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2007.10.28
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彼女がいなくなる、そう考えると僕はひどく悲しい気持ちになった。


僕の世界から、今日で彼女が消える。

この気持ちはきっとどこにも吐き出すことはできない。しこりのように頑固にかたまって僕を圧迫し続けて、喉の奥にさらなる悲しみを呼ぶ。

泣けたらどれだけ楽になれるだろう。単純でくだらない悲しみには涙を流すことができるのに、本当の悲しみは、どうしても捨てることができない。そういうものなのだ。




「ねえ」と彼女は言った。
「海に行こうよ」



僕らは自転車に乗って浜まで向かった。下り坂を走って、海沿いの歩道に自転車を止め、階段を駆け降りた。


「海だ」と僕は言った。

「うん、海だね」と彼女は言った。



11月の海は穏やかに泣いていた。夕空を赤く染める太陽は、今日も孤独に死にそうだった。僕らは波打ち際を並んで歩いた。
濡れた砂を踏みしめると、僕は僕の存在を感じられた。確かに僕によって砂は形を変えている。確かに彼女によって僕は生きている。


夕日が水平線の下に沈み込もうとすると、暗いけれど青さを取り戻した空に、水色の半月が浮かび上がってきた。わずかな陽光によって息を保っている暗転寸前の空は幻想的だった。
鰯雲はさっきよりも足を速めて、月を隠したり際立たせたりしていた。


彼女は麦わら帽子を頭から取ると、それを僕の頭の上にのせた。それから、「今日からこれはあなたのよ」と言った。長い髪とスカートが波風に揺らされた。僕の核ともいえよう部分も、風に揺れた。



着古したジーンズに突っ込んでいた右手を出すと彼女の左手を握った。太陽が完全に沈んでしまうと、僕らは歩くのをやめ、砂浜に座った。

上を見上げると綺麗な月が光っていて、海を青く照らしていた。




「どうして月はあんなに綺麗なの?いつだってひとりなのに」と彼女は言った。
「確かに」と僕は言った。どうしてだろう?太陽はすぐに死んでしまうのに。







「あたしは」と彼女は俯いた。




「あたしは消えたくない」


僕も彼女に消えてほしくなんかなかった。

「消えないでくれ」そう言うと僕は右手を横に出した。まだ消えないで。







彼女は消えていた。さしのべた右手は冷たい砂を掴んだ。右を見ると、微かな匂いを残しただけの空白があった。





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Last updated  2007.10.28 21:06:18
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