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久恒啓一

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浅田次郎「終わらざる夏」(上下)の読後感の続編。


カムチャッカ半島にもっとも近い千島列島最北端の小さな島・占守島(シュムシュ島)では8月15日に戦争は終わらなかった。


仮想敵ではなかったソ連が日ソ不可侵条約を破棄して8月8日に宣戦布告し参戦した。千島列島の武力占領をソ連は企図し、この島では8月18日早朝から戦いが始まり、精強な日本軍は圧倒的な火力と兵力で応戦・反撃しソ連軍を撃破した。そして日本軍は圧勝しながら24日に武装解除された。そして将兵たちは9月中旬からシベリアに送られ強制労働に服すという国際法違反の虐待を余儀なくされた。この勝利によって日本の領土は確保された。我々の知らない「もう一つの戦争」である。


その占守島に歴戦の鬼熊軍曹、若き菊池軍医、45才の片岡二等兵という三人の兵が和平のためのある使命を帯びて集結するが、運命のいたずらに翻弄されるという長い物語だ。戦争の理不尽さと渦中の人間の口惜しさと怒りとをあますところなく描いた傑作である。著者の浅田次郎の憤りが強いエネルギーとなって戦後65年目の暑い夏を前に優れた小説として結実した。


市ヶ谷の大本営参謀、岩手県盛岡の聯隊区司令部で徴兵作業にあたる動員班員、滝沢村役場兵事係、同潤会アパートに住む洋書翻訳者、シュムシュ島のアイヌ、函館から来た女子挺身隊、ソ連赤軍の将校、、。そして戦争の最前線に立っている兵士の家族達の悲しい物語だ。戦争には勝ち負けはない、戦争するものはすべて負けであるという著者の主張が痛切に響いてくる。


* 戦争は人間の思想や倫理や哲学をことごとく破壊する、超論理の無茶ですね。
* 明日の約束をすることが今日を生き延びるまじないであると、前線の兵隊は心得ている。
* 人間同士が殺し合っているのではなく、機械と機械が壊し合いをして、その機械を操っている人間が一緒に壊れちまうんです。
* 人の命を数字でしか量ろうとしない戦争というものに、

* 国が国民を攫(さら)い続けてきた。男たちを根こそぎ兵隊とし、女子供までも勤労動員の名のもとに拐(かどわ)かした。
* 赤紙一枚で召集された兵隊は、その後どこでどうしているものやら何もわからないのだが、死んだとたんに日付と場所が通知されるのだった。
* 邪念のないまっすぐな気性は、すなわち頭がいいのと同じなのである。
* 武運長久というのは、戦場で働(かせ)げというごどではながんす。逃げ回ってでも帰ってけろという、母心でやんす。
* スターリンの兵士になってはならない。やつは泥棒だ。革命という看板を掲げた大泥棒だ。
* だがな、犬死だって人を殺すよりはいからかましだ。
* 僕はいまさら死を怖れているのではない。わけのわからぬまま、戦う目的も理由も何もわからぬまま死ぬことがたまらなく恐ろしいのだ。
* 自由というものはよく知らないけれど、飛ぶも潜るも漂うも。これからは自分で決めていいのだろう。人間がようやく、鴎と同じように生きられるのだ。
* 百戦錬磨の兵隊たちですら、花咲く草原を征く時には声もなく見惚れるのです。
* 二度と、戦争はするな。戦争に勝ちも負けもあるものか。戦争するやつはみんなが負けだ。










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Last updated  2013/11/27 11:46:18 AM
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