糖尿病者の『風邪薬』



2003/03/08
2003年3月8日の日経新聞によると、厚生労働省は風邪に処方される抗生物質(商品名
ガチフロ錠)を糖尿病患者に投与しないように製薬会社に指示しました。
血糖コントロールを失う症例が報告されています。

☆風邪薬を飲んでいる人はご注意ください。

http://www.dm-net.co.jp/gotoh/gotoh.htm


輸入が途絶えて魚インスリンが製品化 No.3 (2003年3月)


(1)戦争で2型は消え1型は残った


 普仏戦争や第1次大戦で、戦争になると食糧不足で糖尿病の滅少することが経験
されていたが、わが国では太平洋戦争でそれがはっきりと現れた。乏しい食糧の配給
で戦争末期には1日平均 1900kcal で我慢させられたので、糖尿病がよくなったのは
よかったが、一方栄養失調症もみられるようになった。戦争浮腫として知られていた
低蛋白血症による全身の浮腫などである。糖尿病の研究者は糖尿病がいなくなったの
で栄養失調の研究をしたわけである。京府医大飯塚直彦教授(秋田県出身)もその1
人で栄養失調が終戦直後からその翌年に多くなったことを報告している。

図1 月別榮養失調症患者數の月別外來患者數に對する百分率

(京都府立医大第1内科)





(2)インスリン不足と魚のインスリン


 食糧不足があってもインスリンを必要とする若年の1型糖尿病はなくならなかっ
た。1935-37年頃までインスリン末を輸入して製剤としてミニグリン(帝国臓器、武
田薬品)、フィゼリン(鳥居薬品)、インゼリン(鳥居、友田)などの名で販売され
ていた。戦争が長引くと家畜からの抽出も行われたが、それらは軍部に優先的に納入
された。
 わが国は海に囲まれているので魚は多く取れる。では魚からインスリンをとれな
いか。多くの人が考えたに違いない。1926年農林省に水産試験場ができ、その研究事
業の1つが廃棄水産物利用試験で、魚からインスリン抽出が取り上げられた。魚博士
の末広恭雄、化学の右田正男氏らが研究し、タラ、スケトウダラが着目され、1942年
にはタラ1尾より約20単位抽出できることがわかった。1936年のマグロ、カツオ、タ
ラ、ブリの漁獲高の統計をもとに、その全部からインスリンを抽出すると仮定すると
48,389万単位になる。当時の日本のインスリン消費量を1日2万単位としても年間
730万単位で66年間の需要を満たすことになると推定された。

図2 魚のインスリンのある膵島(ランゲルハンス島)の図





(3)魚インスリンが製品化


 清水港の清水食品(1929年創立)はマグロの油漬缶詰を開発し、マグロの水揚げ
の多い気仙沼港でも委託製造していた。1939年に水産講習所(東京水産大学)を卒業
して入社した福屋三郎氏は工場長直属の研究室勤務となった。気仙沼工場の監督を終
えて帰るとインスリンの話が出て、福屋氏はその研究を命ぜられた。それから2、3
名の助手とともに実験を重ね、福屋は徹夜もして頑張り2年後に成果を第12回農学大
会で発表した。

図3 魚インスリンを開発した研究室


図4 福屋三郎氏(右端)と研究スタッフ




 その企業化は武田薬品の協カを得ることになり、1941年5月に清水製薬株式会社
が創立された。製品はイスジリン「シミズ」 ISZILIN として市販された。


 海外からの輸入は1938年より途絶えていたのでイスジリンは重宝がられた。福屋
氏は国家命令の試験研究に従事していたので兵役は免除されていたが、3年間の期間
が切れた途端に召集され、また翌年は爆撃で本社工場が焼失した。
 終戦後工場は復興された。マグロ、カツオよりも鯨のほうが効率がよさそうなの
で大洋漁業では1947年から鯨膵からのインスリン抽出を計画し、清水製薬と技術交流
して5年後から鯨インスリンも製造され、1968年まで続いた。
 1954年清水製薬は「重要医薬品インシュリンの抽出の研究と実用化、生産向上」
の功績で第6回保健文化賞に輝いた。
 戦後に復興された工場ではインスリンの製造も途絶えがちであったが、1948年に
インスリンは統制解除、自由販売となった。やがて海外からインスリン末の輸入がは
じまり、それらによるインスリンが市販された。1950年頃のインスリン製剤では注射
後に発赤とか、掻痒などの局所反応が時々みられた。
 福屋氏は気仙沼の出張の折に時々、東北大学にも立ち寄られたので、昔話を聞く
ことが出来た。

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2004年4月1日号 / Vol.37 NO.14 / P.01
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糖尿病の強力なインスリン治療

HbA1Cの急激な低下で網膜症が悪化

〔独ウィースバーデン〕 デュッセルドルフ大学病院内科糖尿病外来の
Ernst Chantelau教授は「コントロール不良な糖尿病患者のHbA1C値を強力なインスリ
ン療法で急激に低下させると,糖尿病網膜症が劇的に悪化することがある」と本紙に
語った。

Early worseningに注意を

糖尿病の後期合併症を防ぐには血糖値の厳密なコントロールが重要であ
る。これは原則的には正しいが,強力な治療により糖尿病網膜症がほどなく急激に悪
化(early worsening)するケースもある。このようなearly worseningの正確な病理
学的機序はまだ解明されていないが,糖尿病治療による網膜症の悪化という逆説的現
象の背景には,虚血性網膜障害が存在するとの仮説が立てられている。


表 Early worseningのリスク患者の疾患・病態

障害を抱えた網膜部位では,網膜において細胞の増殖を促すインスリン
様成長因子(IGF)-Iなどに対する受容体が増加している。HbA1Cが高く維持されてい
る間は,肝臓がIGF-Iの産生量を減らすため,IGF-Iの血中濃度は正常範囲の下限にあ
る。しかし,血糖値が改善されてHbA1Cが急激に低下すると,IGF-Iが上昇し,時には
正常範囲の上限を超えることもある。IGF-Iに比例して網膜に障害が発生し,数週間
のうちに視力が急激に低下するというのだ。

このような好ましくない経過を防ぐには,リスク患者(表)を糖尿病セ
ンターに紹介し,同じ眼科医による眼底検査を 4 週間に 1 回受けさせ,画像で記録
しておくとよい。

事前のレーザー療法も選択肢

場合により,眼科医は血糖値をコントロールする前に,網膜の虚血部位
に対して予防的にレーザー治療を行い,有害なIGF-Iの作用に対する網膜の感受性を
低下させておく。その後,HbA1Cを月間約0.3%のペースで低減させ,慎重に代謝を改
善していく。

急激な血糖値低下により網膜症のearly worseningが生じた場合の唯一
の対処法は,血糖値を一時的に再び上昇させたうえでレーザー治療を行うことであ
る。

しかし,Chantelau教授は,血糖値の急激な低下による網膜症悪化リス
クの存在は,血糖コントロール不良患者をそのまま放置する理由とはならないことを
強調し,「適切な血糖値コントロールの利点は長期的に見て明らかだ」としている。




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