春花の実

春花の実

2005年12月29日
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時間にして約二時間程度の番組だった『速報!日本レコード大賞』 。

番組には、最後のゲスト(受賞者)である歌手達がやって来た。

彼らの名前は――「フリッパーズ・ギター」。
小山田圭吾(おやまだ・けいご)と小沢健二(おざわ・けんじ)、という二人の男性によるバンド…いや、グループ…ユニット?
…まあとにかく、その「二人組」の“団体名”が、「フリッパーズ・ギター」というのである。
彼らの活動していた期間は今にして思えばそう長くはなく(多分、ほんの二、三年程度?)、本当にもう、あっという間。だけど、その短い間に結構多くの曲を世の中に出し…しかもそれらの曲は、当時の若者を中心に結構支持されて。だから、考えようによっては
「彼らの活動期間、その全てがピーク」
とも言えるかもしれない。

「ピークのピーク」(?)
だった頃。
「企画賞」?それとも「アルバム賞」、だっただろうか?賞の正式な名称は、これも(情けないことに)もうすっかり、忘れてしまったのだが。
彼ら「フリッパーズ・ギター」は、そんな“何か”の部門賞の受賞者として、『速報!日本レコード大賞』の会場に現れたのだった。

番組の最後が「金賞」ではなく「部門賞」…。
「やっぱり、最後の最後まで“順番”めちゃくちゃだなあ。」
ということにはあきれつつも。でも、私は「フリッパーズ・ギター」の『レコ大』に登場したことを素直に喜んだ。

というのも。
彼ら「フリッパーズ・ギター」というのは…決してそれまでの、いわゆる“芸能人”――例えば演歌歌手や歌謡曲の歌い手、あるいはアイドル達のように
「出来るだけ頻繁にテレビの歌番組に出演し…で、時には他の番組にもいそいそと顔を出し」
というタイプのアーティストではなかったからである。

彼らの歌だけは…テレビから(CMソング等として)流れてきたり。または、彼らの音楽を好きな友人から、お気に入りのCDを聴かせてもらったり――と、何度も耳にしてきたし。更には、音楽雑誌等のメディアでも彼らを絶賛する記事を読んだり、あるいは彼ら自身の連載を読んだりする機会も結構多かった。
だが。何というか…つまり、
“生身”の「フリッパーズ・ギター」が、“話したり、動いたり”しているところを見る――ということは、それまでにはほとんど無かったのである。

こんな――どちらかといえば、受賞を打診されても辞退してもおかしくないイメージの彼ら(偏見かもしれないけど)が…例え“予選”である『速報!』とはいえ、賞レースものの代表格的な番組である『レコ大』に出演。
それは、多分「フリッパーズ・ギター」の熱心なファンの人達にとっても意外だっただろし…また、私も当時は「へえ?」と思い。

“やれ『辞退』だ『卒業』だなんて理屈をつけて出演を拒む奴…もとい、人”
には、以前からあまりいい感情を持っておらず。
なので、彼らがこうして『レコ大』という場に顔を見せてくれたということに、決して悪い気はしなかった。

そんな訳で…だから、私は。
その前の――自分の大好きな「たま」が出てきた時よりももっとずっと、その後の展開については“興味津々”だった。
前述のように、めったにテレビに出ない「フリッパーズ・ギター」。
そして…彼らとは逆に、歌番組でもトーク番組でもその他のバラエティでも。とにかくいつも、
「出れる限りの番組全てに出まくっている」
という感じすらする“歌手”和田アキ子。
「芸能人」としては、いわば全く正反対のスタイルで活動しているこの両者の間に――はて、一体どんな会話が…交流が、成立するのだろう?
…成立、するのか?

もしかしたら…成立していた、かもしれない。
いや。「かもしれない」どころか、本来なら――普通なら。何の支障もなく、すんなりと成立していたはずの両者の「交流」。
でも、その“貴重なきっかけ”をあっさりつぶすような「ハプニング」を起こしてしまったのは。
またもや、司会者・和田アキ子の方からだったのである。

「フリッパーズ・ギター」の二人は――。
その時は確か、まだ「狭い部屋」には到着していなかったと思う。…恐らくは、一番最初の「テレビ電話」の段階。
まずは、それまでの他のゲストの時と同じように、スタジオの「テレビ電話」の映像と音声が彼らのいる場所とつながり。
そして、司会者・和田アキ子が彼らに呼び掛けた、第一声――それが。
「『フリッパーズのギター』さーん!」
…だったのだ。

「『フリッパーズのギター』さーん!」?
今のは…何だ?
「フリッパーズ・ギターさん」、か?単なる「さん」付けか?

…いや、違う。違うぞ。
「さん」付け…ではなく。そして、私の聞き間違いでもなく。
和田アキ子は、確かにこう言った。
「フリッパーズ“の”ギターさん」
って。

「フリッパーズ“の”ギターさん」…意味は?

A.「フリッパーズ」というバンド内で、ギターを担当しているメンバー。
B.「フリッパーズ」というバンドにいる、「ギター」というニックネームの人。

――果たして、和田アキ子がA・Bどちらの意味に解釈して
「フリッパーズ“の”~」
と言ったのか?は、さだかではないけど。
しかし…いずれにせよ、「の」が“蛇足”であることは間違いない事実。

あくまで、私の想像だけど。
恐らくあの時、彼女の目の前では――スタッフの誰か…ADあたりがカンペ(カンニングペーパー)用のスケッチブックを開き、
(アッコさん、次は“これ”でお願いします。)
という素振り&目配せでもしながら、
「次 フリッパーズ・ギター 登場です」
…こんな風な走り書きでも掲げていたのではないだろうか。

これで、すっかり露呈してしまったこと。
恐らく、“歌手”和田アキ子は――この『速報!』の司会を引き受ける以前から
「フリッパーズ・ギター」
というアーティストのことなんて、何一つ(=名前すらも)知らなかったのだ。
そしてきっと、司会が決まったその後でも。
「この賞を受賞した(または、受賞する予定の)歌手は、誰?曲目は…何?」
今回の仕事(『レコ大』という歌番組の司会者)として最低限必要なはずの、この程度の“予習”すら…多分全く、やろうともせず。

さて、その後。
「フリッパーズ・ギター」という自分達の洒落た“団体名”を、
「フリッパーズ“の”ギターさん」
一瞬にして…かつ、たったの“一文字”にて、何だか間抜けな“個人名”にされてしまった、小沢健二と小山田圭吾の二人。

そして。
“まさか…”とは思うが、何となく。
「フリッパーズ“の”ギターさん」
が「太鼓の知久さん」に引き続き、
「またもや(おのれが)間違っている」
ということ…もしかしたらあの時点では、まるで全然、気がついていなかった――ような気もする、司会者・和田アキ子。

さーて。
果たしてこの三人の間には、この後どんな会話があったのか…?

…ああ、だけど。大変情けないことに。
いつも、“かんじんの、大事なこと”になると、ボロボロと忘れてばかりの私の頭は。
残念ながらその「ハプニング」を過ぎたところから後の記憶も、またいきなりずっと先へとんでいるのだ。

次に出てくる私の記憶では――。
「フリッパーズ・ギター」の二人は、もう既に例の「広い部屋」の中にいた。
そして、その部屋にて淡々とした顔で。彼らは自分達の代表曲の一つ、
『恋とマシンガン』
を歌っている。
決して不機嫌そうではなく…かといって、愛想笑いをふりまくでもなく。
ただ、淡々と。

やがて――それから何年かが経ち。
「…あれ?」
いつもと同じはずの年の瀬…でも。
「そういえば何か、物足りないような…。」
そんなことに、ふと私が気がついた頃には。
『速報!日本レコード大賞』
という番組は、もうテレビからすっかり姿を消していて。
…で、いつしか『レコード大賞』といえば、現在も続いている大みそかの
『輝く!日本レコード大賞』
のことだけになってしまった――。

「『 太鼓の知久さん』ですか~?」
「『フリッパーズのギター』さーん!」

あの時の二つの「ハプニング」を…彼女――和田アキ子はどう思っているのだろうか。
私の脳内をいくら探ってもどうしても出てこない、彼女が
「頭を下げ、自分の間違いを謝罪していた」
という光景。
でも、それは全て私が忘れん坊なせいで…彼女はやはり、真摯に素直に反省していたのだろうか。

…それとも。
こんな風に思っている?
「だってしょうがないじゃない。」
――まるで、彼女の曲のタイトルみたいに。
「私、元々司会じゃないから。私の本業は“歌手”だもの。」
「『たま』なんてよく知らないし…。」
「フリッパーズ…何、ギター?そんなのいいじゃん、何だってさ。」

…いや、もちろん。
私は――和田アキ子が実際こんな風に言っているところを見聞きした訳では、ない。
ただ…。

「私、歌手ですから。」
とか、
「よくわからないんですけど。」
とか。あるいは
「いいじゃん、こんなのどうだって。」
とか。

“歌手”和田アキ子――彼女が司会する番組を見ていれば。
これらの台詞は現在でも、毎週のように聞くことが出来る彼女の「口癖」なのだ。





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最終更新日  2005年12月30日 07時17分51秒
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