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2007.08.23
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「どんなふうにだい?そこにはいろんなパターンがあるはずだ」と僕は言って、それから考えたけど、僕にはあまり多くのパターンを思い浮かべることができなかった。夏は暑いのだ。



「それはややこしくて哲学的な自己の喪失感ではないわ、それは実感として私を悲しませるの」午後七時のアパートメントの部屋というのは実に趣がある。そして寂しい。彼女は煙草を吸う僕の前に置かれたカシュー・ナッツの入った袋から一粒だけ取り出し、口を小さく開いて器用にナッツを含んだ。音もなく噛まれ、音もなく沈んだ。それを眺めて、彼女の胃袋に入る運命を持ったカシュー・ナッツはまるで沈みゆく太陽のようだな、と僕は思った。

「そういう感じね、それならなんとなくわかる」と僕は言った。「中学生のころよくそんなことを感じたよ。個性が自分の中に見当たらなくなっちゃって、まるで自分が型どおりに生産されたボーリングのピンになったような気分になる。とても不安だった。僕は一体どこにいってしまったんだろう、ってね」

僕がそういうとアユミは顔をあげて目を丸くした。「私が言おうとしてたこと、なんで分かったの?」、僕は答えた。「そういった気分の時には決まってカシュー・ナッツと酒が欲しくなるんだよ。僕や君のようにごく一般の人間はね」、彼女はうっすらと笑顔を浮かべた。


「そう言えば僕がビールを飲み始めたのは中3だったぜ。ある朝起きたら急に怖くなったんだ。『あれ、オレは一体どうしたんだ?』ってね。無意識のうちに僕の中に入り込んだ何かが少しずつ僕を奪っていったんだ。ものすごく恐ろしかったさ、あれはね」と僕は空いたビール缶の中に煙草を突っ込みながら言った。彼女は僕の手から落ちていく煙草の吸殻を一点に見つめながら十秒ほどボーっとしていた。それからそんな眼差しのまま僕の方を見て言った。「私はいまだにたくさんのお酒は飲めないわ」

「酒を飲め。こう悲しみの多い人生は眠るか酔うかしてすごしたほうがよかろう、ってね」と僕は言って立ち上がった。「ビールを持ってくるよ、君も飲むかい?」

「うん」アユミは笑顔で答えた。「ところで、それは誰の格言?」

「ウマル・ハイヤーム、十世紀も前のペルシアの学者さ」と僕は冷蔵庫を開けながら返した。やっぱりアユミはかわいいな、と少しにやけながら、僕は缶ビールを二本持って言う。「さあ、今夜はゆっくりと飲もう」





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Last updated  2007.08.24 00:47:56
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