Brog Of Ropesu

Brog Of Ropesu

2011年12月03日
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カテゴリ: 些末な日常



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「……以上。一字一句抜けなく現状を報告致します」










「報告ご苦労様。……委細承知致しましたわ。後はこちらで対応しておくから、今しばらく休憩なさいな」















「お言葉ですが隊長。……何と言いますか。違和感を覚えませんか? 要点を絞れていないと言いますか……らしくないと言いますか……」











「あの姉妹が意味の無い会話をすると思いますの? ……恐らく彼女達は盗聴されているのだと考えるのが妥当ですわ。

アーサ・グレイシャスが真っ先にケイトの目を潰した時点で、筆談も出来ない状況……。
ならば、なんでもない御喋りに暗号を紛らわせるしかないでしょう?」









「……では、ドンカスターで何かがあると?」









「いえ、それはフェイクですわ。ホワイトラムとオレンジリキュールのカクテルは別名 ”アガサ・カクテル”
ドンカスターはアガサクリスティーのポアロに於いて、重要な意味を孕む地名……けれど、彼女は会話の中で、アガサ・カクテルを飲むことを拒否していますわ。

その代わりに出てくる料理は……」











「ビッグアップルパイ……ニューヨークですか?!」












「ええ。恐らくはそこに核を導入するつもりなのだと思いますわ。……そして、ギムレットが意味するものは…………推理小説好きの彼女らしいメッセージね」











「そんな……?!彼女は……死ぬつもりなんですか!?」










「それは……本人から直接聞きなさいな。ケイト……もう、長くは無いのでしょう?」











「……いつから気付いていました?」










「ソフィーにバックの許可を出したときから……ですわ」











「最初から……知っていたのですね。

そうですね……私たちは、きっとあのとき一度死んだのでしょう。あの激戦の余波が直撃して、ね。

それならソフィーが私たちの安否を確認しに戻ってきたのも頷けるし、そんなあの子の独断に隊長が許可をすんなりと出したのもしっくり来る。













「本人に直接聞いたワケではありませんので、断定は出来ませんが恐らくは……貴女はいつから?」












「初めは……そう。物忘れが激しくなってきた辺りですね。それどころか、時折、過去と現在の記憶が混在しているときもありました。

確信をしたのは料理をしているときです。軽い眩暈に襲われて指先を切ったのですが、思い切り深く刻み込んだ傷跡からは血がほとんど出ませんでした。

当事者の私たちですら、気付いたのは最近だと言うのに……その怜悧な観察眼と状況把握力は流石と言うべきでしょうか……」













「……貴女達に武器を使わない戦い方を教えたのは……誰だと思っていますの?」






















「……なんで!? 何で逃げないんですか?! 誰だって死ぬのは怖い!意地なんて捨てて逃げたって……俺達の仲間は誰も貴女を責めませんよ?!」












「……ソフィーは立派な最期を遂げたわ。ロザリィだって……今も自身の戦いを必死に続けてるのよ? 一番上の姉である私が逃げたら、さ。かっこつかないじゃない?

それに私の目はもう見えないけれど……アンドレアルを通して脳に送られてくる映像はまだ観れる。
今だってパイロットの忠道君は、私を信じて戦い続けてくれているわ。

……眼を奪われた鳥は翼をもがれる事と同じ。それはどんな猛禽類でも変わらない。

例えこの命が消えようとも、最期までパイロットの眼となるのがオペレーターの使命だから」











兵士「いたぞー!テロリスト……カットレイス=サンダース!国際法に基づき貴様を拿捕する!」












「……さ、そろそろ時間ね。このカットレイス=サンダース、灰色の脳細胞によるラストジャムよ」







カチッ





ドドドド……ッ!










兵士「くっ!爆弾か!崩れる!総員退避!」














「……ば~か。そんな簡単にいかせないわよ。

アンタ達なんかに私たちの体も魂も……髪の毛の一本だって渡してたまるもんですか」








~~~
~~~~





~回想~







「他の誰でも無い。君が欲しい」










「……了解しました。お役に立てられるかは解りませんが……」










「……過小評価し過ぎだな。君が何の気なしにやっている”それ”を一体何人の人間がこなせると思う?

さも当たり前になり過ぎて気付いていないだけで、我々凡人が君の真似をしようと思ったらどれだけの年月と労力が必要になるか考えた事があるか?」








――いつだって虚勢を張って、コンプレックスに押し潰されない様に必死でもがいていた自分。









「私の後釜につけるのは貴女しかいませんの!……私には、貴女が必要ですわ!」







――隊長は……今まで、誰かのオマケでしかなかった私を始めて認めてくれた人。











「君がいなければ、あの局面は突破出来なかっただろう。君が我が隊に居てくれて本当に良かった」








――ううん。彼女だけじゃない。私には自分を認めてくれるたくさんの仲間も出来た。













「……その、俺、気の利いた事は言えませんけど……貴女には笑っていて欲しいんです」








――不器用ながらも私を支えてくれる人も出来た。












「私が戦う理由……ですの?……そうですわね。それは――」










――その理想が輝いていたから憧れた。……だから私は共にあることを描いた。







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「……最後の最期まで……何でそんなに肩肘張って生きようとするんですか?!姉だからって何でこんなときまで強がらなきゃいけないんですか!?
たまには俺達を……俺に寄りかかってくださいよ!支えたいんです!そんなに頼りないですか?!」











「逆よ。頼れるからこそ頼むのよ。アナタじゃなきゃできない。

……それにさ、貴方だって逃げてないじゃない?

ね、理解してくれた? 大丈夫よ。無理なんかしちゃいない。私の趣味知っているでしょう? これから長い昼寝をするだけよ。

私が昼寝を邪魔されるのが一番嫌いだって知ってるでしょう?」








ブツッ




ツーツーツー……













「……最期に彼女は何て?」










「伝えるまでもありません。……ただの利口ぶった阿呆のかっこつけですよ」









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~~~~~






兵士「隊長!出口が閉鎖されています!このままだと我々も……」






隊長「出口が塞がれているならば全力で瓦礫を撤去せよ!貴様らも生き埋めになり――」








ズズズズ……!






ゴォォオゥウウ……!








「うわあぁあああああ!!!!」
















「……もう、ここも長くないわね」







――思い返せば。嗚呼、何だ。私の人生はこんなにも満たされていたじゃないか。











「貴女は私よりも先に逝くつもりだったみたいだけど、残念ね。昼寝は私の専売特許よ。先に眠らせて貰うわ。……おやすみロザリィ」









――かけがえのない仲間に、何よりも誇れる家族がいたのだ。これ以上、何を望むと言うのだろうか。











「……コホン。それでは au revoir MM. et mademoiselle ……そして敬愛するmon ami ケイプニール。

これにて世界の誇る、灰色の脳細胞のお披露目は幕引きですわ。それでは、ごきげんよう。merci beaucoup」








――私は私自身の在り方に後悔や疑問なんて、これっぽっちも無い。






――だからこそ、この胸にある誇りは消えないのだから。









続く!














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最終更新日  2011年12月04日 00時51分51秒
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