歯医者の独り言
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私の歯科医院のホームページにこんな相談がありました。同じような悩みをお持ちの方もあると思うので,その方だけに回答するのではなくこのブログに回答をのせることにしました。ご相談内容はじめまして。私は歯茎が晋通の人よりも弱くて困っています。私は、市販の歯ブラシで歯を磨くと、どんなにやさしく磨いても歯茎が痛くなってしまいます。毎日歯を磨くと、歯茎がピリピリして痛くて仕方がありません。この症状が始まったのは、中学三年生くらいからだと思います。どの歯科医院で検査を受けても,よく磨けていて口の中きれいですねと言われます。ですので、歯槽膿漏で歯茎が弱っているということではないと思います。市販のやわらかめの歯ブラシでさえも痛みを感じるので、一年前くらいから、歯科医院ですすめられた、術後に使用されるくらい柔らかい毛先の歯ブラシを使用しています(GVKの毛の硬さ超やわらかめです〉。これを使い始めてから、歯茎の痛みはなくなったのですが、歯の表面の歯垢があまり除去されなく、ザラザラとした感じが残りすっきりしません。私の歯茎がなぜ弱くなりピリピリしてしまうのか知りたいです。歯茎にも皮膚のように敏感肌などがあるのでしょうか?それから、このまま超柔らかい毛先の歯ブラシを使用し続けても大丈夫でしょうか?歯茎が余計弱くなったりしないでしょうか?お返事お願い致します。回答歯茎にも皮膚のような敏感肌があるのか?というご質問に対するお答えは、痛みに対する感じ方は個人差が大きく、ほんのちょっとした傷でもすごく痛がる方もあるし、抜歯後の大きな傷でもほとんど痛がらない方もあります。痛みに対して人より敏感なのかもしれませんが、歯周病学的にこんな事も考えられます。まず歯茎は大きく分けて4種類に分類されます(下図参照、歯の根元付近の断面図。それぞれの図の左端で直線的に見える部分は歯の根、その右横の緑色の部分が歯の根を支えている歯槽骨、その上に覆いかぶさっているように見えるのが歯茎、歯茎の表面で少し内面にしわがよっているような部分 ATTACHED GINGIVA と書かれている部分が歯茎の中で今回ご相談に関係ある、専門的に付着歯肉と呼ばれる部分)メイナードの分類と呼ばれる歯茎の分類では歯茎と歯槽骨がそれぞれ分厚いか、薄いかで4パターンに分類されます。type1 歯茎 厚い 歯槽骨 厚いtype2 歯茎 薄い 歯槽骨 厚いtype3 歯茎 厚い 歯槽骨 薄いtype4 歯茎 薄い 歯槽骨 薄い図をよく見るとtype1とtype3 歯茎の厚い場合ATTACHED GINGIVA(付着歯肉)の範囲が広く、type2とtype4の歯茎の厚みの薄い場合は付着歯肉の範囲が狭くなっています。ATTACHED GINGIVA(付着歯肉)とは文字どうり歯茎が強く付着し歯周病に抵抗できる大切な部分です。人によっては付着歯肉が全く無い方があります。その場合は歯周外科手術で歯肉移植を行わなければならないことがあります。メールだけではあなたの歯茎がどのタイプなのかわかりませんが、おそらくtype4では無いかと思います。歯茎・歯槽骨両方が薄く、付着歯肉の幅も少ないのではないかと思います。歯科医の私自身もtype4の歯茎で、歯周病の研修で歯医者同士検査しあった時「寒い歯肉だ~」と指摘された事がありますが、もって生まれた歯茎のtypeはどうすることもできません。以来硬い歯ブラシは使わず薄い歯茎を傷つけないよう丁寧に磨くよう気をつけています。ご質問の中に柔らかな歯ブラシでは磨いたあともザラザラ感が残るという事が書いてありましたが、上手く磨けず歯垢が残ったままなら問題です。歯科医院で歯茎を傷つけないよう丁寧な専門的歯面清掃(PMTC)を定期的にしてもらった方が良いでしょう(保険外治療になります)ご質問のなかには「どの歯科医院でも・・・」という記載がありましたが、今までメイナードの分類などの説明を受けた事がないのでしょうか?大学教育ではまだそこまでの講義はされていないかもしれませんが、歯周病やインプラントの卒後研修では必ずメイナードの分類の話は出てきます。一度歯茎の状態を拝見させていただきたいのですが、神奈川県在住だそうなので無理ですね、近隣の歯周病治療に詳しい歯科医師に相談される事をお勧めします。
2008.11.04
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