2004年12月24日
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カテゴリ: エッセイ


もう何年も前のこと

私は、さまようようにしてある場所にたどりついた

それまで、必死になって頑張ってきたことが

すべて目の前でガラガラと崩れるのを見て

逃げ出してしまったのだ「もうだめだ」って思って



そうして、たどり着いたのは

ちいさなアパートだった



大事なものだけは手放さないでいられた事に

ほっと安堵をしていたのも事実だった



右を見ても左を見ても、

不安という文字が目の前にぶらぶらとぶら下がって

ちっとも前が見えなかった



その小さなアパートに住みはじめて

しばらく経ったある日のこと・・・

仕事を終えて、子ども達と一緒に帰宅をした私たちの前に

いきなり、ステンドグラスが現れた

夕闇が沈殿するように積もっていく路地裏で

そのステンドグラスは、私たちを導くように





どのくらいの時間だろう

親子3人で呆然とその光に見とれていた

そのうち、冷たい風に頬をなでられて、私ははっと我にかえった


なんで急にステンドグラスが・・・と思ったら

実はそこは、小さな町の教会だった



教会の裏手にあたり、

クリスマスの飾り付けをした窓が

突然ステンドグラスが現れたように見えたのだった



そう、そこに暮らして少し時間が経っていたにも関わらず

私はそこに教会があることも

なにも気づく余裕もなく

ただ淡々と目の前の狭い場所だけを見て

暮らしていたのだ



その日から、仕事と保育園のお迎えと買い物で

疲れきって重いはずの足取りも

そのステンドグラスの光によって

浄化されてふっと軽くなるような気持になった



それでも、なかなか気持に余裕もなく

時間も勇気もなかった私は

その教会を訪れることが、ずっと出来ずにいた



そんなクリスマスを目前に控えたある日のこと

娘が、一枚のチラシを手にして帰ってきた

その教会でのクリスマスパーティのお知らせだった




「どなたでもおいでください」と書かれた文字に

私は、急に泣きたくなるような衝動を覚えた

それほど、私は

ココにいていいのだろうか?という不安な毎日を

知らず知らずに送って来ていたのだろう




娘は、チラシを通行手形のように持って

これがあるから教会に行くと言い出した

とりあえず、行ってもいいかを聞いてこよう

そういって、子ども達の手を引いて

私はその教会の門をくぐった




突然の訪問者にも関わらず、

温かく迎えてくれた牧師様ご夫婦に

私は恐縮しながら、クリスマスのイベントに

参加したいと話した





牧師様は、もちろんですよ、いつでもいらしてくださいと

微笑みながらおっしゃってくれた

私はキリスト教徒ではない

ただ、今年は我が家ではやってやれないだろう

クリスマスパーティを

そこで子ども達も参加させてもらって

それでおしまいにしようとしていた




そんな私の思惑なんて、

なんてことないという顔で

キッカケは何でも構わないんですよと

優しくおっしゃってくれたことが

私は恥ずかしくて仕方がなかった





ところが、クリスマスパーティの前日の夜から

息子が急に熱を出した

これではどこにも出られないねと

寂しそうにつぶやく娘

すると突然、息子が布団から起きてきて

ぼく、教会に行きたいと言い出した





熱があるんだから、教会にはいけないよと

説得をしてもガンとして聞こうとしない

教会に行ってもパーティには出られないと

説明しても、息子は行くの一点張りだった




すると・・・

普段なら、「何言ってるんだ!」と

怒鳴って一喝して終わらせてしまう夫が

こんなに言うんだから、顔だけだしてきたら?と言った

この前挨拶に行っているんだから

来られないということを、話しに行ってもいいんじゃないか?

というのだった





私はかなり驚いたが、息子はもう行く気満々

熱で一人で歩けないのに

着替えをしはじめようとしていた




仕方が無い

私は、息子にパジャマの上からコートを着せて

毛布で包んでおんぶをした

そして娘の手を引いて

用意しておいた交換用のプレゼントを持って

教会へと向った





熱があるのにわざわざ出向いて下さってと

感激をして下さった牧師様ご夫婦の顔を見て

ああ、来てよかったと思った




私が不安の海をさまよっていたのは

ここの場所にたどり着くためだったのかもしれないと

そんな風にも思え

素直に神の導きを受け入れることができた




そして、その教会で

初めて、本当のクリスマスに触れることが出来

それまでのお祭り騒ぎのクリスマスに

安易に手をだしてしまうことに

違和感を覚えるようになったのかもしれない

その年から、我が家ではクリスマスツリーを出さなくなった





それから数年の間

私たちは毎週のようにその教会に足を運んでいた

時々行われる子ども会にも

子ども達は必ず出席をしていた




少しづつ、日曜に用事が入ることが多くなり

なかなか顔を出せなくなり

子ども達も、子ども会に行くような年では

なくなってしまい

もう、何年も教会へは行っていない



でも、洗礼をうけたわけでも、なんでもないのに

なにかあると、私は自然と胸に手をあてて

大きなお父様に祈りをささげている

それは、とても自然な行為で

自分であとから気がついたりする

神聖に神に祈りをささげている人達と

私のそれでは、あまりにもレベルが違い

私のそれは、苦しいときの・・・・の域を出ない




それがちょっと後ろめたいのか

なかなか足が運べずにいるもかもしれない




それでも、いつかのあのクリスマスの日は

ずっと私の胸にあって

クリスマスが巡ってくるたびに

まるで昨日のことのように

私の脳裏に浮かんできて

私の心に平穏を与えてくれる





クリスマス・イブの今日

全ての人の上に、平穏が訪れますように






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最終更新日  2004年12月24日 20時52分20秒
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