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2006年12月04日
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カテゴリ: ポンポコ日記


 かつ食い過ぎ。

 夕方6時過ぎから、ほぼ3週間振りに買い出しに行く。
 食料品&洗剤等の日用品。ついでに散髪にも行く。
 本当ならば、それこそサッパリとして、『もの』を買ったという
 ささやかな満足感が少しは起きるのだろうが、それは全然
 無し。


 部屋に帰って来た。
 多摩川を渡る時、黒い川面が鉄橋の灯や街の灯を反射して
 冷たく光っていた。
 実際に寒かったのだけど、それ以上に心の底が冷え冷えと
 していた。

 普通だったら、帰ってから、1~2週間分のおかずを作り置き
 しておく。
 しかし、昨日は作る気がしなかった。
 それに、ここのところ忙しくて外食が多い。
 今週も夜が遅そうだし…

 取り敢えず、夕食分の材料を取り分け、後は全部冷蔵庫冷凍
 庫に放り込む。

 テーブルの上で肉や野菜を焼く。それに刺身。後は、小松菜のお浸しとか…
 1人なのに、それぞれ2~3人分。

 一寸控えようと思っていた酒も杯を重ねる。

 間にややこしい仕事の電話。

 溜め息をついてソファーに横になる。
 そのままウトウト。

 11時過ぎに目覚めて片付けもの。

 終わって、またソファーに横になり、本棚から引っ張り出してきた候孝賢を特集した昔の雑誌を
 読む。
 池澤夏樹が書いた「懐かしさを超えて」という文章。

 「観客は映画を選ぶが、映画の方もまた観客を選ぶ。
 候孝賢の作品を見ていると、自分が彼の作品に選ばれた、なかなか特権的な立場にいる観客
 だという気がしてくる。彼の描く世界を最も深く理解するのはもちろん台湾の人々である。…。
 しかし、彼らの次にこの世界を懐かしく見ることができるのが、終戦の前後に日本に生まれた
 ぼくの世代なのだ。
 ぼくたちは彼の映像にヨーロッパやアメリカの人々よりもずっと親しく感覚的に共感する。
 そのための素地がある。
 特権的とはそういうことだ。
 …。
 候孝賢の世界は懐かしい。だがそういう視点からのみ彼の映画を見たのでは、その価値を充分
 に受け止めたことにはならない。彼は映画で歴史を書くという大きな野心を持っており、…。
 人はこの様に生きてきたし、政治はこの様に人生に関与した。
 芝居は愉快で、博打は楽しく、愛は切なく、運命はきびしく、風景は美しかった。
 僕は、特権的な観客という立場を一度捨てるべきなのかもしれない。風俗に対するノスタルジ
 アなどではなく、ここに人間の普遍的な資質をこそ読みとるべきなのだろう。しかし、そのた
 めのきっかけとしても、この懐かしさは大いに役に立つのだ。」

 私は、一人で食事をしながら、家族との夕餉の団欒を想い出していた。遡って、実家での少年
 の頃の団欒を思い浮かべていた。更に、祖父や祖母が生きていた頃の事。

 7人家族であった私の家は、祖父が亡くなり、祖母が身罷り、姉は嫁ぎ、父と妹も亡くなった。
 母は今一人ホームに暮らす。ホームの近くに姉の家があるのだけれど、姉は東京の人と再婚し
 て、子供の半分が暮らす故郷と東京を行ったり来たり。
 故郷の実家も取り壊されて今は無い。

 上京してから結婚するまで、基本的には一人暮らしだったけれど、心の中には常に故郷の家族
 がいた。
 例えば、上京した頃、夕方住宅街を散歩すると、どこからから聞こえてくるピアノの音、漂っ
 てくる家庭料理の匂いに、懐かしい家庭の温かさを想い出し、胸が締め付けられる様な感情を
 覚えた。そんな事はあったけれど、心にはいつも故郷の家族がいて孤独はあまり感じなかっ
 た。

 結婚して家庭をもうけ、息子も生まれた。
 一人が二人になり、三人となった。
 今頃は、炬燵で私の好きな鍋料理を囲む事が多かった。

 そして今は一人で食事する。

 別れた妻や息子は今頃どんな食事をしているのだろうと考える事がある。
 高校受験を控え、塾通いの毎日で、息子は慌ただしく一人で食事をする事が多いらしい。

 私は、若い頃から小津安二郎の映画が好きであった。
 それは、スタイリッシュな映像やリズムのある編集が好きである事以上に、人生の孤独を見据
 えたその眼差しが琴線に触れたからだ。

 多くの小津作品は家族崩壊の物語だ。
 『晩春』の最後、娘を送り出した笠智衆が一人林檎の皮を剥きながら、うとうと眠る場面の残
 酷さ、荘厳さ。

 実は候孝賢の作品もまた多くが家族崩壊の物語である。
 崩壊した果てに感じる懐かしさ。

 池澤夏樹が書いている。

 「…人間とはそういうものであり、人生とはそういうものだと教えられて育った。そして、
 大人になった時には、すべてが変わってしまっていた。」

 人は人生の永遠を信じる。愛の永遠を信じる。
 必ず終わりがある、別れがあると知っていながら。
 例え愛を全うしても、人生に死がある限り、終わりがあり、別れがある。

 諦観という言葉がある。
 10代から感じていた諦めに似た淡々とした人生に対する想い。
 20代、30代と歳月が重なるに従って強くなったその想いに、今も強くとらわれている。

 今夜も、酒を飲もうと思う。







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Last updated  2006年12月04日 18時32分52秒
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