2006.07.26
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「そうだ、故郷へ帰ろう。」
静かに眠る思い出の中。
誰かが私に、そう思わせた。


なんでもない色の下、なんでもない暖かさの中、彼女は自転車をこいでいた。
かごに、幼い私を座らせて、どこかへ向かって走っている。

私は、楽しそうに揺れていた。

夢の中の祖母は、お世辞もつけられないほど太っていて、お世辞ではなく、優しい。
具体的な優しさは夢で表現される事は無かったけど、そんな気がする。



でも、私の知っている祖母は、痩せている。
頭の後ろに、手術の大きな跡を残した彼女、それだけ。
木の棺桶から、目を閉じた静かな姿、それだけ。

祖母は、私が学生の頃に死んだ。

大人の私に残された彼女の情報は「死んでいる」という事実だけ。
それがなんだ。夢に、見たこともない祖母の姿が映し出された。
片親で育ってきた私は保育園に行っていたという設定の中、
祖母は自転車でその送り迎えをしている。


確かめたい、彼女が誰だか確かめたい。

病との闘いで痩せたの?
保育園の送り迎えをしてくれたの?

なんで死んだ?


「そうだ、故郷へ帰ろう。」
静かに眠る思い出の中。
誰かが私に、そう思わせた。








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最終更新日  2006.07.27 07:42:57 コメントを書く


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