宇宙は本の箱

     宇宙は本の箱

遥か彼方の詩集


こうなってくると、たまに詩的な文章が浮かんでも僅かの一行で終わる。
自分の書いた詩よりも心の奥深くに棲み続ける詩は沢山あり、
自分の書いた詩なんぞ、今日のこの青空に浮かぶ雲の一片にも遥かに及ばない。

詩は人生の上に書くものだ。
昔むかし、そう思ったのに、ノートはまだ捨てられずに持っていて・・・
今日になってもう絶対にありえないことをふいに思い出した。
あれは・・・いつ聞いたのだったか・・・・


永かった十年を、たった一夜とひきかえにできるなら いいよ、そうしよう と言った夜。
それなのに、青春のその辛く苦しかった十年を愛しんでか、自分の中の美しい恋物語は美しいままで終わらせたかったのか、私の上に僅かの重みを残しただけで静かに扉を閉めて出ていった朝から何年かが過ぎていた。

懐かしいな。妙に懐かしい気がしたよ。
何年ぶりかの声がそう言った。

新鮮な子がいるな~、そう思ったんや。
あわなくなっても、いつまでも 一生そのままでいろよ。

新鮮野菜。私は一生私だから たぶん 変わりようがないんだ・・・


何年ぶりかであったのだから、あれは友情だったといえばいいのに、
そうしたら、友情は復活したかもしれないのに、いや、あれは恋だったと。

友達だって言われるほうが嫌いだって言われるより辛かった・・・。
あんたの優しさが好きだった。あんたは冷たかったし、本当にひどかった。けど、なんでやろう、あんたが優しいって、俺、知ってた。喋り方かな~
あんたといて一回だけ幸せな時があった。こんなに幸せやのになんで帰らなあかんねやろ、と思った時があった・・・



詩集を出せよ。
俺はなにもしてやれないから 金を出してやるよ。

お金なくても詩集出せた時はあったんだけどね、
想いを誰かと共有したくなかったんだ。
想いが一人歩きするのも嫌いだったんだ。


あれは、あんな話の時にしたような記憶はないが、
一体いつ聞いた言葉だったか。

詩集出せよ。
俺はなにもそてやれないから 金を出してやるよ。




出せたかもしれない詩たちはとうの昔に灰になり、
雲の彼方で私を待って眠ってる。

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