ?じゃあもっと、買わないよ~」と私が言うと。

「あのね、ただの毒りんごじゃないんだよ!
あの、白雪姫も食べた毒りんごなんだよ~。お買い得だよ~」

「・・・・。」もうだめだ、お腹の皮がよじれそうだった。

どこでこんな売り口上を覚えてきたのかしらないけど、
「白雪姫も食べた毒りんごだよ」と真面目に売りつけてくる息子の姿に、
私はやられてしまったのだ。

「わかった、・・・白雪姫の毒りんごください・・。」
私は、まんまと毒りんごを売りつけられ、
隣の部屋からは子ども達の「やったー!」という声が聞こえてきた。
 もしかしたらあの日から、息子は売る男になって、
私は買わない女になったのかもしれないと思う。

でも実は、子供が見ていないところでは、
ママは結構衝動買いをしているのだ、ということを、
子供達は知らないのだった。





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最終更新日  2004年11月29日 13時03分24秒
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