PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

久恒啓一

久恒啓一

Comments

日本古典文学研究家@ Re:「たたら製鉄 技と精神(こころ)---誠実は美鋼を生む」(07/30) 日立金属さんプロテリアルに名前が変わり…
山陰中国地方サムライ@ Re:新著「遅咲き偉人伝-人生後半に輝いた日本人」の見本が届く(12/04) ルパン三世のマモーの正体。それはプロテ…
プロの魂たたら山陰サムライ@ Re:「たたら製鉄 技と精神(こころ)---誠実は美鋼を生む」(07/30) ルパン三世のマモーの正体。それはプロテ…
坂東太郎9422 @ ノーベル賞(10/08) 「株式会社Caloria代表取締役社長 管理栄…

Freepage List

Category

Archives

2025/11
2025/10
2025/09
2025/08
2025/07
2010/12/28
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
先日訪れた神奈川近代文学館で「清貧の思想」の著者・中野孝次が12年間という長い間、館長をつとめていたことを知った。現在の館長はある若いころ自宅を訪問しインタビューをしたことのある文芸評論家の紀田順一郎氏であることも本日の新聞で知った。この文学館はいい企画をするという印象があるが、館長に人を得ているからだろう。

ガン日記―二〇〇四年二月八日ヨリ三月十八日入院マデ (文春文庫)
作者: 中野孝次
出版社/メーカー: 文藝春秋
発売日: 2008/11/07
メディア: 文庫
この商品を含むブログ (2件) を見る

近代文学館で買った「ガン日記」(文芸春秋)を読んだ。

2004年2月28日体調への不安から日記は始り、入院に向かう3月18日に「風強し、暖。今日よりい約2ヶ月半、初めての病院生活と医療的拷問との日々始まるか、と思う。しかし、すべてそのときそのときに応ずればよしと覚悟は定まりてあり。」で日記は終わっている。そして3ヶ月後の7月16日に食道ガンで中野孝次は亡くなっている。享年79歳。



‐運命は、誰かに起こることは汝にも起こるものと覚悟しおくべし、自分の自由にならぬものについては、運命がもたらしたものを平然と受けよ。できるならばみずからの意志で望むものの如く、進んで受けよ。

‐従容として死につく、という言葉あり、人の死の理想たるべし。

‐よし、あと一年か。それなら、あと一年しかないと思わず、あと一年みなと別れを告げる余裕を与えられたと思うことにしよう、一年を感謝して生きよう、とようやく思定まる。

‐春の夜やガンをいだきてひとねむり

中野孝次には、「ハラスのいた日々」「犬のいる暮し」という愛犬との日々を書いた傑作がある。「二匹ともふだんより強く牽く。こちらの意志を理解せしやと感心す。」とあるように、犬好きの中野は書く。

セネカの著作、唐詩選に親しんでいた中野孝次は、死に対しての心構えを身につけているのだが、人生最後の入院時には「うちの藤沢周平全集」のうちの何冊かと、宮城谷昌光の小説を何冊か持っていく。

「これまで僕は文学に行き、いい文章を読んで人生を送ってきたが、それは本当に良かったな、いい人生だったな」としみじみと語ったと回想している。また「私はやっぱり彼と結婚してよかったんだな、と思っております」とも述懐している。

2001年5月3日には、「死に際しての処置」という遺言を書いていた。いくつかの項目を記した後、自らの人生を以下のように総括している。

「顧みて幸福なる生涯なりき。このことを天に感謝す。

わが志・わが思想・わが願いはすべて、わが著作の中にあり。予は喜びも悲しみもすべて文学に託して生きたり。予を偲ぶ者あらば、予が著作を見よ。

予に関わりしすべての人に感謝す。さらば。」



この「ガン日記」は、死後数年たって発見されたもので、出版を意識したものではないようだ。それゆえ心に響くものがある。

「ハラスのいた日々」と「犬のいる暮し」(これは読んだ記憶がある)を読もう。









お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2013/11/28 11:22:37 AM
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: