2005年07月01日
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カテゴリ: エッセイ
昨日、少し熱があったせいか、変わった夢を見た

もうずっと昔、私が学生時代の夢

お昼にお弁当を食べようと思ってあけると・・・

お弁当箱が、ヘラヘラ~~と笑って逃げていく

おいおい逃げるなよ!と慌てて追いかけていく私・・・・

夢の中のことなので、お弁当箱が空中を浮遊しながら逃げることに矛盾も感じず

たいした速度じゃないのに、なんで追いつかないんだろう?

と思ったら目が覚めて朝になっていた



今日は市制記念日で、子ども達の学校はお休み



お弁当作りはしなくてよかった

なのに、なんであんな夢を見たのだろう?



そう考えて、学生時代のことを思い起こしてみる・・・

私の母は、変なお弁当を作る名人だった

その最たるものが、グラタンのお弁当だった

私の中学高校時代のことだから、もうウン十年も前になるが

その頃は、今と違ってプラスチックではなく、アルミのお弁当箱が主流だった

家の母は、なんとそのお弁当箱で朝グラタンを焼いて

お弁当に持たせてくれたのだ

他にも、コンビーフの入ったおにぎりとか、ソーセージの巻き寿司とか

ありとあらゆるへんてこメニューを考案しては、お弁当に入れてくれた





朝から、テンピでグラタンを焼くのだ

まだその当時は、今みたいに電気式便利なレンジなんて物は無かったので、

母は、ガスコンロの上に、
天火 (今ではオーブンとか、レンジに変わったので、売ってないらしい)

を置いて、それで焼いてくれていた。



そして、私が全て支度を終えた頃、

母が台所からお弁当包みに包んだお弁当を持ってきて

いってらっしゃいと送り出してくれた



中身がグラタンであることは、もう起きた頃から承知しているので

その日は、出来るだけお弁当箱を傾けないように注意して登校する

母がグラタンのお弁当を作るのは、木枯らしが身に沁みるようになる季節なので

学校についたらすぐにストーブの上にお弁当箱を置く



ところが、このグラタンのお弁当、適度に温まると例の香ばしい匂いを発する

丁度午前中の一番おなかが空いた頃に、

プ~~ンとその香りが教室に漂いはじめるのだ

もう授業どころの騒ぎではない

みんなソワソワと、「誰のお弁当?」なんてささやきはじめる



そうして迎えた昼休み、私はその臭いに待ちきれない!という感じで

おもむろにグラタンのお弁当の蓋を開けて愕然とした

アルミのお弁当箱いっぱいに、

まるでのっぺらぼうのようなグラタンだけが入っていた


そりゃそうか・・・。お弁当箱ごとテンピでグラタンを焼いているのだ

他のものが入っているわけはないのだ・・・

しかしそれは、あの香ばしい匂いによって私の頭の中に浮かんでいたイメージとは

かなりかけ離れたものだった



一応母なりに工夫をして、お弁当用に偏らないように

ホワイトソースを硬めに仕上げてくれているのだが

普段、ご飯とおかずを半分ずつ入れているスペースに

きっちりグラタンが入っていると。。。。正直飽きる

それでも、朝早くから作ってくれたのだからと

どうにか全てを食べ終えるようにした



その日帰宅すると、母は期待に満ちた顔で「お弁当どうだった?」と尋ねてくる

「グラタン美味しかったよ、ありがとう」と言ってお弁当箱を洗い始めると

母は勝ち誇ったような笑顔を満面に浮かべて

「美味しかったんなら良かった~!

ソースも硬めにしておいたから偏ったりしなかったでしょ?

それでね、お弁当用に味もちょっと濃い目にしてね・・・(うんたらくんたら・・)」

と、いかに自分なりに工夫をしたのかを語っている

確かに美味しかったことは確かなのだが、お弁当は美味しければ何でも良いというわけではない。

しかし、母の様子を見ていると、とても、

「さすがに飽きるから、もうグラタンのお弁当は止めて」といえる雰囲気ではなかった

それは、同じお弁当を持たされた弟も同じだったらしく・・・

私の倍はあろうか??という大きなお弁当箱いっぱいのグラタンを食べた弟は

私の横をすり抜けながら、「おれ、当分グラタンはいいや」と耳元で一言ボソっと言った



しかし、その後もある程度の間隔を置いて、グラタンのお弁当は続いた

朝私が目覚めた時には、もうすでにお弁当箱はレンジの中で焼かれているので

いまさら他のものにしてくれともいえず・・・

かといって、そう何度も授業中にグラタンの臭いを教室にばら撒くわけにも行かず

私は、お弁当を机の中に入れたままで、お昼にはその冷たいままのグラタンを食べた

ある日、グラタンのお弁当の蓋を開けたとき

ところどころ焦げ目のついたのっぺらぼうのグラタンが

私に向って笑ったような気がした

慌てて蓋を閉め、もう一度そろりそろりとふたを開けると、

その瞬間、やっぱりグラタンは、大きな口をあけてヘラヘラと笑っていた・・



今では毎朝私が中学生の子ども達のお弁当を作る身だ

それで、先日子ども達に、お弁当に何を入れて欲しいか?と聞いた時に

このグラタンのお弁当の話をしたのを思い出した。

うちの子供たちも、グラタンは好きだけど、お弁当箱ばこいっぱいに入ってて

それだけなのはイヤだという。そりゃそうだよね~、と私が言って笑ったのだ。

多分、そのことが記憶のどっかに残ってて

あんな、逃げるお弁当箱の夢を見たのかもしれない



お弁当のグラタンが笑ったのを見た日の夜

私は母に、もうお弁当をグラタンにしないで欲しいと話した

学校でお弁当箱が横になってしまって、グラタンが染み出して大変だったと

母に嘘をついて止めてもらったのだ・・・

母は、「そう、大変だったね。それで、ちゃんと食べられた?ごめんね」

とすまないという顔をしてわたしに謝った

私は慌てて、「食べる分までこぼれたわけではないんだ。染み出してしまっただけで」

と、また嘘を重ねてついてしまった。


母が亡くなってから、もう十年以上も経ってしまうのだが、

逃げるお弁当箱の夢は、その時私がついた嘘が

生み出した幻想だったのかもしれない









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最終更新日  2005年07月01日 15時47分43秒
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